プレイバック2019

ディズニーお前もか。3D BDの減少とPCディスプレイの突然死に泣いた by 西川善司

毎年恒例の「Youは今年何を買ったの?」企画。高価格の大物は無かった気もするが、貯金額が昨年からあまり増えていないことを考えると、'19年も順調に散財していたようである。それでは、今年も散財遍歴を振り返ってみよう!

西川善司、'19年も散財しました!

BDは50タイトル購入。3D版の減少と高額な抱き合わせ4K版の台頭

今年もBDを購入して観まくった。おそらく、AV Watch編集部のAmazonアフィリエイトへの貢献度は執筆陣ナンバーワンに違いない(笑)。

そんなにBDを観ているならば映画レビューをAV Watchで書けばいいのに……というアドバイスも頂くのだが、鑑賞直後にインターネットラジオや、YouTubeで喋ってしまうため、実入りに結びつけるのがなかなか難しいのである。

'19年の購入本数は50タイトル。うち4K Ultra HD Blu-ray(UHD BD)が26本で、3Dがわずか10本だった。

AmazonでのBDソフト関連購入履歴の一部

プロフィールにもあるように、筆者は3D立体視が大好きなので、3D版が出ている場合は必ず3D版を選んでいる。筆者愛用のレーザープロジェクター・ソニー「VPL-VW745」は3Dに対応していて、映画館のやや暗い3D映像とは段違いに明るい3Dが鑑賞できるからだ。

にもかかわらず、50タイトル中10本しか3D版を購入できていないのはなぜだ? ということになるわけだが、その理由は明快。3D版がついに発売されなくなってきたのだ。これは由々しき事態である。

3D公開されていた映画がパッケージ化される場合、昨年までは4K版にバンドル(悪くいえば抱き合わせ)する形で3D版が付いてきたのだが、ついに'19年はその動向すら減少気味となった。

ちなみに、筆者が19年に購入できたブルーレイ3Dは以下の10タイトルだ。

  • 「ワイルド・スピード/スーパーコンボ 3Dブルーレイ+ブルーレイ」
  • 「アベンジャーズ/エンドゲーム 4K UHD MovieNEX」
  • 「シャザム! 3D&2Dブルーレイセット」
  • 「ダンボ 4K UHD MovieNEX」
  • 「アクアマン 3D&2Dブルーレイセット」
  • 「アリータ:バトル・エンジェル 4K ULTRA HD+3D+2Dブルーレイ」
  • 「キャプテン・マーベル 4K UHD MovieNEX 」
  • 「スパイダーマン:スパイダーバース IN 3D」
  • 「シュガー・ラッシュ:オンライン 4K UHD MovieNEX」
  • 「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 3D&2Dエクステンデッド版ブルーレイセット」

気になるのは、比較的3D版を根気よく出してきてくれていたディズニーグループが、ついに日本市場での3D版の発売を収束気味にさせていることだ。

同じディズニー系でも、アベンジャーズやスパイダーマンなどのマーベル作品は発売されたのだが、それ以外の“昔ながらのディズニーアニメ”においては、'19年後半から3D版が発売されなくなったのだ。

象徴的なのは「トイ・ストーリー4」の3D版が未発売だったこと。ディズニーはDVD時代の過去作を含め、「トイ・ストーリー」「トイ・ストーリー2」「トイ・ストーリー3」を3D版で再発売したほど入れ込んでいたはずなのだが、ついにシリーズ4作目の3D版が未発売としてしまった。

ちなみに、海外では普通に発売されている。春発売の「シュガー・ラッシュ:オンライン」「ダンボ」までは3D版が出ていたので、このあたりでリリースタイトル縮小のマーケティング判断が行なわれたのだろう。

日本では「トイ・ストーリー4」に3D版が発売されず……

付け加えれば、個人的には「名探偵ピカチュウ」の3D版も出なかったことが残念だった。これまた海外では3D版が存在するだけに悔しいところ。

それから今年「こうきたか」と思わせる事象があったので報告したい。

それは「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のパッケージだ。

UHD BD版が“ゴジラ・フィギュア同梱版”にしか付属せず、同梱版の価格たるや15,000円なのだ。確かにキャラクターものの映画ソフトでは「おまけ満載の商品セット」もあるが、こうした「ファン向け商品」がUHD BDとのセットのみ……というのは珍しい。

UHD BDだけが欲しい方にとってはフィギュアはいらないだろうし、限定フィギュアに関心の高いマニア層にとっては、UHD BDよりも通常のBDとの組み合わせの方が嬉しいのではないか。ちなみに日本では3D版の発売もないが、海外ではフィギュアなしでUHD BD+3Dの商品がラインナップされている。

ソフトメーカーには、もう少しユーザー視点に立った商品ラインナップを検討して欲しいと思う。

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の4K版はフィギュア同梱版のみ封入

PCディスプレイが突然死! 結果いろいろ入れ替わった

筆者は'14年から、原稿を書くための環境を7面ディスプレイとしている。

真正面のディスプレイは、'17年導入の東芝「REGZA 40M510X」だ。40M510XはPCディスプレイではなく4K対応テレビなのだが、視距離50cm程度で使うディスプレイとしては大きすぎないサイズで大変気に入っている。

画調モードに「モニター」モードを備え、さらに“非”倍速駆動のため、リフレッシュレート60Hzの映像入力時でも0.5フレームの遅延が発生しない。つまり、テレビでありながら4KPCディスプレイとして最適なのだ。シャープと三菱電機を除き、40型4K(対応)テレビは現行機種に存在しないので今では貴重な存在となっている。

'19年初頭時点での西川善司の原稿執筆マシン環境。右側、縦画面配置としているのがDell「3008WFP」(30インチ/2,560×1,600ピクセル)と、LG「D2342P-PN」(23インチ/フルHD)。中央は東芝「REGZA 40M510X」(40インチ/4K)と、LG「31MU97-B」(32インチ/4K)。左側は、三菱「RDT233WX-3D」(23インチ/フルHD)と、EIZO「FORIS FX2431TV」(24インチ/1,920×1,200ピクセル)、および「FlexScan HD2452W」(24インチ/1,920×1,200ピクセル)
使用風景

メイン作業は40M510Xなのだが、写真閲覧や動画プレビューには一回り小さいLG「31MU97-B」をREGZAの上に乗せて使っていた。

この31MU97-B。'14年モデルでHDRには対応していないのだが、4,096×2,160ピクセルのDCI 4K解像度で、DCI-P3色域もカバーする広色域IPS液晶パネルで、画質もそこそこ良かった。

なぜ過去形かというと今年、この31MU97-Bが故障してしまったのだ。死因は不明で、ある日、電源が入らなくなるという突然死だった。

変わりに導入したのが、LG「32UL950-W」。

パネル解像度は一般的な4K/3,840×2,160ピクセルとなるも、HDR10をサポート。バックライトはエッジ型なので黒の締まりはそれなりだが、ピーク輝度は750nitもあり、PCディスプレイにしてはHDRの表現は悪くない。

Nano-IPSという新型の液晶パネルを採用しているのも特徴。光スペクトラムを計測した感じでは、赤のピーク部に二重のトゲが見られることから、KSF蛍光体を用いていると思われる。色域はsRGB色域を100%カバー。DCI-P3は98%、Rec.2020においても70%カバーなので、PCディスプレイとしてはかなり良い方だ。

LG「32UL950-W」を55インチの液晶テレビの前に比較用に置いてみた
実際に使用環境に組み込んだ状態。画面サイズが変わらないので使用感に大きな変化はなし
「31MU97-B」は4,096×2,160ピクセルだったため、3,840×2,160ピクセルの40M510Xの上に配置するとデスクトップが左右にはみ出してしまっていた
「32UL950-W」は40M510Xと同値の3,840×2,160ピクセルであるため、レイアウト的にはきれいに収まるようになった

なお接続端子は、HDMIとDisplayPortが1系統ずつあるほか、Thunderbolt 3端子が2系統ある。31MU97-Bには無かったステレオスピーカー(5W×2)もあったりして、PCディスプレイとしての熟成度が進んだ印象だ。

「32UL950-W」の白色光スペクトラム計測結果。赤緑青の純色のピークの出方は良好で、広色域性能にも納得

筆者は出張の際、ノートPCに加えてサブ用のPCディスプレイも携行する。ここ2年ほどはASUSのポータブル液晶ディスプレイ「MB16AC」を使用していた。

このMB16AC。USB-Cケーブル一本で電源と映像が伝送できる一方、その他端子(HDMIやDisplayPort)が無く、その上PC側のUSB-CがDP ALT(DisplayPort Alternate Mode)に対応していないと、ソフトウェア伝送(仮想GPU経由)の「DisplayLink」接続となる仕様だった。

海外出張のお供として約2年間活躍してくれたASUSの「MB16AC」。写真は、導入直後の海外出張先のホテルにて

それでも出張先では、撮影した写真の確認やPDF閲覧などには使えていたので、実用上の不満はそれほどなかったのだが、2年経った今年故障してしまったのだ。これもまた電源が入らなくなる突然死だった。

そこで'19年秋頃に導入したのが、後継の「MB16AMT」である。

外観デザインはほとんど変わらないのだが、HDMI端子がついに実装された。といってもmicro HDMI端子なので、普通サイズのHDMI(タイプA)端子と接続するには変換が必要になる。

使い勝手はMB16ACと同等で、タッチ機能にも対応。USB-Cを用いてDP ALTモード接続をすればケーブル一本で、映像表示とタッチ操作が実現できる
HDMI端子がついに実装された。ただしmicro HDMI端子なので、一般的なHDMI(タイプA)端子と接続するには変換が必要

変換が必要とはいえ、普通に一般的なノートPCのHDMI端子に接続して使えるようになったのは嬉しい。micro HDMI/通常HDMI変換ケーブルが付属しているので、別途用意する必要はない。

USB-C端子も引き続き搭載されており、MB16AC同様DP ALT接続が可能。つまりMB16AMTは2系統入力が可能になったわけだ。といっても、micro HDMI端子を利用している時は、USB-Cは事実上の給電端子となるわけだが。

ほかにも、10点マルチタッチ、バッテリー駆動での利用、1W+1Wのスピーカー内蔵といった機能も追加されていて、前機種に比べて完成度はだいぶ上がっている。…というか、MB16AMTの状態で最初から発売して欲しかった……(笑)。

なお、このMB16AMTを携行しての海外出張は、年明け1月の「CES2020」が最初になるので、その活躍が楽しみである。

ステレオスピーカーの搭載もMB16ACに対する進化ポイント
白色光のスペクトラムを計測。白色LEDバックライト採用機によくあるスペクトラムで、発色性能は標準的なもの

ショルダースピーカー導入。ソニーのノイキャンヘッドフォンは格安修理!

オーディオ関連では2つほど報告がある。

1つは春先に、シャープのショルダースピーカー(ネックスピーカー)「AN-SX7」を購入したことだ。

きっかけは小寺信良さんの「小寺信良の週刊 Electric Zooma!(第892回)」を拝読したことがきっかけ。

筆者は格闘ゲーム「ストリートファイターV」を初めとして、ゲーム実況をよくやっているのだが、その際にヘッドフォンやイヤフォンを装着していると耳が途中で痛くなってきてしまうことがあり、なんとかならないかなあと思い始めていたのであった。

テレビやPCディスプレイから音を出すと、しゃべり吹き込み用のマイクに音が入ってしまう。であれば、それほど周囲に音が広がらないショルダースピーカーだったらどうか、と思いついたわけだ。

AN-SX7を選択したのは、光デジタル入力付きのトランスミッターが付属していることと、ワイヤレス伝送時の低遅延対応が決め手だった。

PS4はBluetoothには対応しているものの、Bluetoothオーディオには対応していない。このため、ワイヤレスヘッドフォン/イヤフォンを直接接続することができない。

となると、PS4の光デジタル音声出力をワイヤレス化するトランスミッターを同梱した「AN-SX7」がおあつらえ向きというわけである。そしてこの光デジタル-Bluetoothトランスミッターによる音声伝送において、低遅延な「Qualcomm aptX Low Latency」コーデックが採用されているところもゲームには都合がいい。

商品パッケージ同梱物。右下の小箱が光デジタル音声を本体に飛ばすためのトランスミッター。なお、光デジタル音声出力端子はスリム型PS4には実装されていない(PS4 Proにはあり)

実際に使ってみたところ、音質に不満はなく、振動エフェクトも強めでいい感じだった。ただ、思ったよりもマイクへのゲームサウンドの回り込みはあった(笑)。まあ、テレビやPCディスプレイから音を出している時よりはだいぶ小さいので、許容範囲ということにしている。

活用イメージ。再生モードをモード2の「ダイナミック」とすることで、けっこう強い振動が楽しめる

それと、2017年に購入したソニーのノイズキャンセリングヘッドフォン「MDR-1000X」が今年故障した。

といっても、ヘッドバンドの内壁パーツが破損しただけで、機能自体には問題は無かった。しばらくガムテープでくるんで補強していたのだが、しばらく使っているとガムテープも緩んでくるため、修理することにした。すると、サポートセンターからパーツ代+工賃で約8,000円という見積もりが……。

発音するドライバーユニットを支えるヒンジ部分の内壁パーツにクラックが発生。どうやらこの故障、1000Xでは定番の故障らしい。まあ、装着脱着のたびにここに応力が掛かるので、確かに定番の故障(破損)となり得そうではある

プラスチックの部品交換に8,000円は高いなあ……と思いつつ、ダメ元で最寄りのサポート窓口「秋山電化」に相談したところ、ご主人が「パーツ単体を900円で取り寄せることができる。精密ドライバーがあれば自身で直せるはず」と仰るので、お言葉に甘えてソニーからパーツを取り寄せてもらうことに。

筆者宅から車で行ける場所にあった、正規サポート店・秋山電化(埼玉県さいたま市)。ソニーのホームページを見て知った

取り寄せたパーツは「107 A-2195-012-A(ブラック)」というもので、確かに分解と取付は、精密ドライバーがあれば簡単に行なうことができた。

調べて見ると内壁パーツのひび割れは定番の故障箇所のようだ。ドライバー部が折りたためる構造になっているため、内壁パーツに強い応力が掛かっているのだろう。

本当は新しいモデルも気になっているのだが、900円で直ってしまった以上、しばらくは使い続けるつもりだ。

パーツを取り寄せた際に頂いたリスト。製品カラーによって発注コードが違う点には注意
こちらが届いたパーツ。メーカー見積もりの“約10分の1”の費用で修理が行なえた!

今年もありがとうございました。来年も、そして新刊もよろしくお願いします。

他にも、いろいろと散財したが、あまり長くなってもなんなのでここまでとしたい。

そうそう、最後に宣伝を。

12月20日に、インプレスから最新ゲームグラフィックス技術の仕組みを解説した拙著「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」が発売となった。待望の電子書籍版も出版されたので、是非よろしくお願いいたします。

……多分信じてもらえないだろうが、表紙が「ストリートファイターV」となったのは編集部判断です。

12月20日に発売となった「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」。リアルタイムレイトレーシング技術の解説パートやアニメ風トゥーンシェイダーの新章などが追加された。電子書籍版も同日発売

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。近著に「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」(インプレス刊)がある。3D立体視支持者。
Twitter: zenjinishikawa
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