アンテナ無しで地デジ/BS視聴。「フレッツ・テレビ」に加入した

-月額682.5円でBSデジタルも再送信



 BS/CSデジタル放送の受信のためには、各放送に対応したアンテナを立てるのが、もっともポピュラーかつ標準的な方法だ。だが最近では、CATVもホームパス(伝送路敷設済み世帯数)を広げているほか、都市部ではNTT東西などによる、デジタル放送の再送信サービスもスタートするなど、アンテナ以外の選択肢も徐々に増え始めている。

 現在販売されている多くのテレビは、地上デジタル/アナログ放送に加え、BSデジタル、110度CSデジタルチューナを搭載した“3波デジタル”対応となっている。そのため、受信環境さえ整えば、地上デジタル放送だけでなく、BS/CS放送視聴のハードルはさほど高くない。

DXアンテナのBS/110度CSデジタルアンテナ「DSA456」

 しかし、一戸建てや集合住宅で、最初からアンテナが導入されている場合はいいが、新規に設置するのは結構面倒だ。アンテナ自体は数千円から購入できるが、アンテナを正しい向きに設置したり、屋外から屋内へのケーブリングなどの作業は大変だ。地デジとBS/CS用アンテナの2つを設置しなければならない場合は、作業も費用も倍となり、さらにハードルが上がる。

 個人的にも、WOWOWを中心にBSで映画やスポーツ番組をみたいため、BSデジタルアンテナの設置を計画していたが、自宅が一階で目の前が駐車場のため、突き出してアンテナ設置できないことや、ベランダのスペースが限られることなどから、躊躇していた。

 自宅(借家)ではCATV(J:COM)が入っており、地デジについては、CATVの再送信で視聴可能となっている。以前は、主にBSを見たいがために、CATVサービス「J:COM TVデジタル」にも加入し、BSやCATVの多チャンネル放送を視聴していたのだが、「STBの使い勝手が今一つ」、「レコーダが地上デジタル用とCATV/BS用の2つになってしまう」、「最新のレコーダのほうが、再生画質に優れている」などの要因から、結局BSやCATVの多チャンネル放送の利用頻度が低くなったので、解約してしまった。

 そのため、ここ2年ほどBS視聴をあきらめていのだが、先日自宅にNTT東日本による「フレッツ光」の回線が導入されたことで、FTTHを使って地上/BSデジタル放送を伝送する「フレッツ・テレビ」のサービスも利用可能となった。今回は、フレッツ・テレビに加入した感想をレポートしたい。

 


■ 682.5円で地デジ/BSデジタル再送信

 「フレッツ・テレビ」は、NTTのFTTH回線を使って、オプティキャストの提供する放送サービスにより、地上/BSデジタルと地上/BSアナログ放送を再送信するものだ。そのため、加入には建物に「フレッツ光」の回線が入っていることが前提となる。

 費用については、フレッツ・テレビの月額利用料682.5円が発生する。もちろん、フレッツ光+インターネットプロバイダ料金として、別途月額料金が発生するほか、NHKの受信契約も別契約となる。フレッツ+ISPの料金は、マンション/アパートの場合4,095円~、戸建の場合5,985円~となっている。つまり、インターネットや電話の基本料金としての4,000~7,000円程度の費用に、プラス682.5円で地デジ/BSデジタルの再送信を可能にするのが「フレッツ・テレビ」というわけだ。

 また、フレッツ・テレビ加入者は、別途スカパー! と契約して、スカパー! e2(基本料410円+チャンネル視聴料)やスカパー! 光(3,675円~)などの受信も可能となる。

 筆者は、フレッツADSLからフレッツ光に切り替えるとともに、フレッツ・テレビに加入した。もともとプロバイダとして加入していたぷららが、フレッツ光のプロバイダサービスでも選択できたため、NTTにフレッツ光への変更申し込みを行なう際に希望を伝えただけで、別途ぷららに申し込む必要なく、移行手続きが行なわれていた。

 初期費用は、フレッツ光+フレッツ・テレビの合計で3,780円。内訳はフレッツ光の契約料が840円、スカパー! 光加入料(フレッツ・テレビはスカパー光!サービスの機能を限定したサービスのため)が2,940円だ。なお、自分で配線などの接続を行なう分にはこれだけだが、テレビ接続工事を業者に依頼すると、プラス8,925円となる。

 もっとも、今回の「フレッツ光」に新規加入という扱いになることから、様々な優待キャンペーンが行なわれていた。2カ月分の月額料金が無料になるほか、フレッツ光の工事費も無料、さらにフレッツ・テレビ加入で5,000円の商品券をプレゼントするなど、把握できないほどたくさんの加入促進キャンペーンの対象となっていたようだ。現在も、ネットからの申し込みで、フレッツ光の4カ月分の月額料金無料など、大々的なキャンペーンが行なわれている。NTT東西がFTTH加入促進のために積極的な施策を採っていることもあり、こうしたキャンペーンを狙って加入するのも一つの手だろう。

 とはいえ、アンテナを立てていれば、フレッツ・テレビの682.5円という月額利用料は基本的に発生しないもの。ただし、アンテナは安くても6,000~7,000円程度から。加えて設置工事を自分で行なう必要があるし、工事を頼む場合は別途工賃も発生する。また、引っ越した先で、共用アンテナが立っていている場合などはアンテナを所有している意味がなくなるなど、特に都市部ではアンテナを立てる必要のないケースも多い。

 そういった意味では、電話やネット回線に、付加価値をつけて展開するという、「フレッツ・テレビ」の提案はリーズナブルと感じる。

 


■ 大きなルータ。開通すれば“普通”のデジタル放送

工事完了後、「光コンセント」から、ルータに回線接続された

 筆者宅には4月の末にフレッツ光の開通が知らされ、すぐにNTTのWebサイトから加入申し込みを行なった。しかし、工事の当日に問題の発生を知らされて延期するなどで、結局、工事を行なったの7月に入ってからだった。フレッツ光とともに、フレッツ・テレビの工事も行なわれたが、すべて合わせて20分程度で終了した。

 工事については、「テレビへの接続やパソコンの設定などはこちらでやる」と伝えていたこともあり、各機器への接続や設置は行なわず、工事担当者のパソコンで信号を確認しただけで終了。「CD-ROMに入っているツールで接続確認してください」との言い残して、ルータを残して帰って行った。

 CATVの工事の際には、スタッフがかなり詳細に操作方法などを説明してくれ、正直「こんなことまで説明しなくても……」と思うことが多かったが、フレッツ光/フレッツ・テレビの工事のそっけなさは、これはこれで驚いた。とはいえ、ルータの設定変更などに若干戸惑ったものの、30分ほどで設定やケーブル接続などは完了した。

PR-S300SE/GV-ONU奥行きも結構長い背面。4ポートのEthernetやアンテナ出力を備えている
他の無線LANルータと比較してもかなり大きな筺体

 最初に驚いたのはルータの大きさ。ONU(光回線終端装置)を内蔵した、「PR-S300SE/GV-ONU」という製品で、4ポートのルータとして利用できるほか、フレッツ・テレビ用のRF端子も装備している。6年前に購入したNECの無線LANルータ「WR7600H」と比べても遥かに大きく、ゴツいので置き場には少々困ってしまう。

 また、標準では無線LANを備えておらず、別途オプションのPCIカードを導入しないと、無線LANルータとしては利用できない。無線LANを使っているのは1台のノートPCだけなので、カードを増設せずに、従来から使っていた無線LANルータをPR-S300SEに接続して利用している。

 もっともこれらの問題は、「インターネット利用」における、システム運用の都合だ。「テレビ」に関することでは、設定することはほとんどない。

アンテナ出力

 テレビ向けにやることといえば、ルータのRF端子から、アンテナケーブルでテレビやレコーダに接続するだけ。RF出力は1系統のみなので、地上デジタルとBSデジタルの両方を使いたい場合や、複数台での利用を想定している場合は、分波/分配機などを利用する必要がある。

 フレッツ・テレビ申し込み時の確認の電話でも、「自分で設置する」と伝えたところ、「分波機などはお持ちですか? 」と何度も確認されたが、分波/分配機とケーブルは余っていたので、これらを使って、レコーダとテレビに接続した。

 特に手持ちのAV機器が多い場合、自分で作業をやるのはそれなりに面倒ではある。分配機も2,000円程度からとそれなりに高価だし、ケーブルの費用や引き回しの手間などを考えれば、1台で8,925円、ホーム共聴工事で15,750円~というフレッツ・テレビの接続工事費用もそれほど高くはないのかもしれない。

 受信設定さえ済んでしまえば、あとは地上/BSデジタル放送が問題なく視聴できる。要するに地上/BSデジタルをアンテナで受信しているのと同じなので、使用感も“普通”としか言いようがない。地上/BSデジタルをそのまま再送信するというサービスなので、当たり前なのだが、CATVの地デジ再送信と比較しても特に変わった印象はない。強いて言えば、地デジ視聴時に、CATVでのみコミュニティチャンネルが見られるという点ぐらいだ。

 筆者の自宅では、デジタル放送受信環境として、液晶テレビはREGZA「37Z2000」、Blu-rayレコーダ「DMR-BW830」を主に利用しているが、DIGAは地上デジタルとBSデジタルの両方をフレッツ・テレビに接続、REGZAには地上デジタルはCATVの再送信に、BSはDIGAのスルー出力に接続している。全てフレッツ・テレビにしてもいいのだが、コミュニティチャンネルが見られることと、万一の障害時のバックアップ環境として、現時点ではCATVのほうも残している。

フレッツ・テレビで地デジを視聴CATVで受信するとJ:COMのコミュニティチャンネルが視聴できる

 


■ 「体験として“新鮮さはゼロ”だが“嬉しい”」、放送視聴の選択肢

 基本的には、BS/110度CSデジタルの“アンテナを立てた”のと、ほぼ同じ環境を提供するのが「フレッツ・テレビ」だ。

 戸建かマンション/アパートか、賃貸か否かなど、アンテナ設置とフレッツ・テレビのどちらが低コストになるか、運用しやすいか、などは、ケースバイケースだろう。しかし、地デジ/BSデジタルを気軽に楽しめる選択肢を増やすという点で、確実に「必要な人には必要」なサービスといえる。体験としての新鮮さは全くないのだが、個人的にはかゆい所に手の届く、うれしいサービスと感じている。

 また、CATVとの比較では、使い慣れた機器をそのまま使えるというのがメリットと感じた。CATVの場合、STBがサービス事業者の指定のものになってしまう。この使い勝手が気に入らないと、番組視聴頻度も下がったり、録り逃しが増えたりしてしまうが、フレッツ・テレビでは使い慣れているレコーダやテレビの機能をフルに使える。特にテレビや録画機を、機能/画質などにこだわって選択している人にはとっては、重要なポイントだろう。


(2009年 8月 7日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]