プレイバック2021
年末年始に観てほしい! 2021年の高画質映画ベスト4 by 編集部:阿部
2021年12月28日 16:25
テレワークに移行して早2年。今年6月にはオフィスがフリーアドレスになり、マイデスクがフロアから消失。気付けば、自宅でのぼっち仕事(?)が加速した年だった。
そんな私のいい気分転換になったのが、近隣の劇場に夜な夜な出かけて独りで楽しむ映画鑑賞。これまでも年20回程度は劇場で鑑賞していたが、'20年の営業休止の反動もあってか、今年は神保町オフィスへの出社回数を大幅に上回る29回。食糧確保のために出かけた近所のスーパーやセブンに次いで、足を運んだのが劇場だった……(笑)
というわけで、今年劇場で鑑賞した新作映画の中から、特に映像が綺麗だった4本を独断と偏見で紹介してみたい。いずれも配信やパッケージを利用して自宅で鑑賞できるタイトルをピックアップしたので、外出しにくい環境でも無問題。気になった作品があれば、是非年末年始に自宅で楽しんでもらいたい。
作品1:「ゴジラvsコング」(7月公開作品)
・デジタル配信:iTunes、U-NEXT、Amazon Prime Videoほか 提供中
・UHD BD/BD:商品情報
「ゴジラvsコング」はタイトル通り、ニッポンが産んだ怪獣王・ゴジラと、アメリカの巨大猿・キングコングが、原子力空母の上やら香港やらで肉弾戦を繰り広げるプロレス映画である。監督はアダム・ウィンガード。出演はアレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール。
2014年から続く、人気の“モンスター・ヴァース”シリーズ第4弾となっており、一応内容は繋がっているが、ゴジラとコングと○○○○○が豪快に暴れ回るのがメインなので、前3作を観ていなくても十分鑑賞可能。仕事で疲れ切った脳みそにも優しいシンプルな物語でストレスフリー、おまけに映倫G区分なので、動物(?)や恐竜、怪獣好きのお子さんとの気軽な鑑賞にも好適だ。
バキバキのシャープな解像感と、メリハリの効いたビビッドな映像が特徴。精細感は歴代シリーズの中でもダントツの仕上がりで、コングの顔のしわや体毛、ちょいメタボスタイルなゴジラの表皮まで、細部まで作り込まれた怪獣たちの姿をこれでもかと堪能できる。
またゴジラの放射熱線や背びれの発光、地下世界、コックピットなど、HDR映えする箇所も多く、プロジェクターによる大画面鑑賞はもちろんのこと、高コントラストなテレビでの鑑賞にも向いている。映像を盛り上げる音響効果も素晴らしいので、できればAtmosやサラウンド環境で、尚且つ通常よりもボリュームマシマシの爆音状態にするとアクションシーンの楽しさも倍増するはずだ。
なお本作には、前シリーズで渡辺謙が演じた芹沢猪四郎博士の息子役として、小栗旬が出演&ハリウッドデビューしている。どのような役柄でハリウッドに爪痕を残したのか、小栗ファンは要チェック。
作品2:「レミニセンス」(9月公開作品)
・デジタル配信:iTunes、U-NEXT、Amazon Prime Videoほか 提供中
・UHD BD/BD:2022年1月7日発売(商品情報)
「TENET テネット」や「インセプション」、「ダークナイト」シリーズを手掛けたクリストファー・ノーラン監督の弟、ジョナサン・ノーランが脚本を務めたSFサスペンス。監督はジョナサンの妻で、大ヒットドラマ「ウエストワールド」を手掛けたリサ・ジョイ。出演はヒュー・ジャックマン、レベッカ・ファーガソン、ダンディ・ニュートン。
――舞台は、温暖化が進み、ほとんどが海水に没した近未来のマイアミ。
戦時中に捕虜の尋問に用いられていた“記憶潜入(レミニセンス)装置”を使い、来訪者の記憶を再現する仕事で生計を立てる主人公ニック(ヒュー・ジャックマン)。彼は、鍵の捜索を依頼してきた美しい女性メイ(レベッカ・ファーガソン)と恋に落ちるも、彼女は突然消息を絶つ。メイを忘れられないニックは、行方を必死で探すも一向に見つからない……。
そんな時、検察から「瀕死状態にあるギャングの記憶に潜入し、情報を引き出して欲しい」という依頼が舞い込む。そこで、ニックがギャングの記憶に潜入すると、装置に現れたのはメイの姿だった――
抜けの良い美しい映像が印象的な作品。マイアミを照らす太陽や海面の反射、室内の照明や装置、夜の街のネオンなど、随所に登場する強い光がシーンのアクセントになっていて、荒廃と水没が進むディストピアを幻想的に演出している。
無数の光学繊維を円状に配置したスクリーンに、記憶を鮮明かつ立体的に投影する記憶潜入装置や、アニメ「千と千尋の神隠し」へのオマージュという水上列車など、SF的な見せ場も登場するのだが、兄ノーランのような“ひねり”を期待されてしまった故か、世界的に飛ばなかったのが残念。明解なストーリーやフィルム・ノワールを彷彿とさせるシックな世界観は、レビューで言われるほど悪くない。映像の美しさや、ストーカー一歩手前の女々しい役柄を演じるヒュー・ジャックマンに注目して欲しい1本。
作品3:「最後の決闘裁判」(10月公開作品)
・デジタル配信:Disney+(見放題)、U-NEXT、Amazon Prime Videoほか 提供中
・UHD BD/BD:2022年1月26日発売(商品情報)
・放送 :WOWOW(1月8日)、スターチャンネル(1月1日)
1386年に行なわれた“決闘裁判”の顛末を映像化した歴史大作。監督はリドリー・スコット。出演はマット・デイモン、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレック。マット・デイモンとベン・アフレックは、脚本も共同で手掛けている。
――舞台は、14世紀のフランス王国。
名門カルージュ家の当主ジャン(マット・デイモン)に嫁いだ美しく聡明な女性マルグリット(ジョディ・カマー)。ある日、夫の不在中に、彼の旧友ル・グリ(アダム・ドライバー)が家を訪れ自分を襲ったとマルグリットは訴える。しかしル・グリは無罪を主張。事の次第を明らかにするため、ジャンとル・グリの命を懸けた「決闘裁判」が行なわれることに……。
勝者は栄光を手に入れ、敗者は死罪となる。加えてジャンが負けた場合、マルグリットも偽証罪で火あぶりの刑に。かくして決闘裁判が始まった――
物語は、ジャン、ル・グリ、そしてマルグリットという3者の視点で描く“羅生門”的な三幕構成。同じシーンをそれぞれの視点で演じ分ける3者の演技の変化や後半の壮絶な決闘シーンが見どころではあるけれど、当時を再現したであろう美術や衣装、照明もこれまた見事で、目の前に展開する中世ヨーロッパの世界に引き込まれる。
デジタルシネマカメラで撮影したリドリー・スコット作品としては珍しいピュア4K作品(たぶん初?)と言うこともあってか、映像のクオリティもピカイチ。解像感や階調、ディテールの描写など、是非UHD BDで再度鑑賞したい作品だった。
唯一の注意点としては、上述した通り、内容が大変ヘビーかつ2時間半という長尺である事。劇場で鑑賞した際、左隣のおじさんは1時間ほどでリタイア(睡眠)、右隣の若いカップルも上映終了後、会話もなく沈鬱な様子で帰って行った(だいたいそもそもリドスコの映画をカップルで観に来てはいけない)。お世辞にもハッピーな気持ちになれる作品ではないので、鑑賞前には気合いを注入して挑むことをオススメする。
なお、御年84歳を迎えたリドリー・スコット監督の次回作は、2022年1月14日公開の「ハウス・オブ・グッチ」。高級ブランド「GUCCI」の経営権を巡り、創業家で実際に起きた殺人事件を題材にしているとのこと。こちらも評価が真っ二つに分かれている作品のようで、今から鑑賞が楽しみ。
作品4:「DUNE/デューン 砂の惑星」(10月公開作品)
・デジタル配信:iTunes、U-NEXT、Amazon Prime Videoほか 提供中
・UHD BD/BD:2022年3月2日発売(商品情報)
「スター・ウォーズ」や「風の谷のナウシカ」「アバター」など、多くの作品に影響を与えたといわれている、1965年出版の小説「デューン砂の惑星」(著フランク・ハーバード)を原作としたSF大作。壮大なスケールの世界観ゆえ、完全な映像化は困難と言われてきた物語を「メッセージ」「ブレードランナー 2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴが映画化した。出演は、ティモシー・シャラメ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ゼンデイヤ。
IMAX認証デジタルカメラ撮影による世界初の「Filmed For IMAX」タイトルでもあり、大阪と池袋にある「IMAXレーザー/GTテクノロジーシアター」では、一部シーンが1.43:1のフルサイズで上映された。(※配信・パッケージはシネスコ収録)
――物語の舞台は、人類が地球以外の惑星に移住し、広大な宇宙帝国を築いていた西暦10,190年。
1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれる中、レト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は通称“デューン”と呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになる。アラキスは抗老化作用を持つ香料「メランジ」の唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンにやってきたレト公爵を待っていたのは、メランジの採掘権を持つ宿敵ハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。
やがてレト公爵は殺され、妻のジェシカ(レベッカ・ファーガソン)と、息子のポール(ティモシー・シャラメ)も命を狙われることになる――
実は29回の劇場鑑賞のうち、3回がこの映画。
スペクタクルで美しい映像と、毎度騒がしいジマー御大の音楽に圧倒されてしまい、フルサイズでデューンした後、Dolby Cinemaでもデューン。ドルシネはコントラストでは圧勝だがフルサイズのパワーには敵わず、もう一度IMAXでおかわりデューンした。劇場サイズのスクリーンで観なければ、映像的魅力が半減してしまうと本気で思ったのは「インターステラー」以来久々だ。
内容としては、セリフを最小限にして映像で語る、ヴィルヌーヴ監督らしい丁寧な仕上がり。じっくりとドラマを見せる分、正直「次回作はどこまで進めることができるのか?」と観ているコッチが不安になるが(笑)、それ以上にワンカット・ワンカットが絵になるような映像の美しさに心を奪われた。また浮揚装置で宙に浮くマツコ・デラックス(無敵のハルコンネン男爵)や巨大な宇宙船、昆虫のような飛行船オーニソプター、砂漠で香料を採取する無骨な巨大重機クローラーなど、劇中のSFアイテムやメカも興味深い。
ポールの巻き返しが期待される続編(全2部作)は、2023年公開予定。
なお、映像化困難と言われてきた「デューン砂の惑星」だが、ヴィルヌーヴ版のほかにもデイヴィッド・リンチ版「デューン/砂の惑星」(1984年)、テレビシリーズ版「デューン/砂の惑星I/II」(2000/2003年)が製作されている。リンチ版は配信/BD発売も行なわれているので、ヴィルヌーヴ版との新旧比較や情報補間にオススメだ。
以上、今年劇場で鑑賞した新作映画の中から、特に映像が綺麗だった4本を独断と偏見で紹介してみた。是非、年末年始の巣ごもり時間に活用いただければ幸いだ。
最後に。本当であればこのリストに、映画「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」を入れて、タイトルで“ベスト5”と謳いたかったのだが、配信・パッケージの発売情報が間に合わず、泣く泣くカットした。配信・パッケージで楽しめるようになった折には、IMAXフィルムカメラで撮影された高解像カットに刮目して欲しい。