AV Watchアワード
「AV Watchアワード2016」発表。テレビやオーディオ、コンテンツなど今年の代表製品
2016年12月16日 12:00
オーディオ&ビジュアル関連で大きな動きのあった2016年。今年を振り返り、話題を呼んだ、進化をもたらした製品やサービスなどを表彰する「AV Watchアワード」を開催したい。
今回は、編集部員4名が実際に体感・評価した製品を中心に「テレビ」、「ハイレゾプレーヤー」、「ヘッドフォン」、「コンテンツ」、「サービス」の5部門に限定。各自がリストアップした候補製品について協議し、各ジャンルの大賞を決定した。あわせて、今年のトピックもまとめているので、2016年の振り返りに役立ててほしい。
テレビ部門:BRAVIA Z9D
色・コントラスト・輝度の表現範囲を拡げ、映像コンテンツの1大トレンドとなっている「HDR(ハイダイナミックレンジ)」。テレビ市場の画質向上では、このHDR対応が最大のトピックとなった。
当然、各社の上位モデルもHDR対応による画質向上を目指してきたが、大賞は、そのHDR画質に徹底的にこだわり、新LEDバックライト技術まで投入したソニーのフラッグシップモデル「BRAVIA Z9D」。
直下型のLEDバックライトを敷き詰め、細かなエリア制御を行なう「Backlight Master Drive(BMD)」を搭載。圧倒的な輝度パワーと精度の高いエリア制御により、見たことのないハイコントラスト表現を実現させ、HDR画質のインパクトをもたらした。映像の立体感や階調表現力も優秀だが、その明るいHDR画質は確かに“次世代”を感じさせた。
'16年はUltra HD Blu-rayが発売され、またNetflix等の映像配信サービスでも4K/HDRコンテンツが続々登場した。コンテンツ制作側もHDRへの取り組みは進化の途上だが、Z9Dは、デイスプレイ側の一つのリファレンスとなる製品となるだろう。
また、有機ELでも大きな動き。LGは有機ELテレビ「LG OLED TV」の展開を加速し、最上位のEP6シリーズに加え、多彩なラインナップを用意し、高いコントラストや色表現力、動画応答性の高さなどをアピール。なにより、漆黒の表現力は自発光の有機ELにしか出せないもので、明るいZ9Dとは別の観点からHDR時代の高画質を印象づけた。'17年には、国内メーカーの有機ELテレビ参入も予想され、テレビの本質と言える画質の進化は続きそうだ。
ハイレゾプレーヤー大賞:AK70
今年の大きなトピックは、ソニーがハイレゾ対応ウォークマンの新ラインナップを投入した事だ。2万円台~4万円台に「NW-A30」、10万円台には「NW-WM1A」、さらには筐体を無酸素銅で構成した超弩級モデルとして約30万円の「NW-WM1Z」をラインナップ。ウォークマンの特徴でもあるフルデジタルアンプ「S-Master HX」を強化し、A30シリーズではDSDのPCM変換再生、WM1A/WM1Zはバランス接続時にネイティブ再生に対応。駆動力もアップさせ、弱点を着実に潰して完成度を上げた。さらにWM1A/WM1Zでは、他社に先駆けて4.4mmのバランス接続に対応するなど、“攻め”の姿勢も印象的だった。
一方、ライバルと言えるAstell&Kernは約7万円の「AK70」を投入。価格帯としては、ウォークマンのNW-ZX100にぶつけるカタチとなった。AKシリーズは約50万円の「AK380」を筆頭に高価格なモデルが多いが、AK70は、AK3xxシリーズのOSやデザイン、操作性を取り入れつつ、小型・軽量化。AKシリーズの特徴である2.5mm 4極バランス出力も維持。PCM変換だがDSD再生も可能と、ユーザーが欲しい機能を残しつつ価格を抑えた点が光る。
アンプ部の駆動力も、AK3xxシリーズ譲りのパワフルさで、様々なヘッドフォンに対応可能。さらに、今後の対応機器増加が期待されるBluetoothの高音質コーデック、aptX HDやUSBからのデジタル出力もサポート。“頑張れば買える価格”と“マニアックな機能”そして“音質”のバランスの良さで、2016年のAV Watchアワード・ハイレゾプレーヤー大賞は「AK70」に贈る。
ヘッドフォン大賞:該当なし
技術的な面で大きなインパクトを与えたモデルが多かった2016年。米AUDEZEは、平面駆動型オンイヤーヘッドフォン「SINE」シリーズに、iPhone等のLightning端子と直結できるDAC内蔵ケーブル付属の「SINE On-Ear Headphone Lightning Cable」モデルを投入。デジタルのままスマホから伝送し、高精細な平面駆動型ユニットで上質なサウンドを聴かせた。
さらに、12月には世界初の平面駆動型のインナーイヤフォン「iSINE10」と、iSINE 10よりも長いボイスコイルで音質向上を図った「iSINE 20」を投入。こちらにもLightning直結可能モデルをラインナップ。注目を集める“平面駆動”方式で、攻めの姿勢が印象に残るメーカーだ。
“超弩級モデル”が相次いだのも2016年の特徴。ゼンハイザーからは約620万円の真空管採用コンデンサ型ヘッドフォンシステム「HE-1」が登場。HIFIMANからも、500万円のヘッドフォンシステム「シャングリ・ラ」が発表された。ヘッドフォン市場の成熟と多様化を象徴する製品と言っても良いだろう。
ユニークな技術では、ハーマンインターナショナルがJBLやAKGの製品でオートキャリブレーション機能を導入。装着者の耳の形状をスキャンニングし、耳の形状に応じてサウンドを最適化する機能が採用。AKGの密閉型モニターヘッドフォンの最上位モデル「N90Q」などで利用できる。
技術的に見どころの多いモデルと言えば、オーディオテクニカも忘れてはならない。11月に投入した「ATH-DSR9BT」(実売6万円前後)、「ATH-DSR7BT」(同33,000円前後)は、デジタル信号をデジタルのまま、ユニットまでダイレクトに伝送して再生する「Dnote」技術をBluetoothヘッドフォンに応用。さらに、24bitの伝送が可能なBluetoothの新コーデックaptX HDもサポート。“至高のBluetoothサウンド”が楽しめるモデルとして登場した。
このaptX HDは、Astell&KernのAKシリーズに対応モデルが存在するほか、スマートフォンでも対応機の拡充が見込まれている。“Bluetoothは便利だが音は今ひとつ”というイメージは、2017年で完全に過去のものになるかもしれない。
左右のイヤフォンが完全に分離され、ケーブルのわずらわしさから解き放たれる、新たなスタイルを生み出したのは2015年12月発売のEARINだ。昨年の商品であるため、今年の大賞候補ではないが、2016年はオンキヨーの「W800BTB」や、fFLAT5の「Aria One」など、EARINが開拓したこの市場に次々と新製品が登場した。
さらにAppleまでも参入。iPhone付属のイヤフォンを、そのままケーブルレス化したような「AirPods」を発表。ヘッドフォンジャックを削除したiPhone 7/7 Plusの登場とセットで大きな話題となったものの、12月16日時点ではまだ発売されておらず、来週からようやく順次出荷されるようだ。当初予定通りに10月下旬に発売されていれば、左右分離型イヤフォンを広く一般に広めるインパクトを与えた製品として今年の大賞を進呈したいところだったが……
サービス部門:AbemaTV
サービス部門の大賞はAbemaTV。「スマホで見るTV」を掲げ、30以上のチャンネルから、バラエティ、ニュース、スポーツ、ドラマ、音楽番組などを、無料かつ登録不要で見られる映像配信サービスだ。4月のサービス開始から半年で1,000万ダウンロードを達成するなど、急成長を続けている。テレビ朝日とサイバーエージェントの合弁ということもあり、独自コンテンツのクオリティも当初から高かった点もポイントだ。
'15年は、映像配信のNetflixやHulu、音楽配信におけるAWAやApple Music、Google Play Musicなどの定額制(サブスクリプション型)のサービスが一気に立ち上がり、市民権を得つつあった。「良質な映画や音楽は有料のサービスで」という流れに見えたが、'16年は、映像ではAbemaTV、音楽では無料プランもあるSpotifyの上陸など、“無料でも相当楽しめる”サービスが登場した年と言えるかもしれない。
また従来の映像配信は、映画やドラマ、アニメなどが中心となっていたが、'16年はDAZNやスポナビライブなど、スポーツライブ特化型のサービスが続々登場し、注目を集めた。DAZNとJリーグとの大型契約などもあり、今後もこの路線は拡大しそうだが、AbemaTVは、スノーボードや格闘技などニッチだが固いファン層があるスポーツに加え、プロ野球 日本シリーズのようなビッグイベントまでスポーツを積極的に取り込み、ライブ配信の潮流を強く印象づけた。この点においても'16年を象徴するようなサービスになったといえるだろう。
コンテンツ大賞:ガールズ&パンツァー 劇場版
劇場公開作では「シン・ゴジラ」や「君の名は。」、「聲の形」、「この世界の片隅に」と、日本の特撮やアニメ映画が大きな話題を集めた。こうした作品を、よりハイクオリティに、かつダイナミックに楽しみたいと、IMAXシアターや4DX上映を選ぶ人が増えたのも今年の特徴と言えるだろう。
通常のBlu-rayソフトでは、5月に発売された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」も記憶に新しいところだが、インパクトという面では同じく5月にBD化された「ガールズ&パンツァー 劇場版」も忘れられない。
劇場公開が2015年11月21日にスタートした作品だが、SNSなどで口コミが広まり、スタート時77館だった公開館数はあれよあれよと累計200館を突破。興業収入も24億円を越え、遂には驚異の丸1年連続ロングラン上映を達成。BDが発売されたあとも、延々と上映が続くという異例の作品となった。
根強い人気だけでなく、戦車のサウンドにこだわりぬいた“センシャラウンド”の魅力をさらに楽しむため、東京・立川シネマシティでの爆音上映をキッカケとして、各地の劇場で“サウンドの凄さ”を競い合うような上映が展開した事も見逃せないポイント。「サウンドを楽しむために劇場に足を運ぶ」、「音の凄さで劇場を選ぶ」という楽しみ方を、AVファン以外の人達にも広めた功績は大きい。
BDにもこうした迫力のサウンドを収録するほか、AVアンプやシアタースピーカーが無いユーザーも楽しめるようにと、ヘッドフォン向けのDTS Headphone:Xトラックも収録。特装限定版には劇場版本編の後日談となる特典OVAを収録し、各種マニアックなコンテンツも収めるなど、BDタイトルとしての完成度も高い。今年のコンテンツ大賞は“ガルパン 劇場版”に進呈する。
HDR、ドローンなど見どころの多かった2016年
AVアンプやオーディオアンプ、DAC、プロジェクタ、スピーカーなどは、各製品を紹介しているものの、網羅的な試用・評価ができていないため、今年はアワードの対象外とした。USB DACにおいてはDACチップの進化や対応フォーマットの強化もめざましく、また、プロジェクタにおいても、光源のレーザー化による画質進化などが続いており、このあたりは'17年以降も注目していきたい。
コンテンツのトピックと言えば、Ultra HD Blu-rayの発売開始だ。日本初のUHD BDソフトはビコムの「4K夜景 HDR」。その後も「マッドマックス 怒りのデスロード」、「デッドプール」、「インデペンデンス・デイ」、「オデッセイ」など人気作のUHD BDが発売され、4K解像度やリアリティのあるHDR映像で“次世代の映像”を実感させてくれた。
しかしながら、まだ多くのユーザーに広まっているとは言えない状況。主に再生対応機器の増加が期待されるが、DVDの普及に大きな役割を果たしたゲーム機のPlayStationが、最新モデル「PlayStation 4 Pro」でUHD BDに対応せず、4K映像はネット配信でサポートしていく選択をした。AVファンとしては残念だが、“今後のコンテンツ視聴のあり方”を象徴した出来事とも言えるだろう。
ただし、今冬にはパナソニックのDIGAシリーズ10万円以下のレコーダでUHD BDに対応し、単体プレーヤーも発売。さらにOPPO Digitalも「UDP-203」を発表そており、2017年の市場拡大には期待が持てそうだ。
ビデオカメラは停滞傾向で新製品が少ない一方、デジタルカメラにおける動画撮影機能の高機能化は続いている。また、ドローンやスタビライザー付きカメラなど動画撮影における新たな動きも見えてきた。こうした動きが、2017年以降にどう繋がるのか注目していきたい。本アワードも、来年以降は関係者の協力を得て、より魅力的なものに育てていくつもりだ。
- テレビ:ソニー BRAVIA「Z9Dシリーズ」
- ハイレゾプレーヤー:Astell&Kern「AK70」
- ヘッドフォン:該当なし
- コンテンツ:ガルパン
- サービス:AbemaTV
【AV Watchアワード 2016】