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NODE 3モデル展開で「ストリーマー市場牽引」、MQA QRONO世界初搭載、BLUESOUNDの狙い

BLUESOUNDのプロダクトマネージャーのマット・シモンズ氏。手にしているのが「NODE ICON」と「NODE NANO」

BLUESOUND製品への注目が高まっている。昨年後半に、小型で価格も6万円を切るストリーマー「NODE NANO」を発売、今年の2月には「QRONO by MQA Labs」を世界初搭載し、大型カラーディスプレイも備えたリファレンス・ストリーマー「NODE ICON」(実売22万円前後)を発売。既存の「NODE」も含め、手頃な価格のストリーマーが欲しいという人から、より音質を追求したい人まで、幅広いニーズに応えられるラインナップを完成させた。

これらのモデルは、2023年に「4.0」にアップデートしたBluOSを採用。Amazon MusicやQobuz、TIDAL(日本未サービス)などのストリーミングサービスに対応し、Spotify Connectにも対応。洗練されたUIで、快適に音楽配信を楽しめるのもBLUESOUND製品の魅力となっている。

左から「NODE ICON」、「NODE NANO」

さらに、Bluesoundブランドを持つカナダのグループ企業Lenbrookが、2023年にMQAを買収。最新機種のNODE ICONには、MQA Labsが開発したデジタルフィルター「QRONO by MQA Labs」を世界初搭載している事も話題となっている。

同社はこれからのストリーマー市場をどう見ているのか、そしてMQAの新たな技術はサウンドにどのような効果をもたらしているのか、来日したBLUESOUNDのプロダクトマネージャーのマット・シモンズ氏に話を聞いた。

長年のノウハウを活用しながら、革新的な次世代オーディオを作る

Bluesoundは2013年に、“新世代のオーディオファン”に向けたHi-Fiブランドとして設立された。シモンズ氏は「革新的な次世代のオーディオを作る事がBluesoundのミッション」と語る。

一方でLenbrookは、Bluesound以外にも、1972年創業のHi-Fiアンプブランド・NAD Electronics、そして同年創業のスピーカーブランド・PSB speakerという老舗オーディオブランドを傘下にしており、NAD製品と同じアンプ開発のエキスパートチームがBluesound製品のエレクトロニクスを、スピーカーなどのアコースティックな製品は、PSBのチームが設計するなど、オーディオ機器開発における長年のノウハウを下地としている。

そのハードウェアに搭載しているソフトウェア、BluOSはグローバルのチームが開発。日々ユーザーエクスペリエンスの向上に努めている。2023年には「4.0」へとメジャーアップデートし、ホーム画面のデザインを一新。タイルベースの洗練されたレイアウトになったほか、よく聴く放送局、選曲、最近再生した曲、サービス、ニュース、アップデートなどへのアクセスを用意にした。ユーザーからも好評だという。

BluOS

BluOSは他社製品にも展開しており、BluOS搭載プレーヤーは80機種以上となる。BluOSは23以上の言語をサポートし。AirPlay 2対応デバイスも40以上、MQAとSpotify Connectをサポートするデバイスも75以上と豊富だ。

音楽配信サービスへの対応も幅広く、コンシューマー向けは50個、業務向け5個、合計25個のサービスに対応している。

製品のデザインでは、ニューヨークとロンドンのインダストリアルデザイン事務所が協力するなど、ワールドワイドな力を結集して生み出されている。

MQA「QRONO」だけでなく、「AIRIA」と「FOQUS」も

MQAを買収した理由について、シモンズ氏は「彼らの知的財産(IP)ポートフォリオや技術は、非常に良く、また深いものであり、エンジニアのチームも優秀だった」と説明。

MQA Labsが開発し、NODE ICONが世界で初めて搭載したカスタマイズ・デジタルフィルター「QRONO d2a」は、D/A変換における時間的なスミア(ぼやけ)を取り除く技術であり、DACチップから最高の性能を引き出し、ハイレゾソースにおいてその効果が顕著だという。

NODE ICON

音楽のテクスチャーを明確にし、マイクロダイナミクスを向上させ、楽器の識別を容易にし、ステレオ音場と定位を強化。音楽がより自然になり、臨場感が増し、リスナーの疲労感の軽減にも効果があるという。

NODE ICONはQRONO dsdも搭載。これは、DSD-PCM変換を可能な限り軽い処理で行なうことで、録音時の重要な時間のディテールを保持できるというもの。このQRONO d2aとQRONO dsdをあわせて、「QRONO by MQA Labs」と名付けられている。

シモンズ氏は、MQAの技術の特徴を「オーディオにおいて重要な、時間軸方向の精度を高められること」と説明する。CDの場合では600μ秒以上の間隔で音が収録されており、ハイレゾファイルでも120μ秒の間隔があるが、シモンズ氏は「私達の耳と脳には、8μ秒の間隔を知覚できる能力がある。これにより、例えば森の中で鳴いている鳥が、どっちの方向にいるかという事も聞き取ることができる。オーディオにおいても、時間軸の精度を高める事で、ぼやけを排除し、解像度を上げる事ができる」と語る。

さらに、NODE ICONには搭載されていないが、MQA Labsの技術には「AIRIA」と「FOQUS」というものもある。

AIRIAは、ワイヤレスイヤフォンなどで活用できる技術で、スマホなどの送信機器から、イヤフォンなどの受信機にワイヤレス伝送する際に、遅延を抑えつつ、時間軸方向の精度も高め、高音質化するという技術。

FOQUSは、「これまでで最も軽い負荷で、アナログからデジタルへの変換が可能になる」というA/D変換技術。QRONO d2aが、様々なDACチップで使えるカスタマイズ・デジタルフィルターであるように、FOQUSも様々なADCチップで活用できる技術とのこと。ADCとDAC、つまりアナログ音源をデジタル化し、そのデジタルデータをアナログ変換して聴くという、どちらの段階にもMQAの技術を用いる事で、「音楽の細かなディテールをより補完して楽しむことが可能になる」(シモンズ氏)という。

ストリーマーは3モデル展開、どのようなシステムにも取り入れられる

前述の通り、Bluesoundのストリーマーは、既存モデルで実売8万円台の「NODE」に、6万円を切るエントリーの「NODE NANO」、リファレンス「NODE ICON」(実売22万円前後)が追加され、3モデル展開となった。「これにより、消費者のどのようなシステムにも、最適なモデルを選んでいただけるようになりました」(シモンズ氏)。

Bluesoundならではの特徴として、グレードの異なるモデルでもBluOSを採用しており、エントリーモデルであってもハイエンドであっても、豊富な音楽配信サービスへの対応や、UIの使い勝手の良さといった、ソフトウェアのクオリティの高さが同じように享受できる。これは、過去のモデルであっても同様で、過去製品でも最新のBluOSを利用できるのもメリットとなっている。

さらにユニークな点として、NODE NANO、NODE、NODE ICONの3モデルは、全て同じDACチップ、ESS 9039Q2Mを採用している。他社では製品のグレードにあわせて、DACチップのグレードも変わる事が多いが、共通化することで、コストを抑えられているという。

しかし、グレードによって違いはある。「DACチップを搭載するだけであれば、どのブランドでも搭載できますが、その周辺回路に関してのノウハウが音質にとっては重要です。その点で、我々にはNAD Electronicsが50年以上培ってきた経験があります」(シモンズ氏)。

さらに、NODE ICONはESS 9039Q2MをデュアルDACで搭載し、ノイズをさらに低減。さらに、モデルによって、電源部にも違いがあり、NODE NANOは外部USB-C電源、NODEはDC出力に追加フィルターを備えた内部電源、NODE ICONはDACのピン直近に低ノイズレギュレーターを配置し、さらに追加のPiフィルターも搭載。こうした物量の違いが、3モデルのサウンド・グレードの違いになっているという。

シモンズ氏はこうした特徴に加え、3モデルの全てがIRリモコンの学習機能を備えている事も強調。ユーザーが使っているリモコンの信号を、各モデルに学習させ、便利に使えるという。

さらに40の機能をプリセットする事も可能。1ボタンでお気に入りのネットラジオを再生したり、プレイリストを再生するといった事も可能で、「オーディオ機器の操作に詳しくない家族に対しても、やさしい機能になっています」(シモンズ氏)。

シモンズ氏は3モデルそれぞれの特徴として、

NODE NANOは小型でコンパクトであり、底部に壁掛け用キーホールも備え、ストリーマーを目立たせず、現在のシステムにストリーミング再生機能を追加できる事。そして、ハイエンドクラスのスペックを持ちながら、手に取りやすい価格を実現している事をアピール。

NODE NANOの特徴

ストリーミング標準機と位置づけるNODEは、HDMI eARCを備え、テレビと連携し、映画などの音もオーディオシステムで楽しめること。さらに、サブウーファー出力を備え、光デジタルとアナログ音声入力も備え、小型ながら拡張性に優れている事を紹介。

NODEの特徴

NODE ICONは、「オーディオファイル向けに、音質的にも、デザインも、より本格的な製品として開発した」と説明。HDMI eARCを備えるほか、USB-Cオーディオ入力も用意し、スマートフォンやPCとも接続可能。

シリーズで初となるXLRバランス出力も搭載。DAC部分には「QRONO d2a」を採用し、「プリリンギングやポストリンギングを最小限とし、音がぼやけない、究極のサウンドを目標に開発した」と説明する。

NODE ICONの特徴

2chのストリーマーだが、「Dirac Live Ready」であることも特徴。別売の測定用マイクとドングルをセットしたルーム・キャリブレーション・キット(8,800円)を購入し、ライセンスを購入する事で、部屋によって引き起こされる異常や歪みを特定し、スピーカーからのサウンドを最適化できる。

シモンズ氏は、「ホームシアターと同じように、2chのオーディオでも部屋の音響特性などからの影響は大きく、それを解消するために対応した」と説明。店舗でのデモなどでも、効果に対して反響が大きいという。

シモンズ氏は最後に「NODE NANO、NODE、NODE ICONという、ストリーマーとしてグッド、ベター、ベストな製品をラインナップした。ストリーマー市場を牽引するリーダーとして、今後も市場を開拓していきたい」と豊富を語った。

山崎健太郎