プレイバック2018

AVとはなにか。by 編集部:臼田

4K放送が始まって視力が上がった(錯覚)

2018年も多くのAV(オーディオ・ビジュアル)関連ニュースをお伝えすることができました。10大ニュースなどを振り返ると、なかなか実りのある1年になったと思います。

印象深いのは、1年前まで盛り上がると思っていなかった「新4K8K衛星放送」。“フル対応”は少しハードルが高いものの、(主要チャンネルを)“とりあえず見る”レベルであれば、ほぼ既存のBS放送のまま。世間の注目はさておき、AV Watch的には今年イチオシのテーマとして記事をお届けしたつもりです。パナソニックのBS4Kレコーダーが予想外の品薄になるなど、ちょっとした問題もありましたが、基幹放送の高度化・高画質化は、様々なものを大きく変える機会になるのだな、と感じました。

“4Kが降ってくる”となるとテレビも当然変わります。自宅には、東芝の「REGZA 55X920」を放送に先駆けて9月に導入。これまでも“4Kテレビ”を使って、UHD BDなどの“4Kコンテンツ”を見ていましたが、放送で降ってくる4K放送番組には、別の感動があります。「これから映画を見るぞ」的な気合とは無縁で、リラックスして見ている放送が4K画質になると、視力が良くなったような錯覚を覚えます。

レグザに4Kが降ってきた

コンテンツが揃うことで、ハードウェアの魅力も高まる。BS 4K放送開始の12月1日以降、X920が進化、より魅力が高まったように感じます。アップデートするハードウェアという感じで、満足度が高まっております。昔から映像もオーディオも、「コンテンツとハードウェアの両輪で進化する」と言われてきましたが、まさにそのことを強く感じた1年でした。

そういう意味では、ソニーとパナソニックから年内に4Kチューナー搭載テレビが発売されなかったのは少し残念。2019年は年明けからカッとばしてくれることを期待しています。

“両輪”というけれど、タイヤ変わってきた感

一方、「コンテンツとハードウェアの両輪」の“両輪”のプレイヤーや、そのパワーバランスが変わってきたな、とも感じられました。

例えば、テレビのリモコンにNetflixだけでなく、様々な映像配信サービスの「専用ボタン」が入ってきました。特にソニーBRAVIAのリモコンには、目立つ“一等地”にNetflix、Hulu、AbemaTV、U-NEXTなどのボタンが追加され、テレビが“放送だけのもの”ではないことを印象づけました。

また、Netflixとソニーが連携した専用画質モード「Netflix Calibrated Mode」も誕生。監督や製作者の意図をできるだけ忠実に反映するという狙いは、AVファンとしては歓迎したいもの。

その一方、「具体的にどんな調整が行なわれているのか?」とか、「では、他社のテレビではどう設定すればよい?」みたいな疑問もあり、そうした細かい情報があまり出てこなくなったのがやや気がかりなところ。

同じことはDolby Visionにも感じるのですが、業界標準の時代から、サービス事業者などに主導権が移ったことで、細かい制御や設定も理解したいという我儘なAVファンには物足りなさを感じる時代になってきたような気もしています。来年以降はもう少し情報が出てくればいいのですが……。

樋口真嗣さんの連載で、衛星放送や映像配信サービスの「ラウドネス制御」について各社に聞いたことも、そうした思いを抱くきっかけでした。

【樋口真嗣の地獄の怪光線】爆音上映ブームの中、放送や配信の「ラウドネス」について思う

詳しくは記事を見ていただきたいのですが、「同じ映画やドラマを見ている」はずなのに、実はどの配信事業者、放送チャンネルに載るかでも結構違いがあります。

幸いにしてラウドネスについては、ほとんどの会社から対応状況を細かく教えていただけた(ありがとうございます)ので、とても助かりましたが、AVファンとしては、こうした違いも把握しながら、あれこれ選んでいきたいものです。

その点、トム・クルーズやクリストファー・ノーラン監督らが、「映画の24フレーム」を忠実に家庭でも再現するよう求める声が上がってきたのは面白い流れ。映像配信を24フレームに近い表現で家庭環境で再現するのは、それなりの知識が必要。もう少しわかりやすく、あるいはユーザーに意識させずに、クリエイターが意図したとおりの表現を家庭で実現できる。そんな時代になってほしいものですし、そうした“細かい”トピックもできる限りカバーしていくのも、AV Watchの役割なのかな、と感じております。

AVとはなにか。

話は変わって、私(臼田)がAV Watch編集長を退任し、2019年1月から(帰宅したらとりあえずVtuberを見る)山崎健太郎に変わります。

2002年からAV Watchの担当し、2011年から約7年間が編集長を務めました。デジタル家電の黎明期で、“次世代”光ディスク戦争(BDとHD DVD)、プラズマテレビ終息、地デジ(エコポイント)バブルといういろいろありましたが、10年前にはまさか8K放送が2018年に始まるとは思っていもいませんでした(ちなみに2005年時点では8K放送の開始目標が2025年でした。ので大幅な前倒しです)。

ブラウン管がテレビの主流だった時代には、「インチ1万円を切ったら薄型テレビが普及する」などと言われていました。いまや、インチ3,000円以下でも50型の4Kテレビが買える時代になりました。フラッグシップの有機ELテレビもインチ5,000~6,000円程度で、さらに10年、15年前からは信じられないような高画質が家庭で楽しめるようになりました。そう考えると、70型の8Kテレビ「AQUOS 8K 8T-C70AX1」の100万円弱とか、爆安に感じます(錯覚)。

AQUOS 8K。70型で100万円は爆安

10年、15年前に比べると、国内のAVメーカーは減り、市場規模も縮小しました。

ただ、映画やドラマ、音楽などのエンターテイメントを楽しむことが衰退したわけではありません。むしろ、飛行機のなかでも、事前にダウンロードしておいた映画を見たり、月額数百円で一生かけても聞けない数の音楽ライブラリに自由にアクセスできるようになるなど、可能性は年々拡大しているはず。映画館の映像体験や様々なサービスもさらにリッチに、音楽ライブの楽しみ方も多様化しています。

オーディオビジュアルを楽しむ環境は日々変化し続けていますが、AV Watchは、シンプルに楽しい時間を過ごすためのお手伝いをするメディアを目指してきたつもりです。2019年以降もAV Watchをよろしくお願いいたします。

ついでに、Impress Watchもよろしくお願いいたします(TwitterFacebook)。

臼田勤哉