プレイバック2018

ソニーA9F×ベルリンフィルは極上のエンタテイメントだ by 山之内正

オーディオ試聴室にはディスプレイを置かないつもりだったが、映像付きのベルリンフィル「デジタル・コンサートホール」やBDの音楽ライヴを見る機会が増えたので導入することにした。複数の候補のなかから最終的に購入を決めたのは、ソニーの有機ELテレビA9F。サイズは設置スペースの関係で55型を選んだ。

オーディオ試聴室にKJ-55A9Fを導入。ベルリンフィルや音楽BDを愉しむ

この時期に買うなら4Kチューナー内蔵モデルとも一瞬考えたが、筆者が見たいコンテンツは映像配信サービスとディスクが中心だし、4K放送の番組表を見ても一部を除いて食指が動かなかったので、チューナーはいずれ必要になったら追加で購入することにした。

最初は低めのラックに載せてみたが、高さがなんとなく中途半端に感じたので、すぐに床置きに変更し、オーディオラックとCDラックの間に置いてみた。低すぎるかと思ったが、これが意外に具合が良いことに後で気付いた。

メインスピーカーの間に置くことは最初から想定していなかったので、部屋の長手方向の壁に沿って置いたのだが、さすがにA9Fの内蔵スピーカー(アコースティック サーフェス)だけだと少しさびしい。外部スピーカーを脇に置く予定だが、こちらはまだ検討中だ。テレビに合わせてスピーカーまで床置きにすると音が不明瞭になるし、適当な高さのスピーカースタンドも見つからない。小型ブックシェルフスピーカーをインシュレーターなどで少しだけ嵩上げするのが現実的かもしれない。

画面に傾斜が付いていることもあって、床置きでも不便はないが、設置環境はいまだ検討中

A9FはAndroid OS 8.0の動作が快適で、特に映像配信関連のアプリは起動時間も短く、ストレスはほとんどない。アプリをインストールすればデジタル・コンサートホールも快適に見られるのだが、一つだけ問題があった。A9Fで受信すると最新のプログラムが4KではなくHDとして表示され、本来の画質が得られないのだ。一方、A9FにつないだパナソニックのUHD BDプレーヤー「DMP-UB900」のアプリで受信するとホーム画面に「4K UHD」の項目が表示され、2017年秋以降に収録したプログラム48本(12月上旬現在)が4Kクオリティで再生できる。

A9Fにアプリをインストールできるが、なぜか2K再生

パナソニックがベルリンフィルと提携関係を結び、デジタル・コンサートホールのオンデマンド配信を開始したのは2017年10月のことだが、それから120日間はパナソニック製のテレビやBDレコーダー/プレーヤー限定で4Kクオリティの配信を行うと発表されていた。

その期間はすでに過ぎているが、ブラビアの最新モデルでは再生ができていない。当面はUB900経由で見れば済むことなので、実際には困っていないのだが、原因がどこにあるのかについて、いま調べている段階だ。

UB900のアプリを受信すると4Kクオリティで再生できる

4Kで見るライヴ映像はステージ全景をとらえたカメラでも団員や聴衆一人ひとりの表情が見えるほど鮮明で、立体感もHD映像とは一線を画す。コンサートのライヴ映像をブルーレイで見てもここまで高画質なものはほとんどないので、ステージのライヴ及びアーカイブの映像コンテンツとしてデジタル・コンサートホールが最先端を突き進んでいると言って間違いないだろう。

床にそのまま置いたA9Fを低めの椅子に座って見ていると、まるでフィルハーモニーホール1階の座席からステージを見ているような角度になり、とても具合がいい。A9Fの付属スタンドは僅かな傾斜角がついているので、画面より少しだけ高い位置から見てもほとんど違和感がない。

8時間の時差さえ受け入れれば、この環境で見るベルリンフィルのライヴコンサートはまさに極上のエンタテインメントである。

山之内正

神奈川県横浜市出身。オーディオ専門誌編集を経て1990年以降オーディオ、AV、ホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、現在も演奏活動を継続。年に数回オペラやコンサート鑑賞のために欧州を訪れ、海外の見本市やオーディオショウの取材も積極的に行っている。近著:「ネットオーディオ入門」(講談社、ブルーバックス)、「目指せ!耳の達人」(音楽之友社、共著)など。