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ソニーmocopiで収録!? 花冷え。新MV撮影の舞台裏
2024年12月11日 11:02
ソニーは、モバイルモーションキャプチャー「mocopi」が活用された技術事例として、面白法人カヤック傘下でxRやCGなどを手がけるカヤックアキバスタジオによる、ガールズバンド「花冷え。」のミュージックビデオ制作の工程を紹介した。
今回のミュージックビデオでは、バンドメンバーがアバターの姿で登場し、マルチバースでライブを行なう様子で展開。格闘ゲーム、RPG、FPS、レースゲーム、魔法少女、ファンタジー、日常系、恋愛シミュレーションなど、様々なゲーム・アニメ表現を取り入れている。
これらの制作には多くのモーションデータの収録が必要になるのだが、専用のスーツを着て行なうスタジオの「OptiTrack」を使用したキャプチャーのみでの収録の場合、演者への負担が大きいほか、膨大な時間が必要となるため、撮影予定日に収めることができないというスケジュールの課題があったという。
MVの監督を務めたカヤックアキバスタジオのCXO(Chief XR Officer)天野清之氏は、人にはそれぞれ固有の動きがあるため、花冷え。のメンバーらしさを今回のMVの中で表現するために、モーションキャプチャーという手法は有効な手段になると説明。そのため、「動きの多いシーンをパラメータ設定による手付けで制作することは避けたかった」という。
そこで、今回mocopiを採用。OptiTrackでのキャプチャーと合わせて2拠点での収録を実施し、想定した企画・演出を変えることなく撮影を進められたという。
小型のモーショントラッカーの中からmocopiを採用した理由については、元々カヤックアキバスタジオにてmocopiを独自に研究しており、mocopiの得意な分野、不得意な分野について把握することができていたためとのことだ。
モーションデータ収録後の作業工程の効率も考慮し、大きな動きを使うシーンはmocopi、細かい動きまでしっかり収録するシーンはスタジオでのキャプチャーと役割を分けることで、クオリティの高い映像を実現したという。
今回のMVでは、格闘・バース、魔法少女・バースのシーンをmocopiでキャプチャ。ライブ・バースやホラー・バースなど、シチュエーションが強めのシーンはOptiTrackで収録している。一方で、レースゲーム・バースのような、ポージングや動きに個性の出にくいシーンはモーションデータを収録せずに、パラメータを設定して作られている。
モーションデータの収録の段階で、ゲームエンジン「Unreal Engine」と連携してリアルタイムでレビューを行なえる体制も作られており、演者もアバター化した自分を確認しながら収録できるようになっている。そのため、演者とどんな動きにしていくか相談しながら演技を決めていくことができ、より花冷え。のメンバーそれぞれの個性を出した動きを引き出せたという。
収録後は、Unreal Engineの3D空間をブラッシュアップした後に、HMDを装着し、カヤックのロケーションカメラシステム「Jeanne d'Arc」を使用して撮影。VR空間でカメラを構えて撮影するため、効率的にカメラアングルを検討できるだけでなく、カメラの手ブレなども再現して、実写撮影のような臨場感ある映像が撮影できる。
天野氏は、カメラとスーツを使用して環境も構築しなければならないOptiTrackに対して、mocopiの利点はどこでもモーションデータを収録できるところにあると説明。「照明環境も不要のため、拠点をいくつも増やして撮影することができる。その代わり若干精度が落ちるので、その精度が落ちるポイントを見極めておくことで、収録する内容を判断して、今回のようなMVの収録にも活用できる」と、mocopiの有用性について話した。