プレイバック2018

帰宅したらとりあえずVtuberを見るようになった2018年 by 編集部:山崎

動画配信サービスはNetflixとHulu、Amazon Prime Videoと契約している……のだが、“今年最もたくさん見たコンテンツは?”と胸に手を当てて振り返ると、無料で楽しめるVtuberの動画ばかり見ていた事に気付き、ショックを受けた。

Vtuber界の親分、キズナアイ

疲れた脳にはVtuber

疲れて夜に帰宅、PCを立ち上げると無意識にYouTubeを開き、チャンネル登録しているVtuberのページにアクセス。新着動画を再生するのが日課になってしまった。ドラマやアニメ、映画も見るが、脳が疲れていると“新しい物語”を見始めるパワーが沸かず、「かわいい声だなぁ」とか言いながらボーッと眺めていられるVtuber動画が心地いいのだ。

ゲーム配信などは映像を見ていないとダメだが、ダラリとしたフリートーク動画では、画面から目を離していても楽しめる。メールを書いたり、Webサーフィンしながら、耳だけでVtuberのトークを聞く。リスナーからのコメントに反応したり、ミニコーナーなどを設けるVtuberもいる。回を重ねるごとに、Vtuberとリスナーの絆が強くなり、仲間意識が芽生える。受験勉強の時に聞いていた深夜ラジオと同じノリだ。

ニコニコ動画が飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃も、ゲーム実況動画や歌ってみた、踊ってみた系、工作してみた、旅してみた、などの動画をよく見ていた。あの頃と現在とで、同じような動画を観ていると言えなくもないが、こんなに投稿者、Vtuber動画で言うならばVtuberのキャラクター自体が“立って”いなかったように思う。

Vtuberの先輩と言える、元祖“YouTuberブーム”にはまったく馴染めなかった。にも関わらず、YouTuberが3DCG化したVtuberにハマっている。理由はよくわからない。生身の人間が、新製品や新作ゲームをテンション高く紹介していると、何か“必死さ”を感じてしまい、一歩引いてしまう。

でもVtuberになると、「かわいいキャラがなにか喋ってるな」と、孫を見るお爺ちゃんのようにニコニコしながら見ていられる。見たくない部分をうまく隠して、可愛くて幸せな要素だけを見せてくれる。アニメや漫画が実写化され、キャラの髪型や服装を一生懸命再現している俳優に向かって「ぜんぜん似てない」、「作品のイメージが壊れる」と悲鳴が上がる事があるが、YouTuberからVtuberへの変化は、その真逆。“見たくないものを見せなくする効果”があるのかもしれない。

ゲームと親和性が高い!?Vtuber

チェックしているVtuberは、それほど多くはない。キズナアイ、輝夜月(かぐやるな)、ミライアカリ、電脳少女シロ、猫宮ひなた、ヨメミといった有名キャラクターは基本とし、月ノ美兎、樋口楓、静凛などは必修科目として受講、名取さな、周防パトラらの動画も好きだ。

時折、DVを受けて青あざが増えていくバーチャル専業主婦の麗子さんを心配したり、日雇い労働でたくましく生きる日雇礼子によるあいりん地区のグルメ紹介を見たり、ネットの最深部から現れたディープウェブ・アンダーグラウンド嬢がバーチャルハーブを吸引して支離滅裂になる動画を見て、Vtuberの奥深さを実感している。

“新しいVtuberとの出会い方”を振り返ると、ゲームが軸になっている事が多い。新作ゲームを買うと、とりあえずYouTubeでそのゲームに関する動画を検索する。必ずと言っていいほど、そのゲームをプレイしているVtuberの動画が見つかる。そして見てしまう。

“攻略方法が知りたい”などの具体的な目的があるわけではない。強いて言えば、クリアするのが難しかった面や、突然モンスターが現れて驚いた場面などで、Vtuberがどんなリアクションをするのか気になる。学生時代、クラスで友人に「あのゲームやった? 2面のボス倒すの難しくね!?」などと話したものだが、Vtuberが動画でボスに苦戦しているのを見て「ああ自分だけじゃなかった」と胸をなでおろすのだ。

逆に、お気に入りのVtuberが新作ゲームを買うと、なんだか自分もそのゲームを買わないといけない気がしてくる。別に買わなくてもいいのだが、好きなVtuberがのきなみ同じゲームをはじめると、「この祭りに参加しなきゃいけない」とソワソワしてしまう。私のような視聴者が多いのか、ゲームメーカーが提供し、Vtuberが新作ソフトを紹介するタイプの動画もよく目にするようになった。

日本でもeスポーツが大きなムーブメントとなり、大会も盛んに開催されている。今までは「上手いプレーヤーが優勝して賞金をもらう」のがプロゲーマーだと思っていたが、Vtuberにゲームの得手不得手はあまり関係がない。下手でも、悲鳴をあげたり、悩みながらゲームをプレイする様子を配信すると、「頑張って!!」などのコメントと共にスーパーチャット(いわゆる投げ銭)が飛び交う。プレイする様子を人に見せて報酬を得るという意味では、プロゲーマー的な存在と言ってもいい。コンテンツのありかたは、もっと自由であっていいのだと勉強になった1年でもある。

Vtuberとコラボしたイヤフォンやハイレゾプレーヤーといった製品も登場した

1億総Vtuber化時代は来るのか

物理的な距離に制約されないVtuber達は、気軽にコラボする。例えば輝夜月の動画に、ゲストとしてキズナアイが遊びに来たり、普段はそれぞれのチャンネルで配信している月ノ美兎、樋口楓、静凛が、にじさんじJK組として3人で配信するなど、交流は活発だ。こうした活動から、新たなVtuberとの出会いも生まれる。

歌が上手いVtuberが何人も集まり、VR空間上でカラオケで楽しむ様子を動画で眺める。“動画作品を鑑賞している”と言うよりも、“歌うタイミングを逃したが、とりあえずカラオケボックスの中に座っているモブ友人A”みたいな状態だが、1時間くらい見続けられてしまう。

活躍の場はネットを飛び出し、テレビにも広がっている。4月には“VTuberの冠番組”としてキズナアイの番組がスタート。来年の正月、2019年1月2日の夜11時35分~深夜0時20分にかけては、NHK総合で、ミライアカリや電脳少女シロ、月ノ美兎らが参加する「NHKバーチャルのど自慢」も放送される。

集大成的なニュースも年末に飛び込んできた。月ノ美兎やミライアカリ、電脳少女シロなど、VTuber 30人以上が出演するテレビアニメ「バーチャルさんはみている」が2019年1月9日24時から、TOKYO MX TVやニコニコ生放送などで放送・配信される。1回だけの特番ではなく、24分で全12話構成というボリュームだ。

VTuber 30人以上が出演するテレビアニメ「バーチャルさんはみている」

「VTuberの魅力を最大限に引き出す様々なオムニバス形式のコーナーで構成された」番組とのことだが、これはアニメなのか、新しい形のバラエティなのか、もはやよくわからない。キズナアイは既に声優としてアニメに参加しているが、今後、VTuberの人気がさらに高まると、アニメに声優として参加したり、主題歌を歌うような機会も増えていくだろう。

彼女達の単独ライブも活発に行なわれている。現実のライブハウスに観客を集め、ホログラム映像でVtuberが登場するタイプや、VR空間でアバターの観客を集め、そこでライブするなど、Vtuberによって方式が違うのも興味深い。

「カスタムキャスト」や「Vカツ」、「REALITY Avatar」、「VRoid Studio」など、3Dアバターデータを作成するアプリも多数登場。キャラクター作成、モーションキャプチャ、配信まで、スマホだけで完結し、誰でも気軽にVTuberになれる時代はもう到来している。3Dキャラクターデータを様々なプラットフォームで扱いやすくするVRMフォーマットも誕生。VRMで書き出せば、同じキャラクターデータを、配信アプリAで、配信サービスBと、いろいろなサービスに出演しやすくなる。

カスタムキャスト
VRoid Studio

「VTuberになる気はない」という人も、まったくの無関係ではなくなるかもしれない。VRMは今後、ゲームや3D空間でのチャットといったSNSサービスにも広がる可能性がある。ゲームをする時、主人公キャラに名前をつけたり、容姿を選ぶタイトルはよくあるが、そこでVRMデータを使えるようになるわけだ。Twitterのアイコン画像のように“ネット上の自分”を示す3Dデータとして、VTuber的なキャラクターを誰もが使うようになる時代が来るのかもしれない。

VRMの策定や推進のため、13社合同によるVRM共同事業体、一般社団法人VRMコンソーシアムが2019年2月に設立予定。日本発の世界標準フォーマット化を目指す

山崎健太郎