小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第617回:DIGA録画番組をiPhoneでどこでも快適視聴

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第617回:DIGA録画番組をiPhoneでどこでも快適視聴

約15,000円のDTCP+サーバ、「DY-RS10」

■テレビのリモート再生がついに実現

テレビ番組を家庭外へストリーミング配信する機能として、DTCP+が徐々に注目を集めている。今年2月にアイ・オー・データ機器からDTCP+対応NASのRECBOX「HVL-Aシリーズ」が発売され、続いて配信用にMPEG-4 AVC/H.264トランスコーダも搭載した新機種「HVL-ATシリーズ」も6月下旬に発売予定だ。

 前回のDIGA「DMR-BZT750」のレビューでご案内したとおり、今回はDIGAにDTCP+のサーバー機能を拡張するアダプタ、「DY-RS10」をご紹介したい。これは、DIGAで録画した番組をDTCP+で配信するためのアダプタで、DIGAのUSBポートに接続して使う機器だ。5月下旬から発売されており、店頭予想価格は15,000円前後、ネットの通販サイトでは実売12,000円弱のところもある。

 対応するレコーダはDMR-BZT750、BWT650/550、BRT250などで、対応一覧表はパナソニックのページに掲載されている。「DMR-BZT750」も対応機種なので、このアダプタと組み合わせてみたい。

 おそらく将来的にはこの機能がテレビやレコーダに内蔵されていくものと思われるが、それを一足先に実現する製品だ。DTCP+でのストリーミングとは、一体どんな使い勝手なのだろうか。さっそく試してみよう。

名刺サイズのサーバー

名刺サイズのDTCP+サーバ

 多くの製品情報では「DY-RS10-W」と表記してあるが、マニュアルの品番には「DY-RS10」としか書かれていない。おそらく末尾の-Wはカラーを表わしているのではないかと思われる。

 外観としては一見するとB-CASカードリーダのようだが、サイズが名刺サイズしかなく、一回り小さい。ボディは白で、天板のみハーフミラーっぽいパネルが貼り付けられている。そんなに発熱もしないので、放熱板という事でもないようだ。

 側面にはミニUSB端子があり、付属のケーブルでDIGAのUSB端子に接続する。電源もそこから取るという仕掛けだ。横にはSDカードスロットがあり、SDカード内にある持ち出し用コンテンツが配信される事になる。このあたりは後でゆっくり見ていくことにしよう。

側面には電源供給と番組転送に使うUSBポート
DIGAのUSBポートに接続して使う
SDカードに番組を記録
クライアントアプリのリモートビューアー

 その横にあるMODEボタンは、WPSでWi-Fiルータに接続するためのものだ。つまりアダプタとはいっても、DIGAのネット接続を経由するわけではなく、このアダプタ自身が、ルータに直接接続する独立したDTCP+配信サーバであるということだ。

今回組み合わせて利用したDIGA「DMR-BZT750」

 一方、受信側のアプリ「リモートビューアー」は、現在iOS版しか提供されていない。Android版、PC版は、今後検討していくという。したがって現時点では、iPhone 4S/5、第5世代iPod touch、iPad 2、第3/4世代iPad、iPad miniがクライアントとして使える機器という事になる。なお、アプリは無料でダウンロード可能だ。

 対応レコーダは前述の通り、対応モデルがパナソニックのページに掲載されている。フル機能が利用できるのは、この春発売のDMR-BZT750、BWT650/BWT550、BRT250の4モデルのみだが、後述する、レコーダに録画した番組のSDカードへの自動転送機能や、DIGAの電源OFF時にアダプタに電源が供給されない点を除けば、2010年春モデルから利用はできるようだ。

レスポンスのいい再生

予約でSD/USB経由の持ち出しに設定

 ではネットワークの設定なども終わったので、実際の動作をいろいろ試してみよう。まず録画した番組を、DY-RS10に差し込んだSDカードに転送しなければならない。

 DIGAの録画予約設定では、「持ち出し番組の設定」という項目がある。ここで持ち出し方法に「SD/USB経由」、画質を「高画質」、かんたん転送の登録を「する」に設定しておく。これで録画が終わると、自動的に持ち出し用の番組がUSB接続されたDY-RS10内のSDカードに転送される。この録画形式はDIGAの「持出し番組」機能のままで、640×360ドット、ビットレート1.5MbpsのSD-Video形式 H.264 Mobile Video Profileとなる。

持ち出し番組のデータはあとからでも作成できる

 一方、持ち出し番組の設定をしていない、すでに録画された番組を転送するには、録画番組を選んだ後、緑ボタンの「編集」から、「持ち出し番組の作成」を行なう。こちらもかんたん転送の登録を「する」に設定しておくと、空いた時間に自動転送される。

 手動ですぐに転送したい場合は、スタートメニューの「持ち出し番組を転送する」から「持ち出し番組一覧」に入り、「USB機器」に対して転送を行なう。「SDカード」を選択してしまうと、DIGA本体のSDカードスロットに挿してあるSDカードに書き出してしまうので、間違えないようにしたい。もっとも間違えたとしても、そのSDカードを抜いてDY-RS10に挿せばいいだけなので、そんなに問題はないとも言える。

スタートメニューから持ち出し番組転送を選択
手動で転送も可能

 では視聴するクライアントのほうを見ていこう。今回使用したのは、iPhone 5と第3世代iPadである。まずiPhone 5でアプリを起動し、ホームネットワーク内でアダプタとの紐付けを行なった後、ソフトバンクLTE回線で屋外から視聴してみた。

接続されるとサーバ内の番組一覧が表示される

 アプリを起動すると、まずDY-RS10を探しに行ったのち、視聴可能なコンテンツが表示される。番組名をタップすると再生が始まる。

 VGA解像度なので、iPhoneぐらいの画面サイズとは非常に相性がいい。ビットレートは1.5Mbps程度で、遠景の花畑のように、限りなく細かいところまで写っているようなシーンでは圧縮の荒れは感じるが、通常の番組視聴ではまったく支障のないレベルだ。過去ケータイやスマホではワンセグでのテレビ視聴がスタンダードだった時代もあるが、ワンセグ画質と比べると、比較にならない解像感である。

番組再生時は30秒単位のスキップ、バックボタンが表示される

 番組のスクラブ再生もスムーズだ。スクロールバーの長さが限られているので、長尺の番組はそれほどピンポイントで狙ったところまでいけるわけではないが、レスポンスはかなり良い。ローカルに転送したファイルに匹敵するレスポンスで、ストリーミングで見ているということを忘れさせる。また30秒スキップ、バックボタンもあるので、見逃した部分に戻ったり、先に進めたりするのも簡単だ。

 見終わった番組は、クライアント側で削除することができる。従って、家に帰っていちいちDIGAで消去する必要はない。

iPadとWiMAXルータの組み合わせでは、サーバを見つけられなかった

 携帯キャリア回線ではなく、モバイルルータを使用した接続も試してみた。しかし手持ちのUQ WiMAXルータ「NEC Atrem WM3600R」とiPadの組み合わせでは、DY-RS10を見つけることができなかった。LTEでは視聴できるので、屋外からストリーミング再生できることは間違いないのだが、UQ WiMAXでの接続は、間に入っているプロバイダの条件などもあるため、うまく行かない例もあるようだ。

アダプタも屋外に持ち出してみる

 次の実験として、DY-RS10は独立して動くDTCP+サーバなので、電源さえ供給すれば別にDIGAと繋がなくてもいいのではないか? という仮説を立てた。これを検証するため、DY-RS10にUSBタイプの外部バッテリーを接続してみた。

 また接続ルーターは、ホームネットワークではなく、WiMAXルータである「NEC Atrem WM3600R」に接続してみた。つまり、DY-RS10ごと外に持ち出すことが可能かどうか、という事である。

外部バッテリで単体動作も可能

 結果として、クライアントとなるiPadをAtrem WM3600Rに接続することで、ローカルなネットワークが形成されるので、どこでも番組を視聴することができた。この場合はDTCP+とは関係なく、DTCPサーバとして動作している事になる。

 「アダプタごと持ってきちゃってどうすんだよ」というツッコミもあろうかと思うが、例えば海外に出張している時など、わざわざWANを使って日本のDY-RS10にアクセスするのはナンセンスだ。海外の低速かつデータ制限ありの回線では、満足な結果は得られないだろう。海外に限らず、3Gしか入らない地域に旅行した時なども、この方法で移動ローカルネットワークを形成すれば、ワイヤレスでどこでも視聴できる。

 なおiPadでの視聴では表示面積が拡がるため、もう少し解像感は欲しいと感じるものの、目から40~50cm離して見れば、十分鑑賞に堪える画質だ。

 ちなみにDY-RS10は、クライアントが20台まで接続できる。試しにiPhoneとiPadで同時にアクセスし、別々の番組を再生してみたが、問題なく視聴できた。同一のネットワークに繋がっているiOS端末なら、アプリを起動するだけでDY-RS10を探しに行って認識するので、アダプタごと持ち出す作戦は意外に使い出があるかもしれない。

 ただ、アダプタをDIGAから外していると、新しい番組が録画されても自動で転送されなくなるので、家に帰ってから新しい録画番組を手動で転送するという手間がかかることになる。あるいは本体に別のSDカードを入れておいて、家に帰ったらカードを入れ替えるなど、いろんな運用方法が考えられそうだ。

そもそもなぜ外付けなのか

 DY-RS10のようにわざわざ外付けにするではなく、DIGAの中にDTCP+ルータ機能を入れ込めばよかったのではないか、と思う人も多いと思う。必ずしもすべてのユーザーに必要な機能ではないかもしれないが、DIGA内の機能と共通化すれば、それほどコストをかけずに実装できるはずだ。まあ、別々になっていることで取り外して持って行けるという使い方もできるわけだが、それは本来想定された機能ではないだろう。

 DIGA内に内蔵できなかったのは、ARIBの規定のためと言われている。具体的には、TR-B14 第3分冊 5.4「インターネットの再送信に関わる機能制限(8-16ページ/リンク先はPDF)」に、これに関する記述を見る事ができる。

 抜粋すると、「デジタルコピー制御記述子のdigital_recording_control_dataによってコピーが制限されているコンテンツ及びコンテント利用記述子のencryption_modeにより保護が指定されているコンテンツを、インターネットに再送信することにつながる出力にコンテンツを出力できるような機能を受信機の機能として有してはいけない」という部分。

 この中にある、「受信機の機能として有してはいけない」という部分から、テレビチューナが搭載されているテレビやレコーダといった機器には、DTCP+による再送信機能を入れられないことになる。従ってアイ・オー・データ機器のHVL-A/ATシリーズはチューナの無いNASに機能を持たせているわけであり、DY-RS10も外付け機器として作られているというわけだ。

 ただ、なぜこのような制限がなければならないのかの具体的な説明は規定には書かれていないため、何を懸念してのことなのかはわからない。

 その一方で、総務省の主導で進めている「放送サービスの高度化に関する検討会」では、放送関連分野の国際競争力強化として、スーパーハイビジョン(4K/8K)の推進、スマートテレビの推進、ケーブルテレビプラットフォームの整備という3分野について、検討を行なっている。この検討会は、NHKと民放キー局のほか、メーカーではソニー、パナソニック、東芝が参加している。

放送サービスの高度化に関する検討会で配布された資料の一部

 5月31日に行なわれた第3回検討会では、これまでの各ワーキンググループの検討結果を踏まえ、取りまとめ案が発表された。このうち、スマートテレビで実現できる機能の一つとして、ソニーが「自宅のスマートテレビで受信している、あるいは録画された放送番組を、外出先から、インターネットを介してモバイル端末によって視聴することを可能とする。」というアプリケーション案を提示している。

 生放送のストリーミング配信はまだできていないが、録画番組のストリーミングはまさに、今回のDTCP+サーバで実現している機能であり、将来のスマートテレビには配信機能が内蔵されることで、放送局各社とメーカーで合意に至ったと考えていいだろう。なおこの推進策は、年内にも技術的手法や運用条件について検討し、実装していくことを目指すと書かれており、今年中にはARIBの規定が書き換えられ、テレビやレコーダなどで対応製品が出てくる可能性は高そうだ。

 その一方で、これらスマートテレビの推進は、消費者への買い換え負担を減らすため、スーパーハイビジョンと一緒に進めることが望ましいともされており、どうも内蔵するなら4Kテレビに、という線も浮上してきた。

 「それなら別でいい」という人もいるだろう。そういう意味では、今回の15,000円程度で買えるDY-RS10は魅力的だ。ストリーミング再生するには、テレビごと買い換えるしか手段がなくなってもまた困る。

 少なくとも2010年春モデル~2013年春モデルのDIGAを持っている人は、アダプタを追加するだけで、他の人に先がけて今からDTCP+のストリーミング視聴が楽しめる。この点では、買って損はないデバイスだと言えるだろう。

総論

 筆者も正直、アダプタ形式になっているDTCP+サーバなんて使いづらいだろうと予想していたのだが、実際に使ってみると、別になってるからできることがあると気がついた。

 なんでわざわざ別にSDカードを用意しないといけないの、といった不満も、実はメディアを入れ替えることで柔軟に対応できる部分もある。バラバラになっているぶん、ユーザーが知恵を使って幅広い運用ができるというのは、実に面白い。

 1台のアダプタに複数台ぶら下がれるのも魅力だ。もちろんカードの読み出し速度やネットワーク速度の問題で、本当に20台が同時に使えるわけではないだろうが、弾力的な運用には欠かせないフレキシビリティを持っている。

 やるなパナソニック。そういう気持ちにさせてくれる、いい製品であった。

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動画転送アダプタ
DY-RS10-W
DIGA
DMR-BZT750


小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。