西田宗千佳のRandomTracking

北米版PlayStation 4をテスト。高い完成度のゲーム機

AV機能やシステムの粗さは日本発売までの整備を期待

PlayStation 4

 11月15日(現地時間)、北米でPlayStation 4(PS4)の発売が開始された。筆者も北米版を入手できたので、取り急ぎレビューをお送りする。

 ご存じのように、日本での発売は2014年2月22日。まだ3カ月以上あるのはとても残念なことだが、PS4がどのような製品になり、そこでどういった世界がもたらされるか、体験いただければと思う。

意外なほどコンパクトな本体、出力はHDMIのみ

PS4北米版パッケージ。意外とコンパクトな箱に収まっている。

 今回入手したのは、PS4本体と別売の「PlayStation Camera」。どちらも北米向けのバージョンである。各種ソフトウェアおよびサービスも、すべて北米向けに提供されているものである。手違いにより、ディスクメディアのゲームの入手が叶わなかったため、今回のレビューではすべてダウンロード購入して試している。

 パッケージは比較的シンプルで、必要なものだけが入っている印象。アナログ出力がなくなっているため、接続用のHDMIケーブルが付属する。コントローラーである「DUALSHOCK 4」(DS4)との接続も、昨今のトレンドを反映して、microUSBになっている。電源ケーブルが1mほどしかない短めのものだったので、場合によってはちょっと苦労するかも知れない。

パッケージの中身。PS4本体・DUALSHOCK 4の他、電源ケーブル(いわゆるメガネ型型)・microUSBケーブル・HDMIケーブルと、DUALSHOCK 4に接続するモノラルヘッドホンマイクが同梱されている
PlayStation 4。今回入手したのは北米版だが、外観・ハード仕様は日本版とほぼ同等と考えていい
PS4専用の「PlayStation Camera」(59.99ドル、日本では6,279円)
PlayStation Cameraは設置位置に合わせ、傾けて使えるようになっている

 モックアップを含め、PS4本体は何度も見ているつもりだが、こうして改めて見ると、ハードウェアが驚くほどコンパクトであることに気づく。手元にあったPS3の初代モデル(CECHA)と第二世代モデル(CECH-2000)と比較したが、第二世代モデルとさほど違わないほどである。奥行きは初代モデルと変わらないくらい長いのだが、ソリッドな形状であるためか、実際のサイズ以上にコンパクトに感じる。というより、初代PS3が大きかった、というのが正確かも知れない。

PS4、PS3(第二世代、CECH-2000)・初代PS3(CECHA)を比較。PS4は奥行きこそ大きめだが、全体にかなりコンパクトで、初代機とは思えない。

 ディスクはスロットローディング式で、デザインに溶け込んでいて目立ちにくい。スペック上は6倍速のBD-ROMドライブで、PS4専用ゲームの他、BDビデオとDVDビデオの再生に対応している。ただし、3DのBDタイトルには、現状のシステムソフトウェアが未対応である上に、ハードウェア上、日本で使われているBDXL形式の多層ディスクの読み込みには非対応だ。ドライブの横には、2つのUSBコネクタがある。これは主に、コントローラーの接続・充電に利用する。

 電源スイッチとディスクイジェクトスイッチも、BDドライブと同様、デザインに溶け込んでいる。押し込み式のスイッチではなく、タッチセンサー型だ。

 コントローラーであるDS4は、PS3用のDUALSHOCK 3に似たデザインでありながら、より握りやすい形状に変わった印象だ。

PS4正面。左の中央がスロットローディング式のドライブで、その横にUSBが2つある
スロットローディングのドライブにディスクを入れてみた。正常に認識するのはBDビデオとDVDビデオ、そしてPS4用のゲームディスクだけで、当然ながら、それ以外は読み込まれても再生や実行はできない
デザインに一体化する形で、電源ボタン(上)とイジェクトボタン(下)が用意されている。これらは基本的にタッチセンサー式だ
背面。下の段には電源のみ、上の段に左から光アウト・HDMIアウト・イーサネット・カメラ接続用のAUX端子が用意されている
本体裏面にも、大きな「PS4」ロゴが入っていた
本体下面になる部分の中央にあたる透明な樹脂部は若干盛り上がっていて、横置きした時の「脚」になる
PS4とDUALSHOCK 4。サイズ的には、第二世代以降(すなわち現行)のPS3とDUALSHOCK 3のセットに近い
DUALSHOCK4とDUALSHCK 3を比較。サイズも一見した印象も似ているが、実はかなりディテールが異なる
DUALSHOCK 4。より握りやすく、トリガーが引きやすい構造に変わっている。

「決定」ボタン、映像再生は北米仕様だが日本語メニューあり

 冒頭で述べたように、今回入手したのは北米版のハードウェアである。ただし、PS4には、すでにメニューを含めた言語設定に日本語が用意されており、表示・音声入力コントロールを含め、日本語が利用できる。テスト中は、英語設定と日本語設定を切り換えながら試していた関係上、紹介する画面も、英語と日本語の両方が混在している。

設定系・メニューにはきちんと日本語も用意されている。だが後述するように、基本的には北米仕様なので、日本向けでは問題がある部分も多い

 とはいうものの、サービスはすべて日本語化されているわけではなく、日本のPSN向けのアカウントでも、ログインはできるが、ゲームのダウンロードを含め、いくつものサービスが利用できない。今回は、以前よりテスト用に用意していたアメリカ版PSNのアカウントを利用している。アメリカ版PSNアカウントは、本来日本からの登録は行なえないし、クレジットカードを含め、日本での決済はきわめて難しい。

 また、コントローラーについても、「決定」が「×」、「キャンセル」が「○」で固定されており、日本のプレイステーションとは逆だ。これは本体の設定を変更しても、入れ替えることはできない。映像ディスクの再生についても、リージョンコードがアメリカと日本で同一となっているBDビデオは再生できるものの、DVDビデオの場合には、日本版は再生できず、アメリカ版のみが再生可能だ。ゲームディスクについてはリージョンコードがないため、将来的に日本語版が登場した場合もおそらく利用できると思われるが、実際の動作は日本で製品が出てみなければわからない。

日本から利用した場合、いくつかのサービスではこのような表示が出る。日本ではまだPS4が発売されておらず、日本向けのサービスがスタートしていないのだから当然だ。

 個人的な印象だが、現状の日本語設定に入っているフォントは、少々デザインが不自然に感じる。日本版でもこのままかどうかは確認できていないが、できれば、日本版では変更してほしい。このままでは、海外モデルのスマートフォンのようだ。

 こうしたことから、やはり、よほどのことがない限り、日本で使うなら日本版を待つべきであり、アメリカ版ハードウェアの常用はお勧めしかねる。以下の記事は、そうした部分を理解した上でお読みいただきたい。

 さて、では実際に起動してみよう。

 セッティングは難しくない。PS3と同じように、USBケーブルでコントローラーをつなぎ、電源を入れて初期設定すればOKだ。イーサネットもしくは無線LANでインターネットに接続し、利用している。システムソフトウェアのアップデートは必須ではないようだが、本レビューでは、最新版の「1.50」へアップデートした上でテストしている。

 PS4のメインメニュー「ホーム画面」は、PS3の「XMB」ではなくなり、近年増えている「タイル」型のものになった。正確には、従来からある「設定」やPSNのフレンド関係などのメニューが上部にあり、ゲームなどのアプリケーションを呼び出すメニューが下部にある、という二階建てだ。通常はアプリケーション側を左右に移動しながら、使いたい機能を呼び出すことになる。最近使った順番に左から並んでいく形式で、よく使うものをすぐに呼び出せるよう配慮されている。

 また各ゲームのタイルから、さらに下へカーソルを動かすと、そのゲームについての情報などを表示する領域があり、最新情報やどこまで進んだか、最新のマニュアルなどを見られるようにもなっている。

PS4のメニュー画面。ゲームや機能などが最近使ったものから順に、左から並ぶ。
PlayStation Storeや設定などは、カーソルを「上」に動かすと現れる列にある
ゲームのパネルからカーソルを「下」へ動かすと、ゲームの詳細情報が表示される。

 メニューが日本語化されているのと同様、文字入力などの機能も日本語のものがある。基本的には、PlayStation Vitaと同じようなQWERTY系のソフトウェアキーボードだ。日本語の場合には、ローマ字変換ではなく「あいうえお」配列だ。個人的にはちょっと使いにくい。現状、DS4のタッチパッドを使った入力はできない。他方で、モーションセンサーを使い、DS4を動かしてカーソルを選ぶことはできる。従来、文字入力の「入力確定」はスタートボタンだったが、DS4ではボタンの役割が変わったため「R2」キーが「入力確定」になる。実は、Vitaも先日公開されたシステムソフトウェア3.0から、同様の仕様に変わっている。SCEとして、PS4側に操作系を統一したのだろう。

PS4での文字入力画面。IDやパスワード入力の他、チャットなどでも利用。日本語の場合には、ローマ字でなく「あいうえお」配列での入力となる

 なお、PlayStation Cameraが接続されている場合、基本的な操作は「声」でも行なえる。「プレイステーション」というコマンドに続いて、ゲームの名前や「電源」などと言えば機能が呼び出される。ここでのコマンドはシステムの言語設定に依存しており、英語なら英語で、日本語なら日本語で感知する。例えば「プレイステーション」やゲーム名の「KILLZONE」という言葉も、日本語なら日本語の発音で、英語なら英語の発音で言った方が確実に認識する。認識データベースも切り換えられているようだ。

 ゲームとこの「ホーム画面」はシステム内で同居しており、「PS」ボタン、もしくは音声コマンドで瞬時に行き来できる。PS3のXMB呼び出しのように一瞬待たされたり、微妙に遅くなったりすることはない。音声チャットなどの機能も完全に裏で動作し、同居する。この辺は、Vitaと同じ感覚である。なお、ホーム画面と同時に動作するゲームは1本であり、別のゲームを起動する時には、動作中のゲームを終了する必要がある。

ビデオ系はPS3と同等、ウェブブラウザーは大幅進化

BDビデオなどのディスクを入れると、このような表示に。決定すれば再生される

 BDおよびDVDビデオは、ディスクを挿入するとホーム画面の中から再生することになる。実際には、この種のディスクを再生するためのアプリケーションが動いているようだ。PS3よりもディスクローディングは早く、再生までの時間も素早い。その分、最初のディスクが回る音は大きく聞こえるが、動き始めてしまえば静かになる。ゲームと違い、再生中に自由にホーム画面に戻ることはできず、ホーム画面に戻る際には、再生が中断される。画質については一見したところ、PS3とさほど差がないように思える。ちなみに、後述する「SHARE」機能は、映像ディスク再生中には動作せず、動画もスクリーンショットも撮れない。

 ホーム画面には「テレビ&ビデオ」という項目が用意されていて、この中には、各種ビデオオンデマンド(VOD)系サービスがリストアップされていた。どれも北米向けのもので、日本では使えない。これが日本向けに出荷されることになると、日本のVODが並ぶことになるのだろう、と予想できる。SCEは、テレビ視聴機能「トルネ(torne)」のPS4対応も公言しているが、おそらくはこの中に入ることになるのではないだろうか。また、ソニーの音楽配信サービス「Music Unlimited」やビデオ配信サービス「Video Unlimited」は特別扱いでアイコンが用意されていて、よりシステムに密着した形となっている。残念ながら、日本からはアクセスできないため、この部分の評価は行なえていない。

各種ビデオオンデマンドは「テレビ&ビデオ」という項目の中に収容されている。実際には、各アプリをダウンロードしてから利用する

 ビデオという点で驚くのは、ホーム画面などからのストリーミングビデオ再生が、とてもスムーズで簡単になっていることだ。PS4では、ゲームのパネル内やオンラインストア「PlayStation Store」内に、多数のビデオが埋め込まれている。PS3にも似たような機能はあったが、ビデオの読み込みやダウンロードに時間がかかり、あまり快適な使い勝手ではなかった。だがPS4では、ビデオを選べば遅くとも数秒以内に再生が始まる。PCでは当たり前だったものだが、ゲーム機で、それも各メニューの中に、自然な形で動画が埋め込まれている、という様は、ちょっと新鮮な驚きだ。

PS4上のPlayStation Store。画面中央右に、トレイラー動画のボタンがあるが、PS4の場合には、押した後数秒以内に全画面での再生が始まる

 動画再生とともに、はっきりと機能向上を感じたのはウェブブラウザだ。PS3のウェブブラウザは、初期には組み込みベースの簡素なものが、現在はWebKitベースでHTML5対応の、それなりに表現力のあるものが使われているが、利用できるメモリー量やマシンパワーの不足からか、PCやスマホ・タブレットでの体験に比べると、かなり見劣りするものだった。この点は、ポータブル機・PlayStation Vitaでずいぶん改善されたが、それでも、まだ「スマホよりは劣る」印象だった。

 だがPS4のブラウザは、表現力・動作速度ともにかなり改善している。Flashには対応していないものの、HTML5ベースのページであれば、動画が埋め込まれたページ(例えばYouTubeなど)でもきちんと表示できる。少なくとも、ゲームをしながらゲームの攻略情報を探したり、攻略動画を見たりすることくらいは十分にできそうだ。

PS4の内蔵ウェブブラウザ。動作も再現性も、ゲーム機のものとしてはトップクラスに生まれ変わり、使い勝手がが上がった。DS4のタッチパッドに対応し、操作性が上がれば申し分ないのだが……

 動作音についても、ここで述べておこう。都内のマンションの一室(昼間、バックグラウンドノイズの計測値が36~38dB)で計測した結果では、起動直後~アイドル時の室内音が39dB程度。BDビデオやネットビデオ再生時には40dB前後になり、ゲームプレイ時(KILLZONE SHADOW FALL」をプレイ)には、42dBから最大50dBになった。ゲームが動いていると、ファンはかなり派手に回っている、と感じるくらい、音の差は激しい。

動画・音楽・写真の「外部からの読み込み」には非対応、今後の拡張待ちか

 ここで1つ、PS3とはっきり違う点を指摘しておかねばならない。

 現状、PS4には、外部で用意した写真や動画、音楽を取り込んで再生する機能がまったくない。USB経由でメモリーカードなどをつないでも、PS4のゲームデータのバックアップに使えるだけだ。

 今回、記事中で利用しているスクリーンショットは、ごく一部の例外を除き、後述するPS4の「SHARE」機能で撮影したものだ。だが、こうした作ったファイルについても、ファイルとして取り出す方法はなく、現状では、SHARE機能を使い、一度FacebookなどのSNSに転送してから取り出すしかない。事前に公開されたFAQで「MP3やDLNAに対応しない」とされたのは、こうした設計思想が影響しているのだろう。SCEはこうした機能について「今後対応を検討する」としているが、その場合には、インターネットブラウザーやVODサービスなどと同等、メニュー画面に機能がプラグインされていく形になるのではないか、と予想される。

 この辺は、実はVitaとも似ている。Vitaもファイルを汎用的に扱う仕組みはなく、動画や写真表示、VODなどはそれぞれ「専用アプリ」が扱う形だ。外部とのファイル転送についても、Vitaが汎用メモリーカードを読める形式でなく、外部のストレージに「アプリから接続して転送する」形になっている。

 こうした部分は、PS3において、XMBを中心としたシステムソフトウェア側がファイルを扱って表示する、という思想であったこととは対照的である。汎用的なコンピュータの中でゲームを1アプリケーションとする思想であったPS3に対し、ゲームに特化したコンピュータの中に、動画などのアプリケーションがゲームと併存している思想のPS4およびVita、ともいえそうだ。

ゲームはもちろん「上々」の出来、キモは「SHARE」に

 システムとしての新要素を評価する前に、ごく短くではあるが、ゲーム機として肝心な「ゲーム」面での評価もしておこう。

 スクリーンショットを見ていただいてもおわかりのようにゲームの画質はとにかく素晴らしい。「KILLZONE SHADOW FALL」「RESOGUN」に加え、フリーtoプレイタイトルの「WARFRAME」、「FIFA 14」のデモ版をプレイしたが、映像は一見してPS3との違いが分かるくらいリッチになっている。720pから1080pに変わった、という部分もあるだろうが、とにかく「間延び感」「ぼやけ感」がない。画質の変化はゲームの本質ではない、という意見もあるだろうし、筆者もそれに同意する部分もあるが、やはりリッチな映像には心浮き立つものがある。特に「KILLZONE SHADOW FALL」の映像表現は、様々な点でインパクトが大きい。ゲームは時期を経るに従い進化していくが、これが「PS4世代のスタートのレベル」だと思うと、先が楽しみになってくる。

ローンチタイトルのひとつ「KILLZONE SHADOW FALL」の画面。メーカーが用意した映像ではなく、PS4のSHARE機能を使って切り出した、正真正銘のゲーム中の画面だ。映像表現が緻密になっているのがわかる
(c)Sony Computer Entertainment Europe. Published by Sony Computer Entertainment Inc. Developed by Guerrilla.

 だが正直、それよりも、プレイしてみて興味深かったのは、システムおよびサービスと連携した進化の部分だった。

 PS4のコントローラーであるDS4には、新たに「OPTION」と「SHARE」というボタンが用意されている。これは、物理的には、従来のコントローラーでは「START」「SELECT」にあたるもの。しかし、システム上の役割は大きく変わっている。

 特に重要なのは「SHARE」ボタンの役割だ。

 すでに既報のように、PS4はゲームの映像を「シェア」する機能に注力している。SHAREボタンを押すことで、ゲームのスクリーンショットや動画を簡単にネットへアップし、共有することができる。

 PS4は、ゲームが動作している間、バックグラウンドでゲームの動画を録画し続けている。どのくらいの画質かということは、以下のリンクをチェックしていただきたい。これは「KILLZONE SHADOW FALL」を筆者がプレイし、Facebookへアップした動画である。

SHARE機能を使い、実際に動画をアップしてみた。この動画をアップするのにかかった手間はボタンを4回押しただけ。非常に簡単だ。ぜひ「HD」設定で、全画面にして見ていただきたい(Facebookへ)
(c)Sony Computer Entertainment Europe. Published by Sony Computer Entertainment Inc. Developed by Guerrilla.

 現状PS4には、FacebookとTwitterへゲームのプレイ画面・動画を共有する機能が存在する。システム側にそれらのアカウントを登録しておくと、SHAREボタンを押して、メニューに従ってファイルを選ぶだけで、非常に簡単にアップできる。SHAREボタンが一度押されると、その時のスクリーンショットが保存され、さらに、その時点で動画記録が一時停止し、アップの準備が行なわれる。静止画の方は選んでアップするだけで編集はできないが、動画の方は、必要な部分だけをトリミングする、ごくごく簡単な編集機能も用意されている。

SHAREボタンを押すと、ゲームは中断され、この画面が現れる。動画を共有するのか、静止画を共有するかを選ぶ
アップしたい映像を選ぶ。時系列で並んでいるので、一番上が最新のものだ。撮影した動画や映像は、タイトル毎にフォルダに自動分類される
動画をアップする際には、必要な部分だけをトリミングしてから送信することも可能。前後のトリミング以外はできないものだが、その分使い方は簡単。

 これまでこうしたことは、ゲーム機とPCを組み合わせ、いくつもの作業を経ないとできなかった。同じくらい楽なのは、スマートフォンのゲームくらいだろうか。それでも、動画となると簡単ではない。だが、PS4では実にシンプルに実現できる。しかも動画の場合、PS4側のマイクを使い、自分がプレイ中に発した言葉などをミックスして記録し、配信することも可能だ。

 もちろん、共有といっても、「世界中に広くあまねく公開」するだけではない。公開の範囲はSNS側の機能に依存しているため、Facebookの場合、「自分だけ」「友人だけ」といった公開も可能である。

 また、そもそもPS4では、実名でのプレイと従来通りの匿名でのプレイが選択できるようになっており、こちらも、各種共有機能とともに、自分で選択して使うようになっている。実名であることはコミュニケーション上の理由だけであり、システム的には、匿名であろうが実名であろうが、扱いそのものは変わらない。

Facebookへ共有する場合、Facebook側の設定に基づき、アップした写真や動画を「誰にまで公開するか」を選んでおける。また、ゲーム中に取得したトロフィー情報などをFacebookで公開するかどうかも、自分で設定できる
実名で利用するのか、PSN IDに基づく匿名で利用するのかは、自分で自由に選べる。Facebookと連動した場合には、名前やアイコンの写真をFacebookから取得することも可能
現状では、UstreamとTwitchでのリアルタイム動画配信に対応。SHAREする時に、どちらを使うか選べる

 さらには、リアルタイムで動画配信もできる。現状では、UstreamとTwitchに対応しており、映像を配信しつつ、それらのプラットフォームの上でコミュニケーションをとりながらゲームができる。PlayStation Cameraがあれば、自分の顔を同時に表示しながら配信することだって可能だ。しかもこの時、ゲームパフォーマンスに対する影響はほとんど見受けられない。あくまで自然に、配信とゲームが共存している印象だ。

 もちろんそうしたオープンプラットフォームを使っている以上、その様子は、PS4を介することなく、それぞれのサービスから見たり、コミュニケーションに参加することもできる。PS4上には「Live from PlayStation」という機能が設けられており、PS4のゲームを配信している様子がまとめてチェックできる。

ゲームのライブ配信を見られる「Live from PlayStation」。PS4からの配信がまとめて表示されるようになっていて、ゲームの種類もすぐにわかる
Ustreamによる配信の例。ご覧のように、日本語の表示もすでに可能。これらのコメントは、PCから配信を見ていた人のものだ

 ゲームをする人すべてが社交的なわけではない。だから「共有」という要素について、ちょっと引いた印象を持つ人も少なくないはずだ。特に日本ではそうかも知れない。

 だが、PS4でこの要素をチェックしてみて、筆者は想像以上に面白さを感じている。仮に自分が「広くゲームを配信する」立場に立たないとしても、人のゲームしている映像を見るのは、これはこれで楽しいもの。しかも「Live from PlayStation」の機能は、シンプルながら、なかなか使いやすくできている。ちょっとした時間をみつけて、「Live from PlayStation」からゲーム動画を見るという行為は、ゲームに対して人々を引きつけるという意味で、十分に魅力的な要素だと感じた。

 PS4が狙っているのは、こうした要素によって、社会全体の中での「濃いゲームに関する話題の流量を増やす」ことなのだろう。PS4というシステムは、明らかにそのために特化した構造になっており、「ディスクやカートリッジを買ってきて、それを挿入してゲームを楽しむ」という古典的な形からの脱却を試みている。

 ゲームのダウンロード購入にしてもそうだ。

 動画配信などでチェックしたゲームからは、簡単にPlayStation Storeへ移行できるようになっている。ダウンロード購入したゲームは、すべてのパートをダウンロードしなくてもプレイ開始できる。例えば、「KILLZONE SHADOW FALL」は全体で38.5GBあるが、プレイ開始までには7.7GB程度のダウンロードで済む。それでも長時間であることには違いないが、できるだけ素早くゲームを開始できるよう、配慮されているということである。ちなみに、7.7GBより先のデータについては、いつのまにかダウンロードが終わっていた。システムがサスペンドしている時にも、他のゲームをプレイしたり、動画を見たりしている時にも、裏ではダウンロードが行なわれていたようだ。そうした部分は実に「次世代感」がある。

「リモートプレイ」は快適、スマホ連携は今後に期待

 ゲームの動画記録や配信に使われているエンコーダーは、Vitaと連携して動作する「リモートプレイ」でも使われている。リモートプレイは、PS4の画面と操作系をVitaへと転送し、テレビに依存せずにゲームプレイを実現するものだ。PS3では一部ゲームにのみ対応していたが、PS4では基本的にすべてのゲームで対応し、家庭内のLAN環境だけでなく、屋内などでインターネット環境を介してのプレイにも対応している。

 同じLAN内で一度リモートプレイの接続設定を行なっておけば、後は自動で接続と転送設定が行なわれる。回線の種別も気にする必要はない。ただし、リモートプレイを行なうPS4とVitaでは、同じPSN IDを使っている必要がある。PS4が北米IDでVitaが国内ID、といった使い方はできない。その代わり、接続時には、ID・パスワードの入力すら求められることはない。

Vitaでリモートプレイ接続中の画面。設定さえ終わっていれば、PSN IDを手がかりに、接続経路や通信速度を自動的にチェックして接続してくれる。

 画質やレスポンスは思った以上に良い。シューティングのようなものはプレイが厳しいか……と思ったが、意外なほど普通にプレイできた。もちろん、ネットワーク対戦などでシビアな駆け引きをする際には問題が出てきそうだが、筆者レベルのぬるい腕での家庭内LAN内でのシングルプレイの場合、ラグによる理不尽なミスには出会わなかった。

Vitaを使い、LAN内でリモートプレイした画面。画質的にはまったく問題なく、遅延もごくわずか

 LTE回線によるテザリングでも試してみたが、こちらはかなり回線事情で異なる。昼間だと通信が混み合ったのか、激しく画面表示が乱れることもあったが、夜間だと画質的にはLAN内と差がない状況に。違いはむしろ、時折コマ落ちがあったり反応が遅れたりと、状況が安定しない点にあった。だがそれでも、アクションゲームでなければできてしまうかも……と思わせる程度には快適だった。

 リモートプレイでは、DS4にないボタンに対応するため、操作系が変化するゲームがある。「KILLZONE SHADOW FALL」の場合には、DS4のタッチパッドやL2・R2ボタンなどに対応するため、前面・背面のタッチセンサーを併用するようになっていた。とはいえ、単にエミュレートしているのではなく、ゲーム側がリモートプレイを認識し、操作性を最適化しているようだ。もちろんDS4の方が操作しやすいのは事実なのだが、リモートプレイでも、極端に操作性が落ちた、とは感じなかった。この辺はソフトによっても違ってきそうだ。

 こうした点は、より気軽にPS4で遊んでもらうための方策だ。ハードの購入が必要なので「カジュアル」なわけではない。だが、PS4のユーザーが「忙しさ」や「面倒くささ」でPS4のゲームから離れなくても良いよう、システム面での配慮がなされている、ということなのだろう。

 もう一つ、PS4との「モバイル連携」という点で注目しておきたいのが、スマートフォンアプリ「PlayStation App」だ。このアプリは、iPhone・Android向けに無償公開されているもので、PS4と連携し、PS4の文字入力や操作を代替したり、PSNのフレンドの状況を確認したり、PlayStation Storeでのゲーム購入のゲートウエイになったりするものだ。いわゆるセカンドスクリーンであり、現状ではさほどリッチな機能があるわけではないが、今後、PS4からの動画配信視聴などの機能が充実すれば、面白い存在になるだろう。

スマホ連携アプリ「PlayStaion App」。画面はiPhone版。PSNの状況をチェックしたり、PS4と接続し、文字入力用のコントローラーなどとして利用できる。無償だが、日本市場向けにはまだ未公開

 なお、PlayStation Appについては、PS4が日本で販売されていない関係から、まだ日本向けのApp StoreやGoogle Playでは公開されていない。今回も、筆者が持っているApp Storeのアメリカ版アカウントからダウンロードして試している。

ゲーム機として高い完成度、システムの「荒さ」は日本発売までの改善を期待

 PS4は、ゲーム機として、PS3に比べかなり高性能になっている。画質や操作性の向上という点で評価すれば、PS3世代との差は明確だ。日本のユーザー向けに気になるゲームが揃うならば、ヒットする要因は十分にある。動画共有についても、その結果「ゲームに関する話題が広がる可能性がある」「ゲームに関する話題を広めるハードルを劇的に下げる」という意味では、かなり有用だと思う。PS4によって誰もがUstやTwitchのIDをとって配信するようになる……とは思わないが、食べ物の写真をアップする感覚で、TwitterやFacebookにゲームのスクリーンショットを公開する人が増えても、筆者はまったく驚かない。「ゲームってこんなものだよね」と思っている、最近はゲームに御無沙汰だった人々にも、そうした情報は目に入るようになるだろう。PS4が真価を発揮するのはそのあたりからではないだろうか。そのために周到な準備がなされたプラットフォームだと感じる。

 他方で、システムの完成度や安定性については、細かく突っ込もうと思えば、いくらでも問題点を指摘できる。

 エラーコードとともにシステムが動かなくなったこともあるし、画面が乱れたこともある。どうやらPSNが相当混雑しているらしく、ダウンロードが遅くなったり、ゲームに関する情報が正確に表示されなくなったりすることもあった。システム負荷は頻繁に上がりすぎて、ファンが大きな音を立てて回る頻度は初代のPS3並だ。ダウンロードは短くて済むものの、インストールに掛かる時間は長く、結果、プレイまでそれなりに待たされる。システムはサスペンドできるものの、ゲームはまだサスペンドできず、毎回ロードし直す必要があるのは不便だし、そもそも、元々の公約と異なる。せっかくのDS4も、タッチパッド部が操作にはほとんど使われておらず、まだ未完成であることを思わせる。静止画や動画の共有についても、複数枚の同時アップロードができなかったり、内容をプレビューしながらアップすることが出来なかったり、ファイルとしてメモリーカードなどに取り出せなかったりと、細かなところで不満が残る。

 なにより、AV的に言えば、動画ファイル・写真・音楽などの再生に対応していないのは、PS3世代から見て明らかな後退だ。

 とはいえ、こうしたことは「初期バージョン」ゆえのもの、とも考えられる。PS3もVitaも、システムソフトウェアのバージョンアップで機能は改善しつづけた。PS4もそうなると考えるのが自然である。日本では(残念ながら、だが)'14年2月まで時間がある。その間にシステムソフトウェアを熟成し、トルネなどの対応を準備しておいていただきたい。動画配信についても、ニコニコ動画など、日本で求められるプラットフォームへの対応は必須だ。

 2月までにどこまで進化するか。その結果が楽しみだ。

西田 宗千佳