小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1199回

撮影熱は衰えず。InterBEE2025で見えるトレンドとは
2025年11月26日 08:00
復調傾向にあるInterBEE
今年も例年に倣い、11月19日から21日までの3日間、千葉幕張メッセにて国内最大の映像機材展、InterBEE2025が開催された。今年の来場者は3日間で34,072名、出展者数1079と、コロナ前の水準にはまだ少し届かないものの、ここ5年間で考えれば復調傾向にあるといえる。
来場者の傾向も、以前は放送関係者のオジサン同窓会みたいな感じが減少し、最近は学生や若いクリエイターの姿も目立つ。展示内容も放送システムに限らず、カメラやレンズ、三脚、照明、音響など、映像制作現場寄りのものが増え、映像の総合展示的な傾向が強まったこともあるだろう。
今回も3日間、現地で取材を行なった。今回はその中でも、AV Watch読者に関係しそうな製品やソリューションをご紹介したい。忙しくて行けなかったという方の一助となれば幸いだ。
シネマ以外でも活躍しそうなキヤノンのソリューション
キヤノンブースでは、11月27日に発売が決定したEOS C50を出展した。Cinema EOS Systemシリーズとしてはもっともエントリークラスとなるモデルだが、一般のミラーレス機に近い形状ながらハンドルグリップは同梱ということで、拡張性に優れた機体となっている。
特徴としては、フルサイズの7Kセンサーを搭載したことで、センサーによる4倍ズームを実現する。単焦点レンズを搭載したとしても、多彩な画角が得られることになる。また昨今マルチサイズコンテンツで用途を発揮するオープンゲート記録にも対応した。
またEOS Cシリーズに米国SMALLHD社のカメラモニターと組み合わせて、このモニター上でもタッチでメニュー操作ができるというデモが見られた。おそらくこの組み合わせはまだ誰も試したことがないだろう。
キヤノンブースではリモートカメラソリューションの一つとして、「AMLOS」を出展した。2023年からテストマーケティングを続けてきたサービスで、そもそもは会議やオンライン授業の用途が想定されている。
これはマルチソースをそのままマルチのままで配信するシステムで、ユーザー側はマルチソースの中から自由に映像を選んで組み合わせて表示できるほか、画面サイズなども自由に決められる。従来は配信スイッチャー側ならこうした画面は見られたが、それをそっくりそのままユーザー側に提供するというソリューションである。
例えば授業に関しては、オンラインではなくても後方の席の生徒がホワイトボードやスライドを手元で拡大して見るなど、多くの用途が想定される。今回はそれをテレビやライブ配信のスタジオ向けでも使えるのではないか、という提案である。
テレビ用途としては、出演者が手元のモニターでOA中の画面をチェックしながら、差し込まれる予定の資料を先に確認したり、ディレクターからのカンペを確認するといった用途が想定されている。これまでテレビ出演者はスタジオ内のあちこちに情報が散らばっているため、常に周囲に目線を配っていないと状況がつかめなかったが、これがあれば一元的に情報を確認できる。
これまでない、を追求するLibec
国内三脚ブランドであるLibecでは、従来の三脚よりも少し短い三脚、「タンキャク」をシリーズとして展開を始めた。新製品となる「TK-210C」は、ボール径100mmの本格三脚ながら、全体的に足が短い。
高さは最低21cmなので、ハイハットと同じように使える一方、短いながらも3段の足を備えており、最高70cmまでをカバーする。一般の三脚が最低で55〜60cmぐらいなので、ちょうど重なる部分を持ちつつも、低いところからのアオリやローアングルでの接写などに対応できるのがポイント。
またカーボンを採用したことで、グランドスプレッタまで含めても重量が2.7kgしかない。重いと持っていくのが面倒になるタイプの三脚だが、この重量であれば苦にならないだろう。耐荷重は40kg。
またボール径は100mmから75mmへの変換アダプタが標準で付属するため、多彩なヘッドに対応できるのもポイントだ。昨今流行りのワンポイントロックではないところが難点だが、カーボンで標準価格103,000円はかなり安い。
低価格三脚でも手を抜いていない。小型ビデオ三脚として知られたTH-650を約30年ぶりに全面リニューアルし、「TH-650X」として今年12月より投入する。標準価格は29,150円。
このクラスの三脚はすでに中国メーカーが押さえにかかっているところだが、フォトと動画両方で使えるよう、アルカスイス互換プレートを採用した。アルカスイスは写真用三脚ヘッドによく採用されているため、1台のカメラをすぐ乗せ換えられるのがポイントだ。
カウンターバランスは固定だが、パンとチルトのフリクションが無段階で調整でき、さらにそれを締め込むことでロックするという一体型つまみを搭載。動き出しや止め際が自然で美しく決まるよう、ヘッド構造を1から再設計したという。
脚部はアルミだが、重量は2.7kgに抑えた。耐荷重は3kgなので、コンパクトミラーレス向けということだろう。軽い単焦点レンズならフルサイズもいけるはずだ。
Manfrottoも新シリーズを展開
ヴィデンダムプロダクションソリューションズのブースでは、海外三脚のハイブランド、Vinten、Sachtler、Anton Bauerなどの製品が一堂に展示された。中でも写真とビデオ兼用三脚で人気の高いイタリアのブランドManfrottoでは、新シリーズ「Manfrotto ONE」の展開を開始している。アルミとカーボンの2タイプがあるが、構造は同じ。
脚部はワンタッチで3段の脚を同時に伸縮・ロックできるワンポイントロックを採用。またヘッド部はオリジナルのXCHANGEシステムを採用し、ヘッド下のリング状の部分でロックを外すことで、ワンタッチでヘッド部分の付け替えが可能になっている。
Manfrottoの特徴として、センターポールが伸びるという機構があるが、従来モデルでは脚部を開いて低くした時に、センターポールが邪魔で一番下まで下がらないという難点があった。だがONEではこのセンターポールがスライドして取り外せるようになっており、ハイハット並みのローアングル撮影にも対応できるようになった。
またセンターポールのもう一つの特徴として、一旦三脚から抜いて横から差し込むと、突き出しの俯瞰撮影ができるという機能があった。これがONEではセンターポールを一旦抜く必要がなくなり、途中で折れ曲がって90度に倒せるという機構も搭載した。セッティング変更もかなりスピーディに行なえるだろう。
キット商品として、500Xフルード雲台が付属するものもある。この雲台はビデオ用ながら90度回転できるので、今流行りの縦動画撮影への切り替えもワンタッチだ。
Graphics Presenterで機能拡充を図るローランド
ローランドの一部のスイッチャーでは、「Graphics Presenter」というタイトル・グライフックス生成ソフトウェアが無償で利用できる。このソフトが今回InterBEEに合わせてバージョン2.0が公開され、多くのテンプレートがアップデート、または新規に追加された。
いわゆるロワーサードと呼ばれる、画面下に出る名前やタイトルのテンプレートの他に、多くのスポーツに対してスコア表示するテンプレートも拡充された。例えば野球であれば、フォアボールになれば自動的に1塁ベースが赤くなり、それぞれの塁のランナーが先に進むといった動作まで、自動化している。
サッカー用としては、試合用とPK用のUIを別に用意している。また学校での利用を想定して、卓球やテニス、バドミントンなど、汎用的に使える得点ボードのUIも用意されている。今後はマイナースポーツであっても、こうした自動化スコアボードに順次対応していくという。
対応機種も拡充し、スイッチャーではV-160HD Ver 3.1以降、V-80HD、V-8HD Ver 3.0以降に、AVミキサーではVR-120HD Ver 2.0以降、VR-6HD Ver 2.0以降が対応する。旧機種でもソフトウェアアップデートだけで対応可能になるよう、設計上で工夫されていたのだという。
またこの新バージョンでは、Stream Deckからのコントロールに対応。専用プラグインにより、Stream DeckのボタンでGraphics Presenterがコントロールできるようになる。
さらに選手一覧などはCSVからインポートできるなど、欲しかった機能満載となっている。
多色展開でクリエイターをサポートするRODE
銀一ブースでは、オーストラリアのマイクブランドRODEの新製品が一堂に紹介された。特に来場者の目を引いていたのが、従来製品のカラーバリエーションだ。スタジオコンデンサーマイクのNT1シリーズやスタジオアームPSA1+が多色展開されており、女性ユーザーに人気だという。
さらにはワイヤレスマイクをインタビューマイクに変えるためのアダプタ、Interview GOやInterview Microまでも多色展開が始まっており、従来はなるべく目立たないようにするのが正解だったマイクロフォンの世界に一石を投じる格好となっている。
今回日本で初めての展示となったのが、「Wireless Micro Camera Kit」だ。すでに米国向けのサイトには製品情報はあるが、日本での発売や価格等は未定となっている。
昨今はワイヤレスマイクの他社参入が相次いでいるが、多くはスマートフォンやアクションカメラへのUSB-C接続をメインにしている。一方Wireless Microは、USB-C対応のほかミラーレスカメラのアナログ入力にも対応できる作りとなっている。またトランスミッタ側にもマイク端子を備えることで、有線のラベリアマイクの接続を可能にするなど、スマホ用よりももう少しプロフェッショナル寄りの現場に対応できる作りとなっているのがポイントである。
総論
日本企業では、秋発売の新製品でももはやInterBEE合わせで発表という製品は少なくなった。それより前に発表し、InterBEEは実物を確認する場、という流れになっている。
一方で海外製品は、すでに海外では発表済みだが日本では未発表みたいなケースが多く、InterBEEで初めて知って現物が触れる場として機能している。
InterBEE名物の「ロケ弁グランプリ」もすっかり定着しており、お昼は幕張メッセの施設ではなくここで食べるという風潮が根づいている。
撮影系の機材は今年も元気で、業界人や業務だけでなく、いわゆるクリエイター層と呼ばれる人たちの流入が起こったことで、カメラだけでなくその周辺機器のニーズが底上げされたということだろう。
ネットではAI動画の発達によって、もはや撮影しないクリエイターが登場してくるのではないかと言われてもいるが、基本的に今クリエイターとして影響力を持っている人たちは、撮影が好きで自分が出るのも大好きな人たちなので、そこの需要がある限りカメラ系は衰退しないだろう。
一方で放送系は、もはやIPやAI云々を前面に押し出してはおらず、それらはバックグラウンドで動いていて、いかに省人力化できるかといったソリューション展示が多く見られるようになってきた。地方局からじわじわと人手不足の影響が顕著になってきたことで、システム更新を機会に大胆な省力化へシフトするという決断をする局も出てきている。
また今回もInterBEE公式イベントとして、InterBEE Cinemaが展開されており、映画以外のアウトプットをシネマスタイルで撮るというスタイルが定着しつつあるのは、世界中でも日本が割と先端を行っている部分である。
出展者が増えると休憩ブースが減るので、会場を回るのがだんだん大変になってきているところだが、以前のような活況が戻ってきつつある点では嬉しく思っている。






















