小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第837回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

これは流行る! ソニーの2万円台/HDMI搭載サウンドバーを聴く

市民権を得るサウンドバー

 テレビの音を簡単にアップグレードできる「サウンドバー」が、ここに来て注目を集めている。その背景には、ネット配信によるコンテンツが増え、リッチなサウンドを持つ映画や海外ドラマシリーズを見る機会が飛躍的に増えたという事情がありそうだ。

 特にNetflixやAmazonプライム・ビデオが制作するオリジナルドラマは、映画並みのクオリティを誇る。これは単にあらすじを追うだけでなく、リッチなスピーカーで楽しまないと損だ。

 というわけで今回は、2万円台で入手可能なソニーのサウンドバーの新モデル2機種をご紹介したい。型番からすれば上位モデル、下位モデルという分け方になるだろうが、それぞれに特徴があるスピーカーだ。

 好きなコンテンツを簡単にアップグレードできる、サウンドバーを早速試してみよう。

大小と機能で選べる2モデル

 小さいほうの「HT-S200F(以下S200F)」は、1月27日発売予定で、店頭予想価格は28,000円前後。小型だが型番としてはこちらのほうが上位モデルとなる。一方、大型の「HT-S100F(以下S100F)」は2月17日発売で、店頭予想価格は23,000円前後となっている。

 まずS200Fだが、横幅580mmと、昨今のサウンドバー製品としては小型の部類に入る。ただし低音用のサブウーファを本体に内蔵しており、これ1台で2.1chシステムとなる。カラーはチャコールブラックとクリームホワイト。今回はクリームホワイトのほうをお借りしている。

サブウーファまで内蔵のS200F
サウンドバーとしては小型

 正面はパンチンググリルで覆われており、グリルは取り外しできない。メインスピーカーは46mmフルレンジ×2で、バスレフ型となっている。バスレフポートはバーの左右にあり、横方向に音を出す仕組みだ。

パンチンググリルは着脱できないタイプ
両脇にバスレフポートを備える

 サブウーファは底面にあり、70mm径で振動板素材に発泡マイカを使用している。発泡マイカは大型サブウーファの振動素材としてソニーでは好んで使われてきたが、70mmの小さいサブウーファでも採用となった。ただしスピーカーにグリルが無くむき出しなので、移動の時にうっかり握ってしまわないよう注意が必要である。またこのサブウーファもバスレフポートに繋がっている。

底部に下向きに付けられたサブウーファ

 入力はARC対応のHDMIとBluetooth、USBの3つ。アナログ入力端子はない。昨今はテレビにもBluetoothが付いているが、テレビとペアリングすればワイヤレスで接続が可能だ。入力端子は斜めにレイアウトされているため、挿しやすい。

入力端子は3つ。USBのみ真正面を向いている

 天板はタッチパネルとなっており、タッチによる電源入切や入力切り換え、Bluetoothペアリング、ボリュームのアップダウンができる。

天板をタッチでコントロール

 また両モデルとも、赤外線のスルー機能「IRリピーター」がある。テレビ前にスピーカーを配置した場合、テレビの赤外線ポートが隠れてしまうことがあるが、スルー機能を使えば、スピーカーの前面で受信した信号を背面からそのまま再出力するので、ちゃんとテレビリモコンも問題なく使用できる。

背面にある赤外線発光部
ACアダプタで駆動する

 大きい方の「HT-S100F」は、横幅900mmもあり、かなり長い。40インチテレビの横幅とほぼ同じである。カラーはブラックのみ。

かなり長いサウンドバー、S100F
40インチ前後のテレビと横幅が同じ

 底面のゴム足が両脇のかなりギリギリの位置に付いているため、小型のテレビ台では足まで乗りきれないというケースはあり得る。筆者宅ではDIYで割と適当に横幅を決めた台に乗せるしかないため、左右のゴム足まで乗りきらなかった。別途ゴムのスペーサーを用意して、その上に設置している。通常40インチ用以上のテレビ台であれば幅1,000mm以上になるので、大丈夫だろう。

筆者宅でのテスト状況。S100Fは長すぎて棚に乗せきれなかった

 こちらもスピーカーはパンチンググリルで覆われており、取り外しはできない。内部のスピーカーは、ウーファとツイータがそれぞれ×2の2Wayステレオ。サブウーファは内蔵しておらず、背面へのバスレフタイプとなる。

スピーカーは2Wayタイプ
背面センターにバスレフポート。その上は赤外線スルーのための発光部

 入力は上位S200Fと同じで、ARC対応HDMIとBluetooth、USBの3つ。端子は凹みの真横に配置されているため、抜き差しは見通しが悪く、多少不便である。天板のタッチパネルも同じだ。電源はS200FがACアダプタなのに対し、メガネケーブル直差しですっきりしている。

端子は真横に挿すタイプ
電源はメガネケーブルを直差しできる

 最後にリモコンを見てみよう。S200FもS100Fも、ボタン数は同じだが、唯一違うのはS200Fのほうだけ、低音ボタンがある事だ。これを押すと、低音が+1、0、-1、0…と言った順序でトグルする。

S200Fのリモコンには低音切り換えがある
S100Fはその部分がLED表示のディマーボタンになっている

 サウンドモードは、入力ソースに応じて自動でモードを変える「オートサウンド」のほか、スタンダード、スネマ、ミュージック、ボイス、ナイトモードを備える。ナイトモードにはさらに2モードあるようだが、デモ機材ゆえに説明書がなく、また執筆時点ではネットにも説明書が上がっていないため、詳細は不明である。聴いた感じでは、低域強めと弱めの2つのようである。

映像ではわからないが、音楽では大きな差

 では早速試聴してみよう。まずは映画の試聴ソースとしてAmazonプライム・ビデオで配信されている「ゴースト・イン・ザ・シェル(ハリウッド版)」を聴いてみた。

 序盤の戦闘シーンからそれに続く音楽シーンで双方を聴き比べたが、台詞の聞きやすさという点では、双方あまり違いはなかった。ビートたけしの台詞が聞き取りにくい点に関しても、同じ程度だ。

 ただ低域の出に関しては、やはりサブウーファを備えたS200Fに軍配が上がる。S100Fはステレオ感が強いため、テレビスピーカーよりも良好なサウンドが得られるが、S200Fはそれに加えて一段、低音部が開ける感じだ。

 S200Fの下向きのサブウーファは、床面に対して隙間が3mmぐらいしか空いていないため、そこからの直接音はそれほど期待できない。低域はバスレフポートを通って、横から出ているようだ。別途スペーサーを使って床面との隙間を上げたところ、低音表現は多少明瞭度が上がる。置き方の工夫でいろいろ遊べそうだ。

 音の立体感にも違いがある。S200Fは比較的前に出てくる音だが、S100Fのほうは、音が左右に開いているぶん、センターは奥に位置する感じがある。このあたりはハードウェアの構造的な部分に加えて、S200Fが「S-FORCE PRO フロントサラウンド」対応、S100Fが「S-FORCEフロントサラウンド」対応と、バーチャルサラウンド機能のレベルが1段違うところも関係がありそうである。

 もう少しサウンドの違いを明確にするため、Bluetoothによる音楽で試聴してみた。音楽再生に関しては、S200Fの明瞭度が高く、前面に出てくる明るい音という性格とマッチして、非常に聴きやすい。テレビスピーカーに限定せず、リビングの音楽用スピーカーとしても楽しめるだろう。

S200Fは音楽用BTスピーカーとしても楽しめる

 一方、S100Fの方は、丁度ボーカル帯域のあたりに独特の鼻づまりのようなピーク間があり、あまり好みの音ではなかった。ずっと聴いていればそれなりに慣れるだろうが、S200Fとの比較では、S100Fは音楽再生にはあまり向いていないと思われる。

 双方とも音楽再生時は、モードを「ミュージック」にしたほうが良好な結果が得られる。またスタンダードとナイトモードの「1番」も、音楽再生にはマッチするようだ。

 ただ、サウンドモードの変更に関しては、現在のステータスを確認する方法がないので、今何のモードになっているのかを確認する方法がない。映画を見ているのにずっとボイスモードだったりする可能性もある。そのために「オートサウンド」機能があるのだろうが、やはりどうにかして今のモードを確認する方法が欲しいところである。なお、リモコンには各モードのダイレクト選択ボタンも備えている。

総論

 今回の2製品は、見た目からすればS100Fのほうが上位機種に見える。なにしろ本体が長いというのは、それだけインパクトがある。またテレビのサイズによっては、横に長い方が見た目のバランスが取れるという事は十分考えられる。

 音質的には、一般的なテレビ番組の視聴では、それぞれ音のカラーの違いがあるが、優劣があるわけではない。好みが分かれる部分だろう。

 機能的には決して多くない。Bluetooth接続が可能だが、昨今のソニー製ヘッドフォン・イヤフォンのように、専用アプリで音質モードが選択できるわけでもない。ただ、3万円以下の出費でこのサウンドが得られるなら、十分元は取れるだろう。

 一方で音楽再生にも使いたいとなれば、如実に特性の違いが出てくる。S200FとS100Fは、価格にして約5,000円の差だが、このぐらいの差ならS200Fを選びたい。サブウーファがあるというだけでなく、サウンドの素性が素直なのは、S200Fのほうである。かなりプロセッサでいじってあるのかもしれないが、チューニングの上手さがある。

 この音質のスピーカー、しかもかなりどっしりした作りの製品が3万円以下で手に入るようになると、テレビ用バースピーカーも一気に普及が進むのではないだろうか。導入している家庭はまだ多くなく、しかも家庭に複数台テレビがある時代になったことで、贈答などにも喜ばれるだろう。

 筆者は友人宅の引っ越し祝いにS200Fを送ろうかと思っているところだ。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。