プレイバック2018
OPPO最後のUDP-205導入とオーディオPC更新。再生環境の成熟と次の展望 by 逆木 一
2018年12月25日 07:30
テレビ、サーバー、プレーヤー、アンプとAV機器を立て続けに導入した2017年に比べると、2018年に導入した機器は多くない。2017年で色々と使い果たしてしまったこともあり、新規購入はOPPOのUHD BDプレーヤー「UDP-205」だけで、あとはオーディオ用PC「canarino Fils」の更新/カスタマイズを行なったくらいだ。もっとも、新しく導入した機器が少なかったがために、2018年は今あるシステムをじっくりと成熟させることができたとも言える。
というわけで、UDP-205とcanarino Filsを中心に、筆者の2018年のオーディオ・ビジュアルライフを振り返りたい。
OPPO最後となったUHD BDプレーヤー「OPPO UDP-205」導入の幸せ
筆者は2016年にパナソニックのUHD BDプレーヤー「DMP-UB90」、2017年にLGの有機ELテレビ「OLED55B6P」を導入し、UHD BD再生環境を整えた。DMP-UB90はエントリークラスの製品であり、いずれ「最後の映像ディスクプレーヤー」を導入しようと気合いを入れていたら、今年の春に衝撃的なニュースが舞い込んだ。今まで優れたBD/UHD BDプレーヤーを送り出してきた米OPPO Digitalが、新規製品の開発を終了するというのだ。
筆者はBD時代にOPPOの「BDP-103」を使っており、UHD BDプレーヤーも「いつかはUDP-205」と思っていただけに、衝撃は大きかった。それでも、なんとかUDP-205を入手できたのは幸運だった。
UDP-205は期待に違わず、画質・音質ともにDMP-UB90から大きな向上があった。
画質面では、テレビ・プレーヤーともにDolby Visionに対応したことで、手持ちのDolby Vision収録ディスクの真価を発揮できるようになった。UDP-205におけるHDR10タイトルの画質向上幅を「1」とするなら、Dolby Visionタイトルは「2」から「3」程度の向上が得られた。グラデーションの緻密さに勝るのはもちろん、細部のディテール表現においても、Dolby Visionの優位性が感じられた。今年は「プライベート・ライアン」や「グラディエーター」など、数々の名作がDolby Vision仕様でUHD BD化されたこともあり、UDP-205によるDolby Vision環境の完成は大きな効果をもたらした。
音質面では、全チャンネルの情報量が増大し、サラウンド感の向上が顕著。効果音の瞬発力が高まり、様々なタイトルで一段階上の威力を味わえるようになった。2chアナログ出力の音の良さも特筆できる。例えば2ch収録のタイトルならば、HDMIケーブルでAVアンプに繋ぐよりも、本機のアナログ出力の方が遥かに高音質で楽しめた。
また、UDP-205はUHD BDプレーヤーとしての使用がメインになるとはいえ、PCM 768kHz/32bit、DSD 22.6MHzという強烈なスペックを誇るUSB DACとしても使用可能である。スペックだけでなく音質もすこぶる優秀で、今年後半にバージョンアップした再生ソフト「JPLAY FEMTO」との組み合わせで聴かせる音は、筆者がメインで使っているSFORZATOのネットワークプレーヤー「DSP-Dorado」もうかうかしていられないと感じるほどだ。
純粋なUHD BDプレーヤーとしては、今年後半に登場したパイオニアの「UDP-LX800」やパナソニックの「DP-UB9000」がさらなる地平に到達した感があるものの、オーディオ機器としてのクオリティも考えれば、UDP-205の価値は今なお揺らいでいない。マルチチャンネル・サラウンドを志向せず、テレビと2chステレオで映画も音楽も楽しもうという方向性なら、今なおUDP-205は最高のUHD BDプレーヤーだろう。生産終了は返す返す残念なことだが、こんなに素晴らしい製品を送り出したOPPO Digitalには最大限の賛辞を送りたい。
canarino Fils更新、ファイル再生の環境が激変した
canarino Filsは秋葉原のPCショップ・オリオスペックが販売しているオーディオ用ファンレスPCで、筆者は2016年の後半に導入した。ただ、Roonをはじめとする様々なソフトの母艦や、USB DACのテスト環境としての活用が元々の導入目的であり、必ずしも再生システムの中心に据えるためではなかった。
しかし、今年の夏にSFORZATOのネットワークプレーヤーがアップデートで「Diretta」という機能に対応したことにより、状況は一変した。
Direttaとは、SFORZATOのネットワークプレーヤーをUSB DACならぬ「LAN DAC」として使うための機能/モード、およびそれを実現するための通信プロトコル。現状Direttaを利用するためにはWindows PCと組み合わせる必要がある。そしてDSP-Doradoを「LAN DACとして使った時の音」が、今までの「ネットワークプレーヤーとして使った時の音」を凌駕してしまったため、この際とことんDirettaの可能性を追求すべく、canarino Filsの更新に踏み切ったのである。
それまで使っていたcanarino Filsのケースは拡張ボードを1枚使用可能で、JCATのオーディオ用USBカードを使っていた。
Direttaの実力をさらに引き出すためにオーディオ用LANカードを使いたいが、従来のケースではUSBとLANの二者択一になってしまう。USB DACとの接続もcanarino Filsの重要な仕事であるので、ケースを交換し、JCATのUSBカードとLANカードを同時に利用できるようにした。あわせて各種ノイズ対策やアナログリニア電源の導入も行なった。
これらが功を奏してDirettaを用いた再生音はさらに向上し、筆者がオーディオ用PCに求める「デジタル・ファイル再生の原器」としてのポテンシャルも従来以上に引き上げられた。
生まれ変わったcanarino Filsのおかげで、これからファイル再生の領域でどのようなハード/ソフトが登場しても、どんと来いである。
なお、DirettaそのものはSFORZATO製品専用というわけではなく、今後他社製品に採用・搭載されていく可能性もある。実際、アイ・オー・データは先月行なわれた大阪ハイエンドオーディオショウにおいて、あくまでも参考展示ながら同社のSoundgenicでDirettaのデモを行なっている。Direttaの威力を体感した身としては、多くのメーカー/ブランドがDirettaを採用してくれることを期待している。
善い画、善い音は映像/音楽鑑賞の楽しみを最大化する。画質と音質にこだわることで、ただでさえ大好きな作品がもっと面白くなり、愛してやまない作品からより深い感動を引き出せる。
2018年も、存分にオーディオ・ビジュアルの趣味を満喫した一年だった。