【新製品レビュー】

S-Master/有機EL採用の“決定版”ウォークマンA840

--自作歌詞表示も可能。管理ソフトは「X-アプリ」へ


NW-A840のブラウンモデル

10月31日発売

標準価格:オープンプライス

実売価格:24,000円前後(16GB)
       30,000円前後(32GB)
       40,000円前後(64GB)

 10月から順次発売されるソニーの新ウォークマン。「NW-A840/S740/S640」の3シリーズが用意されており、それぞれメモリ容量別に2~3機種が展開。「NW-S740/S640」にはコンパクトスピーカーがセットになったモデルも用意されている。

 A840は、最上位のXシリーズが備えていたデジタルノイズキャンセリング機能や、フルデジタルアンプ「S-Master」を踏襲した高音質モデルで、有機ELの2.8型(240×400ドット)ディスプレイを備えているのが特徴。メモリ容量ラインナップは16GB(実売24,000円前後)、32GB(同30,000円前後)、64GB(同40,000円前後)で、最大64GBモデルを用意しているのも注目ポイントだ。

 下位の「NW-S740」と「NW-S640」は2.0型液晶(240×320ドット)で、アナログアンプを搭載。S740はノイズキャンセル機能も備えているが、アナログタイプとなっており、NC能力ではA840より劣る。メモリ容量はS740が8GB(実売16,000円前後)、16GB(同19,000円前後)、32GB(同25,000円前後)。S640が8GB(同14,000円前後)、16GB(17,000円前後)をラインナップする。

シリーズ名メモリ容量ディスプレイノイズ
キャンセリング
機能の特徴
NW-A84016/32/64GB2.8型有機ELデジタル・最薄7.2mm
・フルデジタルアンプ「S-Master」

・13.5mm径EXイヤフォン
・iTunes D&D転送
・歌詞表示
・720×480ドット動画再生
・新管理ソフト「x-アプリ」対応
・PS3転送
・BDレコーダからのおでかけ転送
 (レジューム/ジャンル情報継承)
NW-S7408/16/32GB2型TFT液晶アナログ・13.5mm径EXイヤフォン
・iTunes D&D転送
・歌詞表示
・720×480ドット動画再生
・新管理ソフト「x-アプリ」対応
・PS3転送
・BDレコーダからのおでかけ転送
 (レジューム/ジャンル情報継承)
NW-S6408/16GB2型TFT液晶・13.5mm径EXイヤフォン
・iTunes D&D転送
・歌詞表示
・720×480ドット動画再生
・新管理ソフト「x-アプリ」対応
・PS3転送
・BDレコーダからのおでかけ転送
 (レジューム/ジャンル情報継承)

 注目は「NW-A840」だ。最上位のXシリーズは、無線LANやブラウザ、YouTube、ワンセグ機能を備え、ディスプレイも3型有機ELを採用するなど高機能な反面、32GBモデルで実売4万円程度と、高価なのが難点だった。A840はそこからワンセグや無線LANなどを省き、音楽/映像ファイルの再生に特化。デジタルノイズキャンセリングやデジタルアンプ、有機ELといった、音質や画質に関する機能を抜き出し、踏襲させたモデルと表現できる。

 そのため、同じ4万円で容量が倍の64GBモデルが購入でき、32GBならば3万円程度に価格が抑えられている。また、Xシリーズにも無い64GBモデルをラインナップしている事は、動画やロスレスの音楽ファイルを大量に持ち歩きたいというクオリティ重視のユーザーにとって見逃せないポイントだ。大容量・高音質・高画質を実現しながら、最薄ボディも実現。そんな注目モデルを試用してみた。



■ クオリティの高い2.8型有機EL

 外観を見てみよう。目を引くのは2.8型(240×400ドット)の有機ELディスプレイ。本体が薄く、操作部がコンパクトなため、2.8型という数字より画面が大きく見える。静止画の発色が豊かで、階調性豊かだ。残像感も少なく、良好な動画表示ができるのも特徴。角度による輝度の低下や色味の変化が少ないのもポータブルプレーヤーでは有利な点である。

 有機ELの表面には傷防止の強化ガラスがはめ込まれており、質感や剛性は高い。最薄部はウォークマン史上最薄となる7.2mmを実現。最大外形寸法も104.9×47.4×7.7mm(縦×横×厚さ)に抑えられており、手にした第一印象は「薄い」の一言。ワイシャツの胸ポケットは楽勝で、iPhone 3Gを入れた胸ポケットの隙間に入れる事すらできる。

NW-A840のブラウンモデル背面側面。上部にボリューム、中央にホールドボタンを供えている
NW-S740のブラックモデル第5世代iPod nanoサイズの比較

 カラーリングはブラウンとブラックで、ブラウンはゴールドに近い派手目のカラー。ポータブルプレーヤーではあまりない色づかいだが、別売の本革キャリングケース「CKL-NWA840」などと組み合わせると、高級感が増して「この色もありだな」と思わせてくれる。また、ソニースタイル限定だが、アークティックバイオレットという光線の具合で青にも紫にも見える、凝ったカラーの特別モデルも用意されている。

左がブラウン、右がブラック別売の本革キャリングケース「CKL-NWA840」と組み合わせたところ

S740のカラーバリエーションソニースタイル限定の「NW-A847/V」(64GB)。カラーは“アークティックバイオレット

 ボタン配置はタッチパネル採用のXを別にすると、従来のウォークマンを踏襲した、3つの円で構成する「3-Circle」デザイン。中央のボタンが再生/一時停止で、その周囲に円形に上下左右のコントロールボタンを配置。その右上に、オプション/電源OFF、左側にHOME/BACKボタンを配置する。

 従来のAシリーズは、コントロールボタンがくぼんでいたが、新ウォークマンではボタンが全てフラットになっている。デザイン的にはスッキリしているが、指先の感覚でボタンの違いが区別しにくく、再生/一時停止とコントロールボタンの押し間違いを時折してしまう。特に、再生/一時停止を押そうとして、コントロールの下や右を押してしまう事が多い。再生/一時停止ボタンの中心に小さな突起があるので、これを指先で感じる癖をつければ、ポケットや鞄の中に入れたままでの操作も可能になるだろう。

第5世代iPod nanoとのディスプレイサイズ比較S740と比べると、A840はかなり大きく見える薄さ比較
有機ELの前面に強化ガラスがはめ込まれている操作部。3つの円形で構成されるデザイン底面。ステレオミニのイヤフォン出力とWM-PORT、ストラップホールを備えている

 ボリュームは右側面上部、ホールドボタンはその下方に用意している。ハードウェア的なボタンはそれ以外には無い。電源をONにするとホーム画面が表示され、「ノイズキャンセル」、「FMラジオ」、「録音」、「フォト」、「ミュージック」、「ビデオ」、「各種設定」、「ポッドキャスト」の機能アイコンが並ぶ。目的のアイコンを選び、再生/一時停止ボタンで決定。ホームの右下には「音楽再生画面へ」というショートカットもあるため、音楽を聴きながら他の機能を利用していても、ホームから音楽再生画面にすぐに戻れる。説明書を読まなくても使いこなせる操作性は、世代を経て洗練された印象だ。

S740の操作部。こちらも3つの円形で構成されているA840の側面。中央にホールドスイッチを備えているホーム画面

 音楽は全曲、アーティスト、ジャンル、リリース年、プレイリスト、フォルダなどから選択。再生中の画面からHOME/BACKを押すとアルバム、もう一度押すとアーティストへと、階層を上る。また、長押しでホーム画面へダイレクトに戻る。

 再生中にオプションを押すと、プレイモードや再生範囲設定、A-B間リピートなどを行なう語学学習モード、再生速度を変えるDPC、イコライザ、サラウンド機能のVPTなどが選択できる。後述する歌詞表示機能のON/OFFもここから可能だ。

 また、様々な場面でHOME/BACKボタンを押すと音楽再生画面にダイレクトに戻れるショートカットが呼び出されるほか、その状態で左ボタンを押すと全曲、アルバム、アーティストなど、音楽検索画面が呼び出せる。思い立った瞬間に音楽が探せ、再生できるのはストレスが少ない。

 アルバムやアーティスト検索画面では、左右ボタンを押すと、アルファベット/カナの並び順でリスト表示を高速に切り換えられる。ライブラリが大量になると嬉しい機能だ。また、Xシリーズと同様に、再生中画面で上下ボタンを長押しすると、ジャケット写真が上下に高速スクロールする機能が利用できる。指先で直感的にスクロール速度を変えられるXシリーズと比べると爽快さは落ちるが、Aシリーズのスクロールも高速で、ジャケット画像からの曲検索としては十分実用的である。

楽曲再生中の画面。ジャケット表示が可能で、新たに歌詞表示もサポートしているアルバム名から楽曲検索をしているところミュージックのメイン画面。アルバムやアーティスト、ジャンルなどから検索を行なう

左がA840、右がS740。角度による輝度や色変化が有機ELのA840は少ない
 連続再生時間は、音楽再生が29時間。ビデオ再生は9時間。有機ELの表示品質は、液晶のNW-S740や第5世代iPod nanoと比較すると違いがよくわかる。特に女性ヴォーカルの写真が大きく写っているジャケットでは、肌の階調が飛びぎみの液晶に対し、有機ELは頬の赤い部分から首のそばの陰の部分まで、滑らかで立体的な表示になっている。音楽再生に直接関係ない部分だが、どことなくリッチな気分で使用できるのは嬉しい。


再生中に上下ボタンでジャケット高速スクロールが可能NW-S740/S640にはスピーカー付属モデルも用意スタンドを収納すると背面はフラットなため、収納スペースをとらない
スピーカー自体は従来モデルから大きな変更は無いが、新たに、ウォークマン側でセットスピーカー用のイコライジングモードを用意。シャカシャカした高域や箱鳴りを抑えた再生ができるようになったスピーカーは側面上部にボリュームコントロールを装備。ウォークマン側の電池でドライブする80mW×2chの最大出力モードと、付属ACアダプタを接続した1W×2ch出力の、2つの動作モードが選べるACアダプタは側面に接続する


■ 音質をチェック

 付属のノイズキャンセリング(NC)対応イヤフォンは、EXモニター「MDR-EX300SL」などをベースとした、大口径13.5mmのユニットを採用。形状はバーティカル・イン・ザ・イヤー方式で、耳の奥まで挿入しやすい。

付属のイヤフォンは側面上部にNC用のマイクを装備。ユニットは13.5mm径
 音の傾向はメリハリが強く、特に中低域が元気だ。JAZZで「Kenny Barron Trio」の「Fragile」を再生すると、ルーファス・リードの分厚いベースが勢いよく吹き出してくる。NC OFFとONで音の変化は少ないほうだが、ONにすると中域の盛り上がりがさらにアップし、静かな部屋では若干誇張し過ぎかなと感じる。ただ、電車内など、騒音の中では、NC機能で静かにした後、このくらい勢いのある音で再生した方が良く聴き取れると感じた。

 NC ON時も、位相がおかしくなったような不自然さは無く、聞き疲れしない再生音だ。だが、OFF時も含め、シビアに聴いていくと高域に若干こもりを感じる。ピアノと女性ヴォーカルのみなど、音の少ない楽曲では音場の頭を抑えられたような印象を受ける。NC機能は使えなくなるが、プレーヤーのポテンシャルを活かすには、もう少しランクが上のイヤフォンやヘッドフォンを使いたいところだ。


カラーはブラックを基調としているイヤーピースは音道部が固く、耳に触れる部分が柔らかいハイブリッドタイプ5極プラグを採用する

 試聴用にAKG K172HDやULTRASONE HFI-680を使用。比較用にS740や第5世代iPod nano、iPhone 3Gを用意した。再生レンジの広いヘッドフォンで聴くと、A840の音場の広さや解像感の高さがよくわかり、より繊細な音が楽しめる。1音1音がクリアで、音楽が精密に力強く描写される。ハイファイ的な音作りだ。

 S740も悪くはないのだが、A840と比べると上下のレンジの狭さ、左右の音場の狭さが気になる。音が密集したパンクロック(Sum 41/NoReason)などは迫力があって良いが、JAZZやクラシックではベースの能力の高いA840が頭1つ抜き出る。低域の迫力があるぶん、店頭で一瞬聞き比べるとS740の方が良く聞こえるかもしれないが、何曲か聞き比べると、A840のおとなしめの低域の方が、低い音がより深く沈み込み、低域の中の描写も曖昧にならないことがわかるだろう。言葉は悪いが、S740の方はしばらくすると飽きがくる可能性があり、音楽を聴くたびに、「こんな音が隠れていたのか」と驚くのがA840の方だろう。

 第5世代iPod nanoやiPohone 3Gの音もS740に近い傾向。レンジはA840の方が広く、低域の分解能、高域の突き抜ける鋭さなどもA840に軍配が上がる。音の張り出しの心地よさ、音圧の高さなどはiPod/iPhoneの方が上だが、帯域イメージはカマボコ型で、音そのものの解像度が低いため、勢いよく吹き出す音がダンゴになっている。音量を上げるとレンジの広さを保ったまま勢いが増すA840と比べると違いは確実にある。

 nanoとiPhoneを比べると、nanoの方が分解能が高く、音場も広いが、A840に迫るという印象ではない。ただ、iPodにも良さはあり、良く言うとアナログ的な、ホッとする音で、アコースティックのライヴや民族楽器を使った楽曲、歌謡曲などは情感豊かに再生してくれる。どんな音楽もクールに分解するA840と、好みが分かれるポイントだ。逆に、iPodで分解能やレンジの狭さなどが気になっている人には、A840を買い替え候補の上位に加えると良いだろう。


■ 強力なNC機能

 次にS740とA840のノイズキャンセル能力を試してみた。新宿の街の雑踏や電車内、周囲に話し声が充満している喫茶店などで使用してみた。喫茶店では、空調の低い断続的なノイズや、店内BGMの低域などは両モデルとも綺麗に消してくれる。しかし、「シャー」という高めの騒音がアナログノイズキャンセル方式のS740では残っているのに対し、A840ではそれも綺麗に消える。公式にはA840が「周囲の騒音を約98%カット」に対し、S740が「約90%カット」となっており、確かに差は存在する。

 また、騒音の量だけでなく、使用中の“圧迫感”に大きな違いがある。鼓膜が押される感じがS740の方が強く、長時間使っていると長いエレベーターに乗っているような気分になる。A840の方は自然だ。大小問わず、騒音に対して常にフルパワーで逆位相の音をぶつけているのがS740で、A840ではうるさく感じる騒音部分のみに、必要な分だけ逆位相をかけているような、“ツボを突いた”キャンセルを行なうイメージだ。


■ 柔軟な転送・管理方法

 楽曲の転送方法は豊富で、Windowsのエクスプローラーなどを使った、楽曲のドラッグ&ドロップ転送に対応。映像や写真の転送もドラッグ&ドロップで行なえる。転送速度も従来比で約3倍に高速化したとのこと。試しに1,000曲(5.83GB)をエクスプローラでドラッグ&ドロップすると、約16分21秒で転送できた。なお、後述する管理ソフト「SonicStage V」に同じ曲を登録/転送すると、約18分かかった。

 さらに、Xシリーズなどと同様に、iTunesの楽曲管理画面からのドラッグ&ドロップにも対応している。iTunesのミュージックライブラリ画面に表示されている楽曲を選択し、ウォークマンの「MUSIC」フォルダに持って行くだけ。iTunesの楽曲保存フォルダからエクスプローラーを使ってドラッグ&ドロップするのと感覚は同じで、当然ながらiTunes Storeで購入した楽曲など、DRM付楽曲の転送はできない。またiTunesプレイリストの転送にも対応していない。エクスプローラーでのドラッグ&ドロップに対応している時点でiPodからウォークマンへの移行を“便利にする機能”とまでは言えないが、iPodとウォークマンを併用する場合には同じソフトの画面から転送できるのは嬉しいポイントだ。

PCとUSB接続したところ。フォルダ構造はこのようになっているiTunesの楽曲管理画面からドラッグ&ドロップ転送が可能

本体には「SonicStage V」が保存されている
 転送・管理ソフトも用意されているが、こちらがちょっと複雑になっている。本体をUSBでPCと接続すると、従来のウォークマンから採用されている管理・転送ソフト「SonicStage V」の最新版が入っており、PCにインストールできる。しかし、PCがネットワークに接続されていると、新アプリの「x-アプリ」をダウンロード&インストールするように促される予定だ。

 「x-アプリ」は「SonicStage V」に代わる新しい管理・転送ソフトで、音楽の管理・転送だけでなく、動画の転送にも対応。これまで動画/静止画用に使っていた別ソフト「Media Manager for WALKMAN」も不要になり、全機能が「x-アプリ」に統合されることになる。これに伴い、「SonicStage」は終了となる。ソフトの過渡期とはいえ、終了となるソフトが標準で添付するというのはちょっとわかりにくい。

 また、PlayStation 3との連携機能が強化されたのも新しいポイント。USB接続すると、PS3からウォークマン内の動画、静止画、音楽ファイルが再生できる。さらに、PS3に蓄積した音楽や動画ファイルをウォークマンに転送することも可能。PCの代わりにPS3をメディアサーバーとして利用できるというわけだ。ただ、ウォークマンで再生できないようなHD解像度の動画なども転送はできてしまい、容量の無駄になるので、転送時の確認はしっかり行ないたい。

 

PS3にウォークマンを接続すると、PS3からウォークマン内のコンテンツにアクセスできる静止画を読み出しているところ
動画も再生可能。PS3を接続したテレビなどで大画面表示ができるPS3内のコンテンツをウォークマンに転送することもできる

 動画ファイルは新たに、720×480ドットのD1解像度まで再生できるようになった。最大ビットレートはフォーマットごとに異なり、下表の通り。有機ELの表示と合わせ、720×480ドットの動画は非常に高精細で、暗部がシッカリと沈んだ奥行き感のある映像が楽しめる。別売の映像/音声出力ケーブル(WMC-NWV10)を使えば、ウォークマンから直接テレビ表示も可能だ。

コーデック最大解像度最大ビットレート
AVC720×480ドット10Mbps
MPEG-46Mbps
WMV

 また、BDレコーダとの「おでかけ転送」機能も引き続きサポートしており、新たにレジューム再生に対応。BDレコーダで途中まで見た番組の続きをウォークマンで再生し、帰宅後に「おかえり転送」することで、さらにその続きをBDレコーダで再生する事が可能になっている。対応レコーダはBDZ-EX200/RX100/RX50/A950/A750/A70/X100/X95。


■ 自作の歌詞表示も可能

 新機能の歌詞表示も、前述の「x-アプリ」から利用するのだが、製品発売日前のためソフトのダウンロードも歌詞ダウンロードサービスも始まっていないため、使い方のみを紹介しておこう。音楽管理画面で、歌詞を付与したい楽曲を選び、右クリックメニューから「歌詞ピタの取得」を選ぶと、シンクパワーが提供する「歌詞ピタサービス」にネット経由でアクセス。歌詞検索を行ない、ヒットしたものをx-アプリから購入・ダウンロードできる。

 利用にはPCサイトか携帯サイトでの会員登録が必要で、決済はPCの場合クレジットカード、携帯サイトでは携帯電話の使用料と一緒に支払える。支払い方法は月額とアラカルトの2種類があり、月額では150円で月10曲分(曲単価15円)、300円で月25曲(同12円)、1,000円で月110曲(同9.1円)など。アラカルトプランは月の縛りが無い、半年間有効なダウンロード権で、10曲分購入で200円(曲単価20円)、22曲で400円(同18.2円)、70曲で1,000円(同14.3円)などとなっている。

歌詞ピタ機能の利用イメージ。歌詞データはシンクパワーから購入する新管理ソフト「x-アプリ」楽曲を選んでメニューから「歌詞ピタ」の取得を選ぶと、歌詞を検索してくれる。該当する歌詞データがあった場合はプレビューで内容をチェックして、購入作業に進める

 歌詞表示については、対応する一部のプレーヤーやPCソフトを使い、ユーザーが自分で歌詞や表示タイミングを打ち込んだファイルを楽曲と連動表示するという形が多く、どちらかというとマニアックな楽しみ方だった。それが、ウォークマンの標準ソフトから、有料購入できるのは画期的と言えるだろう。また、ウォークマン側のヴォーカルキャンセル機能とテレビへの出力機能を併用すれば、家庭用カラオケとしても使用できる。

別売ケーブルを使用し、ウォークマンの画面をテレビに出力。画面はVPTのヴォーカルキャンセル機能を選んでいるところテレビ画面で楽曲の歌詞表示が可能ウォークマンで歌詞表示をしているところ

 歌詞データ付の楽曲は、x-アプリ上のアイコンで判別できるが、x-アプリ上で歌詞表示はできない。あくまで転送してウォークマンから表示するという形になる。また、歌詞データがあると、“転送しない”という事ができない。そのため、1台のPCのX-アプリに、複数のウォークマンを接続して利用していると、最初に接続した1台にのみ歌詞が行ってしまう。「歌詞を沢山買ってダウンロードしておいたら、妹のウォークマンに全部持っていかれた」という事もありえる。それが問題になるのは、歌詞データは一度転送したら“戻す”事ができないためだ。歌詞も有料の著作物なので当然だが、DRMがかけられた楽曲と同じような感覚で扱う必要がある。

 歌詞表示に関しては、「歌詞ピタ」で購入したもののみサポートされているが、気になるのは自作の歌詞が付けられるのかということ。試しに、「AV Watch音頭.MP3」という音楽ファイルを作成して転送。同じフォルダに、テキストエディタで歌詞を書き込み、歌詞フォーマットで一般的に使われる拡張子「.lrc」で保存した「AV Watch音頭.lrc」という歌詞データを入れてみた。書式は簡単で、表示する歌詞の再生開始からの時間を文頭に表記するだけ。例えばこのような感じだ。

 [00:11:02]場所は市ヶ谷、三番町
 [00:14:73]靖国神社のちと手前
 [00:18:41]アンプにレコーダ (はぁ~レコーダ)
 [00:26:22]テレビにプロジェクタ(はぁ~プロジェクタ)
 [00:33:54]最新情報お届けします

 ウォークマンでMP3を再生すると、あっけなく歌詞も連動表示された。“自作の歌で歌詞表示したい”というケースは少ないかもしれないが、例えばラジオの英語学習ファイルを聞きながら歌詞ファイルを作成し、発音と綴りの勉強を両方するといった事も可能だろう。公式にウォークマン用として、「英単語表示もされる語学学習データ販売」などがスタートしても面白そうだ。

歌詞ファイルを自作してみるMP3と同じファイル名、拡張子を「.lrc」で保存するウォークマンで自作の歌詞が表示できた

 なお、語学学習用として再生速度変更機能「DPC(デジタルピッチコントロール)」や、A-B間リピート再生、再生中にボタンを押した回数に応じて再生位置を戻す「クイックリプレイ」機能も使用できる。ただし、DPCは歌詞表示中も使用できるが、A-B間リピート+クイックリプレイは排他利用となっている。


 

■ 高画質/高音質プレーヤーの代表格に

 iPod touchやiPhone 3GSと競合するのはXシリーズと思われるため、A840のライバルは第5世代iPod nanoになるだろう。ただ、重なるメモリ容量は16GBのみで、AppleStore価格と予想価格と比べると、nanoが17,800円、A840が24,000円と、6,200円程度A840の方が高い。ただ、NCヘッドフォンを後から購入する場合は、この価格差は小さいとも言える。touchの32GBは29,800円であるため、touchとnanoの間に位置するイメージだ。64GBのA840は4万円前後、64GBのtouchは39,800円で、ほぼ同額となっている。

 音質の良さやディスプレイの表示品質では、A840に軍配があがる。デザインは好みによるが、質感はどちらも良好。薄さはA840が7.7mm、nanoが6.2mmでnanoの方が薄いが、nanoは丸みを帯びているため、比べるとそれほど差は感じない。

 操作性では、まだiPodに分があると感じる。ホイール操作でボリューム調節まで可能なので、音楽を選択、再生し、音量を調整するという基本機能が親指1つで完結する。ウォークマンも選択/再生は親指のみで行なえるが、ボリュームが側面上部にあるため、本体下部をつまむように持っていると、親指がボリュームまで届かず、持ち直したり、人差し指で無理矢理押さなければならない。慣れれば気にならなくなるが、操作する事が心地良いと感じるほどではない。この画面の大きさを見ていると、いっそA840もタッチパネルにしてもよかったのではと思う。

 nanoとの機能比較では、nanoのビデオ撮影をどう考えるかが重要になるが、多くの人が同時に持ち歩くであろう携帯電話で動画/静止画撮影が当たり前の機能になった現在、音楽プレーヤーに求められる付加価値としては、A840のノイズキャンセリング機能の方が恩恵が大きいだろう。

 ウォークマンの中で考えると、Xシリーズの多機能ぶりは感心するが、iPhone 3GSやAndroid携帯が話題の現状の中では、「ここまで高機能化するなら、3GやWiMAXなどの通信機能も付けて欲しい」と思ってしまう。その点、Aシリーズは、Xシリーズからの機能の取捨選択が見事で、高音質/高画質なプレーヤーの1つの到達点と言っても良いだろう。今後は操作性のブラッシュアップと共に、PCの管理ソフト、音楽/動画の入手方法のさらなる洗練など、本体以外の部分の改良が期待される。

 iPodからの乗り換えでは、音質や表示品質に不満があるのであれば、A840に買い替える意義はあるだろう。iPodからのライブラリ移行が楽に行なえることも気持ちを後押ししてくれる。iPodのメモリ容量が足りなくなった、より高音質で聴きたいなどの欲求が出た際は、購入候補の筆頭にしたいモデルと言えそうだ。


(2009年 9月 25日)