小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第853回
ライブサウンド最高かよ! 光って叩けるソニー「EXTRA BASS」スピーカー3種
2018年5月30日 08:00
BTスピーカーも新しい世代へ
昨年末から、スピーカーと言えばもっぱらスマートスピーカーの話題が中心であった。しかしスマートスピーカー最大のポイントは音声で情報を引き出すことであり、音質をテーマに語る機会は少なかったように思う。
一方でBluetoothスピーカーは、もはやBluetoothイヤフォンと並んですっかり一般化した。格安モデルも登場、クレジットカードのポイント景品などにも掲載されており、買ったり貰ったりして1台は家にあるようなご家庭も増えたのではないかと思われる。そういう意味では、差別化が難しい製品となってきたという事になる。
Bluetoothスピーカーで高いシェアを誇るソニーだが、この5月に4モデルを刷新した。h.ear goシリーズの「SRS-HG10」、EXTRABASSシリーズの「SRS-XB41/XB31/XB21」だ。今回はそのうち、EXTRABASSシリーズの3モデルを取り上げる。
元々EXTRABASSシリーズのBluetoothスピーカーは、昨年4モデルが登場した。今回はそのうち、上から3モデルがリニューアルするわけだ。市場価格はそれぞれ、XB41が24,000円前後、XB31が19,000円前後、XB21が13,000円前後となっており、実売価格的には据え置きである。
前作はスピーカーにイルミネーションを点けるという挑戦だったが、あれから1年、今回は意外に変更点が多い。そんな3モデルを、早速試してみよう。
大きくデザインチェンジ、XB21
まず一番小型のXB21から見ていこう。形状としては円筒形の一部分をスパッとまっすぐに切ったような格好となっており、前作の丸っこいオーバル型とはかなり違った印象だ。カラーはブルー、ブラック、ホワイト、レッド、イエローの5色で、今回はブルーをお借りしている。ブルーと言いつつ、実際の色はシアンに近い。
今回の3モデル共通の変更点として、表面がファブリック素材で覆われている。写真では金属ネットのように見えるかもしれないが、実際には複数の糸をねじった網状の素材で、摩耗に強く耐久性にも優れるという。屋外使用も想定される機器なだけに、耐久性は重要視したいところである。
また今回は、防塵防水性能がIP67となった。防塵性能としては最高クラス、防水性能も「一定の水圧で一定時間(30分間)水中に浸けても有害な影響がない」という事だ。iPhone 7/7Plus以降の防塵防滴性能と同様と考えればわかりやすいだろう。加えて防錆(ぼうせい)性能も追加された。これは読んで字のごとく、サビに強いという事で、海岸での使用も安心である。
Bluetoothのコーデックは、SBC、AACのほか、LDACにも対応した。スピーカー側はハイレゾ対応ではないが、少しでもいい音で伝送できるコーデックを搭載するのは、歓迎すべきポイントだろう。また再生機側とも言えるスマートフォンとの接続も、同時に3台まで可能となった。つまり3人が1台のスピーカーに繋がり、再生楽曲を指定することができる。この場合、あとから再生コマンドを送った方が優先で、前の曲はその時点で停止、次の曲に切り替わる。
スピーカーの振動板も、発泡マイカに変更された。元々発泡マイカはサブウーファの振動板で使われてきた素材だが、小型フルレンジスピーカーとしては、ハイレゾ対応スピーカーHG1で採用されたのが最初である。
HG1のフルレンジは35mm径だったが、XB21では42mmと大型化された。表面からは確認できないが、パッシブラジエータも前後に配置されている。
上面のボタンは左から電源、ボリューム、再生・停止の3つ。ペアリングは電源ボタン長押しだ。
背面端子は、防塵・防滴カバーを外すと出てくる。外部オーディオ入力、充電用MicroUSB端子のほか、バッテリーチェック、Wireless Party Chain接続、Speaker Add接続ボタンがある。
前回からの特徴とも言えるイルミネーション機能は、中央部の上下に点としてLEDがあるだけで、かなり控えめだ。
では早速音を聴いてみよう。サウンドモードとしては、STANDARD、EXTRABASS、LIVE SOUNDの3つがある。デフォルトではEXTRABASSになっている。元々本シリーズのウリである低音強調モードだ。
XB21の本体は、500mlペットボトルのボディ部分ぐらいしか容積がないが、それでもかなり量感のある低音が飛び出して、びっくりする。もはや“小さいスピーカーは低音が出ない”というのは、過去の話だ。以前はこうした設計はBOSEが得意としたところだが、ソニーもかなり追いついて来た。
STANDARDはスピーカーのハードウェアとしての素性がよく出る音だ。低音の量感は減るが、中域の伸びがよくなるものの、多少鼻にかかった感じの音となる。
この春モデルで新搭載されたのが「LIVE SOUND」だ。このモードに切り換えると、音の広がり感が爆発的にアップする。小型スピーカーは、どうしても左右のスピーカーの距離が狭いため、上記2つのモードは、いかにも目の前にあるスピーカーが鳴っている感があるが、LIVE SOUNDではステレオイメージが左右に大きく拡がるため、小さいスピーカーであるデメリットが払拭される。
こうした疑似サラウンド的な機能は、位相ずれが気になることがあるが、LIVE SOUNDはそのあたりもよく配慮されているようだ。エコー成分を伸ばしつつ、ボーカル帯域が飛び散らないように工夫されている。
あいにくLIVE SOUNDへの切り換えは、専用ボタンがないので、専用アプリ「Music Center」から切り換えるしかないが、これは一聴の価値ありである。
さらに低音マシマシ、XB31/XB41
続いて真ん中のXB31を見ていこう。XB31と41はサイズ違いで、ほぼ同じデザインとなる。色はブラック、ツートーンブルー、ホワイト、ツートーンレッドの4色展開となる。今回はブラックをお借りしている。
サイズが大きくなったぶん、発泡マイカのフルレンジユニットは48mmとなる。パッシブラジエータは2つだ。防塵防滴性能IP67、防錆仕様は同じだ。
上部のボタン類はXB21と同じだが、背面端子が若干違う。USB A端子があり、ここからスマホへの充電が可能になっている。内蔵バッテリは、充電5時間、再生24時間となっており、スマホの充電ぐらいは余裕である。
LEDのライティングもXB21に比べると派手で、ボディ上下から側面までのラインが光るスタイル。前面両脇にはフラッシュライトを備えている。
音質としては、XB21よりもさらに低域がぐっと下まで出て、中音域が充実する。XB31とXB21を聴き比べると、XB21が若干ドンシャリ気味であるのがわかる。また小音量時にも低音の不足感が感じられないのはさすがの音作りである。
XB21と比べると、サイズ感は一回り以上違うが、重量は890gと、XB21の530gから倍まではいかない。ある意味、見た目どおりの重さである。その点XB21は、ギュウギュウに中身が詰まった感がある。
そして今回の最上位モデルが、XB41だ。ある意味機能全部入りマシンである。デザイン的にはXB31と同じで、サイズはXB31をそのまま均等に一回り大きくしたスタイル。フルレンジユニットも58mmと一番大きく、2つのパッシブラジエータを備える。SONYロゴも比率に合わせて大きくなっている。
上部のボタンはセンターに位置しており、他のモデルにはない「LIVE」ボタンを備えている。下位2モデルはアプリでしか切り換えられなかったLIVE SOUNDが、本体だけでも切り換えられる。
背面端子はXB31に近いが、充電がMicroUSBだけでなく、専用のACアダプタも併用できるようになっている。
LEDはXB31同様、ライン上のカラーLEDと両脇のフラッシュライトに加え、スピーカーの振動板を照らす白色LEDも搭載する。なお振動板自体は黒なのだが、発泡マイカは表面がテカテカしているので、白色LEDが綺麗に反射する。
音質のほうは、やはりフルレンジの口径と内容積が大きくなっていることから、低音の出にパンチ力がある。サブウーファでも繋いでいるのかと思わせる出音だ。
LIVE SOUNDの切り換えボタンがあるので、簡単にON・OFFを比較できるのがメリットだが、XB41の場合は単体でも十分に音の広がりを感じるサイズだ。デフォルトのEXTRABASSのほうが、十分な低音の沈み込みを感じることができる、素直な音である。
お楽しみ機能満載
ソニーのBluetoothスピーカーは、様々なお楽しみ的な機能を搭載している。背面のボタンにも機能が割り振られているのが、Speaker Add Functionと、Wireless Party Chainだ。
Speaker Add Functionは小型スピーカーで便利に使える機能で、同種のスピーカー2つを繋いで、それぞれにL-Rを振り分けたり、ステレオのままで2台同時に鳴らすことができる。
もう一つのWireless Party Chainは、種類の異なるスピーカーでも最大10台までワイヤレス連携し、同じ音楽を同時に鳴らす機能だ。マスターとなるスピーカーの音を他に伝送するというスタイルである。この機能は昨年のXB20/30/40でも搭載されているので、新旧のスピーカーでも同時に鳴るはずだ。
以前はAddボタンと+ボタンを長押しという設定方法だったが、今回は専用ボタンが付いたため、簡単に連結できるようになった。広い領域を同じ音源でカバーできるため、いくつかの部屋を跨いでのホームパーティというだけでなく、いわゆるPAとしても簡単に設置できるため、イベント系の業務ユーザーからも人気のある機能である。
今回初めて実装された機能が「Party Booster」だ。スピーカー本体にセンサーが組み込まれており、ボディを叩くことでパーカッションを始め、効果音などを鳴らすことができる。音楽を再生しながら自分もプレイヤーとして参加できるという、スピーカーながらも楽器的な要素を取り込んだ機能だ。
センサーは6面全部をセンシングすることができる。このうち音が鳴るのは、背面を除いた5面だ。背面は素早く2回叩くことで、Party BoosterのON/OFFを切り換えできる。切り替わった事は、電源ランプが3回点滅する事でわかる。
どこにどんな音を組み込むかは、専用アプリ「Music Center」から指定する。プリセットも2パターン仕込まれているので、最初はそれで遊んでみるといいだろう。今回はXB21を使って、フリー音源に合わせてドラムパートを補強してみた。
この機能はXB21/31/41すべてで使えるが、41は結構重いので、片手で持ってプレイすると若干疲れる。XB21ぐらいが適当だろう。それでも綺麗に鳴らすには、手のひらでペシペシ叩いたぐらいでは反応しない事があり、ゲンコツで叩くぐらいのパワーでないときちんとリズムに乗れない。だがそうなると表面が粗いメッシュ状の布地になっているので、手が痛い。
恐らく6面の表面全部にセンサーがあるわけではなく、1つのモーションセンサーで6軸の動きを検知しているのだろう。あんまり簡単に鳴ってしまうと誤動作の心配があるが、もう少し軽く叩いても鳴るようにしないと、細かいリズムに反応できない。面白い機能ではあるが、もうちょっと洗練が必要ではないかと思われる。
総論
前作のXB40/30/20は、サイズに応じて低音の出方が段階的に変わる感じだったが、今回のXB41/31/21はサイズにあまり左右されず、全モデルでスピード感のあるタイトな低音が楽しめるスピーカーとなった。特にXB21のサイズでここまで低音を出せるものは、あまりないだろう。
加えて新搭載のLIVE SOUNDは、これまでステレオ感に難があった小型スピーカーの弱点をカバーして余りある機能だ。XB41以外は本体のみで気軽に切り替えできないのが残念なところで、ぜひファームアップで何かと何かのボタン同時押しぐらいで切り換えられるようにしていただきたいものである。
また防塵防滴機能が1段階アップしたことで、水回りでも使いやすくなった。同じIP67のスマホと組み合わせて、お風呂の中でも安心して使えるスピーカーである。
昨今はスマートスピーカーの台頭で、モノラル360度スピーカー全盛の感があるが、やはりステレオで鳴るスピーカーは聴いていて気持ちがいい。汚れにも強くなった外装で、キャンプやバーベキューのお供にも最高だ。ただし音量に関しては、周囲の方への配慮もぜひお願いしたいところである。
これからの季節、活躍する場が増えるスピーカーだろう。
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