小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第947回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

どこでもCD再生、Bluetoothで飛ばす「enas EASY CD PLAYER」をDenonスピーカーで

懐かしの音源……

ストリームの「enas EASY CD PLAYER」

現在音楽を聴く手段として、スマートフォンが圧倒的に主力であることは間違いない。10年前から続くイヤフォン・ヘッドフォン・ポタアンブームは、実はスマホという新しい音楽プレーヤーに対応するための商品であったわけだ。

とは言え、アラフォー以上の音楽ファンであれば、所有する音楽CDの枚数も相当な数に上っていることと思う。一時期円高の頃は輸入盤がかなり安かったし、着うた着メロが主流になると、古本屋には大量の中古CDがあふれた。

そして今やストリーミング時代。リッピングすら遠い過去のものとなり、音楽CDを直接再生する機会も無くなった。そもそもCDプレーヤーが、いつの間にか家庭内から無くなってしまった。今聴こうと思ったら、Blu-rayレコーダ/プレーヤーを利用するぐらいか。パソコンも光学ドライブがついたモデルはA4大型ビジネスノートぐらいしかなくなってしまった。

だがいくらストリーミング時代とはいえ、まだまだ配信されていないCD音源は沢山ある。どうにか簡単にCDが聴けないものか。そんな願いを叶える製品が、「enas EASY CD PLAYER」(14,800円)である。

「enas EASY CD PLAYER」

家電やデジカメ、パソコン関係デバイスを通販で買ったことがある方なら、「ECカレント」の名前は聞いたことがあるだろう。この運営母体である株式会社ストリームが会社創立20周年を記念して、新プライベートブランド「enes(イーネーズ)」を設立した。その第1段となる製品が、上記「enas EASY CD PLAYER」というわけである。

懐かしのCDポータブルプレーヤーのような形であるが、Bluetoothスピーカーに対して音をワイヤレスで飛ばすという変わり種だ。今回はこの製品を、ちょっとゼイタクなネットワークスピーカー、「Denon HOME」と組み合わせて聴いてみたい。

シンプルだが十分役に立つ

enas EASY CD PLAYERは、名前にEASYがつくところからもわかるように、非常にシンプルなCDプレーヤーだ。フットプリントはCDケースとほぼ同じで、145.3mm×128mm、厚みは27mmだ。

フットプリントはほぼCDジャケットサイズ

ボディは樹脂製で、CDトレイ部はアクリルでカバーされる。このカバーはバネで開くとかそうした仕掛けは一切なく、手でおりゃっと開けておりゃっと閉めるというシンプルさである。もちろんなんの工夫もないヒンジでは完全にピッタリ閉まらないので、一定角度になると閉まる方向に力が加わるという最低限の仕掛けは施されている。

構造的にはシンプル

上部前面に操作ボタン類が並ぶ。大きめのメニューボタンのほか、再生、停止、スキップ、バックとボリュームの上下である。メニューボタンとはいうが、実際にはメニュー操作が何かあるわけではなく、ほぼ電源ボタンと同じである。1曲リピートや全曲リピートといった機能はない。左端に簡単なディスプレイがあり、Bluetoothの接続状況やCDの曲数、時間などが表示される。

ディスプレイもシンプル

電源は単三電池2本と、USB-Cの2Way方式。電池駆動時の動作時間は約3時間だ。イヤフォン端子もあり、普通にポータブルCDプレーヤーとしても使える作りになっている。背面には壁掛け用の穴もある。

電源は乾電池とUSB-Cの2Way

音飛び防止機能のESP機能も搭載している。これはCDを等倍より少し早めに回してデータを先読みし、バッファに貯めてから順次送り出す機能である。これにより、振動などで読み取れなかった箇所をもう一度読み直す時間を稼ぐわけだ。バッファ容量は60秒。

続いてスピーカーの方をご紹介しよう。今年1月に新シリーズとして投入された「Denon HOME」は、各種ストリーミングサービスやBluetoothの再生に対応したネットワークスピーカーだ。ワイヤレス・オーディオシステム「HEOS」を採用しており、スキルをインストールすればAmazon Alexaから音声操作も可能になる。

小型の「HOME 150」はモノラル仕様で、実売は32,000円前後。大型の「HOME 250」はステレオ仕様で同48,000円前後となっている。今回はHOME 150を2台と、HOME250を1台お借りした。両機ともHEOSアプリにてグループ化することが可能で、その場合はステレオペアとして使うこともできる。したがって今回は2台のHOME 150をステレオペアとして使用する。

モノラル仕様のHOME 150。2台をステレオペアで使おうという作戦
Ethernet端子を装備するのはユニーク
対応サービスはかなり豊富
倍の大きさのHOME 250。単体でステレオ仕様だ
上部はタッチセンサーで、手を近づけるとボタンが現れる

懐かしのサウンドが簡単に聴ける

まず音楽CDの再生からだ。enas EASY CD PLAYERにCDをセットしてMENUボタンを押すと、電源が入る。いったんCDが回転するのは、曲数や再生時間を読み込むためで、すぐ再生が始まるわけではない。再生開始は別途、再生ボタンを押す必要がある。

Bluetoothの接続は、電源OFFの状態から自動的にペアリングモードに入る。ディスプレイ部にBTという文字が点滅している時は、ペアリングモードだ。後はBluetoothスピーカーやイヤフォン側をペアリングモードにして待っていればいい。ペアリングすると、BTの文字点滅が止まり、5秒ほどすると消える。

まずはシンプルに、HOME 250とBluetoothでペアリングしてみた。本来Bluetoothスピーカーは、スマートフォンやPCのような、繋ぐ相手方が選択できるデバイスと接続するものだ。スピーカー側が繋がるまで口を開けて待っている状態で、スマホ側は口を開けてるデバイスを選んで接続しにいくわけだ。

だがenas EASY CD PLAYER側には、相手を選択する機能がない。したがってスピーカーとソース側の双方が口を開けている状態でペアリングすることとなる。本当に希望する相手とつながったかどうかは、CDを再生して音を出してみるしかない。

HOME 250でのCD再生は、かなり低音がガッツリ出る。250は102mm径のウーファー2基にパッシブラジエータまで内蔵しているので、元々低音が出るモデルだ。加えてenas EASY CD PLAYERも、直接ヘッドホンを繋いで確認したところ、かなり低音に寄せたチューニングとなっている。したがってHOME 250で再生した場合、標準状態では低音過多のサウンドとなる。さすがに低音好きの筆者でも、イコライザーで低域を-3ぐらいに絞ってちょうどいいレベルだ。

ステレオ感としては、どうしても左右が短いので、限界がある。構造としてはドームツイーターが外側を向いているようなので、部屋の構造や壁からの距離などが影響すると思われる。テストした部屋は洋室ではあるが、片側がクローゼットでややデッドなので、反射音を使ったステレオ感はあまり感じられなかった。

250の内部

いくつか昔聞いたなつかしの音源を聴いているところだが、優秀なスピーカーで聴くとまた新しい発見がある。ただ、高域の解像度はそれほど高くはない。これはスピーカーの性能ではなく、Bluetoothによる伝送のせいだろう。Bluetoothコーデックはスペックにないが、おそらく音質からするとSBCオンリーではないかと思われる。

続いてグループ化してステレオペアにしたHOME 150に繋いでみた。本来ならば、音源はネットサービスを使用するべきなのだろうが、今回はBluetooth縛りである。enas EASY CD PLAYERでは、MENUボタンを2回押すとBluetooth接続がリセットされ、再ペアリングが可能になる。

まずは片方のHOME 150に繋ごうとしたが、なかなか繋がらない。グループ化している場合、Bluetoothペアリングは受け付けないのかもしれない。いったんグループ化を解除したら、ペアリングできた。そののち、もう1台とグループ化してステレオペア設定したら、Bluetoothでもステレオ再生できた。

片側をBluetoothで繋いだあと、グループ化するとステレオ仕様に

HOME 150は250より小さめの89mmコーンウーファー1基を採用している。またパッシブラジエータも搭載していない。同サイズのスピーカーよりは低音は出る方だが、250には敵わない。だが2台がペアになることで、かなり250に肉薄する低音を出すことができる。enas EASY CD PLAYERとの組み合わせでは、特に低音をイコライザーで下げる必要もなく、適度な低音の量感を得ることができた。

また実際にスピーカーを左右に離して設置しているので、ステレオ感はかなり高い。ただセンターが抜ける感じがあるので、左右間で完全に同期しておらず、若干遅延があるのではないかという気がする。

総論

今回のレビューでは、久しぶりにCDを引っ張り出して、昔何度もリピートして聴いた音楽を十分に楽しむことができた。CDを直接聴かなくなって、かれこれもう15年ぐらい経っているのではないかと思う。もちろんハイレゾではないのだが、アルバム単位というのはやはりしっかりした世界観があり、次に何をかけようかと選ぶ楽しみがある。

enas EASY CD PLAYERは、そういう感覚を今風に蘇らせてくれるデバイスであった。ただ、再生装置、スピーカーやイヤホンを取っ替え引っ替えする場合は、Bluetoothの再接続が面倒である。また相性があるのか、手持ちのBluetoothイヤホンに対してはどれもペアリングできなかった。イヤホン側を完全にリセットしないといけないのかもしれないが、それはそれで面倒である。

またCD側はどこかに繋がっているのだが、繋がった先がどれだかわからないということもあった。目に見えないワイヤレス接続なだけに、何がどうなっているのかを確認する術がないのがもどかしい。

機能がシンプルなだけになかなかコツがいる製品ではあるが、今CDを身近に感じる機器として、こういう方向性はアリなんじゃないだろうか。昨今はレコードプレーヤーでBluetooth接続のものがあるが、レトロと手軽さを合体させたところに人気の秘密がある。CDも発売が開始されてまもなく40年だ。もうそろそろレトロと言われるフェーズに入ってきているのかもしれない。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。