ミニトピ
Spotifyの曲をもっと便利に、いい音で聴ける「Spotify Connect」とは?
2016年12月15日 08:00
「世界最大の音楽ストリーミングサービス」と目されるSpotify(スポティファイ)がこの9月、日本に上陸した。楽曲ラインナップ4,000万曲という規模はもちろんのこと、「広告付き無料、聴取時間制限なし」というビジネスモデルのインパクトは、根っからの音楽好きにはもちろん、普段それほど音楽を聴かない層にとっても非常に大きく注目されている。
スウェーデンから発祥し、今や全世界で1億人以上のアクティブユーザーがいるSpotifyだけに、アプリや周辺サービスもよく作り込まれている。スマートフォンなど単体でももちろん楽しめるが、より便利に、いい音で聴けるのが「Spotify Connect」機能。聴き放題の魅力を、さらに高めてくれるこの機能を、実際に対応製品を使いながら詳しく紹介しよう。
広告付き無料プランでも相当スゴい、Spotifyの基本をおさらい
最初に、Spotifyの基本を簡単にまとめてみた。詳細は後々補足していく。
・iPhoneかAndroid端末に専用アプリをインストールして聴く
・ストリーミング再生のため、楽曲のダウンロードは不要(有料会員はダウンロードも可能)
・ジャンル別/テーマ別プレイリストを選び、シャッフル再生で聴くのが基本
・無料会員でも聴取時間の制限はない
このように、Spotifyを始めるためのハードルは非常に低い。一般的なスマホを使っていればそれでもうOK。今すぐ聴き放題の環境が手に入る。
日本ではApple Music、LINE MUSIC、AWA、Google Play Musicなど月額1,000円程度の音楽聴き放題サービスがかなり立ち上がっていて、一部サービスは無料プランも用意されているが、Spotifyは無料会員でも再生時間の制限が無いなど、相当なレベルで曲を楽しめてしまう点で異色だ。
楽曲のラインナップは4,000万曲としており、邦楽については概ね「J-トラック」というカテゴリーにまとめられており、筆者が確認した時点ではケツメイシ、RADWIMPS、清水翔太、東京事変、AI、東京スカパラダイスオーケストラ、ONE OK ROCK、佐野元春などが上位に表示された。もちろんこれらアーティストの曲全てが登録されている訳ではなく、例えば映画「君の名は。」で知られる「前前前世 (movie ver.)」(RADWIMPS)は聴けなかった。
一方で、無料会員には制限があり、「音声広告が曲の間に時折挿入される」ほか、「好きな曲を任意のタイミングで聴いたり、曲の戻しスキップをするには月額980円のプレミアム会員登録が必要」となる。
広告がどんなタイミングで流れるかといった詳細は明らかになっていないが、実際に聴いてみると、FMラジオなどのCM体験そのもの。数十分に1回、曲と曲の間に10~30秒前後のCMが入る。今のところ、Spotifyのプレミアム会員のCMが多いようだ(一時期、お菓子のキットカットのCMなどもあった)。
長時間音楽を聴いていると、ナレーションによるCMはむしろ良い小休止というか、ワンクッションになってくれているように思う。個人的には、動画サイトの広告ほどのの煩わしさは感じない。自分で曲を選んで聴くのと違って、「何かをしながら音楽を聴いている」という心の余裕からだろうか。
曲の指定に制限がある点にはやや注意がいる。例えばアーティスト検索でロックバンドのクイーンを見つけ、アルバム「Queen II」の曲目一覧から6曲目を再生しようとしても、できない(タップしても反応がない)。ここで押せるのは「シャッフルプレイ」のボタンだけで、実際に押すと「Queen II」の中からどれか1曲がランダムでかかるのだが、それが終わるとクイーンの別のアルバムの曲も含めてランダム再生される。
また、次の曲へ好きなタイミングでスキップする事は簡単にできるが、曲の頭に戻って聴き直したり、再生位置バーをドラッグして好きな部分に合わせることもできない。
まとめると、「特定のアーティストの楽曲だけを聴き続ける」ことは無料でも可能。逆に「特定の曲だけをリピート再生し続ける」とか「特定のアルバムだけを聴き続ける」には、プレミアム会員登録が必要になる。
アプリに実際に触れてみるとよく分かるのだが、Spotifyの肝はプレイリストの豊富さ。人気チャートはもちろん、「眠れないときの音楽」「ドライブにピッタリ」といったシーンに応じたものが無数に用意されている。
これらのプレイリストを使って「知らなかった曲に出会える」ことがSpotifyの真の魅力とも思える。特に目的の曲をイメージしていなくても、「なんとなくカッコいい曲が聴けるからFMにチューニングする」のと似た使い方ができるので、まずは一度無料プランを試してみてほしい。
家のオーディオでじっくり聴くならSpotify Connectの出番
さて、Spotifyを長時間聴くようになってくると、今度はより良い環境が欲しくなってくる。スマホ内蔵の小口径スピーカーではどうしても限界があるし、例えば自宅で家事をしながら音楽を楽しみたいときなどは、2部屋またがる程度の音量も必要だ。
最近ではこういったシチュエーションに対し、Bluetoothスピーカーを使う方も多いだろうが、Spotifyではもう1歩踏み込んだ機能を用意している。それが「Spotify Connect」。Spotify Connect対応のスピーカーやアンプで直接、ストリーミング音楽を鳴らせる。
スマホとスピーカーの間は当然ワイヤレスなので、ケーブルを這わせるような煩わしさはない。また、スマホのSpotifyアプリで一時停止やスキップといった操作を行なうものの、あくまでも音楽の受信はスピーカー側の担当。スマホの電源が万一切れる、他のアプリで動画再生やゲームをやるにしても、音楽の再生は継続する。ここが重要な部分だ。
Spotify Connectの利用にあたって必要となるのは、まずSpotify Connect対応のデバイス。日本のヤマハ、オンキヨーをはじめとした音響・映像機器メーカー各社が相次いで製品をリリースしている。
そして、Spotify Connect機器を設置したい場所に無線LAN(Wi-Fi)ネットワークも必要となる。Spotify Connectはその仕組み上、同一のWi-FiネットワークにスマホとSpotify Connect対応機器を接続しなければならない。光ファイバーやADSLなどの固定インターネット回線を引き込んでいる家であれば、恐らく条件を満たしているかとは思うが、念のため確認してほしい。
最後にもう1つ、Spotify Connectを利用するには、Spotifyのプレミアム会員登録も必須となる。
簡単な設定でワイヤレス再生が楽しめる
Spotify Connectの設定は簡単なので、今回はボーズ製のW-Fiスピーカー「Sound Touch 10」(直販価格29,160円/税込)を使った場合の設定例を紹介しよう。
まずは専用のコントロールアプリ「Sound Touch」をダウンロード。Android版もリリースされているが、今回はiOS版を使っている。
基本的には画面の指示にしたがって操作すればOK。接続するWi-Fiネットワークを選択し、そのパスワードを画面上で入力する。また、ボーズが発行/管理する「Sound Touchアカウント」への登録も必須。メールアドレスやパスワードなどを入力する。なお、セットアップ途中に本体ファームウェア更新を促される場合もあるので、その場合は画面の指示に従って作業する。
Sound Touch 10本体の正面には4つのLEDインジケータがある。一番左の「Wi-Fi」と一番右の「Sound Touch(への接続)」を示すLEDが白く点灯していれば、Spotify Connectが利用できる状態になっている。
ここまで設定すれば、Spotifyアプリに戻って音楽を再生するのが基本。アプリの画面下方にほぼ常時、音楽の出力先設定が表示されているので、ここをタップしてSound Touch 10を指定する。複数台のSpotify Connect機器を存在する場合でも、一覧を見ながらどれか1台を選択できる。逆に言うと、複数のSpotify Connect機器に対して、同時出力することはできない。
スマホ側で音楽再生中にSound Touch 10へ出力先を切り換えても、音楽が寸断されるのはわずか。端末の電源状態や電波受信環境にも依存するだろうが、平均1~2秒で切り換わる印象だ。
また、Bluetooth接続とは似ているが違う方式であることは、先ほど説明した通り。電話の着信があっても、LINEの通知があっても、それが届くのはスマホであって、スピーカーから流れる音に通知音は混ざらない。部屋に音楽を薄く流しつつ、こちらから電話を発信することもできる。
音の迫力は、やはり専用スピーカーに軍配が上がる。今回、設定に使用したiPhone 7もスピーカー性能は前モデルより向上しているとはいえ、Sound Touch 10に切り換えれば、低音の迫力が明らかに違ってくる。
設置の自由度も当然、専用スピーカーのほうが高い。スマホは四六時中持ち歩くだけに、テーブルの上など、手の届きやすい範囲に置くのが普通。それに対し、専用スピーカーなら出窓であったり、床に直置きしたりと応用が効く。
Sound Touch 10について言えば、サイズは141×87×212mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.31 kgとコンパクトで、リモコンも付属する。電源コードの接続こそ考慮する必要があるが、設置の自由度は高い。
なお、前述のSound Touchアプリからは、各種のスピーカー設定が行なえる。全部で6つあるショートカットーキーに対して音源を振り分けられるため、例えばスマホに一切触れることなくSpotifyの再生をスタートすることも可能だ。
そのほかにも、いろいろあるSpotify Connect対応機器
今回はボーズ「Sound Touch 10」における利用例をご紹介したが、その他のメーカーからもSpotify Connect対応機器が数多く発売されている。また、形態も単体型スピーカーだけに限らない。以下に、一部の製品をピックアップして簡単に紹介する。
AVアンプ ヤマハ「RX-V581」
エントリー向けの低価格モデルながら、Dolby Atmos、DTS:Xなどのサラウンドフォーマットをサポート。HDMIを4系統備え、その全てで著作権保護規格の「HDCP 2.2」に対応する。4KやHDRのパススルーも可能。ネットワーク機能の「MusicCast」強化により、Spotify Connectに対応。
AVアンプ オンキヨー「TX-L50」
AVアンプは特にSpotify Connect対応の進んでいるジャンルだ。オンキヨーのこちらのモデルも該当する。本体の高さを70mmに抑えることで、TVラックへの収納性を高めている。Spotify Connect対応ファームウェアは11月にリリースされたばかりなので、必要に応じてアップデートをしておこう。
サウンドバー パイオニア 「FS-EB70」
TVラックの上にそのまま置ける、コンパクトなサラウンドシステム。TVとの接続を前提とした製品だが、単体でもWi-FiないしBluetooth接続が可能。ネットワーク機能としては、radiko.jpが聴けて、Spotify Connectにも対応する。
ミニコンポ パナソニック「SC-PMX100」
CDプレーヤーとスピーカーをセットにした、いわゆる「ミニコンポ」。この分野もネットワーク対応が著しく進んでいる。SC-PMX100自体は2015年発売の製品だが、ファームウェア更新の手間なしにSpotify Connectを利用可能。
ワイヤレススピーカー ソニー「h.ear go(SRS-HG1) 」
持ち運びを前提としたサイズ感のWi-Fi/Bluetoothスピーカー。ハイレゾに対応しているのも大きな特徴。ソニー製品のSpotify Connect対応モデルはBlu-ray Discプレーヤーも含めて25モデルに上る。
HDMIスティック Amazon 「Fire TV」
テレビでAmazonの映像コンテンツなどを安価に楽しむデバイスとしておなじみ。各種アプリを実行でき、Spotifyもその1つ。Fire TVのリモコンを操作するだけでSpotifyの楽曲を楽しめる。
ゲーム機 SIE「PlayStation 3/4」
今回紹介するSpotify Connect機器の中では、恐らく最も普及度が高いと思われる。「PlayStation Music」という新しい音楽配信サービスが立ち上がっており、Spotifyと高度に統合されている。このため、ゲームを遊びながらBGMにSpotify楽曲を再生可能。スマホアプリ連携で、音楽出力先にもなる。
自動車 BMW
自動車でもSpotifyとの連携は進んでいる。こちらはBMWの例。ただし、厳密な意味でのSpotify Connectとは実装が異なり、車載の「BMWコネクテッド・ドライブ」機器とスマホを有線接続し、その楽曲コントロールを車側のインターフェイスで行なう。このため、プレミアム会員登録は必須になっていない。
BMWとの統合(Spotifyサポートページ内)
月額課金のメリットが加速
Spotifyは、広告付きの無料聴き放題ということ自体が、かなり魅力的だ。そのため、有料プランへの加入が必要となるSpotify Connectは、いま無料プランで満足している人にはハードルが高いと感じるかもしれない。
だが、現状でも相当数の対応機器が出ており、国際的にはSpotifyが現状ナンバー1であるだけに、Spotify Connect対応機器ラインナップはますます増えていくと思われる。対応機器として意識していなくても、既にPS4/3やFire TVなどを持っている人はもちろん、「たまたま買ったスピーカーやコンポが実はSpotify Connectに対応していた」といった状況になることもあるだろう。そんな機器がいつの間にか家に3個も4個もあるようになれば、家の中や外、様々な場所でSpotifyが楽しめるわけだ。そうなったら、Spotifyプレミアム会員となるメリットも飛躍的に高まるだろう。Spotify Connectはワイヤレスが前提で、デバイスの自由度も高い。うまく活用することで、音楽との付き合い方がますます変わっていくかもしれない。