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“音の良さ”と“美しさ”は両立する、Meze Audio超絶ヘッドフォン「Empyrean」

取材でハイエンドオーディオ機器を撮影するのは楽しい。理由はシンプル“カッコいい”からだ。音の回折を減らすための優美なフォルム、真空管のあたたかな光、俊敏に針が動くアンプのレベルメーター……ゴテゴテと装飾したカッコよさではなく、音質を第一に考えた結果たどり着いた機能美。それゆえ、音の良いオーディオ機器は、見た瞬間に「お、これはなんかスゴイぞ」と思わせる迫力がある。ルーマニアMeze Audioの「Empyrean(エンピリアン)」も、そんなモデルの1つだ。

Meze Audioの「Empyrean(エンピリアン)」

Meze Audioは2009年に生まれたメーカーだが、設立したAntonio Meze(アントニオ メゼ)氏は、それ以前に10年ほど、様々な産業ジャンルでプロダクトデザインを担当してきた人物。同時に、フェンダーのギター「ストラトキャスター」を愛する音楽好きでもあり、ギターと同じように愛着を持って使えるヘッドフォンは無いかと探し求めたが見つからず、ならば“自分で作ろう”とMeze Audioを立ち上げたそうだ。

広く知られるようになったのは、2015年9月に発表した木製ハウジングのヘッドフォン「99 Classics」がキッカケだ。レトロかつエレガントなデザインの製品だが、見た目だけではなく、音も良いと評判になり、様々な専門誌でアワードを獲得。現在では、その99シリーズのデザインを取り入れつつ、漆黒(coal black)テクスチャー加工したハウジングの「99Neo」や、イヤフォンも展開している。

99 Classics

これらの製品にも共通しているテーマは、“独自性があり、高品質で、美しく、使用者が意味を見いだせる事”、そして“長く使用し続けられる製品を作ること”。コモディティ化が進むヘッドフォン&イヤフォン市場において、今後、さらに重要になっていく要素だろう。

そんなMeze Audioが、これまで培った技術を投入した最上位モデルが「Empyrean」だ。特別な素材と職人技を組み合わせた「世界で最も技術的にも革新的な平面磁気型のヘッドフォン」を謳った意欲作。2018年12月から発売されており、価格はオープンプライス、実売は458,000円前後(税込)とハイエンド。その中身と音質に迫ると同時に、実売約3万円の定番モデル「99 Classics」も聴いてみよう。なお、試聴にはオーディオ評論家・野村ケンジ氏にも協力していただいた。

Empyrean

等磁力ハイブリッド配列ドライバーとは?

お椀のような形状の振動板が振幅するのが、通常のダイナミック型ユニットのヘッドフォンだが、Empyreanのような平面磁気型のヘッドフォンは、それとは構造が異なる。板のような振動板を用意し、そこにコイルを貼り付けて、それをマグネットとマグネットの間の空間に固定。磁界の中で振幅させて音を出すという仕組みだ。要するに振動板をマグネットでサンドイッチするのだが、隙間なく挟むのではなく、振動板が振幅する空間は確保している。

振動板を薄くでき、俊敏に動作(振幅)させる事で、繊細な描写が可能。細かい音も聴き取れるヘッドフォンにおいては、理想的な方式の1つとして、注目が高まっているのはご存知の通りだ。その一方で、製造が難しかったり、振動板を歪ませずに振幅させたり、振幅が大きくなってもマグネットに振動板が当たらないようにする必要があるなど、開発の難易度が高い方式でもある。

Empyreanの平面磁気型ユニットは、旧ソビエト連邦で国家基金の投入で始まったウクライナ・リヴィヴ市の最先端工業施設をルーツとする、Rinao社が手がけている。Rinaoは1980年から平面磁気プロダクトを手がけ、高い技術力を持つ研究開発チームを現在も有しているそうだ。これまで多くのヘッドフォンメーカーにOEMでドライバーを供給してきた実績を持つが、今回はEmpyreanのためだけに、世界初という「等磁力ハイブリッド配列ドライバー」を開発した。

等磁力ハイブリッド配列ドライバー。中央にあるのが“アイソプレーナー振動板”
Empyreanの平面磁気型ユニットは、旧ソビエト連邦で国家基金の投入で始まったウクライナ・リヴィヴ市の最先端工業施設をルーツとする、Rinao社が手がけている

最大の特徴は“アイソプレーナー振動板”と呼ばれる振動板で、等電層とともに固定された等力性ポリマーから製造されている。特殊な加工で、“今までにない超軽量で精密な振動板”になっているという。重さはなんと0.16gしかない。軽量であるという事は、俊敏な振幅が可能になるという事だ。

その振動板に貼り付けられたコイルにも、大きな特徴がある。通常は振動板に、渦巻きのようにグルグルとコイルを配置したり、うねる蛇のように配置するが、“等磁力ハイブリッド配列ドライバー”では、1枚の振動板の上に、低域用の「スイッチバックコイル」と、中高域用の「スパイラルコイル」という、2つのコイルを別々に配置している。これが“ハイブリッド配列”の中身というわけだ。このドライバーは「MZ3」と名付けられている。

配置の仕方にもこだわりがある。中高域用のスパイラルコイルは振動板の下の方、ヘッドフォンを装着した際に、耳穴に一番近くなる場所に配置。その上に、低域用のスイッチバックコイルを配置している。

アイソプレーナー振動板
右がアイソプレーナー振動板のアップ。低域用の「スイッチバックコイル」と、中高域用の「スパイラルコイル」という、2つのコイルを別々に配置しているのがわかる

これは、スパイラル型コイル部分からの中周波数の再生音を、より遅延無く、直接的に耳へ入れるための工夫だ。通常の平面型は、振動板全体にスイッチバックコイルを配置しているが、周波数による音の遅れによって、外耳道に入る際に反射が発生。それによって定位などが悪化するという。

ハイブリッド配列では、異なるボイスコイルを組み合わせることで、外耳や外耳道に高い周波数のサウンドウェーブを向けられた際に、適切な強度分布を作成。不要な反射が抑えられ、ひずみ率(THD)は全体周波数のわずか0.1%となった。上は最高で110Hzまでの再生を可能にしている。全体の再生周波数帯域は4Hz~110kHzだ。

イヤーパッドを外してドライバーを見たところ

振動板の形状にもこだわりがある。単なる長方形ではなく“卵型”になっている。Meze AudioとRinaroによる研究の結果、人間工学的、解剖学的検知からも、耳の形に近い卵型が理想的だったという。

マグネットまわりにもユニークな技術が使われている。等磁構造と呼ばれるもので、特許出願中という強磁力プレートを、取り外し可能なイヤーパッド部分に内蔵した。これにより、マグネットでパッドを手軽に着脱できるのだが、それだけでなく、聴く人に悪影響を及ぼすという漂遊磁場の95%を、頭とは反対のドライバー方向へと戻す役割を発揮。出力を向上させる効果もあるという。

このイヤーパッドは、レザー素材のものと、アルカンターラ素材のもの、2つを同梱。好みで付け替えられる。

こうした、様々な技術の組み合わせにより、平面磁気型ながら入力感度1kHz/100db@1mwを実現。専用アンプを使わずにドライブできるという触れ込みだ。これは後で、ポータブルプレーヤーとも接続して試してみよう。

左がアルカンターラ素材、右がレザー素材を使ったイヤーパッド

職人が20時間かけて加工するスケルトンハウジング

デザインや装着感も見逃せない。まず目を惹かれるのは卵型のハウジングだ。一つの固形アルミニウムから削り出されたもので、軽いだけでなく、ものすごく細かい彫刻がほどこされたスケルトン仕上げになっている。

CNCフライス盤で職人が20時間かけて加工したものだそうで、顔を近づけてじっくり観察すると、組み合わされた図形の複雑さに驚かされ、「そりゃ時間がかかるわけだ」と納得する。単なる“美しい装飾”ではなく、気流をコントロールする効果があるそうだ。こうした工夫により、ヘッドフォン全体の重量は430gに抑えられている。

The "CNC" process of the Empyrean by Meze Audio

ヘッドバンドはカーボンファイバー製でこちらも軽い。優美な曲線を描いており、デザイン性にも優れている。このバンドの下には、レザーのヘッドレストを配置。頭頂部と触れるのはこのレザーだが、横幅が広く、表面積を増加させる事で圧力点を緩和させている。

また、バンド自体が単純な“山”型ではなく「Ω」のように、頭部に沿って包み込むような形状になっているため、圧力が広い範囲に分散される。これも、快適な装着感実現への工夫だ。

バンド自体が単純な“山”型ではなく「Ω」のように、頭部に沿って包み込むような形状になっている
ヘッドバンドはカーボンファイバー製
レザーのヘッドレスト

実際に装着してみると、バンドの長さ調整など一切しなくても、頭部にピッタリとフィット。普通のヘッドフォンでは、頭頂部に触れるスポンジの柔らかさなどの話になるが、このヘッドフォンの場合、広めのレザーが広い範囲にそっと触れているため、頭のどこにもポイント的な違和感が発生せず、極めて自然な感覚で装着できる。側圧も絶妙で、少し頭を動かした程度ではズレないホールド感があるのに、痛みや閉塞感はまったく感じられない。

デザインや設計はルーマニアで行なわれ、組み立てもルーマニアのバヤ・マレにあるラボで、職人による手作業で作られているそうだ。

高価な製品だけあり、付属のアクセサリも充実。なんと、専用のアルミニウム製スーツケースが付属する。スパイ映画に登場しそうな黒くてカッコいいケースで、内部には低反発のウレタンフォームを配置。優美なヘッドフォンをしっかりガードしてくれる。開放型ヘッドフォンなのであまり外では使わないかもしれないが、このケースに入れて持ち運び、友人などに自慢したくなる。

専用のアルミニウム製スーツケースが付属
内部には低反発のウレタンフォームを配置

ケーブルは両出しで、着脱可能。端子にはミニXLRを使っている。ケーブルはOCCで、入力端子に6.3mmの標準プラグを使った3mのものか、3.5mmステレオミニの1.3mケーブルのモデルかを、ユーザーが購入時に選択できる。独自の端子は使っていないので、別途ケーブルを用意すればバランス駆動も可能だ。

ミニXLR端子を採用している
6.3mmの標準プラグを使った3mのものか、3.5mmステレオミニの1.3mケーブルのモデルかを、ユーザーが購入時に選択できる

音を聴いてみる

まず、本格的なアンプと接続して実力を確認しよう。強力なヘッドフォンアンプを搭載した、ソニーのプレーヤー「DMP-Z1」とアンバランスで接続。マイケルジャクソンのビリー・ジーン(DSD)を再生してみた。

ソニーのプレーヤー「DMP-Z1」

再生ボタンを押した瞬間、イントロドラムのビートのキレがヤバイ。ハイスピードで切り込むような鋭さがある。繊細かつシャープな描写は平面磁気型ならではの音で、ダイナミック型ではなかなか味わえない世界だ。

逆に言えば、平面磁気型として“期待通りのスゴさ”なのだが、その期待を超える部分もある。それは低域で、ドラムのスネアによる低音が、しっかりと重く、ズシンズシンと沈み込む。音圧も豊かで、胸を圧迫されるような迫力がある。この低域と、キレッキレの中高域描写が同居している点が凄い。

というのも、前述の通り平面磁気型では振動板をマグネットでサンドイッチしている構造上、低音を出そうと振動板をあまりに大きく振幅させると、マグネットにぶつかってしまう。それゆえ一般的な平面磁気型ヘッドフォンは、低域が不足しがちで、ハイ上がりな、神経質なサウンドになってしまう事も多い。

だが、Empyreanの場合は当てはまらない。低域も量感、沈み込み、どちらも十分なクオリティで、不足は感じない。高域から低域まで、全体のバランスも良好で、モニターライクなバランンスと言える。

ダイナミック型ヘッドフォンで低音をパワフルに出すと、中高域の繊細な描写まで低音に埋もれてしまい、全体的にモワモワした音になる事もあるが、そういう心配もない。Empyreanはまさに、両者に“いいとこどり”ができている。低音のパワフルさ、中高域のクリアさ、分解能の高さといった容易には両立できない要素が実現している。

また、低域の中までじっくり聴くと、単に“力強い低音が出ている”のではなく、その中身が物凄く細かい音で構成されているのがわかる。複数の大太鼓が乱打されるような楽曲でも、1台、1台の太鼓の音が、ちゃんとバラバラにほぐれているのがわかる。アコースティックベースも、豊富な低音の音圧の中に、弦が震える細かな音がしっかりと見える。

中高域も単に“クリア”の一言では済まない。オープンエアであるため、音場は際限なく広く、音の余韻がどこまでも広がっていく。頭のまわりに音がまとわりつかない。ヘッドフォンではなく、部屋のスピーカーで音が出ていのではないか? と錯覚するような開放感、爽快感がある。高域は繊細だが、艶もあり、美音と言っていい。

“広大な音場”“低音もしっかり出る”“音数の多いオーケストラをキッチリ描写できる表現力”、三拍子そろっているので、普通の音楽だけでなく、映画やアニメのサントラもハマる。いろいろ聴いたが、一番ハマったのは「機動戦士ガンダムUC」のサントラ。宇宙空間を舞台としたアニメなので、壮大な音楽が多いのだが、Empyreanの空間描写の広さと、旨味のあるサウンドと非常にマッチする。

あまりに良い音なので、音の特徴をメモしながら聴いていたのに、いつのまにか手が止まり、ボーッと天井を見上げてしまう。視界の先には宇宙が見えている気分だ。その宇宙にまたたく星のように、音像が適度な距離感を持って定位。そこから、頭部を包み込まれるような音圧豊かなサウンドが押し寄せてくる。

ここまではステレオミニのアンバランスで接続していたが、バランス駆動に切り替えると、驚くことに音場がさらに広がる。左右チャンネルのセパレーションも良くなった事で、音場も立体的で奥行きも深い。低域の分解能もより磨きがかかった印象だ。

据え置きアンプではなく、Astell&Kernのハイレゾポータブルプレーヤー「A&ultima SP1000」とも接続。アンバランス時2.2Vrms、バランス時3.9Vrmsの出力を持つプレーヤーだが、ボリューム最大値150のところ、アンバランスの125程度で十分な音が出る。開放型なので屋外で使う人は少ないかもしれないが、家の中でも、例えばポケットにプレーヤーを入れて、部屋を移動しながら一日中高音質を楽しむなんて使い方も良さそうだ。

「A&ultima SP1000」とも接続

なお、前述の通りイヤーパッドは、レザー素材のものと、アルカンターラ素材のもの、2つを同梱しているが、この変更でも音が少し変わる。アルカンターラ素材では空間描写が広々としているが、レザー素材では音像が少し近くなり、中低域の迫力がわずかに増す。低音がアップするというより、“音像に近づいた事で、音がパワフルになる”印象だ。ロックなど、激しい曲が好きならレザーがオススメだが、個人的にはEmpyreanの特徴をより引き出すのはアルカンターラ素材のパッドだと感じた。

アルカンターラ素材のパッド
レザー素材のパッド

続いて、高級ヘッドフォンに詳しいオーディオ評論家・野村ケンジ氏にも聴いていただいた。

オーディオ評論家:野村ケンジも音をチェック!!

素晴らしい点が2つあります。1つは解像度が高いうえに、音像の定位が物凄くしっかりしている事。そのため、楽器のセパレーションがとても素晴らしい。「Harvest Moon Night/下地紫野&悠木碧」を聴くと、ミュージシャンとスタジオエンジニアがレイアウトした空間表現がそのまま描写できていると感じます。192kHz/32bit Floatでレコーディングされたこの曲には、様々な効果音が随所に使われていますが、「こんな音が入っていたんだ」という新たな発見がどんどんあり、驚かされます。

もう1つは、奇をてらわない“無色透明な音”。清流のような音を目指して作られたヘッドフォンだというのが、聴くとよくわかります。もちろん一部にピークはありますが、もともとの音をできるだけそのまま出そうという姿勢、“原音主義”よりも遡った、「もともとこういう演奏をしていたのだろうな」とわかる“原演奏主義”と言っていいほど、アーティストの想いが伝わってきます。

かと言って、“色気のない地味な音”ではないところも魅力です。艷やかな部分、粒立ちの良い音も楽しめるので、モニターヘッドフォンのように分析的に聴くだけでなく、音楽を楽しむリスニング用としても活用できます。

こうした音を生み出しているのはやはり、特殊な「等磁力ハイブリッド配列ドライバー」による、異常なまでの歪の少なさです。まるでクオリティの高い同軸ユニットのスピーカーを聴いているような……まとまりが良く、繊細な描写でありながら、パワーや厚みもしっかりと感じられる。平面振動板と通常のダイナミック型、それぞれのいいところが楽しめますね。

アンバランス接続でもクオリティが高いです。Questyleの「QP2R」のようなプレーヤーと接続し、気軽に使うスタイルでも、かなり上質な音が楽しめます。いっぽうで、ソニーの「DMP-Z1」のようなプレーヤー/ヘッドフォンアンプで駆動する場合は、絶対にバランス接続で聴いたほうがいい。ヘッドフォンが低歪かつ高SNなので、プレーヤーやアンプ側のクオリティが上がれば上がるほど実力を発揮するヘッドフォンです。

実売約3万円の「99 Classics」も聴いてみた

Empyreanはおいそれと買えない価格だが、約3万円の「99 Classics」ならば……という人も多いだろう。価格差は約43万円もあるので、「音はEmpyreanとだいぶ違うだろうな……」と思いながら装着したが、いい意味でぶったまげた。99 Classicsもすごく音が良いのだ。

99 Classics

構成としては、40mm径のダイナミック型ドライバーに、木製の密閉型ハウジング……とEmpyreanとは方式がまったく異なる。にも関わらず、両者の再生音は“同じ系統”を感じさせる。ナチュラルで繊細、そして響きの美しさといった“おいしいところ”が良く似ている。

もちろんEmpyreanのような超微細な高域や、ゾクゾクするようなトランジェントの良いハイスピードサウンドが99 Classicsからそのまま出るわけではないのだが、全体のバランスや、音作りの“根幹”が似ている。同じメーカーなので当たり前ではあるのだが、これだけ価格差があっても、上から下まで、1つの美学というか、思想が貫かれているようで、メーカーの音に対する哲学を感じた。

ハウジングは小さめで、かつ密閉型なので屋外でも利用しやすい。ウォルナット(クルミ材)の木製ハウジングはエレガントで、金属パーツとの組み合わせも高級感があり、見せびらかしたくなるクオリティ。ハウジングが小さい密閉型ヘッドフォンは、音場も狭くなりがちなのだが、99 Classicsは音場が広いところも驚きだ。

まずは99 Classicsを聴いてみて、「お、Meze Audioいいじゃん」と興味が出たら、最上位のEmpyreanを試聴してみる……というのも面白いだろう。

“ヘッドフォンの成熟”を実感するEmpyrean

Empyreanは、「等磁力ハイブリッド配列ドライバー」という素地の良い技術の能力を最大限に発揮させたヘッドフォンであると同時に、そのドライバーを使いこなし、Meze Audioの“こだわり”を具現化させた製品と言える。美術品のようなハウジングや各部のパーツは、美しいだけでなく、音質の向上に寄与している。

市場には膨大な数のヘッドフォンが存在するが、音を聴くだけでなく、そこにあるだけ、所有しているだけで誇らしい気持ちになるような製品というのは、ハイエンドのピュアオーディオ機器と比べるとまだまだ少ない。Empyreanはそんなヘッドフォンの先駆け的な製品であり、ヘッドフォン市場自体の成熟を感じさせるモデルと言ってもいい。

ぜひ一度、実物を見て「カッコよさ」を確認しつつ、音を聴いてみて欲しい。見た目の感動を裏切らない音がする。試聴可能な店舗は、フジヤエービック中野店、e☆イヤホン秋葉原店、大阪日本橋店。購入はe☆イヤホン各店舗、フジヤ―エービックで可能だ(2019年1月10日時点)。

Empyreanだけでなく、99 Classicsの音の良さも見逃せない。持てる技術を全て投入したハイエンドモデルの音が良いのはある意味“当たり前”だが、10万円、5万円以下の身近な製品であっても、ハイエンドに通じる音の世界を表現できるというのは、メーカーの技術力の証拠と言える。等磁力ハイブリッド配列ドライバーを使ったヘッドフォンのラインナップ拡大など、Meze Audioの今後にも要注目だ。