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アニメ本編3DCGにmocopi活用!! アニメ制作スタジオ「Studio42」に潜入

ソニー ニューコンテンツクリエイション事業部 XR事業部門 空間コンテンツ制作ソリューション部 川島嵩之氏(左)、Studio42 執行役員 3DCG部ディレクター 室薗勇輝氏(右)

アニメは、デジタル制作となった今も、1枚1枚描いて作られるものというイメージがあるが、最近はテレビアニメでもアクションシーンなどを観ていて「あ、ここ3DCGで作られているな」と気付いている人も多いだろう。そんな3DCGのシーン制作に、VTuberの3D配信などで使われているソニーのモバイルモーションキャプチャー「mocopi」(モコピ)が活躍しているという。

というのも、今回mocopiが、アニメーション制作の場で使われているオートデスクの3Dモデリングソフト「3ds Max」にプラグイン対応した。連携することで、3ds Maxの編集画面に、mocopiのトラッキングデータがリアルタイムで転送できるようになる。

この説明だけでは「なんのこっちゃ」と思うかもしれないが、要はアニメ制作に使われている3DCGソフトにそのままmocopiが繋がるようになった、ということだ。

では実際の現場でのCG制作や、mocopi活用でどのような変化が起きたのか? このプラグイン開発に協力したアニメーション制作スタジオ「Studio42」の執行役員 3DCG部ディレクターの室薗勇輝氏に、アニメ制作現場での活用について話を聞いた。

制作中のアニメ「勇者パーティを追い出された器用貧乏」2期でmocopi活用

3dx Max向けプラグイン開発のきっかけは、室薗氏が今年2月に開催されたイベントに参加した際にmocopi開発チームに直接リクエストしたことだったという。ソニーの担当者であるニューコンテンツクリエイション事業部 XR事業部門 空間コンテンツ制作ソリューション部の川島嵩之氏も、室薗氏からの要望を受けるまではこのツールがアニメ制作現場で広く活用されていることを把握していなかったそうだ。

室薗氏

3Dモデリングツールというと、「Maya」や「Blender」が一般的にも知られているが、3DCG映像業界ではもう20年以上この3ds Maxが使用されており、機能もワークフローも昔からあまり変わらず「Biped(バイペッド)」と呼ばれる骨組みを使ってキャラクターに動きを付けていくフローであるため、3ds MAXを触ることができるユーザーは潜在的に多く「mocopiがプラグインで3ds MAXに対応すれば、アニメ制作だけでなく、様々な映像関係の分野で広く使ってもらえると思う」と室薗氏は話す。

3ds Maxの標準キャラクターリグ「Biped」

Studio42では、今年1月に放送されたアニメ「勇者パーティを追い出された器用貧乏」のアニメーション制作を担当。現在同作2期を制作中で、この2期では実際にmocopiを活用しているという。

「勇者パーティを追い出された器用貧乏」
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会

テレビアニメ制作の流れをざっくりまとめると、シナリオを基に絵コンテを作成、絵コンテから原画を起こし、そこに動画マンが動きを付けたり、彩色や背景美術が加わって、撮影、編集といった形。

3DCGが入ってくるのは、テレビアニメの場合は、絵コンテと原画の間や、カットによっては原画部分になる。絵コンテから原画に起こすときにレイアウトを決める際に、そのサポートとして3DCGが活用されたり、複雑な動きや巨大なドラゴンが動き回るなど、作画コストが高いカットは全て3DCGで担当する、といったようなイメージだそうだ。

「勇者パーティを追い出された器用貧乏」では、主人公のアクションシーンや、魔法陣が展開されるシーン、さきほど例に挙げたドラゴンが登場するシーンなどに、3DCGが使われている。カットがそのまま3DCG側に任されるため、手書きの原画と3DCGが組み合わさるのではなく、原画のカットは原画、3DCGのカットは3DCGでそれぞれ別で作られているという。

カットの内容によっては作画に戻さず、絵心のある3Dアニメーターが3Dの上からそのまま絵を描いてクオリティアップを行なうなど、柔軟に対応し、現場や作業を複雑にしないよう工夫がされている。

「勇者パーティを追い出された器用貧乏」に登場するソフィア・クローデルの3Dモデル
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
「勇者パーティを追い出された器用貧乏」1期 第01話にて、主人公オルン・ドゥーラと敵モンスターの戦闘シーン
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
「勇者パーティを追い出された器用貧乏」1期 第01話にて、主人公オルン・ドゥーラと敵モンスターの戦闘シーン
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
「勇者パーティを追い出された器用貧乏」1期 第01話にて、主人公オルン・ドゥーラと敵モンスターの戦闘シーン
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
「勇者パーティを追い出された器用貧乏」1期 第01話にて、主人公オルン・ドゥーラと敵モンスターの戦闘シーン
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会

3Dの利点は、一度3Dのキャラクターを作ってしまえば、それを動かすことでカットが作れること。とはいえ1期では、主人公サイドに加えて、大量に登場する敵キャラクター1体1体も全て、Bipedを使って、手付けで動きを付けるため、とてつもない作業量になる。

特に背景となるキャラクターや敵の群衆などは、動きを付けないという判断になったり、同じ動きや似た動きを調整してなんとかやりくりする、といったことになることもある。

3DCGの作業は、1カットを1人が担当するのが一般的だそうだが、Studio42では1カットも分担して作業することで、それぞれの人の得意な要素を活かして効率的に作業を進めている。それでも、全てを1から手付けで作業するとなると、個人の能力頼みになるため全てを理想的な状態に仕上げるのは難しいという。

そこでmocopiが活用できれば、1から全て手付けをする必要がなくなり、ベースの動きを取り込んで調整していくことができる。そうすれば、大幅な作業の軽減に繋がるだけでなく、その分手付けでの調整に注力したい部分のクオリティを向上することもできる。

例えば、そのカットのメインとなるキャラクター達は手付けで細かく調整して動きの精度を向上しながら、背景に入るキャラクターや敵の群衆達は、mocopiのトラッキングをベースにして様々な動きを付けることで、目に入る背景の情報も自然な動きになり、より作品に集中できる映像に仕上げられる。

2期ではこういった背景にいるキャラクター達にも動きがつくかも……?
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会

mocopiの利点はやはり手軽さ。3ds Max上でキャラをそのまま動かせるのも

従来ももちろんキャプチャーしたデータを活用する作り方はある。しかし、キャプチャー用のスタジオを抑えモーションアクターの人を呼び、限られた時間で欲しい動きを作っていく従来のやり方は大がかりな工程と時間、それなりの費用が発生する。

それに加えて、せっかく撮ってもらったモーションデータが全く活用できなくて、全てボツになる……といったことも少なくなかったという。例えば、段差のないスタジオで色々工夫を凝らして階段を上る動作をキャプチャーしようとしたものの、結局その場で足踏みになってしまっていたなど、そのときの状況次第で色々問題が発生したそうだ。

そして、mocopiの利点はやはり手軽さだ。動きを思いついたときにその場で収録したり、スマホと接続して持ち出せるので、スタジオ近くの環境、数人で装着してそれぞれ思い思い動いて、そのデータを素材として撮っておいたりといったことが簡単に行なえる。

今回3ds Maxと連携したことで、3ds Maxのビューポート上で本番で使用するキャラクターモデルをリアルタイムに動かして確認することができるのが大きなポイント。

アニメの場合、キャラクター毎に体格が大きく異なるため、同じ動作をそのまま違うキャラクターに載せてしまうと、イメージと違う動きになったり、身体や服のパーツがめり込んだ状態になるといった問題が発生する。もちろん手付けで調整することもできるが、mocopiのモーションが本番で使用するキャラクターにリアルタイムで反映されるのあれば、そのキャラクターに合わせた動きをその場でして、それを収録してしまえばいいわけだ。

(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
(C)都神樹・講談社/勇者パーティを追い出された製作委員会
mocopi Receiver Plugin for 3ds Maxを使用している様子

mocopiは、やはりプロの現場では2セット分を装着する12点での使用(「mocopiプロフェッショナルモード」)になり、室薗氏は基本的に足の甲の動作をトラッキングできる「プロフェッショナルFOOT」モードで使用しているという。腕や手は収録後の手付けでの調整が比較的しやすいのに対して、足は精度良く地面に接している状態で撮れていないと、なかなか自然な形で調整できないためとのことだ。

手軽なモーションキャプチャーデバイスとしてスタートしたmocopiだが、以前の白組でのプリビズへの活用事例に加えて、今回は実際の仕上がりに関わる部分にも使われるプロ向けのツールとしても活用の場を広げてきている。ハードはそのまま、ソフトウェアの進化だけでここまでの進化を遂げているところも特徴。今後の展開にも注目だ。

mocopi Receiver Plugin for 3ds Max ダウンロードページ

【mocopi】3ds Max向けプラグインの使い方
野澤佳悟