日沼諭史の体当たりばったり!

第47回

"完全防水"骨伝導プレーヤー「OpenSwim」で仮想トライアスロンに挑戦!

Shokz「OpenSwim」を試す

カジュアルイヤフォン界隈はすっかりBluetooth、完全ワイヤレスだらけになっているなかで、久しぶりにトガったヤツが現れた。Shokzの「OpenSwim」だ。

何がトガっているかというと、今どき珍しくメディアプレーヤー内蔵で、ワイヤレスオーディオ機能をもたないスタンドアロンデバイスであるところ。それでいてShokzならではの骨伝導イヤフォンなのである。

名前に「Swim」が入るだけに防水性能もバッチリのよう。筆者的に最近ちょっと気になっているトライアスロン(仮想)のお供にもちょうどいいかも、ということで、試してみた(あらかじめ言っておくと、本物のトライアスロン競技中のイヤフォン装着は禁止されている場合があるのでご注意を)。

オーディオファイルをコピーするだけのシンプルなデバイス

Shokzの「OpenSwim」は、メディアプレーヤー内蔵の骨伝導イヤフォン。これまでShokzがリリースしてきた骨伝導イヤフォンの流れをくむ、耳に掛けて使うネックバンド型だ。その形状からこれまで通りBluetoothイヤフォンとして使えそうにも思えるが、そうしたワイヤレスオーディオ機能は一切もたない。4GBの内蔵ストレージに保存したオーディオファイルを、本体のもつメディアプレーヤー機能で再生できるだけという、なかなかストイックな製品である。以前は「Xtrainerz」というモデル名で展開していたのをリブランディングしたものでもあるようだ。

パッケージ内容。充電器、イヤープラグ、防水ケースが付属する

かつては大手オーディオメーカーも積極的に製品化していたような気がするこうしたプレーヤー内蔵イヤフォンだが、今やすっかり影が薄くなってしまった。検索すれば見つけられるものの大手メーカー製の現行モデルは数えるほどしかないし、Bluetooth機能ももつ製品がどちらかというと多いので、純粋にスタンドアロンなプレーヤー内蔵イヤフォンはごくわずか。かつ、アウトドアアクティビティに向いている骨伝導となると、OpenSwimくらいだろう。

単体プレーヤーだけに、機能や使い方はシンプルだ。付属のデータ転送用を兼ねた充電器を使ってパソコンに接続するとドライブとして認識されるので、そこにオーディオファイルを放り込むだけ。専用ユーティリティなどは特に用意されていない。ドライブのルートにそのままコピーしていってもいいし、フォルダ分けしてもいい。この割り切り感というか、ある意味原始的な使い勝手は、個人的にはむしろ好ましいのだけれども。

充電器にセットしてパソコンなどに接続して充電
サンプルオーディオファイルが4つ入っている。データ転送はエクスプローラからドラッグ&ドロップするだけ

対応するファイル形式・コーデックはMP3/WMA/FLAC/WAV/AACで、基本的にハイレゾ音源には対応しない(たとえばFLACは48kHz/16ビットまでの対応となる。24ビットの音源は再生されなかった)。なので、4GBというストレージ容量は少なく感じるものの、非ハイレゾの圧縮音源をメインに使うことを考えれば十分。USB 2.0接続なのでファイル転送は速くないが、それも圧縮音源の利用を前提とすれば許容範囲内、と言えなくもない。

フル充電したときの再生時間は約8時間とのことなので、長時間のアクティビティも丸ごとカバーできるだろう。仕事しながら1日中音楽をかけ続けるような使い方にも、ほぼ間に合う(まあ、デスクワーク中なら素直にBluetoothイヤフォンや有線ヘッドフォンを使った方がなにかと都合がいいとは思う)。

そして、スイミング用をコンセプトとしていることもあり、IP68に準拠する防水・防じん機能も備える。防水については2メートルの水深で2時間沈めても性能を維持する、というレベルで、普通に泳ぐ範囲では問題ないはず。海水にも対応するから、海も主戦場の1つとなるトライアスリートにも適したイヤフォンと言えるのではないだろうか。

IP68準拠の防水・防じん性能で、水没させても海水に浸してもOK

本体側で多彩な操作。スイム中にクリアなサウンドを実現する水泳モードも

スマートフォンなどと連携することはないので、OpenSwim単体で内蔵プレーヤーを操作することになるわけだが、それにあたっては本体側に必要十分な機能が備わっている。

操作は本体右側の耳掛け部分にある4つのボタンを使う。再生開始や一時停止、ボリュームのアップダウンは当然として、ボタンの長押しで前後の曲へのスキップも可能。さらに保存している全曲を対象に再生するモードと、現在のフォルダ内の曲だけ再生するモードの切り替えもある。

電源ボタン(中央)とボリュームアップダウンボタン(+と-)の3つで基本的な再生操作がすべて行なえる

特にフォルダ再生の機能はありがたいところ。だいたい手元の音楽ファイルは、大容量ストレージでアルバムごとにフォルダ分けして管理しているものなので、OpenSwim本体にコピーするときもそのフォルダを丸ごと転送したいからだ。

フォルダ内再生のモードだと、1曲ずつのスキップに加えてフォルダ単位でのスキップもでき、気分に合わせて再生するアルバムを変える、みたいな使い方もOKだ。ちなみにフォルダ内にフォルダ(サブフォルダ)がある状態でもきちんとフォルダ単位で再生してくれる。

全曲再生とフォルダ内再生の切り替え、フォルダスキップは電源ボタンとプラスマイナスボタンのいずれか1つの2ボタン同時押しになるが、ボタンが接近しているので指一本で楽に操作できる

あとは順次再生やシャッフル再生、リピート再生の切り替えができ、さらに通常モードと水泳モードというイコライザー切り替えの機能も用意されている。水泳モードにすると低音がやや抑え気味になり、中高音域の輪郭が強調されてクリアさが増すような感じだ。

右側面に見えるのがイコライザー切り替えボタン。シャッフル再生などへの切り替えにも使う

これは付属のイヤープラグを装着して耳穴をふさいだ状態の音質を最適化するためのものと思われる。通常モード時でもイヤープラグを使うと低音から高音までしっかり堪能できるが、曇り気味の音質になってしまうので、気になるなら水泳モードにすると良いだろう。

バイク、ラン、スイムを通して骨伝導サウンドが大活躍

そんなわけでこのOpenSwimを、スイム、バイク、ランの3種目を順番に行なう仮想トライアスロンで使ってみた。「仮想」というのは、バイクはバーチャルサイクリングだし、スイムは自宅の庭に置いたちょっと大きめのプールで泳いだ“フリ”をするだけだからだ。リアルなのはランニングだけである。トライアスロンというより、2種目だけのデュアスロンと言った方がいいか……。

耳穴をふさがないオープンイヤー状態とはいえ、音楽を聞きながら外で自転車を走らせるのはちょっと怖いし、スイミングもこういった身に付けるデバイスを使えるプールがいまだ少ない。そして海は筆者宅から遠すぎる。……というような言い訳も一応あるのだが、半分以上は正式なトライアスロンにチャレンジするほどの体力が筆者にないのが理由だったりする。スンマセン。

でもって、通常はスイム→バイク→ランという順番で実施するところ、設備・装備上の都合からバイク→ラン→スイムというイレギュラーな順番にした。さすがにスイム(自宅プール)で濡れた後にそのまま室内のバーチャルサイクリングに挑むのはいろいろ無理があるので。それと、最後はランでほてった身体をプールで冷やして気持ち良くなりたいわけで。スンマセン。

仮想トライアスロンをスタート! まずはバーチャルサイクリングから

という感じで、OpenSwimを身に付けたまま3種目に通しでチャレンジしてみたのだが、事前に想像していた通りの快適さで大満足だった。最初のバーチャルサイクリングでは、自転車のチェーンノイズやサイクルトレーナーの騒音がそれなりに大きいものの、イヤープラグを使えばノイズの大半は聞こえなくなるので全く問題なし。なかなかにクリアで低音にもキレのあるOpenSwimの骨伝導サウンドを楽しめる。

ヘッドバンドをしていても邪魔にならないのもポイント高し

続くランでは、周囲の状況を音でダイレクトに認識しながらも、OpenSwimによるサウンドもちゃんと聞き取れる。耳穴がふさがれることなく、近づくクルマなどの音をしっかり把握できるのは骨伝導の大きなメリット。通常の耳穴をふさいでしまうイヤフォンよりも格段に安全で、安心して走れるのはやっぱりありがたい。当然ながらイヤープラグは使わない方がいいだろう。

バイクの後、めちゃくちゃ汗をかいたままランニングへ

最後のスイムは、庭先に置いた長辺2.5m(25mではない)のプールなので真剣に泳ぐことはなかったのだが、こちらもイヤープラグを使うことで水中でも解像感の高いサウンドを堪能できた。一般の屋内プールや海であっても、イヤープラグを使っている限りはノイズに邪魔されることがほとんどないので、お気に入りの音楽でノリノリで泳げるはず。

最後は自宅庭のプールでスイミング
疲労困憊で目がイッちゃってます

筆者はしばらく前のモデルである「OpenMove」も愛用しているのだが、OpenSwimは耳掛け部分がよりフィットするような形状になっているせいか、ホールド性がかなり高まっている。バイクはもちろんランニングでもピタッと安定し、ズレて位置調整が必要になることはなかった。スイムでもクロール風にバシャバシャ動いてみたが、同じようにズレる気配はなし。それでいて圧迫感も少ない。OpenMoveだと1~2時間の装着でこめかみに痛みが出たりするのだが、それもなかった。トライアスロン的なものに限らず、長時間のアクティビティでもストレスなく使えそうだ。

OpenSwim(左)とOpenMove(右)
OpenSwim(左)の方がより耳にフィットしそうな形状になっている
痛みが出にくいのは、バンド部分の強度の最適化だけでなく、こめかみ部分に当たる振動子の大きさや形状も関係しているかもしれない

ワークアウトで使い倒したいスタンドアロンプレーヤー

とまあ、仮想トライアスロンの3種目すべてで当然のように大活躍してくれたOpenSwimなのだが、実際のところ、トライアスロンの競技中に使うのは厳しい。まず、最初に書いたように競技中はイヤフォンの使用が禁止されていてそもそも使えない可能性が高いのが1つ。それと、OpenSwimかどうかに関係なく、本気でバイクを走らせたり、本気でランニングしたりしていると、流れている音楽を気にしている余裕がそもそもないのである。少なくとも筆者の場合は。

だから、一番の使いどころとしてはスイム、バイク、ランの練習中、つまりは日課のワークアウトということになりそうだ。もちろんそれに限らず仕事中やプライベートタイムなど、普段から活用しまくってもいいのだけれど、ワイヤレスイヤフォンではないスタンドアロンプレーヤーであることを考えれば、スマートフォンのようなかさばるアイテムを携帯したくないアクティビティ時に本領を発揮するアイテムであることは間違いない。

オーディオファイルをフォルダ分けして保存できることから、たとえばバイク、ラン、スイムのそれぞれの自分のペースに合ったBPMの音楽をフォルダごとに整理しておき、アクティビティごとに再生するフォルダを変えることで、リズムに乗って理想のペースで走り(泳ぎ)やすくする、という使い方もアリだ。シンプルなプレーヤーデバイスなだけに、そういったユーザーの創意工夫によっていろいろ楽しめそうな余地もあるのが、OpenSwimの魅力と言えるのかもしれない。

ところで、今回はOpenSwimだけでなく、トライアスロン向けのデバイスも一緒に活用してみた。そのあたりについて詳しくはまた回を改めてレビューしたい。

次回はトライアスロンに最適なスマートウォッチや新しいサイクルトレーナーなどを紹介予定!
日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。