小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1098回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第2世代になった「Fire TV Stick 4K Max」は、どこが変わったのか

第2世代Fire TV Stick 4K Max

もう第1世代が過去のものに……

10月14日から15日にかけて行なわれたAmazonプライム感謝祭2023。プライム会員限定のセールだったが、FireTVの旧モデルがかなり安く販売されたようだ。それというのも、Amazonでは9月21日にFireTV Stickの新モデルを発表し、現行モデルは旧製品にシフトするからである。

10月18日に発売が開始された「Fire TV Stick 4K Max 第2世代」は、Fire TV史上もっともパワフルなストリーミングメディアプレイヤーとされている。価格は9,980円。

初代Fire TV Stick 4K Maxは2021年に発売されており、その時に一度レビューしている。価格は6,980円だった。

今回は第2世代をお借りし、具体的にどこが新しくなったのか、私物の第1世代と比較してみたい。

2年分の進化はある?

まずボディだが、初代と比較すると若干丸みを帯びた形状になっているものの、サイズなどはほぼ変わらない。電源供給ポートがMicroUSB端子なのも変わらずだ。

上が第2世代、下が初代

違いがあるのはリモコンである。新型の音声認識リモコン「Enhanced」は、従来型より縦方向に2cmほど長くなっている。ボタンは1列増えており、「設定」と「最近のアイテム」ボタンが増設されている。またライブチャンネル用のアップダウンボタンも新設された。

第2世代のリモコン「Enhanced」(右)

サービスのショートカットボタンにも変更がある。従来「DAZN」と「Amazon Music」だったところが、「TVer」と「U-NEXT」になっている。U-NEXTは現在加入キャンペーンを実施しており、FireTV画面からエントリーできる。

ボタンが新設されたことでU-NEXTがキャンペーン中

なおこの新型リモコンは、この第2世代とFireTV Cube(第3世代)にしか対応しないようだ。つまり同時発売の「Fire TV Stick 4K(第2世代)」も、従来型のリモコンが付属する。

初代と第2世代のスペックの違いは以下の通り。SoCの性能が上がり、ストレージ容量が16GBに倍化している。OSも一世代アップし、Wi-Fiも新たに6Eに対応するなど、2年間なりのスペックアップが行なわれている。

モデル名初代Fire TV Stick
4K Max
第2世代Fire TV Stick
4K Max
SoCMediatek MT8696Mediatek MT8696T
CPUクアッドコア 1.8GHzクアッドコア 2.0GHz
GPUGE8300 750MHzGE9215 850MHz
メモリ2GB2GB
ストレージ8GB16GB
Wi-FiWi-Fi 6Wi-Fi 6E
Bluetooth5.0 + BLE5.2 + BLE
OSFire OS 7Fire OS 8
重量43.4g43.5g

Wi-Fi 6Eは、新たに6GHz帯が利用できる新方式で、集合住宅等で5GHz帯も混み合っているようなケースでは有用だろう。あいにく筆者宅のルータはWi-Fi 6止まりなので、今回は6Eの恩恵は受けられていない。ただ住環境としては5GHz帯もそれほど混雑しておらず、加えてWi-Fiルータと実機との距離は1m程度なので、今回のテストではスループットには支障ないと考えている。

実際のパフォーマンスは?

CPU、GPUともに若干スペックアップしているところだが、実際に体感できるものだろうか。そこで初代と2台目でホーム画面のスクロールと、再生を選択してコンテンツが表示されるまでの時間を調べてみた。

画面スクロールに関しては、若干ではあるが2世代目が早い。一方再生を選択してコンテンツが表示されるまでの時間は、わずかに初代の方が早い。この程度の操作では、スピード的にはほぼ変わらないようだ。

初代Fire TV Stick 4K Maxと第2世代Fire TV Stick 4K Maxの動作速度比較

ハードウェア的なポイントとしては、内部ストレージが16GBに倍化したことが上げられる。OS領域などもあるので、実際にユーザーが利用できるのは13GB程度だが、それでもFire TV Stickにかなりの量のアプリがインストールできる事になる。

試しに容量の大きそうなRPGを片っ端からインストールしてみたが、ほとんどのデータはストリーミングでやってくるようで、アプリデータ自体はかなり小さかった。むしろ配信アプリのほうがストレージは食うようだ。

ロールプレイングゲームはほとんど容量を食わない
ゲームを沢山インストールしてもまだまだ余裕

とはいえ、沢山のサービスアプリをインストールしたいという人からすれば、8GBでは一杯になるケースもあっただろう。ヘビーユーザーはMax第2世代を、ということのようだ。

映像コンテンツとしては、4K Ultra HD、Dolby Vision、HDR、HDR10+に対応し、音声はDolby Atmosにも対応する。ただし再生にはDolby Atmos対応のサウンドバーなどが必要だ。

Amazon EchoシリーズではEcho StudioがDolby Atmosに対応しており、これがあればFire TV側の設定でシアターシステムにセットアップすることが可能だ。Dolby Atmos非対応のEchoでも、最大2台までペアリングできるので、テレビスピーカーよりもすぐれたステレオシステムにセットアップできる。

Echoがあればペアリングしてホームシアターが組める

第2世代4K Maxのみの機能としては、「アンビエントディスプレイ」がある。これは一定の待機時間後に表示されるディスプレイモードで、アーティスティックな風景が表示されるとともに、その上にAlexaウィジェットも表示できる。

新搭載のアンビエントディスプレイ
ウィジェットも追加できる

AlexaウィジェットはこれまでEcho Showシリーズなどディスプレイ付きEchoで展開してきた機能だが、Fire TVにも徐々にその流れが合流するという事だろう。

ただFire TVはある意味テレビと一心同体であり、見たいときに起動するデバイスだ。Echo Showのように常時表示されているというものでもないため、このウィジェットが機能する瞬間は割と少ないような気がする。

またアンビエントディスプレイは、アート作品が2,000点以上表示されるという点では群をぬいているものの、スクリーンセーバーとしては以前からも数は少ないがアート写真を表示する機能がある。Amazonではこの機能をプレミアムコンテンツと位置づけているようだが、Echo Showに搭載されるならともかく、テレビの電源をONにしてまでわざわざFire TVでアンビエントディスプレイを表示させるかは、ちょっと微妙ではないかという気がする。

総論

初代から3,000円ほど価格アップとなった第2世代だが、その価格差ほど機能が開いているかというと、それほどでもないように思う。強いて上げるならば、ストレージ増加分の価格差、といったところだ。

筆者は現状初代4K Maxで特に不満はないのだが、今回同時発売になった「第2世代 Fire TV Stick 4K」がほぼほぼパフォーマンス的には変わらないものと思われる。半導体部品の都合などもあってのリニューアルとも考えられるが、初代4K Maxが第2世代Stick 4Kへシフト、第2世代4K Maxは初代のストレージ増強版と考えても、あながち間違いではないだろう。

もちろん、リモコンが変わった点は評価できる。TVer、U-NEXTを頻繁に利用する方や、ABEMAのライブストリーミングをよく見る方にとっては便利になっている。ただ、よほどストレージが足りなくて困っているという方以外は、初代Maxからわざわざ乗り換えるメリットはないだろう。

一方Amazonとしては4Kモデルをエントリーに据えたいという思惑があるようで、初代Stick 4KやHDモデルなど、4~5年以上前のモデルのユーザーは、そろそろ買い換えを検討してもいいだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。