プレイバック2017

没入と開放。AirPodsとスマートスピーカーで感じた声と音の新時代 by 編集部:臼田

FitEar UniversalとAirPods。周囲の環境・現実に音を重ねるということ

 今年愛用したイヤフォンが、FitEarの「FirEar Universal」。音質がいいのはもちろんだが、本体の重量バランスが良く、耳へのフィット感、そして装着した際の自然さが、これまで使ったどのイヤフォンよりもよい。(耳型を採取して自分専用に作る)カスタムイヤフォンではないのだが、“自分のために作られた”ように感じられる。結果、音楽がより楽しく感じられる。他にも多くの素晴らしいイヤフォンはあったが、"自然なつけ心地”、"フィット感”が、ある意味音質以上の価値があると実感させてくれた。

FitEar Universal

 一方、身体的な“フィット感”という点では好みではないのだが、大いに活用した製品がAppleの「AirPods」。今年話題を集めた左右完全分離型ワイヤレスイヤフォンだが、発売時のレビュー記事でも触れたように、自分の耳にはあまり合わず、落ちやすい。外の音も拾いやすく、音漏れも多い。だが、どの製品より、音を聞く場所や時間を増やしてくれた。

AirPods

 イヤフォンを使うのは、「音楽を聞きたい」あるいは「作業に集中するために外の音を遮断したい」など、やりたいことがある明確な場合。AirPodsを使うのは、ラジオやPodcastを聞いたり、ストリーミングでプレイリストを再生といったシーン。例えるなら、イヤフォン/ヘッドフォンは、ステレオの前の「音楽鑑賞」、AirPodsは家でラジオやテレビをつけっぱなしにするような「ながら視聴・聴取」といった感覚だ。

 AirpPodsには、左右ユニットをつなぐケーブルが無く、しかも左右各4gと軽量なこともあり、装着時の圧迫感は全くない。また、遮音性能は弱く、外部の音をかなり拾うため、“世間から隔離される感じ”がほとんどない。

 なので、オフィスでインタビュー時の録音ファイルを聞いていても、架かってきた電話を取れるし、記者会見のストリーミング配信などを見るにも重宝している。ラジオや録音ファイルの聞き返しであれば、イヤフォンを外さずに周囲の人と会話できる(音楽は厳しい)。また、休日に20分程歩いて食事に行くといった時も、Podcastやラジオを聞くようになるなど、これまでイヤフォンを使おうと思わなかった時間や場所で“音”を聞いている。結果的にラジオやPodcastを聞く時間がかなり増えた。

 ケーブルからの自由も魅力的だが、AirPodsを使ってわかったのは、“外の音が聞こえる”ことの価値。音質面ではデメリットでもあるが、外の音が聞こえるが故に、周囲の環境・現実を妨げず、重ね合わせるようにラジオや音楽、Podcastが楽しめる。この感覚が魅力的だ。

 ただ、FitEarUniversalの後にAirPodsを使うと、もう少しフィット感が欲しいとは感じる。AirPods2(?)では、その点の進化に期待したい。

FitEar UniversalとAirPods

 「周囲の音を聞かせる」という点で面白かったのが、ソニーのヘッドフォン「1000Xシリーズ」のインタビュー。1000Xシリーズは、歩く・走る・止まるなどのユーザー行動にあわせてノイズキャンセル効果等を調整する「アダプティブサウンドコントロール」を搭載している。「没入感と開放感を動的に調整する」というのが、イヤフォン/ヘッドフォンの次のトレンドになるのかもしれない。

ソニー「WH-1000XM2」
自分の行動に合わせてNCの設定が自動的に変わる

スマートスピーカーと声の時代

 Podcastやラジオを聞くようになった2017年。“声”というテーマで話題になった製品が、スマートスピーカー(と音声アシスタント)だ。自宅には、Clova WAVEと、Amazon Echo、Google Homeを置いているが、スマートスピーカー以前には戻れないな、というぐらい愛用している。

Google Home、Echo、Clova WAVE

 もっともほとんどは音楽やラジオ、タイマーで、家電連動などは頑張って設定した割に使っていない。しかし、音声認識精度や反応速度、応答なども日に日に改善しているし、Clovaの童話再生のように予想していなかった新機能が続々と増え、使っているだけで発見がある。

 余談だが個人的に一番欲しい機能は、「明日は何ゴミの日?」と聞いたら、「○月○日○曜日は、燃えるゴミの日です」みたいに教えてくれるもの。ぜひ対応お願いいたします。>各社様

 各社のスピーカーについては、音楽サービス(Spotify)連携はGoogle Homeが気に入っているが、音質はEchoのほうが好みと、まだまだ決定打にかけると感じている。ソニーやJBL、オンキヨーに加え、さらに新規参入も増え、2018年は各社が競い合い、より洗練されたものになっていくだろう。

 AV機能に関して早期に対応を望みたいのは、日本語Alexa(Amazonの音声アシスタント)のFire TV対応。Chromecastより、リモコンで操作できるFire TVが好きで、利用頻度が高いのもプライムビデオなので、映像配信の視聴デバイスはFire TVを主力で使っている。しかし、現状スマートスピーカーからの音声操作に対応しているのは、Chromecastのみだ。Android TV搭載テレビに買い替えるべきか、それとも日本語AlexaのFire TV対応が先か……。

 ともあれ、黎明期ということで、スマートスピーカー(音声アシスタント)を使っていると、「あの機能がほしい」とか「こうなったらいいのに」とか、アイデアが湧いてくる。それもまた楽しいもの。2018年により洗練された製品になっていくのは間違いないだろうが、勝者が決まって面白みも無くなってしまうだろうか? それともより多くの可能性を見せてくれるだろうか? 個人的には後者であることを期待している。

臼田勤哉