プレイバック2023

USB-Cが普及、DP Alt Mode再発見の1年。QD-OLEDに超期待 by 海上忍

さらに進んだ「USB-C化」と今後の展望

なんだかんだいって、iPhone 15がUSB-Cを採用したインパクトは大きい

2023年のオーディオ&ビジュアル界隈で気になったことといえば……製品に直結する技術ではないものの、給電やデータ転送を担う“生命線”であるUSBケーブル、その出入り口である「USB Type-C(USB-C)」プラグ周辺の状況がまず思い浮かぶ。後年振り返ると、2023年は「USB-Cへの対応が一気に進んだ年」として思い出されるだろうからだ。

もちろん、USB-C化の波が今年到来したという意味ではない。そもそも規格策定は10年近く前のことだし、Android端末では2016年頃から対応が始まっている。モバイルバッテリーやUSB充電器などの給電系ガジェットも、とうの昔にUSB-C対応は一巡し、いまや(USB-Cが大前提の)USB PDで何ワット出せるかという時代だ。

それでもUSB-C化が大きく前進したのは2023年だろう。理由のひとつは、昨年10月に"USB-C統一法案" が欧州議会で正式に可決されたこと。スマートフォンやタブレット、デジタルカメラといった電子機器は、共通充電規格のUSB-Cを採用していないとEU圏内での販売は罷りならぬ、というルールだ。だからLightningから移行したiPhone 15の発売は、USB-C普及におけるマイルストーンであることは間違いない。

さらに2023年は「DP Alt Mode再発見の年」だったような気がしてならない。AndroidやPCモニターの分野では“枯れた”技術ではあるものの、ARグラス/スマートグラスのデータ接続&給電インターフェイスとして採用されたり、iPhone 15シリーズすべてのモデルで採用されたり、と話題に事欠かなかった。

DP Alt Mode対応製品は、来年以降もっと増えそう

AVの分野でもモバイルプロジェクターへの採用が進み、「BenQ GV31」のようにDP Alt Mode非対応だった前モデルとユースケースが変化した製品も現れたことが印象に残る。

BenQ GV31

しかし、AV分野におけるUSB-C化が本格的に進むのはこれからだろう。USB PDがもう一段普及すれば、モバイルだけでなく据え置きタイプでも標準の電源として採用するデバイスも増えるはずだからだ(いま思い出せる今年の製品は「WiiM Pro」だけだが)。オーディオ機器、特にピュアオーディオの分野で電源はとても重要だが、そこを敢えて切り離しUSB PDにするとか……そのうち「USB PDアイソレーショントランス」のような製品が現れないものかと、密かに期待している。

QD-OLEDに超期待、しかし

テレビにおける有機EL(OLED)といえば、LGディスプレイ1社がパネル供給メーカーとして長らく君臨してきたが、そこに変化が現れたのが2022年のこと。以前から噂されていたサムスンディスプレイのQD-OLEDがソニーの「A95K」に採用されたニュースは、AVファンに驚きをもって迎えられるとともに、競合出現による市場活性化に期待が集まった。

そして今年夏に発表された、シャープの「AQUOS FS1」。初めて実機を視聴したときは、鮮やかさと色域の広さに感心し、これで有機EL新時代の(本格的な)幕開けと考えたが、後日冷静さを取り戻すといくつか気になる点が現れた。

シャープ「AQUOS FS1」の65型「4T-C65FS1」

その1つがパネルの保証期間。PCモニターを含めれば、同じQD-OLED採用製品にも3年のパネル保証を付与するものがあるが(DELL AW3423DWで確認)、A95KとAQUOS FS1では特に謳われていないらしい。いち消費者の目線でいうと、最新のLGテレビ製品にある「パネル5年保証」が気になってしまうことは確かだ。

もう1つが暗部階調。QD-OLEDの画質面でのアドバンテージは、量子ドットの光波長変換がもたらす色純度の高さと色域の広さ、そして高輝度部の色抜けの少なさにあるが、パネルに偏光フィルターがなく外光の影響を受けてしまい(反射光が散乱する)黒が浮きやすくなるというウイークポイントがある。

その点AQUOS FS1に搭載されている最新パネルには、青色発光層に新材料を採用するなど改良が施されており、だいぶ改善されているように感じたが、いかんせん検証できるのはAQUOS FS1のみ。もう1つのS社から最新パネル搭載モデルが発売されていれば、パネルの素性をより理解できたはずなのだが。

そう、もう1つQD-OLEDで気になるのはステークホルダーの少なさだ。同じパネルを採用した新モデルが発売されていれば比較が可能になり、放熱板の効果やプロセッサー/AIの威力を客観的に把握できるのに。まさかPCモニターやゲーミングモニターと比較するわけにもいかないし、こればかりは時節到来を待つしかなさそうだ。

海上 忍

IT/AVコラムニスト。UNIX系OSやスマートフォンに関する連載・著作多数。テクニカルな記事を手がける一方、エントリ層向けの柔らかいコラムも好み執筆する。オーディオ&ビジュアル方面では、OSおよびWeb開発方面の情報収集力を活かした製品プラットフォームの動向分析や、BluetoothやDLNAといったワイヤレス分野の取材が得意。2012年よりAV機器アワード「VGP」審査員。