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iOS 26で進化したApple Musicのポイントまとめ。歌詞の翻訳・発音ガイドや「AutoMix」など

iOS 26で利用可能になった「AutoMix」

アップルが9月15日に配信したiOSの最新バージョン「iOS 26」。新ソフトウェアデザインの「Liquid Glass」などが採用された新OSでは、ミュージックアプリ・Apple Musicにも新能が投入されているので、改めてそのいくつかを紹介する。

DJのように曲をミックス「AutoMix」

iOS 26では、Apple Musicにて、DJのように曲と曲の間をミックスしてくれる「AutoMix」が利用可能になった。これはAIを使って楽曲の特徴を分析し、タイムストレッチやBPMのマッチングなどを駆使して、シームレスに次の楽曲へ切り替えるもの。同機能の利用にはApple Musicのサブスクリプション契約が必要。

OSをアップデートすると自動でONになるため、別途設定不要で利用できるが、アルバムやDJミックスの再生時、クラシックなど特定ジャンルの楽曲を聴いている場合は自動でOFFになる。

AutoMixをONにしていると、楽曲の終盤で再生バーが淡く光り「ミキシング」と表示される
曲が切り替わりつつ、アートワークも次の曲も溶けるように変化していく

AutoMixを利用すると、再生中の楽曲が終わりに差し掛かると、再生バーが淡く光りつつ「ミキシング」と表示され、まるでDJが操作しているかのように次の楽曲へと切り替わる。またアートワークも溶けるようにフェードアウト/インして、新しい楽曲に切り替わる演出が楽しめる。

再生中の楽曲と次に再生する楽曲のBPMに違いがある場合でも、テンポが自動でマッチングされるので違和感なく次の楽曲にスイッチされるので、お気に入りのプレイリストを新鮮な感覚で楽しめるはずだ。

設定→ミュージックアプリの「曲のトランジション」からAutoMixのON/OFFが可能。トランジションのスタイルを変えることもできる
ミュージックアプリでは、再生キュー画面に表示される丸がニ個並んだマーク(画像上段右、∞マークの右隣)をタップすることでAutoMixをON/OFFできる

ただし、自動でミックスされるため、どうしても楽曲のアウトロ部分はカットされてしまう。「1曲1曲最後までじっくり楽しみたい」という場合はAutoMixをOFFにしよう。ON/OFFの切り替えは設定→ミュージックから行なえるほか、ミュージックアプリ内の再生キューからもON/OFFできる。

またミュージックアプリのライブラリ画面では、お気に入りのアルバムやプレイリストなどを6つまでピン留め可能。より素早くアクセスできるようになっている。

ライブラリ画面に最大6つまでアルバムやプレイリストなどのピン留めが可能
アルバムページの画面右上にある「…」ボタンからピン留めができる

歌詞に翻訳と発音ガイド。翻訳は専門家が監修

歌詞の翻訳機能も利用可能

さらにApple Musicでは、歌詞に翻訳と発音ガイドが表示されるようになった。現時点では英語から日本語、韓国語から日本語への翻訳が利用でき、K-POP楽曲ではカタカナで発音ガイドが表示される。

Google翻訳などの機械翻訳を使えば、歌詞の翻訳自体は可能だが、Apple Musicの場合は機械翻訳も活用しつつ、各言語のネイティブスピーカーが翻訳文を監修。楽曲としての文脈や文化的な背景、スラングなども加味しつつ、より正確にアーティストの意図・ニュアンスを捉えた翻訳を採用しているのがポイントとなる。

一方で、ネイティブスピーカーによる監修作業も入るため、すべての洋楽で翻訳が利用できるわけではない。10月20日時点で編集部が確認したところ、エド・シーランのアルバム「Play(Extended Edition)」では「Sapphire」や「Azizam」では翻訳が表示されたものの、「Old Phone」では表示されなかった。

また翻訳文章は随時アップデートされるため、楽曲によっては翻訳のニュアンスが微妙に変わることもあるという。

また現時点で翻訳の対象となるのは楽曲で使われている言語のうち、1言語のみ。例えばK-POPでは韓国語と英語が混在する楽曲も多いが、その場合は片方の言語のみ日本語訳される。上で写真で示した「LE SSERAFIM/HOT」の場合、韓国語のみ日本語訳されている。

他サービスからのプレイリスト移行が手軽に

「他のサービスから音楽を転送する」を使えば、他サービスからApple Musicへのライブラリ移行がスムーズに行なえる

ほかの音楽配信サービスからApple Musicへの乗り換えを検討している場合、ネックとなるのがライブラリの移行。特にサービスを長く使えば使うほど、お気に入りのプレイリストやアーティスト、アルバムなどの情報は膨大になり、新しいサービスでいちいち登録し直すのはとても面倒だ。

設定→ミュージック内に「他のサービスから音楽を転送する」項目が表示されている

しかし、iOS 26ではほかの音楽配信サービスで保存した音楽・プレイリストをApple Musicライブラリに転送できる「他のサービスから音楽を転送する」が利用可能になった。設定→ミュージック内から利用できる。

対応しているサービスはAmazon Music、Deezer、Spotify、YouTubeで、プレイリスト転送サービス「SongShift」経由でライブラリをする形となる。転送も比較的スムーズに済むので、他サービスからApple Musicへの乗り換えを検討している人は活用して欲しい。

iPhoneを“カラオケマイク”にできる機能も

Apple TVと組み合わせてiPhoneを“カラオケマイク”にできる

Apple Musicでは2022年末にカラオケ機能「Apple Music Sing」が提供されている。これは、AIを使ってボーカルとバックサウンドを分離、ボーカル部分の音量だけを好みに調整することで、手軽にカラオケを楽しめる機能だ。あわせて、歌詞表示もカラオケのようにボーカル進行に合わせて表示される形に刷新されている。

iOS 26では、さらにカラオケ機能が進化。Apple TVと組み合わせた場合のみ限定だが、手持ちのiPhoneを“カラオケマイク”にできる「Singパーティ」機能が新搭載された。利用するにはWi-Fi接続とtvOS 26以降を搭載したApple TV 4K(第3世代)が必要。

これは文字どおり、iPhoneをカラオケマイクとして使えるようになるもので、対応のApple TV 4Kでミュージックアプリを起動後、画面に表示されるQRコードをスキャンするだけで、iPhoneをマイク化できる。

マイク化したiPhoneからは音量調整やリバーブ調整が可能。最大30人がQRコードを読み込んでiPhoneをマイク化できるが、マイクを使えるのは一度にひとりのみ。ほかのユーザーは、画面に表示される絵文字を送ってパフォーマンスを盛り上げたり、次に歌いたい曲を追加したりできる。

Apple TV 4KとApple Musicサブスクリプション、iPhoneがあれば手軽にカラオケを楽しめるので、年末年始など、これからの季節にも重宝する機能かもしれない。

歌詞翻訳機能で「洋楽をまた身近に感じられる日常が帰ってくるのでは」

今回紹介した新機能のうち、歌詞の翻訳については、東京都内のApple Musicスタジオにて音楽評論家やミュージシャンとして活躍する「みの」氏による紹介が10月20日に行なわれた。

みの氏

Apple Musicで配信されているラジオ番組「Tokyo Highway Radio」などでDJを務めるみの氏は、「直近で日本国内で一番国民的な人気を得た洋楽アーティストを問われれて、みなさん誰か思いつきますか? サブスクリプションでの音楽聴取が一般的になってから、レガシーメディアがトレンドを作って『みんなでこのアーティストを応援しよう』という空気が作りにくくなったと思う」と現在の音楽環境について分析する。

「僕個人的には、『徹子の部屋』にはレディー・ガガが出ていた頃(編注:2011年7月ごろ)が最後かなと思っていますが、洋楽の国内需要については、キュレーションを行なっている人たちと、メッセージ(歌詞)の部分を翻訳する人たちの働きが非常に重要だったと思っています」

「そのギャップが、だいたいこの20年くらいでかなり大きくなったのかなと、個人的には思っているんですが、今回(Apple Musicに)歌詞の翻訳機能が実装されたことで、洋楽をまた身近に感じられる日常が帰ってくるのかなと思っています」

みの氏が「歌詞が分からなくて挫折するアーティストの筆頭」としたボブ・ディランの楽曲も翻訳機能が利用できる

「昔CDやレコードで音楽を聴いていた時代、ライナーノーツを食い入るように見て、アーティストの発信したメッセージを探ろうとした経験が、みなさんにもあると思います。それと同じ体験をApple Music上でできるようになりました」

みの氏は、Apple Musicの翻訳機能がK-POPなど近年主流の音楽ジャンルに対応していることにも言及。「K-POPは比較的最近国内で人気を伸ばしているジャンルなので、ライナーノーツを読みながら聴くといったリスニング体験をあまり紐づいていないんじゃないかと思います。歌詞を手元で読める状態で聴けるというのは、これまでなかったK-POPの楽しみ方になるのでは」と語った。

「また例えばビリー・アイリッシュは国内でも人気のアーティストですが、ライナーノーツを読みながら聴いているという人もあまり多くない世代のアーティストじゃないかと思います。そういう意味でも(Apple Musicの歌詞に関する機能は)彼女の存在をより身近に感じられる機能だと思います」

また歌詞翻訳について、みの氏は「日本語にする際、例えば一人称をどうするのか、あるいは“ですます調”なのか、もう少し断定的な口調なのか、そういった細かなニュアンスの部分がすごく難しい」と指摘。Apple Musicの場合は「非常にニュートラルというか、間違いのない一人称だったり、語尾の選択がなされているなという印象」だとした。

「いい意味で、変異色を出そうとしていないというか、サウンドを楽しむうえで、ノイズになるような条項は載せないで、ストレートに歌詞が持っているニュアンスを伝えてくれるようなアプローチになっていると思います」

「例えば洋画の場合、日本語吹き替えで見たいという人はたくさんいらっしゃると思いますし、(海外の作品を)自分の言語に置き換えた上で受容したいというニーズは必ずあると思いますが、洋楽という点に置いては、下手したら10年、20年くらい、そういったニーズへの対応がスッポリと空いてしまっていたと言えるかなと思います」

「楽曲を聴いたという記憶を追体験したい年齢層だけでなく、若い人たちも喜んで使ってくれる機能になるんじゃないかなと思っています」

Apple Musicスタジオ

イベントが行なわれたApple Musicスタジオは、今年4月にオープンしたラジオ制作のためのスタジオ。Apple Music内で配信されているSnow Manによる「SNOW WORLD RADIO」やNumber_iによる「Number_i Radio」などが収録されているという。

Apple Musicでは、こうした制作スタジオをフラッグシップスタジオとなるロサンゼルスのほか、ニューヨーク、ナッシュビル、ロンドン、パリ、ベルリンで展開しており、東京スタジオは現時点でアジア圏唯一のスタジオとなっている。

Apple Music
酒井隆文