日沼諭史の体当たりばったり!

第46回

シーリングプロジェクタ対決! 新「popIn Aladdin」とAnker「Nebula Nova」の違いは?

「popIn Aladdin 2 Plus」とAnker「Nebula Nova」を比較してみた

従来の家庭向けプロジェクターの悩みだった、設置の難しさや映像の遮りやすさという課題を見事に解決した、天井設置のシーリングプロジェクター。照明+プロジェクターという意外ながらも合理的な組み合わせで、一気に市民権を得た感もある。その代表格というか、元祖は、言わずもがな2018年に初登場したpopInのAladdinシリーズだ。

そんなpopIn Aladdinシリーズの最新モデル「popIn Aladdin 2 Plus」が2022年6月末に発売しており、随所に改善が加えられ、パワーアップしている様子だ。一方で、それに対抗するかのように「Nebula Nova」という新たなシーリングプロジェクターがAnkerからも登場した。価格差は2~3万円程度あるが、性能は近いライバル製品だ。

というわけで、それぞれにどんな特徴があるのか、2機種を同時に試してみることにした。シーリングプロジェクターが気になる人、今まさに導入を検討している人の参考になれば幸いだ。

2モデルの機能をスペック表で比較

「popIn Aladdin 2 Plus」(左)と「Nebula Nova」(右)

あまりご存じのない方に改めて解説すると、シーリングプロジェクターは、部屋の天井に備え付けられている照明用コンセントを利用して設置できる照明兼プロジェクターだ。引っ掛けシーリングやローゼットなどと呼ばれる、日本の多くの家庭で採用されている天井コンセントに対応し、基本的には工具や工事なしで設置が可能になっている。

この天井コンセントを利用して設置できる

LED照明として利用しつつ、内蔵のプロジェクター機能で映像の投影が可能。照明と映像投影の機能は連動しないため、どちらか一方を使うこともできるし、両方を同時使用することもできる。天井付近から映像を投影することになるため、台などに置いて使うプロジェクターのように設置場所に悩まずに済み、使用していないときの収納の手間も省け、人や障害物などに映像が遮られにくいという利点がある。

照明器具であり、かつプロジェクター機能を内蔵

こうした特徴をもつシーリングプロジェクターとして今回登場したのが、Aladdinシリーズの新型「popIn Aladdin 2 Plus」(以降、popIn Aladdin)と、後発となるAnkerの「Nebula Nova」となる。まずはこの2機種の主なスペックを表で見比べてみよう。

価格はおよそ3万円差(発売当初は1万円差)でNebula Novaの方が安価。プロジェクター部分の表示素子、解像度、投影サイズはどちらも同じ。輝度が若干異なるのと、OSをはじめとする内部の機能に差があるようだ。特にアプリストアの違いが気になるところだろうか。それ以外では、popIn Aladdinは別売オプションとなる機能拡張用の周辺機器が用意されているのと、照明部分は「Nebula Nova」の方が高輝度、広い色温度をサポートしている、といったあたりが目立つ。

なお、スペック表ではpopIn Aladdinの高さ(厚み)が145mmとなっているが、設置後に天井面からシェードの最も盛り上がったところまでを実測したところ160mm前後だったため、ここはNebula Novaとそこまで大きくは変わらない。

設置手順は両機種とも同じ。既存の照明を取り外した後、天井コンセントに付属の専用アダプタを取り付け、そこに本体中心部を合わせながら押し上げて固定し、専用アダプターから伸びている電源ケーブルを本体に差し込む。その後、映像を投影する方向にレンズが向くように調整し、付属のシェードを取り付け、壁面スイッチなどで電源を入れれば完了だ。この準備は2機種ともに数分もあれば終えられるだろう。

引っ掛けローゼットに付属のアダプタを取り付ける
本体を下から押し上げるようにしてアダプタに固定、電源コードを接続する(popIn Aladdin)

そんなわけで、これらのスペックを踏まえたうえで、それぞれの機能や使い勝手がどんな感じなのか見ていきたい。

高画質・高音質の「popIn Aladdin 2 Plus」、照明としての機能にも配慮

「popIn Aladdin 2 Plus」

まずはpopIn Aladdinの初期設定だが、慎重に進めたいのはフォーカスと補正だ。popIn Aladdinではフォーカスは手動となるため、リモコンの手前側にあるスイッチを「Focus」に切り替えた後、壁などに投影された映像を目で見ながらボリューム(プラス・マイナス)ボタンで一番輪郭のくっきりするところに合わせる。一度設定すればやり直すことがほぼないとはいえ、最大限にシャープな映像にできているか若干不安の残る作業ではある。

付属リモコン
手前側にあるスイッチを「Focus」にすると、プラス・マイナスのボリューム調整ボタンがフォーカス調整に使えるようになる
フォーカスの確認・調整に便利な画面。ぼやけが最も少なくなる設定を探る

上下位置の調整幅は少しだけ広め。レンズ面から壁まで約103cmの距離に設置した場合、映像の下端は床面から64.5cm、上端は天井から2.5cmというわりとギリギリのところまで調整できる。さらに台形補正するときの操作性はシンプルで、微調整が効く。

映像の上下位置調整。最大限に上方向に調整したときは天井のかなり近くまでくる
台形補正は調整幅が細かい

OSはAndroidベースではあるものの、インターフェースが独自デザインで、アプリストアも独自となる。用意されているのはAmazon Prime VideoやNetflix、Hulu、ABEMA、radikoなどの動画・音声配信サービスのほか、時計や写真・映像再生用のアプリ、ゲームなど。プロジェクターで使いたくなる主だったアプリは揃ってはいる。が、数十種類程度と決して豊富ではない。

ホーム画面
OSはAndroidベースだが、ストアは独自で、アプリ数は多くない

たとえばテレビを視聴したい場合、通常はネットワーク経由での再生(DLNA)機能を備えた外部のテレビレコーダー・チューナー機器と組み合わせることになるわけだが、チューナー機器側で用意しているAndroidデバイス向けのアプリはまず使えない。そのため、プリインストールされている「テレビ」アプリを使うか、「DiXiM Play」(有料)などのサードパーティ製の汎用アプリを利用することになる。

プリインストールの無料で使える「テレビ」アプリ

「nasne」のような、ある意味アプリのUI/UX込みで高い評価を得ているチューナー機器では、そのアプリを使えないのはかなりのハンデだ。「テレビ」アプリでも放送中の番組や録画済み番組の視聴はできるが、最初から最後まで一覧から選んでいく形になるので、使い勝手がいいとは言えない。しかも、テレビ番組の予約録画などはできないため、それは別途スマートフォン側で、みたいな使い分けになってしまう。

nasneの放送番組や録画番組は一覧から探していくことになる

とはいえ、Wi-Fi 6に対応しているためか、あるいはDLNAという仕組みを利用しているためか、nasneと組み合わせて使ってみたところでは、映像は高画質で、引っかかりなども一切なくスムーズに再生された。Amazon Prime Videoのような動画配信サービスのレスポンス、映像クオリティも良好だ。通信周りで不満に感じることはないだろう。

また、900ANSIルーメンというプロジェクターの輝度は、直射日光の差し込まない部屋であれば、昼間でも問題なく視認可能なレベルだ(ただ、Nebula Novaと比べて明確に差があると感じられるほどではない)。8W×2のスピーカーは、harman/kardonコラボということもあってかサウンドの解像感は高い。低音も(満足できるとは言えないまでも)そこそこ出ている。若干の遅延が許容できるなら、外部Bluetoothスピーカーを組み合わせるのもアリだ。

harman/kardonによるチューニングが施されたスピーカーを内蔵

その他の機能面について言うと、スリープ状態からの起動が高速化され、前モデルが約28秒だったところ、新型では約7秒で画面表示されるのは大きな進化。ただし、実際にリモコンの操作が可能になるまではトータルで10秒ほどかかる。3秒間程度とはいえ画面が見えているのにリモコン操作に反応してくれないのは、初めはちょっと戸惑う部分だ。

ところで、プロジェクターの使い方として多いのが他のデバイスからのキャスト(画面ミラーリング)だろう。ここについては、popIn AladdinはMiracastとAirPlayでの対応となる。が、AirPlayはiPhoneなどであればスムーズに利用できるものの、Miracastはパソコン(Windows)からの接続に非対応で、Androidデバイスも対応機種が限定されており、問題なく使えるユーザーの方がおそらく少ない。PCなど外部機器からの映像出力を考えているのであれば、デバイスからHDMI入力して無線で本体に映像信号を飛ばせるオプションの「Aladdin Connector」を追加するのが手っ取り早い。

iOS端末からのAirPlayによる画面ミラーリングはスムーズだが、Miracastは対応機種が限定される

代わりと言ってはなんだが、Webサイトを大画面表示したいのであれば、popIn AladdinにはFirefoxアプリがあるので、プロジェクター上で直接ブラウジングしていける。アプリの少なさはWebアプリを使うことでカバーできる部分もあるだろう。ただ、ログインが必要なWebアプリだと、ソフトキーボードからID・パスワードをいちいち入力しなければならないため面倒に感じることが多い。しかもFirefoxでURLを入力しようとした時は、ソフトキーボードの裏に入力欄が隠れて見えなくなってしまうため、実用性を考えると厳しいところがある。

Forefoxアプリを使えばWebブラウジングはもちろんWebアプリの利用も可能
が、URL入力時にはソフトキーボードで隠れてしまうため、正しく入力できているかどうかがわからない

しかしながら、照明部分の機能性、使い勝手は、歴史の長いpopIn Aladdinに一日の長がある。リモコンには最大4つの調光パターンと消灯をローテーションで切り替えていくボタンとは別に、照明のオンオフだけを切り替えるボタンもある。さらには、照明の明るさを最低限まで暗くしたときよりもずっと暗い「常夜灯」もある。夜の就寝前や就寝中は、部屋の中が把握できる程度に暗くしたかったりするし、シアター風に映画を見たいときも、常夜灯があった方が雰囲気が出たりもする。プロジェクター機能ばかりに寄ってしまうのではなく、きちんと照明の使い勝手にも気を配っているのはうれしい。

4つの調光パターンをカスタム設定でき、通常の明るさ設定とは別に常夜灯がある
通常の明るさ設定で最も暗くした状態
常夜灯にしたところ。夜中や映画鑑賞時など、極力暗くしたいときにありがたい

Google Play対応でChromecast内蔵、応用力高いAnker「Nebula Nova」

Anker「Nebula Nova」

次はNebula Novaである。こちらはAndroid TVということもあり、Googleアカウントを利用することがほぼ前提となる。初期設定時に既存のアカウントでログインすることになるが、その分、YouTubeアプリなどのGoogleサービスについては、ログイン時のID・パスワード入力が省略されることがあるため、全体的に手間を感じることなく使いこなせるだろう。

付属リモコンから操作
本体にGoogleアカウントを設定すると、他のGoogleサービス利用時にはID・パスワードの入力を省ける

オートフォーカスなので、起動直後からくっきりした映像が得られるのも手間が減ってありがたい。上下位置の調整幅も十分にあり、レンズ面から壁まで約103cmの距離に設置した場合、映像下端は床面から64.5cm、上端は4.5cmのところまで調整可能だ。ただ、台形補正は四隅のポイントを決定ボタンで選んで上下左右に動かし、戻るボタンで確定するという操作手順で、直感的ではないために微妙に煩わしく感じるかもしれない。1段階分の調整幅はやや大きめだ。

起動時に毎回オートフォーカスして調整するようにも設定できる
上下位置の調整
台形補正ももちろん可能だが、操作手順があまり直感的ではない。調整幅も大きめ

アプリストアはGoogle Playがメイン(独自のアプリストアもあるがアプリ数は数個のみ)。なんといっても対応アプリが豊富なのは大きな強みだろう。動画・音楽配信サービス系、ユーティリティ系、ゲームなど、いつもスマートフォンで使っているアプリをNebula Nova上でも使える可能性が高い。たとえば先述のnasne用アプリ「torne mobile」も対応しているので、テレビ番組の視聴・録画は快適だ。

Google Playからアプリをダウンロードして追加可能
nasneの専用アプリ「torne mobile」ももちろん使える

ただし、筆者の環境では、torne mobileの設定で「画質優先」にしたところ、放送番組や録画番組の再生がすぐに停止してしまう問題が発生した。「通信優先」に設定して画質を落とすことで問題なく再生は可能になったが、状況から考えてWi-Fi電波の強弱は関係なさそうだ。通信や映像処理の負荷が大きすぎるのか、コーデック絡みのところでうまく処理できていないのか。

いずれにしてもせっかくのテレビ番組を低画質でしか見られないのはもったいないところ(nasne以外のレコーダー・チューナー機器なら高画質再生できる可能性はある)。ちなみにAmazon Prime VideoやNetflixなどの動画配信サービスではそういった問題は発生していない。

「通信優先」にしないとうまく番組を再生できなかった

800ANSIルーメンの明るさは十分で、popIn Aladdinと比べても遜色のない鮮やかさ。内蔵スピーカーは10W×2と、popIn Aladdinより出力としては大きいものの、低音はわずかに控え目だ。どちらかというと人の音声が聞き取りやすい音質という感じで、テレビ番組向けの雰囲気がある。こちらもBluetoothスピーカーを組み合わせて高音質化を狙うのも良さそうだ。

800ANSIルーメンは十分に鮮やかな映像を映し出す

Chromecast built-inということで、スマートフォンなどから気軽にキャストできるのもメリットだろう。手元の端末にある写真や動画を手早く映し出せるし、動画配信サービスの再生したいコンテンツを手元のスマートフォンで探し、再生をNebula Novaに任せる、なんていう役割分担ができたりするのは使い方としても自然だ。Google PlayからダウンロードできるWebブラウザーアプリにはメジャーなものがないけれど、キャストで代用できる。スクロールやリンククリックといった操作性の面を考えても、キャストでWebブラウジングした方が楽で快適なはず。

スマートフォンから簡単な操作でキャストできる。本体側で都度設定するようなこともない

Nebula Novaならではのもう1つの特徴は、USBポートを備えていることだ。本体後部にUSBポートがあり、ここにUSBメモリなどを差し込んでその中にあるデータを扱える。天井に固定した本体に接続することになるので、天井が高いと使いにくいのと、直付けの軽量なUSBメモリ向けになるのは仕方のないところか。それでも友人らを招いてホームパーティするようなとき、互いの写真や動画などを見せ合ったりするのに活躍してくれそうだ。

本体後部のUSBポートにUSBメモリなどを接続し、保存しているコンテンツを再生したりできる

そんななかで、いくつか弱点と言えそうなところもある。まず1つ目は、スペック表にファンの駆動音が「約35~50dB」とある通り、動作中の騒音が目立ちやすいこと。popIn Aladdinの動作音もあるにはあるが、Nebula Novaはそれより1、2段階は大きい。映像などを再生中にある程度音量を大きくしていれば目立たないとはいえ、夜中、静かに動画鑑賞しているときには気になるかもしれない。

2つ目は、照明器具としてはかゆいところに手が届かないこと。常夜灯の機能はなく、最低まで暗くしても夜中だと明るく思える。リモコンには最大4パターン(うち3パターンはプリセットで調整不可)の調光設定と電源オフを切り替えていくローテーションボタンしかない。すぐに明かりをオフにしたくても、最悪の場合、4回ボタンを押して他の調光パターンを経由してからようやくオフ、ということになる。ローテーションする調光パターンを設定で減らすことも可能だが、そうするとせっかくの多段階調整できるLED照明のメリットを活かせないジレンマが……。

照明の設定は3パターンのプリセットと、カスタム設定1つの計4パターン
使わない調光パターンはオフにすることでローテーションから外すこともできるが、当然その分の調光パターンが減ることになる
最も暗くしてもこの状態。夜中は明るく感じてしまう

そしてもう1つ、Nebula Novaがメリットとして打ち出している「起動時間2秒」という点だが、これは使い方によっては実感しにくい。というのも、電源をオフ(スリープ状態)にしてからおそらく一定時間は、再度電源オンしたときに、2秒どころかほとんど一瞬にして起動してくれる。ところが、電源オフから数時間たった後に電源を入れてみると、OSの起動シーケンスからの再スタートとなって約30秒ほど待たされることがあるのだ。どれくらい時間をおくとそうなるのかは判然としないが、使う上では注意しておきたい(OSの電源・スリープ設定が影響している可能性も考えられたが、Nebula Novaではそういった設定項目もOS側に設けられていなかった)。

2機種の要点を比較。あなたの使い方に合うシーリングプロジェクターは?

最後に、今回各機種のポイントとして挙げたところを比較してみると、以下のようになる。

popIn Aladdinは、照明機能の使い勝手の良さが強みの1つだ。照明を置き換えて設置する以上、それまで使っていた照明器具と同等かそれ以上の機能性がなければ普段の生活が不便になりかねない。その意味では、少なくともpopIn Aladdinにして便利になることはあっても不便に感じることはないだろう。

アプリが少なく、できることが限られる印象はあるものの、そこはAladdin Connectorを併用することでカバーできるところもある。追加コストにはなってしまうが、PCゲームやコンシューマーゲーム機をプロジェクターに映し出してプレイしたいなら、popIn Aladdinを選ばない理由はない。

誰でも簡単に使い始められるという意味では、オートフォーカスのあるNebula Novaが有利。なじみのあるGoogleアカウントで一貫したサービス利用ができ、Google Playから多数のアプリをインストールできる応用性の高さ、Chromecast built-inによる他デバイスとの連携のしやすさも魅力だ。

USBメモリなどを使って気軽に写真・動画を映し出せる小回りの良さも備えている。惜しむらくは照明としての機能がいま一歩であること。最大6,100ルーメンは強力で、14畳までの対応は伊達ではないが、オンオフ操作がないことやカスタマイズの少なさは残念。そうした輝度の高さ、色温度の幅広さがあるのだから、それがより活かせるよう、今後のバージョンアップでの機能向上にも期待したい。

popIn Aladdin(左)とNebula Nova(右)のLED。前者は84個、後者は110個で、実際にNebula Novaの方がはるかに明るい
日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。