プレイバック2020

散財はまさかの釣り具かよっ!? GoPro 2台で釣り三昧した by 西川善司

いろいろあったけど、今年もありがとうございました

2020年、西川善司はどう生き抜いたか?

ほとんどの多くの人と同じように、西川善司も、今年2020年は新型コロナウイルスに振りまわされた1年だった。

まず、海外出張は年間通して1回のみ。1回あったことに驚かれそうだが、その1回は1月最初旬にラスベガスで行なわれた世界最大級のエレクトロニクス関連ショー「CES」の取材である。良くも悪くも、このCESは「新型コロナウイルス感染拡大」が大々的に報道される直前のタイミングに開催されたイベントだった。

CESから日本に帰国してしばらくしてから、日本でも連日の感染動向が激しく報道されるようになり、2月以降は世界的なイベント開催自粛ムードへ。筆者の2月以降の出張は全てキャンセルされた。

CES 2020についてのレポートは連載257回を参照されたい

今だから明かすが、2020年11月に発売となったあの新世代ゲーム機の発表イベントも、実は1月下旬から2月の間に計画されていたようで、当時筆者には「その期間はスケジュールを空けておくように」という柔らかいお伺いもあった。

しかしご存じのように、実際にそのイベントは開催されることはなく、続く3月のサンフランシスコで開催が予定されていたゲーム開発者会議(GDC)もオンライン開催へと方針転向。4月には筆者も登壇予定だった広島で開催予定だったeスポーツイベントが会期延期へ。インテルが開催予定していたPC版「ストリートファイターV」の世界大会も延期された。

こうなると、5月以降の大型イベントは「延期」「中止」が普通、ギリギリよくて「オンライン開催」という感じとなり、世界最大級のコンピュータ関連展示会「COMPUTEX TAIPEI」、世界最大級のゲーム見本市の「E3」も予想通り事実上の中止となった。一方で、各社の新製品の発表イベントはほぼ予定通り行なわれた。もちろん、オンライン開催ではあったが。

筆者の取材テーマの1つである半導体業界は、今年もほぼ全ての製品が予定通り発表され、発売もされている。それこそNVIDIAはGeForce RTX 30シリーズ、AMDはRyzen 5000シリーズとRADEON RX 6000シリーズを発表、発売したし、発表イベントこそ開催されなかったが新世代ゲーム機はPS5,Xbox Series X/Sの両方が予定通り発売された。

PS5を緊急入手してYouTubeライブを敢行! ……といっても、このPS5は評価機。なおPS5の周辺機器類は予約できたので自分のモノです(笑)

「人が集まって交流する系のイベント」あるいは「現物/実物を見て触れられるイベント」については、やはり実地開催がないと寂しいものだが、アナウンス主体、技術説明主体の製品発表イベントは意外とオンライン開催でも不満のない品質で実現出来てしまうことに気づかされたのは、2020年の大きな発見だった。

実地開催イベントでは、着座位置の当たり外れでプレゼンの見やすさ、音の聞こえ具合に差が出ることがあるが、オンラインイベントではイベント参加者が同じ視点で発表を見る事が出来て平等だ。「むしろ取材しやすさは、オンライン開催の方がよいかも」とすら思うこともあったほど。

どうやら、発表会を行なう企業にとっても、オンライン開催はメリットも大きかったようだ。国際的な大規模発表では、大会場を確保し、交通費や滞在費をサポートしたうえで世界各国から記者を呼ぶことが多いのだが、オンライン開催ではそれらのコストが抑えられた。

NVIDIAさんから直々に許可を頂き、NVIDIAの発表会をパブリックビューイングの形でYouTubeライブ配信した

最近では「海外でのワクチン接種開始」などの報道もあり、世界的な新型コロナウイルスの流行の勢いも2021年は減速風潮になることが期待されている。これはこれで大歓迎なことで、2021年は実地開催イベントの復活が期待される。しかし「発表イベントのオンライン開催」は、前述した事情から2021年以降も継続されることもありそうだ。

まぁ、そんな感じだったので、2020年のイベント取材は激減したが、筆者の仕事量は、例年並みだった。というか、月によってはむしろ忙しさを増したことも。

在宅勤務奨励の最中、多くの企業が「オンラインでできる仕事」を模索した結果、筆者のような“端くれ”者にもコンサルティングの仕事の申し出が今年は増加。大手通信インフラ企業やら証券会社など、これまで接点の薄かった企業からも依頼もあったりして驚いたほどだ。こうした依頼は2021年も続いてほしいものだが……(笑)

逆に残念だったのは、大学関連の仕事。筆者は2つの大学で特任教授と特別講師の仕事をしているが、2020年は学生と接することが叶わなかった。全ての授業はオンラインでの実施となり、大学の構内にも事務的な処理を除いては行くことがなかった。2021年は、このあたりについては好転を期待したいが果たして。

恒例? の「3Dブルーレイ」減少問題。2020年はどうだった?

相変わらず、映画BDは色々と購入したが、例年よりも本数は少なかった。特に年の後半。これはコロナ禍で劇場公開が延期されたことと無関係ではあるまい。

また、昨年のプレイバックで触れた「3Dブルーレイの減少」だが、今年はさらに顕著なものとなった。筆者が2020年に購入した3Dブルーレイは「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」のみ。日本のディズニーは確かに、2019年から3Dブルーレイ供給から手を引く傾向が見られたが、スターウォーズは例外だったということか。

「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」4K UHD MovieNEX (UHD BD+3D BD+BD) 8,000円 VWES6997

ちなみに、ディズニーといえば、先頃発売されたピクサーの「2分の1の魔法」も日本では3D版が発売されなかった。ちなみに、アメリカなど海外だと3Dブルーレイはまだ発売されており、「2分の1の魔法」もイギリス盤で3Dソフトがリリースされている。

3Dブルーレイが再生出来るテレビ製品が絶滅したのでしかたないところ。しかし、ホームシアター用のプロジェクター製品は、まだ3D対応されているので、ホームシアター市場が大きいアメリカでは依然とそれなりのニーズがあり、継続販売されているのだ。ホームシアター市場がまだまだ小さい日本では2021年、劇場公開はともかく、市販ソフトではついに3Dは絶滅するかもしれない。

イギリス盤の3Dブルーレイ「2分の1の魔法」。日本盤は4K、BD(2D)、DVDのみ

4K/144Hzのゲーミングディスプレイを導入

ハードウェア周りについては、今年は細かいモノを色々と導入した。逆に高価な大物はほぼゼロに等しい。

映像系では、夏にLGの4K液晶ディスプレイ「27GN950-B」を導入した。27GN950-BはDisplayHDR600規格に準拠し、リフレッシュレート4K/144Hzにも対応したゲーミングディスプレイ製品だ。

筆者はYouTubeでのゲーム実況やその他の趣味関連のYouTubeライブをそれなりの頻度で行なっているが、最近では4Kでの配信機会が増えてきた。これまでは、そうした4KでのYouTubeライブは東芝レグザ「55Z720X」を使って行なっていたのだが、局面によっては「画面が大きすぎる問題」に直面することもしばしばだった。

「27GN950-B」を中核に据えた、2020年仕様の筆者のYouTubeライブ環境。画面上にLogicoolのWebカメラを組み付けているところからも想像出来るように、オンラインミーティングもここで行なっている。ちなみに奥に見えるのが東芝レグザ「55Z720X」

たとえば、筆者が大画面でゲームを楽しんでいる様子をゲーム画面主体で実況配信する場合は一度、配信元のPC上で開始の操作をすれば、レグザの前でゲームをしているだけでいい。しかし、何かの製品紹介をテーマにしたライブで、複数のカメラを切り換えたり、PC画面/ゲーム機画面とカメラからの実写映像を切り換えて配信する場合は、普通サイズのディスプレイが「配信制御/操作用」に欲しくなってくる。そして、配信する内容が4Kである以上は、そうした「配信制御/操作用」のディスプレイも必然的に4Kでないと不便となる。27GN950-Bは、その約割を果たすには十分だし、さらに単体でゲーミングディスプレイとして十二分に活用できるため便利なのだ。

Xbox Series Xと接続した時のステータス表示。4K/120Hzないしは4K/144Hz表示は、DisplayPort接続時のみ。本機はHDMI 2.0には対応しているので4K/60Hz/HDR表示には対応する。一方、HDMIでの120Hz表示は2,560×1,440ピクセルまで
液晶ゲーミングディスプレイ製品としてはほぼ最速級の入力遅延2.1msをマーク!

IPS液晶パネルを採用し、バックライトはエッジ型。そのためコントラスト感はそこそこで、HDR表現は高輝度で稼ぐ方式という印象。表示部と相対して使う分には画質的にも大きな不満はない。ゲーミングディスプレイとして活用した場合も、入力遅延がわずか2.1ms(4K/60p入力時)とかなり速いため、リアルタイム性の高いゲームのプレイ時にも重宝している。

ちなみに、この製品、背面がギラギラとLEDイルミネーションが発光するが、これは、ディスプレイ部の下部にある操作ボタンを「長押し」することで消すことが出来る。最初設置して電源入れたときに、いきなり光り出した時はびっくりした。

また、専用ソフトの「LG UltraGear Control Center」を利用することで表示映像に連動したイルミネーションが楽しめるとのことなのだが、LGサイトに当該ソフトが見つからず苦労した。つい最近、LG担当者からコチラにある、と教わったので実際に試したのが下記の動画だ。

「27GN950-B」の背面にあるリング状のRGB-LED発光ギミックは、表示映像に連動するモードが搭載されている。動画では、背面の発光ギミックと映像の同期具合が分かりやすいように表示映像を左右反転させている
背面が円状に発光するギミックが。もちろん、これは消すことが出来る
「27GN950-B」のカラースペクトラム(sRGBモードの場合)

LGは、テレビ製品に関しては2020年モデルで新世代ゲーム機完全対応を果たし、世界中のゲームファンから注目された。その一方でゲーミングディスプレイ製品ではまだこの偉業を達成できていない。2021年は、テレビだけに留まることなく、新世代ゲーム機完全対応のゲーミングディスプレイの登場を期待したいところだ。

GoPro HERO9 Blackが登場するのに、HERO8を購入!?

このコロナ禍に端を発した巣ごもり自粛の時勢流れの中、新しいことを始めた人も多いという。

かくいう筆者もそんな1人。

ここ何十年もインドア人間だったのだが、密になりにくい趣味として、今年から渓流釣りを始めた。きっかけは実家で小学生時代の釣り具が発見されたこと。「懐かしくてまたやりたくなった」というふんわりした動機なのだが、結局、最新の釣り具の進化ぶりに感動。小学生時代の釣り具を使ったのは1~2度で、それ以降は最新の釣り具を買ってそれらを利用している。

小学生時代、筆者はイギリスに住んでいた。その時代の懐かしの釣り具を紹介するYouTubeライブ

最初はただ釣っているだけだったのだが、そのうち釣りの様子を映像に残したくなってGoProを買うことに。しかも、そう思い立ったのが釣りに行く直前だったので、GoPro HERO9 Blackが発売される1週間前に、GoPro HERO8 Blackを購入した(笑)。

周りからは「なんでこのタイミングでエイト?」といじられたが、仕方がない。GoProの新しいのが欲しいのではなく「その日の釣りを撮る」ためには"8"しか買えなかっただけなのだ。

その後、HERO9を購入したITmediaの編集者さんから、使わなくなったHERO8の貸し出しも受けたりして、今や釣行撮影はGoPro HERO8の2台体勢となっている。1台はチェストマウントハーネスに組み付けて一人称撮影に、2台目はミニ三脚を付けて三人称視点撮影や水に沈めての水中撮影に用いている。

釣り風景の撮影のためにGoPro2台体勢へ
実際に撮影した映像は筆者のYouTubeチャンネルに投稿している

何度も撮影してきたことで、色々撮影に対する知見も溜まってきた。

たとえばGoPro HERO8における4K/60pの連続撮影は、内蔵バッテリーを搭載したままだと熱暴走しやすいため、内蔵バッテリーを外してモバイルバッテリーから給電した方がいいとか、逆に0度以下の極寒環境では内蔵バッテリーが電力を定格出力できず、充電が満タンでも電力不足で撮影が強制終了してしまうので、これまた内蔵バッテリーを外してモバイルバッテリーから給電しないとダメとか。

GoPro HERO8は熱くても寒くても、長時間撮影が難しいアクションカムなのであった。HERO9ではこのあたり改善されているのだろうか。

モバイルバッテリーは10,000mAhの容量ながら軽量コンパクトな「cheero Power Plus 5 10000mAh with Power Delivery 18W」を、USB-C接続ケーブルには屋外でよく使うことから抗菌仕様の「Type-C to Type-C Anti-bacterial USB cable」を利用している。写真は実際の釣りの現場での写真

自作PC"沼"でAMDに散財ざんまい。そして「ギャフン」と叫んだ

今年は「GeForce RTX 30」シリーズが登場したため、これを機に、自分のゲーミングPCをアップグレードした。

たまたま、ドンピシャのタイミングでドイツのPCケースブランド「BeQuiet!」から、かなり大きなタワーケース「Pure Base 500DX」のレビュー用サンプル提供があったので、これを利用し、ほぼ全てのパーツを新調して新規に自作PCを組んだ。その様子は「自作PC組み立てライブ」としてYouTubeで配信した。

筆者がただひたすら自作PCを組み立てていくYouTubeライブ

GeForce RTX 3090の到着に合わせて自作したため、「Ryzen 5000」シリーズの正式リリース直前となってしまった。ということで、CPUは後に「Ryzen 9 5950X」が発売されるのを分かっていながら「Ryzen 9 3950X」を選択。価格はなんと10万円もした。

ちなみにしばらくして「Ryzen 9 5950X」が発表された事で、3950Xは約2万円値下げされ、約8万円に。この事実を知ったとき筆者は、比較的大きな声で「ギャフン」という言葉を発している。1カ月後にはさらに1万円も値下げされ,もう一度「ギャフン」と叫んでいる。

編注:なお、年末には更に1万円値下げされている。

この後、その悔しさのためか、気をどうかしてしまい、addlinkのPCIe Gen4の2TB SSD「ad2TBS90M2P」(読み込み5.0GB/s、書き込み4.4GB/s)を3枚も購入して、RAID0で6TBのブートドライブを構築。新世代ゲーム機顔負けの読み書き約10GB/sの超高速ストレージ環境で「Microsoft Flight Simulator」が高速起動する様子を見てニヤニヤするようになってしまった。

SSD×3枚構成でRAID0を組んでベンチ計測するYouTubeライブ(笑)

ただ、その後、Western Digitalから読み込み7.0GB/s、書き込み5.1GB/sのPCIe Gen4のSSDが登場し、これを使って筆者同様のRAID0 SSD環境を構築した友人YouTuberから「うちの方がさらに速い」と自慢されてしまう。

その筋では有名なYouTuberの自作PC組み立てライブにゲスト出演。番組後半では、彼の組み上がったPCと、前述の筆者の自作PCとの性能競争実験も行なった

この闘い、基本的に後出しじゃんけんが常勝の世界なので、付き合いすぎると、一文無しになってしまう。なんとか今は我に返って落ち着いているが、危険な世界である。皆さんも高性能追求はほどほどに。

今年もありがとうございました。来年欲しいものはなに?

来年欲しいものも書いておきたい。

まず、モバイルノートPC。VAIO株式会社になる前の、SONYロゴの付いた2014年モデル「VAIO Pro 11」(11型)を使い続けているのだが、さすがにロートル感がでてきた。VAIO自体は気に入っているので後継モデルにしたいところだが、最新プロセッサ搭載製品に11型サイズはないのが残念。現行ラインナップでは「VAIO A12」がいいなあとも思うのだが、このモデルも搭載CPUが第8世代Coreプロセッサでやや古い。

最近、VAIOは製品ラインナップ数をかなり絞るようになってしまったので、なかなか製品選びも難しくなってきた。VAIOのサイトはよく見ているのだが、しばらく見てはため息をついて閉じるということをルーチンワークのように繰り返している。

テレビについては、新世代ゲーム機の登場もあったし、自分でこんな記事を寄稿した手前もあるので、適当なタイミングで入れ替えたいところ。ただ、今使っている東芝レグザ「55Z720X」に4K/60p/HDRで活用する上ではなんの不満もないので、これまた悩みどころ。

そうそう。UHD BDプレーヤーは、パナソニックの「DMP-UB90」を最速入手して以降、かなり酷使してきたが、最近はディスクを挿入すると妖しげな異音と共に読み込みエラーを返す頻度が高くなってきてしまった。しばらくエラーと戦っていると再生し出すので捨てるに捨てられない(笑)。もしかすると、2021年は故障するかもしれない。

困ってしまうのが買い換え先モデル。パナソニックはUHD BDプレーヤー製品として超ハイエンドで高価な「DP-UB9000」と超エントリークラスの「DP-UB45」の二極化ラインナップとしてしまった。筆者が好む中堅機が不在なのだ。UHD BDプレーヤーは、今度もパナソニック製がいいと思っているのに、丁度よいモデルがないのがなんとももどかしい。

それではよいお年を。そしてよい散財を!

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。工学院大学特任教授。東京工芸大学特別講師。monoAI Technology顧問。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。近著に「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 改訂3版」(インプレス刊)がある。3D立体視支持者。
Twitter: zenjinishikawa
YouTube: https://www.youtube.com/zenjinishikawa