プレイバック2022

映画マニア歓喜! 買ってよかったパナソニック「DMR-ZR1」 by 山本浩司

パナソニック「DMR-ZR1」

コロナ禍による生活スタイルの変化を強いられてすでに 3年。ぼくらフリーランスの多くはずっとしんどい局面に立たされてはいるが、いっぽうで「イエナカ時間」が増えることで、その充実を図ろうという気持はどんどん高まっている。

もっともぼくのようなオーディオ & AV評論家は、以前から出かける用事がなければ部屋で音楽を聴いたり映画を観たりというのが生活の基本なので、コロナ禍前と大きく生活スタイルが変わったわけではない。しかし、この3年で部屋にいる時間がより長くなったのも、まぎれもない事実なのである。

そんな2022年、自室に導入したオーディオ & AV機器でもっとも印象深いというか、買ってよかったと実感したのは、パナソニックのUHDブルーレイプレーヤー/4Kレコーダーの「DMR-ZR1」だ。

昨年の暮れに発表された製品だが、ぼくが本機を入手したのは今年の5月。発売当初、予想を上回るオーダーに生産が追いつかなかったということで、入手できたのは発表から半年後ということになったのだった。

6TBのHDDと地上デジタル/BS/BS4Kそれぞれ3基のチューナーを搭載した本格レコーダーではあるが、ぼくは本機の卓越した画質・音質に魅せられ、UHD BDプレーヤーとして使用することが多い。

2系統のHDMI出力のうち1つをJVCのプロジェクター「DLA-V9」に、もう1つをデノンのAVアンプ「AVC-A110」につないで、UHD BDやブルーレイ、4Kエアチェック番組を焼いたBD-ROM、Netflixなどのネット動画コンテンツを楽しんでいる。

パナソニックのUHD BDプレーヤー最高峰「DP-UB9000」と比較しても、HDMI出力の画質・音質はZR1のほうが良いのである。

ZR1はUB9000と異なり、アナログ音声出力を装備していない。その代わりアナログ音声回路用基板スペースにHDDを配置し、ドライブ専用電源とデジタル回路専用電源を分けてそれぞれ用意している。

この元から分けた電源回路の効果は大きく、映像信号処理回路そのものはUB9000とほぼ同じというものの、どんなコンテンツを観ても画質はZR1 のほうが好ましい。

コントラスト感がアップし、ヴェールが1枚はがれたかのように微小振幅信号の再現性が良い。それは4KコンテンツにかぎらずフルHD(2K)のブルーレイを観ても、ノイズの粒子が細かいせいか、すっきりと見通しのよい画質が得られる。

TCエンタテインメントから今年発売されたジュゼッペ・トルナトーレ監督の「ニューシネマ・パラダイス」は、インターナショナル版は4K、完全オリジナル版はフルHDという仕様だが、本作の音声マスタリングを手がけ、すばらしい音に仕上げたエンジニア、オノ・セイゲンにわが家で両方を観てもらったが、その4Kアップコンバート画質の良さに驚いた様子だった。いわく「違いがわからん」。

HDMI出力の音質もとてもよく、UB9000との違いは画質以上かもしれない。音楽や声の抑揚の表現が絶妙で、その闊達な表現に心を持っていかれるのである。

また驚かされたのが、NHK BS4Kのドラマ等で採用されている22.2ch音声のDolby Atmos変換機能。「スパイの妻」「浮世の画家」などのエアチェックをBD-ROMに焼き、この機能を用いてAtmos再生してみたが、トップスピーカーを巧みに使った 3次元立体音響効果のすばらしさにハゲシク驚かされる結果となった。

家庭内に22.2再生環境をつくれ、といわれてもそんなの絶対無理な話だし、やろうとも思わない。そんなわけで本機のAtmos変換機能を用いて、NHKの音声制作班の見事な仕事ぶりに初めて感心させられることになった次第だ。

4K/60pの映画系放送コンテンツをオリジナルフレームの24pに戻して出力できるようになったのも映画画質の向上に一役買っているし、映画字幕の移動・輝度低減機能も有り難い。しかもこの輝度低減機能、放送番組に焼き込まれた映画字幕にも効くのだ。映画マニアの要望を注意深く聞く同社開発陣の真摯さに頭が下がる思い。

この年末年始は買い溜めて未見のUHD BDや4Kエアチェック番組、Netflix やアマゾンプライムビデオのお勧め作品を本機を用いてじっくり楽しむ予定です。

山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。