【新製品レビュー】

ウォークマン対応で活用の幅と音質アップ

-進化した“卵型”。Olasonic「TW-D7WM」


ウォークマン用のドックスピーカー「TW-D7WM(T)」

 「Olasonic」ブランドの製品第一弾として、印象的な卵型ボディを採用したUSBスピーカー「TW-S7」をリリースした東和電子。その第2弾製品として3月1日から発売されるのが、ウォークマン用のドックスピーカー「TW-D7WM(T)」だ。

 「TW-S7」は、その可愛らしいフォルムとは裏腹に、マニア向けの素性の良い音質で、実売1万円程度という購入しやすい価格も手伝い、USBスピーカーのヒットモデルとなっている。詳しい音質は以前レビューした通りだが、合理的な形状が生み出す付帯音の少なさ、点音源の実現による広大な音場、明確な定位などを実現。かなり本格的な音が楽しめるモデルだ。

 一方で、機能面はUSBスピーカー機能のみと非常にシンプル。USBバスパワーで動作するので、PCとケーブル1本で接続すれば、難しい操作無しで音が出るシンプルさが魅力なのだが、PC以外と連携できず、ハードウェアボリュームを備えていないため、音量調整を常にPCの側からマウスなどを使って操作しなければならないという、ある種の割り切りが求められる製品だ。

 そこで、今回発売される「TW-D7WM」ではPCだけでなく、ウォークマンとの接続も実現。アナログ入力も備えた“拡張性の高さ”を実現したモデルになっているという。また、音質そのものにも変化があるようだ。価格はオープンプライスで、実売はTW-S7より1万円程度高価となる、21,800円前後となっている。人気スピーカーがどのように進化しているのか、さっそく使ってみた。




■同じ卵でも、中身が違う?

 新モデルではあるが、スピーカーの見た目は「TW-S7」と同じように見える。実際のところ、サイズや形状、搭載しているユニットはまったく同じものだ。外見的な違いはカラーで、「TW-S7」の基本カラーはブリリアントホワイト(W)、ノーブルブラック(B)だが、「TW-D7WM」はチタンシルバー(T)。ホワイトは可愛い印象だったが、チタンシルバーは高級感を感じさせる仕上げだ。

右が「TW-S7」のブリリアントホワイト、左が「TW-D7WM」のスピーカー。サイズやユニットは同じだ「TW-D7WM」のスピーカー横から見たところ。見事な卵型になっているのがわかる

 最大の特徴は、スピーカーの間にあるユニット。ウォークマンを搭載できるWM-PORTを備えたドック型のメインユニットで、ここにデジタルアンプやDACを内蔵。外部入力としてアナログ音声、USB端子も装備している。卵型スピーカーとは、背面にあるステレオミニ端子で接続し、側面にはヘッドフォン出力も備えている。

ウォークマンを搭載できるWM-PORTを備えたドック型のメインユニットユニットの背面。USB入力、スピーカー出力などを備えている側面。ヘッドフォン出力、アナログ音声入力を装備している

 これにより、USBでPCと繋いでUSBスピーカーとして使う以外に、ウォークマンの再生と、アナログ音声入力を使ってその他のプレーヤーを接続したり、ラジオやテレビなどとも接続できるようになった。もちろんUSBヘッドフォンアンプとしても使用できる。一番大きいのはPCと接続せずに使える事だろう。なお、PC接続時の対応OSはWindows XP/Vista/7。Mac OS 9.1/10.1以降。

 まずはスピーカーから。“卵型である理由”を軽くおさらいすると、大きく3つの理由がある。1つは“剛性が高い”事。大切な子供を守るために自然が生み出した形状なので当然だが、卵型は意外なほど剛性が高い。そのため、スピーカーにすると、いわゆる“箱鳴り”が発生しにくく、再生音に余計な色が付かないというわけだ。

 2つ目は“内部定在波が発生しにくい”事。スピーカー内部に平行な面が存在しないため、音が平行面にぶつかって何度も反射して再生音を汚す“定在波”が発生しないというわけだ。四角いスピーカーの場合、これを吸い取るための吸音材を入れたりするわけだが、卵では発生しないため必要なく、小さな筐体の容積を最大限に利用できる利点もある。

 3つ目は放出した音がスピーカーの前方外側(バッフル面)に反射し、余計な音となって前方に広がる“回折現象”が少ない事。これも形を見れば一目瞭然だろう。こうした特徴により、結論として“余分な音が出ない”、”耳に届いて欲しい音だけが耳に届く”ことになり、抜けが良く、音場が広大で、定位が明瞭なサウンドが得られるというわけだ。

60mm径のポリプロピレン振動板採用フルレンジ。ユニット前の銀色のパーツはデフューザー背面に60mm径のパッシブラジエータも配置スピーカーの接続がステレオミニになった

 なお、「同じ卵型だからTW-S7と同じ音でしょ」と思いがちだが、実は違いがある。TW-S7はスピーカーの内部にアンプやDACなどのパーツが入っていたのだが、「TW-D7WM」ではそれらのパーツが全てメインユニットに移動したため、純粋なスピーカーになっている。そのため、エンクロージャ内部の“使える容積”が増し、同時に左右のスピーカーの容積も同じになっている。これは音質に対してプラスの要素だ。

 さらに、メインユニットに移動したアンプやDACなどの回路も、スピーカーの中につめ込まなくてよくなったため、スペース的に余裕ができ、より高品質な大型のパーツを採用できるようになったという。

右にあるのがTW-S7に内蔵された基板基板の右にあるのが大容量キャパシタ。これもTW-S7の中に入っているクレードル部分の基板。サイズの制約が無くなったこともあり、よりグレードの高いパーツを投入できたという

 ユニット構成は60mm径のポリプロピレン振動板採用フルレンジを1基、同軸上の背面に60mm径のパッシブラジエータも配置し、低域再生能力を高めている。ユニット前の銀色のパーツはデフューザーで、高域を拡散させ、指向特性を改善させる役目だ。

スピーカーとメインユニットをステレオミニで接続したところ底部も卵型なので、固定するためにシリコンゴムのインシュレーターを使う。これにより、自由な角度で固定できるのも特徴だ

 メインユニットにはウォークマン用のドックと、その前方に各種ボタンを用意。電源ボタン、機能(FUNCTION)切り替えボタン、ボリュームボタンを備えている。ボリュームを直感的にボタンで操作できるようになったのは操作性の面で大きい。また、リモコンも付属しており、こちらでも本機や、搭載したウォークマンの基本操作が可能だ。本体から離れて、コンポ的なスタイルで音楽を聴く事ができるわけだ。

メインユニットの操作パネル搭載するウォークマンに合わせて、WM-PORT用のアタッチメントを使う付属のリモコン。基本操作はこれで行なえる

 機能面でユニークなのは、PCと離れ、ウォークマンや外部入力のみを使う際は、付属のACアダプタの接続が必要だが、PCと接続した場合はUSBバスパワーでも動作する事。USBスピーカーとして使う時は電源ケーブルを繋がなくて良い「TW-S7」の手軽さを踏襲しているわけだ。USBスピーカーモードだけでなく、ウォークマンや外部入力モードでも、PCからの給電だけで動作する。

 ACアダプタを接続している場合、USBスピーカーモード以外であれば、ウォークマンの充電も可能だ。この仕様だと「ウォークマンを充電できるのはACアダプタを繋いだ時のみ」となりそうなものだが、USBのみで接続している場合でも、機能モードを「CHARGE」に切り替えるとウォークマンの充電&同期が行なえる。

 この際はUSBスピーカーとして動作はできないが、この機能がある事で、PCがあればどこでも気軽に充電できるのは便利だ。また、付属のACアダプタは非常に小さいので、旅行などに持っていく際も邪魔にならないだろう。

USBのみで接続している場合でも、機能モードを「CHARGE」に切り替えるとウォークマンの充電&同期が行なえる付属のACアダプタはコンパクト。大容量のキャパシタを搭載する事で、アダプタのコンパクト化も実現できたという

 USBスピーカーとしての大きな特徴である、SCDS(Super Charged Drive System)も引き続き搭載。消費電力が2.5Wまでしか使えないUSBの制約を超え、大音量を出すための技術だ。USBバスパワーで動く以上、このスピーカーも消費電力はもちろん2.5Wなのだが、瞬間的に10W×2chの大音量も出す事ができる。音楽の特性を使ったもので、音楽では常に大きな音が出ているわけではなく、静かな部分と、元気のいい部分がある。メインユニットに大容量のキャパシタを搭載することで、静かな時にキャパシタに充電を行ない、大音量が必要な時に一気に放電することで、瞬間最大10W×2chを実現しているわけだ。なお、ACアダプタ使用時は3.5Wとなる。外形寸法はスピーカーが108×108×141mm(幅×奥行き×高さ)。ドック部分は106×180×39mm(同)。総重量は1.6kg。



■音を聴いてみる

ウォークマンのサウンドをチェック

 まずはウォークマンの音を聴いてみよう。本体、もしくはリモコンのFUNCTIONボタンを押して、本体インジケーターの「WM」が光るようにする。あとはウォークマン側を操作して曲を再生すれば、簡単にスピーカーから音が出る。

 ボリュームは本体とリモコンのどちらからも操作可能だ。リモコンには再生/一時停止と、曲送り/戻しボタンも備え、長押しで早戻し、早送りも可能。ほかにはミュートとバスブーストボタン、電源ボタンも備えている。なお、ミュートとバスブーストはリモコンからのみ操作可能だ。


ウォークマンの下ボタンが若干押しにくい

 ウォークマンは「NW-A855」を用意。選曲操作はリモコンからできないので、本体を操作するのだが、これが若干やりにくい。ウォークマンのデザイン上仕方がないのだが、操作ボタンが本体下部にまとまっているため、クレードルに乗せると方向キーの下側が押しにくくなるのだ。WM-PORT用のアタッチメントには、指が入れやすいように“くぼみ”がついているので操作できなくはないが、「タッチパネルだと良いなぁ」と思ってしまった。もっとも、頻繁に再生する楽曲のプレイリストを作り、それを頭から再生しつつ、リモコンで曲送り/戻しをしながら好きな曲を再生する……という使い方がメインであれば、あまり気にならないだろう。

 iPod用のスピーカーではデジタル接続が話題になっているが、本機とウォークマンはアナログ接続だ。もっとも、音質に定評があるウォークマンだけあり、ドック経由で出力される音もクリアでニュートラル。付帯音の少ない、ナチュラルな音を出す卵型スピーカーとの相性も良く、TW-S7で驚かされた広大な音場がTW-D7WMでも出現する。

 スピーカーのエンクロージャーの制約を離れた音場の広さで、そこに付帯音の無い音像がポッカリ浮かぶという、三次元的なサウンド。音像の輪郭はシャープで、定位も明瞭。高域の抜けの良さや、余計な音を除外する事で中域の分解能の高さなどを聴かせる。低域も量感のある音が十分出ており、迫力のある音楽でも対応できる。

 なお、ウォークマン側でイコライザやサラウンド機能をONにすると、その処理がかけられた音がWM-PORTから出力されるため、スピーカーからの再生音も変化する。「A855」にはVPT(サラウンドモード)としてスタジオ、ライブ、クラブ、アリーナ、マトリックスが用意されており、適用してみたが、正直「TW-D7WM」の自体の音がサラウンドと言って良いほど豊かに広がるため、個人的にはイコライザやサラウンド機能は必要無いと感じた。2chをキッチリ再生する事の重要性を改めて感じる。


USBスピーカーモードでTW-S7と比較

 次にUSBスピーカーモードにして、TW-S7との比較も行なってみた。Windows 7(64bit)のPCと、再生ソフトは「foobar2000 v1.0.3」を用意。プラグインを追加し、ロスレスの音楽を中心にOSのカーネルミキサーをバイパスするWASAPIモードで16bit出力している。なお、2機種とも内蔵DACは16bit/44.1kHzまでの対応だ。次期モデルでは24bit/96kHzなど、ハイビット/ハイサンプリングへの対応も期待したいところだ。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」から、「Best of My Love」を再生する。まずTW-S7で再生を開始し、途中でTW-D7WMに変更すると、面白い違いがある。TW-S7のサウンドも、以前書いた通り、広大な音場が出現し、そこに付帯音の無い音像がポッカリ浮かぶ立体サウンド。だが、TW-D7WMでは、ヴォーカルやギター、ベースの音像を描写している線がグッと太くなり、浮かぶ音像に厚みが出るのだ。もう一度TW-S7に戻すと、まるで“ど根性ガエルのピョン吉”のように、歌手の音像が平面的になる。TW-S7単体で再生していた時は、ヴォーカルの口の開閉や、口の中の湿度も感じるような生々しさに感心するが、TW-D7WMでは口だけ浮いているのではなく、奥行きを伴った頭部が浮いているような感覚だ。

 「手嶌葵/テルーの唄」のような、伴奏が主張しないシンプルな楽曲では、より違いが鮮明だ。出現する音場の奥行きも、TW-D7WMではより深い。また、音像の周囲に意識を向けると、無音部分のノイズがTW-D7WMの方が少なく、SNが向上している。これも音像の立体感向上に寄与しているのだろう。

 高域の描写もより丁寧で、サ行がキツイヴォーカル曲でもカサつきが無くなっている。また、低域の分解能も向上しており、全体のレンジもワイドになったように感じる。駆動側がグレードアップすれば、それに応えられるという、卵型スピーカーのポテンシャルにまだ伸びしろがある事がわかった格好だ。

 なお、ウォークマンにもPCと同じ曲を転送し、foobar2000でのUSBスピーカー再生と、ウォークマンからドック再生も比べてみたが、流石にfoobar2000の方が解像感が一枚上だ。PCが起動している時はUSBスピーカーモードで使ったほうが音は良さそうだ。また、メインユニットのバスブースト機能も、小音量再生時の音痩せには効果的で、夜間などでは重宝するだろう。




■活用の場が広がる

PC&ウォークマンとの連携イメージ

 ウォークマン用ドックやアナログ入力を備えた事で、PCと接続していなくても卵型スピーカーの音をどこでも楽しめるようになり、活用の幅が広がるモデルに進化した。PCを使わない時は、例えばベッドサイドの空いたスペースに設置してサブコンポとして使ったり、料理する時はキッチンに持って行って……など、家庭内で活用の幅が出るのは魅力だろう。

 ウォークマンを使っており、毎日PCと同期しているという人には、“ウォークマン用スピーカー”と“PC用スピーカー”、“充電&同期が可能なクレードル”の全てを、これ一台で兼ねる事ができ、デスクの省スペースにも貢献できそうだ。

 なお、ウォークマンモデルが出ると気になるのはiPod対応モデルが出るのか? という事。東和電子によればiPod用や、光デジタル入力を備えた“薄型テレビ用”などが、検討されているという。これらのモデルも楽しみだ。

 また、個人的にはこの卵型スピーカーや、さらに大型化したスピーカー(恐竜の卵とか?)を本格的なオーディオアンプでドライブしたら、どんな音が出るのか興味がある。いずれにせよ、卵型スピーカーのバリエーションは今後も広がっていきそうだ。



(2011年 2月 22日)

[AV Watch編集部山崎健太郎 ]