小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第948回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

ソニー、攻めの「XB」Bluetoothスピーカー。非対称ユニットの威力は!?

攻め続けるシリーズ

今回お借りした2モデル。左から「SRS-XB33」、「SRS-XB43」

今や一番身近なスピーカーとなったBluetoothスピーカーだが、同時に非常に競争の厳しい世界である。わざわざ店頭で実機を試す機会も少なくなったことから、「音がいい」という漠然とした機能よりむしろ、デザインがいい、一流ブランドである、音楽以外の機能があるといった、目に見える価値で差別化していくしかなくなってきているように思える。

ソニーの「SRS-XB」シリーズは、以前からそうした“目に見える差別化”に積極的に取り組んできたシリーズと言える。LEDでライティングする、複数台がつながる、叩くと音が出るといった機能を搭載、“パリピ”向けと見せかけつつ、音質は過去数々の名機を生み出したSRSシリーズを継承するという、難しいところを攻めているシリーズである。

例年新モデルをリリースする人気シリーズだが、今年はドライバーの形を変えるという大胆な設計刷新が行なわれた。製品としては、大型の「SRS-XB43」、中型の「SRS-XB33」、小型の「SRS-XB23」の3モデル。店頭予想価格はそれぞれ23,000円前後、18,000円前後、12,000円前後となっている。

今回はXB43とXB33をお借りしてみた。従来モデルとは異なるサウンドを聴かせてくれるのか、早速試してみたい。

パッシブラジエータでシャープな印象に

まずはXB43のほうから見ていこう。外寸325×117×123mm(幅×奥行き×高さ)と、Bluetoothスピーカーとしては大型の部類に入るモデルで、カラーはブラックとベージュの2色。カラーバリエーションは中型機XB33も同じだ。2色のカラバリで、地味なベージュを持ってくるのは珍しいが、LEDライトが派手に光るので、本体色は大人しくていいという事だろう。今回XB43はブラックをお借りしている。

大型のSRS-XB43

ボディ表面は丈夫なファブリック素材で覆われており、防水性能はIPX7相当、防塵性能はIP6X相当と、レジャーに持ち出せるタフネス仕様となっている。

防水性能はIPX7相当、防塵性能はIP6X相当

注目のスピーカーだが、従来モデルは58mm径の円形スピーカーが両脇に配していたのに対し、今回は68×61mmの超楕円形スピーカーを中央部に並べて配置した。超楕円形といってもなんのことだかよくわからないが、実質的には縦が長い長方形スピーカーである。過去こうした変形スピーカーは、テレビ用など狭い場所に配置するユニットとして使われてきたが、長年音質的には円形スピーカーに劣ると言われてきた。オーディオ製品にはなかなか搭載されてこなかったタイプだが、これを敢えて搭載してきたということは、音質には相当自信があるという事だろう。

ファブリック越しにうっすら見える超楕円スピーカーとツイーター
これがXB43の内部。中央のユニットが円形ではなく、超楕円形になっている

左右のメインスピーカーを中央に寄せるとステレオ感が減少するわけだが、そのぶん20mm径のツイーターを左右に離して搭載することで、ステレオセパレーションを稼いでいる。また両脇に大型のパッシブラジエータを搭載し、密閉型ながら十分な低音が出せるよう工夫されている。

このパッシブラジエータがあることで、左右にアクセントが付き、シャープな印象を与えている。カバーも何もないので、手を突っ込んで破れてしまわないかちょっとおっかないところではあるが、耐久性は十分という判断だろう。

側面に配置されたパッシブラジエータ

内部にリチウムイオンバッテリーを搭載しており、標準のEXTRABASSモードで約14時間、STAMINAモードで約24時間動作する。重量は約2,950gで、ほぼ3kgとかなり重めだ。

天面には操作パネルがあり、電源、Bluetoothペアリング、再生・停止、ボリューム上下、LIVEモードボタンがある。NFCの接続ポイントは少し離れた右側にある。

天面の操作パネル

背面の端子類は、防水キャップの中にある。充電端子がUSB-C端子となったのはありがたい。また外部へ電源供給するためのUSB-A端子も備える。アナログ外部入力があるのは、今回のラインナップではXB43だけだ。そのほか、LEDライトのON/OFFボタン、パーティコネクト用ボタン、ステレオペア設定ボタンがある。

背面の端子類とボタン

このシリーズではすっかりお馴染みのLEDライトは、スピーカー4つと、左右のパッシブラジエータを囲むようにリング状に配置されている。

底部には長めのゴム足

続いてXB33だ。今回はベージュをお借りしてみた。シリーズ中型機で、外寸はXB43よりもふたまわりぐらい小型の246×106×97mm(幅×奥行き×高さ)。ファブリック素材の採用やカラーLEDの配置など、デザイン的にはXB43をそのまま小さくしたという印象だ。

サイズ的にはふたまわりほど小さい印象のXB33

こちらもスピーカーの設計が変わっており、70×48mmの涙型とでもいおうか、非対称な形になっている。左右方向にコーンを伸ばし、先端を狭くすることで、ステレオ感を出そうというわけである。このスピーカーはフルレンジで、搭載ユニットは2基のみである。左右にパッシブラジエータがあるのは、XB43と同じ構造だ。

XB33の内部
XB33のパッシブラジエータ。SONYロゴが標準で斜めに付いているのは珍しい

上部パネルのボタン類も同じだが、NFCの接続ポイントは左側にある。背面端子は向かって右側に寄せてあり、アナログ入力がない以外はXB43と同じだ。LEDライトは2基のスピーカー部と、左右のリング部にある。

上部ボタンはほぼ同じ
背面端子は外部入力がない

なお両機種とも、対応コーデックはSBC、AAC、LDACの3つで、aptXには対応しない。最近はLDACもXperia以外にもGalaxyやPixel、AQUOSなどの上位モデルで搭載が始まっているところではあるが、Android市場においては、aptXに対応しないスピーカーを出す事でLDACの搭載率を高めようという作戦なのかもしれない。

低音の量感が全然違う

では早速音を聴いてみよう。今回は低音の量感が特徴ということで、音楽ソースはSpotifyからドナルド・フェイゲンのアルバム「Morph the Cat」を中心に試聴している。

SRS-XB43

まずはXB43のExtraBassからだ。イントロのベース音とキックのユニゾンの迫力は、もうしぶんない。サブウーファ並みの低音が楽しめると言っても過言ではないだろう。口径が増したメインスピーカーとパッシブラジエータの組み合わせで、量感のある低音を実現している。

また両脇に設置されたツイーターにより、シンバルの左右の振り分けなどもちゃんと鳴り分けている。ただ中音域のステレオセパレーションはそれほどでもなく、どちらかというと中心寄りのサウンドではある。

続いて「ライブサウンド」を試してみよう。これは一昨年のXB41、31、21から新設されたモードだが、当時はスマホでモード切り換えをしなければならなかった。これが昨年XB32、22以降からは、本体操作だけで切り換えできるようになっている。

今年のモデルからライブサウンドもアルゴリズムが改良され、中心のボーカルに影響を与えることなく、広がり感が得られるようになっている。ライブ音源の場合は、観客のノイズがスピーカー全体の幅の2倍ぐらいのところから聞こえてくる。歓声や手拍子の音も生々しく感じられる。もちろんスタジオ録音音源に対しても有効で、中抜け感を抑えながらステレオイメージが大きく広がる。ExtraBassが中心寄りなサウンドなのに対し、その逆をいくサウンドが得られる。1台のスピーカーなのに、2台分の面白さがある。

SRS-XB33

続いてXB33のExtraBassを試してみよう。音量をXB43と同じぐらいに設定したが、低音の量感はさすがに減少する。だがボディサイズに似合わず、余裕がある低音再生で驚かされる。これぐらいのサイズでモノラルスピーカーなら、大型ウーファを搭載することで低音を出すものも存在するが、ステレオ仕様でこの低音が出せるものはなかなかないところだ。

注目の非対称スピーカーだが、左右方向にコーンが拡がる事で、なるほどちゃんとステレオ感がある。別途ツイーターがあるわけではないので、高域の伸びはXB43ほどではないものの、逆に高域のうるさい感じがなく、浜辺に持ち出してチルサウンドを再生するなら、こちらの方が向いているだろう。

続いて「ライブサウンド」に切り換えると、表情が一変する。音像の大きさとしては、普通に左右セパレート型のスピーカーを聴いているようだ。XB43のほうはボディサイズが大きいので、まあこんなもんだろうという印象だが、小型筐体であるこちらのほうが、より大きな驚きと満足感がある。

なおライブサウンドは、音質補正機能の「ClearAutio+」とは排他仕様となっている。そもそもClearAutio+が、ExtraBassモードと連動しているからだ。

ライブサウンドに設定すると、ClearAutio+はOFFになる

改良されたパーティーコネクト機能

本機の目玉機能は、ボディ上のボタンだけで操作できるが、スマホアプリ「Music Center」を使うともう少し細かい設定ができる。スマホアプリじゃないといじれないのが、イルミネーションの設定だ。デフォルトでは「RAVE」に設定されており、かなり激しく点滅するが、CHILLやCALM LIGHT BULBなど大人しめの設定もあるので、色々試してみるといいだろう。

設定用のスマホアプリ「Music Center」
LEDライトには多くのモードがある
RAVEモードでのライティング

今回リニューアルで新搭載されたのが、「パーティーコネクト機能」だ。複数のスピーカーを連携して何台も同時に鳴らせる機能である。以前もそんなような機能があったじゃないかとおっしゃる方はなかなか記憶力がいい。実は同様の「Wireless Party Chain」という機能は、2017年発売のXB20/30/40から搭載されてきた。

だがWireless Party Chainが最大10台まで接続可能だったものが、パーティーコネクト機能では最大100台まで拡張された。まあ個人使用で10台以上XBシリーズが集まることがあるのかと言われれば微妙だが、例えばイベント会場で複数の小部屋に分かれるような場合には、1台のマスター機から各部屋のスピーカーを連結できるので、わざわざ各部屋にケーブルを引き回す必要がないという便利さはあるだろう。

パーティーコネクト機能の設定の仕方は付属のマニュアルに載っておらず、オンラインヘルプにしかないので、簡単に説明しておく。まず親機となる1台をスマホとBluetooth接続しておき、親機の背面にあるPARTYボタンを押す。6秒程度で操作音が鳴り、PARTYボタンのライトが常時点灯したのを確認する。

続いて子機となるスピーカーの背面にあるPARTYボタンを押す。PARTYボタンが常燈し、Bluetoothボタンのライトが消えたら、設定完了だ。さらにスピーカーを追加する場合は、追加するスピーカー背面のPARTYボタンを押すだけである。一見簡単なようだが、1台目の設定を完了するまでに2台目のボタンを押してしまったりすると、どっちもBluetooth接続が外れて音が出なくなったりするので、この手順は大事である。

このパーティーコネクト機能は、ステレオペアと違い、スピーカーの種類が違っても接続できるのがポイントだ。ただしこの新機能は今年発売のモデルからなので、現時点ではXB43/33/23に限られる。

今回はXB43と33の2台を繋いでみたが、リスニングポジションの前後にスピーカーを配置すると、まるで3D音源を聴いているような広がりが体験できる。ただパーティーコネクト機能使用中は、BluetoothコーデックがSBCとなるのが残念なところだ。

ボリューム調整は、親機の設定変更で全部のスピーカーの音量を同時に変更することができる。また子機のほうだけいじれば、個別にボリューム調整も可能だ。LEDライトの色も発光タイミングも完全に同期するので、見ていて楽しいし、暗い部屋に数台置いても統一感がある。

総論

SRS-XBシリーズを2年ぶりにレビューしたが、デザインも一新され、かっこよくなった。両脇にパッシブラジエータを配置する構造も、背面に配置するより理にかなっている。カラーはブラックとベージュの2色のみだが、アウトドアで使う事を想定すれば、オレンジなど目立つカラーも欲しかったところだ。

そもそもBluetoothスピーカーは、ストイックに音楽を聴くツールではないので、あまり詳しく音質評価されない傾向にあるが、個人的には高域が立ちすぎず聴き疲れしないXB33のほうをお勧めしたい。欲を言えばもう少し低音にキレの良さが欲しいところだが、ボディサイズからすれば十分だろう。

この夏、なかなかパーティを開くのも難しい状況ではあるが、人のいない山や海に出かけてのんびり過ごすというのはアリだろう。そんなときのお伴として、スマホの拡張バッテリーにもなる新XBシリーズは、イイカンジの相棒となりそうだ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。