プレイバック2020

常識の逆を行くプレーヤー、SOULNOTE「S-3」にノックアウトされた1年 by 山本浩司

ソウルノートのSACD/CDプレーヤー「S-3」

"STAY HOME" の掛け声の下、世界中の誰もが不自由な生活を強いられた2020年。そんな状況下、なんとかイエナカでの楽しみを見つけようという機運の盛り上がりは、オーディオ&AV趣味にとって悪いことではなかったように思う。言うまでもなく、質にこだわって音楽を聴いたり映画を観る行為は、イエナカでの最高の趣味の一つだからである。

さて、そんな2020年に購入したオーディオ&AV機器の中で最も印象深い製品は、ソウルノートのSACD/CDプレーヤーの「S-3」だ。

ソウルノートは神奈川県相模原市を本拠とするCSRの高級オーディオ・ブランド。今年の1月だったか、このプレーヤーを自室で聴く機会があり、返却後も心の襞にしみ通るような本機のひたむきな音が忘れられず、「エイヤ!」とつぶやきつつ 128万円の本機をオーダーしたのだった。

様々なことを決断しなければならないオーディオ機器開発でもっとも重要なことは、「何をよすがに選択するか」である。ソウルノートの開発者は設計上何か選択を迫られるたびにすべての先入観を取り払い、「音が生きているかどうか」、その聴感だけを判断材料に本機を完成させたのだという。

そんなわけで、本機の設計手法は斬新極まりない。音の良いパーツ、デバイスを探し出し、音の鮮度を損ねることは極力しないというポリシーで貫かれているのである。

たとえば「1.筐体を必要以上に固めない」、「2.電源トランスも固めない」、「3.天板は浮かす」、「4.基板は固定しない」、「5.内部配線材は細く軽く」、「6.シールドは極力しない」、「7.ノイズフィルターは入れない」、「8.オーバーオールの帰還はしない」、「9.デジタルフィルターは使わない」等々、従来の「静特性」重視の高音質設計の逆をいく手法が採られているわけだ。

ノイズフィルターもデジタルフィルターも入れない? 従来の常識に捕らわれていたぼくは、「それでCDがまともな音で聴けるのか……」と当初は訝しく思ったのだが、あにはからんや、NOS(Non Over Sampling)モードで聴くCDの、鮮度感抜群の生々しい音にぼくは声もなくノックアウトされてしまったのだった。

もちろんオーバーオールの帰還はしない、フィルターは使わない等の手法を用いれば当然静特性(スペック)は良くならないが、「それがどうした? コレは音楽を聴く機械だぜ」というわけである。

S-3には、最大384kHz/24bit PCM、11.2MHz/DSD対応のUSB-B端子が装備されており、購入以来CDもSACDもハイレゾファイルもストリーミングサービスの音源も、すべて本機経由で聴いている。従来使っていた150万円の海外製単体D/Aコンバーターで聴くよりも、音がフレッシュで「生きている」実感が得られるからだ。

本機購入後しばらくして、S-3は「S-3 ver.2」になった。この秋に発表されたプリアンプP-3に採用したカスタムリレー(ガラス管密閉タイプ)をS-3内部のマスタークロック切替えに用いると、いっそうの音質向上が認められ、それに換装したものをver.2にするとのこと。

超低損失ガラス管密封リレー

S-3購入者には無償でヴァージョンアップしてくれるといううれしいニュースを聞き、さっそくカスタムリレー換装をソウルノートにお願いした。

その音質向上ぶりはこれまた予想以上で、音楽がいっそう闊達にイキイキと描写されるようになり、本機でCDやSACD、デジタルファイルを聴くのがますます楽しくなった次第。

高音質音楽ストリーミングサービスTIDALと契約して以来、CD購入枚数は激減したが、今は長年買い溜めたCDを聴き直し、改めて「ああ、この音楽はこんなに凄かったか!」と再発見の日々。2020年のイエナカ時間を充実させてくれたS-3 ver.2に、感謝感謝の年の瀬です。

山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。