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ヘッドフォンでAlexa/Googleアシスタントは便利? BOSE「QC35 II」を使って分かった

「音声アシスタント」といえばスマートスピーカーが知られているが、実は、ワイヤレスヘッドフォン+音声アシスタントの組み合わせは非常に相性が良く、ここ最近、各メーカーが力を入れている。音声アシスタント連携を強化した新製品も増え、ソフトウェアアップデートで既存製品の音声アシスタント連携が強化されるケースもある。

ボーズ「QC35 II」

ボーズ(BOSE)が'17年より発売したワイヤレスノイズキャンセリングヘッドフォン「QuietComfort 35 Wireless headphones II(QC35 II)」(37,000円)は、8月にソフトウェアアップデートでAmazonの音声アシスタント「Alexa」に対応した。同製品は発売当時からGoogleの音声アシスタントである「Googleアシスタント」が利用できており、これにAlexaが追加された形になる。

今回はこのQC35 IIの音声アシスタント機能に注目してレビューをお届けしたい。

ヘッドフォンでのAlexa/Googleアシスタントの使い方

まず、「ヘッドフォンが音声アシスタントに対応」とはどういうことか。簡単に言うと、ヘッドフォン側のボタンを押すだけで音声コマンド入力できるようになることを指す。当たり前の機能のようにも思われるかもしれないが、QC35 IIはここが使いやすく実装されているのがポイントとなっている。

ボタン類は左右ピースのやや後ろについていて、自然に親指で押せる位置。充電はmicroUSBだが、今使うならUSB Type-Cが良かったとも思う

QC35 IIの場合、左側の後ろにあるファンクションボタンへの機能割り当てを、「ノイズキャンセリングのオン/オフ」、「Googleアシスタントの起動」、「Alexaの起動」のどれかに設定できる。もちろん、QC35 II自体にはインターネット接続機能がないので、GoogleアシスタントもAlexaも、スマートフォン上のアプリ経由で動作している。

QC35 IIがGoogleアシスタントの設定になっているときは、「ボタンを長押ししながら音声コマンドを入力→応答」となる。短押しは時刻と新着通知の読み上げだ。一方、Alexaの設定になっているときは、「ボタンを短押し→音声コマンド入力→応答」となる。機能の違いから、ちょっとだけ使い方が異なっている。

ちなみにQC35 IIのGoogleアシスタント/Alexa連携機能は、Androidだけでなく、iPhoneでも利用可能だ。この手の機能はiOS側では機能制限がありそうなところだが、iPhone/Androidで機能や使い勝手面での違いはほぼ感じられない。

ご存じの方もいると思うが、iPhoneでは、QC35 IIを含むたいていのBluetoothヘッドフォンで、再生ボタンの長押しなどでSiriを起動できる。しかし、その場合のSiri起動は、「ボタン長押し→(4秒ほどの接続待ち)→(ポポンという電子音)→音声コマンド入力→応答」と、ボタン操作から音声コマンド入力が可能になるまでに微妙なタイムラグがあり、接続に失敗することも多く、はっきりいって実用性は高くない。

また、AndroidでもGoogleアシスタントが使えるBluetoothヘッドフォンは少なくないが、「ボタン操作→(接続待ちと電子音)→音声コマンド入力→応答」と、やはりボタン操作からタイムラグがあるヘッドフォンがほとんどだ。

それに対してQC35 IIでGoogleアシスタントやAlexaを使う場合は、接続する前からQC35 II単体で音声を録音・キャッシュしているのか、ボタン操作から音声コマンド入力までのタイムラグが存在しない。微妙な違いに思われるかも知れないが、実際に使ってみると使用感に大きく影響する違いで、おかげでかなり実用的な機能となっている。iPhoneだとSiriよりGoogleアシスタント/Alexaの方が使いやすくなるという、ちょっと不思議な状態だ。

いろいろできて便利だが、制約もあった

使ってみて分かったが、QC35 IIは製品の特性上、音声アシスタントを使う場面はやや限定された。非常に高性能・高品質なノイズキャンセリングヘッドフォンなので、「コンテンツや作業に集中する」というシーンでは無二の強さを発揮。それ以外のシチュエーションでは着用しづらかったのだ。

ケースに入れて持ち運べる。「装着しっぱなし」ではなく、「使うときだけ装着」
イヤーパッド部

密閉されて周囲の音が聞こえにくいので、移動中や公共の場所では利用しにくい。家電やドアベルの音が聞こえない可能性があるので、自宅での着用にも注意が必要だ。

QC35 IIはスマホアプリの「Bose Connect app」により、ノイズキャンセルレベルをHigh/Low/Offの3段階で切り替えられる。周囲の騒音などに応じてレベル調整し、シーンに合わせた使い方をすると良さそうだ。

設定アプリでどっちのアシスタントを使うか(あるいは使わないか)を選ぶ

そのほか、よく使いそうな機能として、タイマーやアラームがある。作業やコンテンツに集中してると時間の経過を忘れてしまうので、事前に「XX分のタイマーをセット」や「X時X分にアラームをセット」とお願いしておけば良いと思うところだが、実はAlexaではAndroid/iPhoneともにタイマー/アラームが使えなかった。

AndroidとGoogleアシスタントの組み合わせだと、タイマーもアラームもスマホ側の標準機能を使う。そのため、解除や削除はスマホ側で操作する必要があり、場合によってはやや煩わしい。AndroidとiPhoneの組み合わせだと、タイマーはGoogleアシスタントアプリ内で動作するのだが、アラームは利用できない。

一方、スケジュールの確認や入力は音声アシスタントに任せやすい機能だ。「今日の予定は? 」ですぐに確認できるし、「XX時にXXの予定を入力」などでスケジュール入力もできる。この用途だと、GoogleアシスタントはGoogleカレンダーとの連携が強固だが、AlexaはGoogle以外のサービスと連携しやすいのが良かったりもする。

作業に集中していると、次の予定の時間が迫ってきたときに知らせて欲しいところだが、それについてはスマホ上のスケジュール帳に通知を設定しておいたり、それに合わせて後述の通知読み上げ機能を使うことで実現する。次の予定を能動的に確認しないで済めば、それだけ作業やコンテンツに集中しやすくなる。

音楽再生のコントロールは、GoogleアシスタントだとGoogle Play MusicやSpotifyが利用でき、AlexaはAmazonミュージックなどと連携。話しかけて、曲やプレイリストを再生できる。ただ、もともとQC35 IIの右側にはBluetoothオーディオとしてのコントロールボタンがあるので、選曲以外の操作ではコントロールボタンが手っ取り早い。音声とボタン操作をうまく使い分けるといいだろう。

天気予報やニュースなどを聞くという用途もある。作業中でも集中が途切れたタイミングで立ち上がってニュースを聞きながら気分転換できるし、外出の時間になったら準備をしながら天気予報を聞くのも良いだろう。GoogleアシスタントはNHKや日経、J-WAVEなどのラジオ形式のニュースを聞けて、Alexaならば「スキル」としてさまざまなサードパーティのニュースサービスを追加できる。

ちょっとした調べ物に使えるのも面白い。「東京都の人口」や「富士山の標高」などの雑学的な情報も直接調べられるので、読書中や作業中に何かを知りたくなったときに利用できる。ただ、個人的には実用する機会はそれほどなさそうだし、そもそもパソコンでの作業中ならパソコンで調べ物をした方が確実。そのあたりは使う人や作業の内容によって分かれそうだ。

音声アシスタント対応は、家電のコントロールにも便利なケースがある。作業に集中していると立ち上がってリモコンのあるところまで行くのが面倒になりがちだが、音声アシスタントと接続した家電なら、その場から動かずに操作ができる。筆者の場合、夕方からゲームをしていたらいつの間にかに部屋が真っ暗になっていた、というようなことが多々あるのだが、音声アシスタントが使えると、座ってゲームに集中したままでも灯りを付けられる。

そのほか、Googleアシスタント利用時なら、スマホ上のアプリに通知のあった瞬間にアプリ名の自動読み上げが可能だ(送信者を含む内容の読み上げにはボタン短押しが必要)。Androidの場合は、Alexaでも、Google Playにある「Audify」のようなサードパーティ製の読み上げアプリを利用する手もある。これらの通知読み上げを有効にすると、スマホにメールやメッセージが届いた瞬間にわかる。

通知読み上げはiOSでも利用可能。通知を受信したアプリがリストアップされ、通知のオンオフを切り替える。重要なアプリ通知だけに絞らないと邪魔になるので注意

通知を読み上げてもらえるなら、新着通知を逃す心配もなくなるので、スマホを手に取る機会は減る。音声だけで内容の重要度を判断できれば、スマホを手にして集中を途切れさせてしまう頻度を最小限にとどめられる。作業やコンテンツに集中するときは、スマホの画面を見る機会を減らすことに意味があるので、「通知読み上げ」はかなり便利な機能だ。

2デバイス同時接続可能で、接続デバイスはアプリ上で簡単に切り替えできるので、使いやすくわかりやすい

ただし、Googleアシスタントの読み上げは、内容読み上げにボタンを押す必要があるのが若干面倒だ。また、iPhoneではちょっと動作が不安定で、アプリ名でなく内容の冒頭だけが読み上げられたり、読み上げてもらえないケースもあった。他アプリの通知を読み出すのは、iOSではやや難易度の高い実装をしていると思うので、不安定なのはそのあたりの影響が出ていそうだ。

QC35 IIは、同時に2つのデバイスと接続できるため、例えばスマホとパソコンに接続していれば、そのいずれの通知音もQC35 IIで聞ける。QC35 IIを着用しているせいでパソコン上の業務チャットの通知を聞き逃した、なんていうことが避けられるので、実はデスクワークでも活用しやすいのも大きなポイントだ。もちろんヘッドセットとしても使えるので、パソコンにかかってきた通話の受け答えにも使える。職場で使うには周りの理解が必要だとは思うが、こうしたシーンでも活用できることが分かった。

便利な「秘書」としての音声アシスタントの活用

音声アシスタントは「秘書」や「執事」のような存在だと筆者は考えている。その観点では、スマートスピーカーなどよりもヘッドフォンやスマートウォッチのようなウェアラブル機器の方が音声アシスタントと相性が良いと思う。

音声アシスタントアプリ側でQC35 IIを認識させ、直接アプリとQC35 IIがつながるようにする

たとえば家電のリモコンであれば家電の前に置いてあれば十分だが、秘書や執事はいつでもどんな用事でも呼び出せるよう、常についてきて欲しい。ウェアラブル機器ならば「持ち運ぶ」ことすら意識せずに、どこにでもついてくる。

また、秘書や執事なら、新着メッセージやスケジュールといったパーソナルあるいは業務の情報もある程度は把握していて欲しい。これは家族が共有するスマートスピーカーでは扱いの難しい機能だ。

そう考えると、QC35 IIのようなヘッドフォンが音声アシスタントと連携するのは、必然だとは思う。ただ、着用する場面を選ぶヘッドフォンの場合、日常生活のあらゆる場面に入る込めるわけではないことは留意しておきたい。

他社製品を見ると、たとえばソニーのXperia Ear Duoは、イヤピース部がリング状になっていて、「環境音は完全にスルーして聞こえる」という、QC35 IIとは正反対の特性を持っている。そのおかげでいつでも装着し、音声アシスタントを日常生活のあらゆる場面で活用できる。

最近の筆者は外出中はほぼXperia Ear Duoを装着しっぱなしである。会議中や会食中も装着しているが、そういった場面では何かを聴いているわけではない。必要になったときにいつでも使えるようにしているだけだ。Xperia Ear Duoは純正アプリで通知読み上げができるので(iPhoneでの日本語通知読み上げは9月下旬以降対応予定)、通知を聞くだけでも、常時装着しっぱなしにしておく意義がある。こうした使い方はQC35 IIにはできないものだ。

ただしXperia Ear Duoはボタン操作から音声コマンド入力まで接続待ちのタイムラグがあるタイプなので、音声アシスタントの使い勝手自体はQC35 IIの方が上。また、当たり前だがコンテンツや作業に集中したいときは、QC35 IIが優れている。Xperia Ear Duoは遮音性がまったくなく、たとえば街中だとオーディオブックの聞き取りすら困難になるくらいなので、そもそもこの点では比較対象にならないレベルでもある。

そして筆者はXperia Ear Duoを愛用しているが、もっとも音声アシスタントと相性の良いウェアラブル機器は、現状ではApple Watchかな、とも思っている。これは筆者がiPhoneを使っているせいでもあるが、iPhone・Apple Watch・iCloud・Siriという林檎の園で暮らす限り、利便性でApple Watchにかなう「秘書」はいないかな、と思っている。機能面での制限は少ないし、セキュリティも確保されているし、小さな画面が音声を補助して使いやすさをアップさせてくれている。

Apple Watchがほかのウェアラブル機器と大きく違うのは、音声アシスタント(Siri)の起動方法だ。Apple Watchは画面を手前に傾ける(文字盤をのぞき込むしぐさをする)と、自動的に画面が点灯するのだが、画面点灯直後は、そのまま音声コマンド入力できる。音声アシスタント起動にボタン操作が必要ないのだ。

これが大きな違いとなる場面は多い。たとえば料理中、鶏ムネ肉を触ったばかりのヌルヌルの手でもSiriにタイマーをお願いできる。これはボタン操作が必要な音声アシスタントでは無理なことだ。

また、たとえばQC35 IIでの「左手でボタン位置を指で探り、押し込む」という簡単な操作でも、一瞬だけ右手の注意がおろそかになって持っていた飲み物を少しこぼしてしまう、といったこともある。QC35 IIでGoogleアシスタントを使うときは、ボタン長押しが必要なので、この危険性はさらに高い。これが気になるのは筆者が運動神経の残念な40代オッサンだからかも知れないが、ハンズフリーではないことは、こうした細かな違いを生み出す。

ワイヤレスヘッドフォンでも「OK,Googe」のようなウェイクワードの呼びかけだけで音声アシスタントを使いたいところだが、現状のウェアラブル機器では実現が難しいようだ。Apple Watchでは画面点灯直後だけに限定してマイクに通電し、ウェイクワード識別処理をしているのでなんとかなっているが、常時待受するのは、ウェアラブル機器の処理性能とバッテリサイズでは非常に困難なのだ。

ちなみにクアルコムが今年初めに発表したBluetoothヘッドフォン向けチップセット「QCC5100」には、ウェイクワード待受の省電力化が特徴としてあげられている。ハンズフリーで音声アシスタントを使えるヘッドフォンも、いつかは実現しそうだが、個人的にもうちょっとかかるかなと予想している。

「ノイズキャンセリングで集中」時に最強の音声アシスタント

QC35 IIのような、ノイズキャンセリングヘッドフォンとして最高峰の性能を持つ製品が音声アシスタント連携を強化したというのは、非常に便利なことだと思う。一日中着けるものではないため、前述したように便利なシーンは人によって分かれると思うが、作業に集中しながら通知も逃したくない時など、スマートスピーカーとは違う使い方ができるのがポイントだ。

既にQC35 IIを持っている人は、ファームウェアを最新バージョンにし、いつでも使えるように設定しておくことをオススメしたい。また、これからヘッドフォンを買う人も、ただ音楽を聴くだけではなく、生活をもっと便利にする音声アシスタント連携機能を、製品選びの一つの要素に加えてもいいかもしれない。

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QuietComfort 35
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白根雅彦