小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1112回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

Anker定番モバイルプロジェクタが進化。「Nebula Capsule 3」を試す

1月25日より発売開始された「Nebula Capsule 3」

モバイルプロジェクタの定番

また今週もプロジェクタの記事になってしまうが、今回はモバイルプロジェクタとしてはもはや定番とも言えるAnkerの「Nebula Capsule」シリーズの新作をテストする。

小型の円筒形で内部にバッテリーを装備し、電源接続なしでどこでもプロジェクションできる「モバイルプロジェクタ」として初代「Nebula Capsule」および「Nebula Capsule Pro」が登場したのは2018年だった。続く'19年に「Nebula Capsule II」、'22年に「Nebula Capsule 3 Laser」を発売。そして、今年1月25日発売の新作が今回お借りした「Nebula Capsule 3」となる。

先に「Nebula Capsule 3 Laser」が出ていることから、「Nebula Capsule II」の後継と呼ぶにはちょっと据わりが悪いところだが、4年連続でスマートプロジェクタ部門売上1位である「II」の置き換えとして訴求していきたいという事だろう。価格は69,990円で、現在Amazonと楽天、直販サイトにて先着1,000台限定で20% OFFで販売されている。

定番モバイルプロジェクタの最新モデルを、早速試してみたい。

毎回設計が違うボディ

「Nebula Capsule」シリーズは黒の円筒形というのが初代からのお約束だが、実はボディは毎回サイズが微妙に違っており、ボディは同じで中身だけアップデート、というやり方を取っていない。その時点の技術で、できる限り最小にしようという意気込みが感じられる。

実寸は直径78mm×高さ160mmで、「II」が直径80mm×高さ150mmだった。つまり径が少し細くなり、高さが1cm増である。一方「3 Laser」は直径83mm×167mmなので、こちらより小さい。重量は0.85g。

350mlのコーヒー缶と比較

デザイン的には「3 Laser」のテイストを継承しており、レンズ回りの赤の差し色などは同じである。ただしレンズ径は若干小さくなっている。

赤の差し色は同じだが、レンズ径は「3 Laser」より小さめ

明るさは200 ANSIルーメンで、これは「3 Laser」には劣るが「II」と同等。ただし解像度はフルHDとなっており、「II」の720pからの進化点となっている。ディスプレイサイズは0.23インチで、これは「3 Laser」と同じ。HDRにも対応したので、ディスプレイは「3 Laser」と同じ物を採用しているのかもしれない。

それなら「3 Laser」(119,900円)が一番いいのではないかと思われるだろうが、価格が倍近く違うことを考えれば、今回の「3」はいい落とし所を狙ったと言える。

電源ボタンは背面にあり、その上にはスピーカーモードへの切替端子がある。背面端子はアナログオーディオ出力、HDMI入力、USB-A、USB-C端子がある。充電はUSB-C端子から行なう。

電源ボタンは背面。一番上はリモコン受光部

天面にはタッチ式の操作ボタンがあるが、リモコンが付属するほか、スマホアプリからもコントロールできる。底面には三脚穴があり、平置きではなくちょっと角度を付けたい場合には便利だ。

天面はコントローラになっている
底面に三脚穴

スピーカーはモノラル8Wで、表面からは見えないが、後ろから見て右側にある。

リモコンも見ておこう。この手のプロジェクタにはよくある黒の細身のタイプで、Amazon PrimeとNetflixのショートカットボタンがある。中央最上部はオートフォーカスで、基本的には自動調整されるのだが、「オートフォーカスをマニュアルで起動する」時に使用する。

付属リモコンはシンプル

基本的には真っ暗にした環境下で使うので、リモコンのボタン配置は重要だ。電源ボタンが中央にないというのも、間違って電源を切ってしまわないようにという配慮だろう。電源、AF、戻る、ホーム、設定のボタンにはバックライトが仕込んであり、何か操作すると光るようになっている。一方ボリュームボタンは頻繁に使用するキーの割にバックライトもなく、かつ手触りでわかるようなシーソーボタンでもないので、手探りでは探しづらい。

明るくはないが十分楽しめるサイズ

これまで「Nebula Capsule」シリーズは、UIにAndroid TVを搭載していたが、今回はGoogle TVに変更されている。この違いについては割とややこしい話になる。

Andorid TVはOSだが、Google TVはどちらかというとChromeOSのようなものに近い。ChromeOSは、OS自体はLinuxベースで、ChromeブラウザベースのUIが被せられている。Google TVも似たような構成で、OS自体はAndroid TVベースだが、その上にGoogle TVが被せられているという作りだ。

本機もOSとしてはAndroid TV 11がベース

どのみちGoogle提供のOSおよびUIには違いないのだが、Android TVがアプリ単位でサービスを拡張できるのに対し、Google TVはどちらかといえば内蔵サービスを貫いて、コンテンツ単位で見ていくといった作りが特徴となる。モバイルプロジェクタとしてはGoogle TV搭載は世界初だという。

Google TVのホーム画面

アプリとしては、リモコンにもボタンがある2サービスはもちろん、ABEMAやhulu、U-NEXT、Disney+など一通りの有名どころは取りそろえているので、コンテンツを見る分には不自由はないだろう。

サービスはプリインストールされているものから選択する

起動すると毎回AFと台形補正が自動調整されるが、これはかなり正確だ。マニュアル調整もできるが、自動補正でまず問題ないだろう。スローレシオは、120インチ@3.18m、100インチ@2.66m、80インチ@2.13m、60インチ@1.6mとなっており、スクリーンからそれほど離さなくても簡単に大画面が得られる。投影画面サイズは40インチから120インチとなっているが、筆者が試したところ距離50cmで画面サイズ13インチぐらいでもフォーカスが合う。

自動補正動作中の画面

Google TVのホーム画面はすでにテレビなどで体験されているかたも多いと思うが、過去の再生履歴などから好みのコンテンツを分析し、サービスを貫いてコンテンツを紹介してくれる。中には改めて加入が必要なものもあるが、Amazonから追加チャンネルという格好で加入できるものもあり、間口が拡がる。

人気コンテンツも紹介してくれる

輝度としては200 ANSIルーメンということでそれほど明るくはないが、コントラスト感や発色の良さがある。昼間でも見えるほどには明るくはないが、夜に部屋を閉め切って投影するには十分だ。

音質もバランスは悪くないが、SEが聴き取れるほど音量を上げるとセリフなど人の声が甲走るような時があり、うるさく感じることもある。またモノラルスピーカーなので、音の広がりにも限界がある。家族に迷惑をかけず1人で楽しみたい場合は、遅延などを考えて有線ヘッドフォンを使うのがいいだろう。また、プロジェクター自体をBluetoothスピーカーとして使うモードも備えている。

カスタム設定にすればトーンコントロールも使える

リモコンツールとしては、スマホアプリの「Nebula Connect」が使える。これはスマホ画面をトラックバッドのようにして制御できるもので、暗闇で使う場合はリモコンより便利かもしれない。

リモコンアプリ「Nebula Connect」

またリモコンからはアクセスできない機能として、「ツールボックス」がある。「風景・癒やし動画」は、環境ビデオ的な映像が再生される。「壁時計」は、様々なスタイルで時計を投影する。Aladdin Xのプロジェクタはこの手の機能が充実しており、それに習った機能と言えそうだ。

ツールボックスからは環境ビデオ的な機能が利用できる
BGV的なコンテンツも提供される
時計表示もできる

総論

本機のポイントは、「Nebula Capsule II」と同等の価格ながら解像度を上げ、コントラストも向上した新ディスプレイと言えそうだ。サイズ的にも大きくなったわけでもなく、バッテリーだけで約2時間程度の映画が再生できる。本体サイズも小さいので、気軽にセットできるのもメリットだ。ネット配信サービスから映画を見るなら、映画館的な雰囲気と画面サイズが簡単にセットアップできる。

リモコンにはAmazon PrimeとNetflixのボタンがあるが、Google TVのホームではサービス貫きでおすすめコンテンツが表示されるし、続きがあるコンテンツも表示される。また音声による貫き検索もできるので、あまりサービスに直接入る必要もないというのが正直なところだ。

今回はテストしていないが、HDMI入力があるのも便利である。内蔵バッテリーだけで動くので、頻繁に講演やプレゼンがある方は、1台カバンに入れておくと飛び道具としてインパクトは十分だ。まさかプロジェクタまで持参しているとは先方も思わないだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。