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オーディオ入門に最適! ペア8万円以下の注目小型スピーカー4台聴き比べ

音楽配信サービスの普及や、家で楽しむ時間の増加などで、「やってみたかったオーディオをはじめてみよう」と考えている人も多いだろう。一方で「オーディオスピーカーって何十万円もするから買えない」「大きなスピーカーを置く場所が無い」と諦めている人もいるかもしれない。

だが、心配ご無用、ペア税別8万円以下、そしてサイズが小さくても驚くほど音の良いスピーカーは存在する。そんな“オーディオ入門に最適”な注目ブックシェルフスピーカー4台を用意。オーディオ評論家の三浦孝仁氏と、編集部の山崎で、その実力を聴き比べてみた。

ピックアップしたスピーカーをは以下の通りだ。

4機種を選んだポイントは、「ペア8万円(税別)」で「場所をとらないブックシェルフスピーカー」である事。さらに、入門向けスピーカーとして市場で人気がある“定番モデル”や、技術的にユニークな製品もチョイスしている。

まずは、4機種の“見どころ”を簡単に解説。その後で、三浦氏と編集部・山崎の試聴レポートをお届けする。

Polk Audio「R100」

Polk Audio「R100」

最近、コスパの良いスピーカーブランドとして改めて注目されているPolk Audio。「R100」は、同社の独自技術を豊富に投入した上位「RESERVEシリーズ」の中で、一番リーズナブルなモデル。「Polk Audioらしさを最も安価に楽しめるスピーカー」と言っていいだろう。

エントリーシリーズではなく、上位のRESERVEシリーズであっても、ペア77,000円から買えるのがPolk Audioらしい。1971年に、お金は無いが、情熱はあった3人の青年が、“学生の自分たちでも買える良いスピーカーを作ろう”と家のガレージでスピーカー開発を開始したのがブランドの始まりであり、そのコンセプトを現在まで維持している。

ツイーターは、1インチの「ピナクル・リングラジエーター」。中央に銀色の突起が見えるが、これは高域エネルギーの拡散性を高めるというウェーブガイドで、リスニングポイントを幅広くする効果がある。

ツイーターは、1インチの「ピナクル・リングラジエーター」

ウーファーは、5.25インチのタービンコーン。振動板に独特の凸部を設けているのが特長で、これによって強度を増し、振動板が振幅する時に発生する歪を解消しようという技術だ。

振動板に独特の凸部を設けている5.25インチのタービンコーン

背面にはバスレフポートがあるが、その中央に砲弾のような円筒形のパーツが入っている。これは、ポートから低音以外の、本来は“出てほしくない”中低域まで出力されてしまうのを防ぐもの。筒の一部に、計算に基づいた穴が空いており、特定の周波数の音を、反共振の効果で取り除く仕組みで、「Xポート・テクノロジー」と名付けられている。これもPolk Audio独自の特許技術だ。

Xポート・テクノロジーを活用したバスレフポート

再生周波数帯域は44Hz~50kHz、感度(2.83V/1m)は86dB。インピーダンスは4Ω。クロスオーバーは2,700Hz。外形寸法は166×260×324mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は5.5kg。

スピーカーターミナル

Klipsch「R-50M」

Klipsch「R-50M」

Klipschの代名詞と言えるのが、R-50Mにも搭載されているホーンだ。創業者のポール W.クリプシュ氏が、1946年にKlipschホーンを設計。小さな工場で手作りでスピーカーを製造し始め、現在のKlipschブランドへと発展した。ホーンスピーカーならではの“鳴りっぷりの良さ”とコストパフォーマンスの高さが特徴のブランドである。

ラインナップとしては、伝統的なHERITAGEと、伝統を受け継ぎながら現代的な要素も加えたREFERENCE/REFERENCE PREMIEREシリーズを用意。R-50Mは、REFERENCEシリーズのブックシェルフの上位モデルだ。

1インチのアルミニウムLTSツイーターと、13.34cm(5.25インチ)のTCPウーファーで構成。ツイーターには大きな「Tractrixホーン」を備えている。この、広がる曲線構造により、サウンドを最も効率的に再生し、幅広く均一に自然な響きを届けられるという。

「Tractrixホーン」を備えたアルミニウムLTSツイーター

TCP(Thermoformed Crystalline Polymer:熱成形結晶性)ウーファーは、軽量ながら強度が高く、音の歪みを最小限に抑えながらスピード感のある再生が可能という。

TCPウーファー

エンクロージャーにはブレーシング加工を施し、不要な振動を低減。表面は落ち着いたブラックの木目調仕上げで、ホームシアターなどで使った場合でも、映像からの光の反射を抑えられるという。

背面のバスレフポート

再生周波数帯域は58Hz~21kHz +/-3dB、クロスオーバー周波数は1,560Hz。出力音圧レベル92dB@2.83V/1M、インピーダンスは8Ω。外形寸法は、178×229×354mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は4.3kg。

スピーカーターミナル

DALI「OBERON1」

DALI「OBERON1」

2011年に発売されて以降、「オーディオ入門スピーカーの定番」として君臨してきたDALIの「ZENSOR(センソール)1」。その後継機種となるのが、2018年に登場した「OBERON(オベロン)1」だ。

外形寸法162×234×274mm(幅×奥行き×高さ)、重量4.2kgとコンパクトな2ウェイ。クロスオーバー周波数は2,800Hz。ユニットサイズはツイーターが29mm径、ウーファーが130mm径だ。再生周波数特性は51Hz~26kHz。インピーダンスは6Ω、推奨アンプ出力は25~100W。

奥行きは234mmと短め

ツイーターは軽量なシルクファブリックを使ったソフトドーム型。ウーファーの振動板は、DALIの代名詞とも言えるウッドファイバーコーンだ。

シルクファブリックを使ったソフトドーム型ツイーター

このウーファーの磁気回路にも、DALIならではの特徴がある。上位モデルでも使われている、「SMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)」技術と呼ばれるものがそれだ。一般的にスピーカーの磁気回路には磁石と鉄が使われているが、たとえば鉄素材にはヒステリシス現象が発生するという問題がある。SMCの原材料は酸化鉄の砂鉄だが、その砂鉄の一粒一粒に化学的なコーティングを施したのがSMCで、DALIでは鉄素材が使われる磁気回路の要所にSMCを使うことで対処している。音質的には渦電流の発生が抑制されて歪み(ディストーション)が減ることで、たとえばローレベルの再現性が高まるといったメリットがある。

高い透磁率を持ちながら絶縁性のある素材に変化させる事ができ、これで磁気回路を構成すると、内部で発生する磁気変調と渦電流を低減し、歪も大きく抑えられるという。

ウーファーの振動板は、DALIの代名詞とも言えるウッドファイバーコーン

エンクロージャーはMDF製で、ZENSORに比べて内部補強構造を強化した。構造はリアバスレフ。吸音材は複数の種類を組み合わせて、配置箇所に応じて最適化している。

バスレフポート。壁掛けにも対応する
スピーカーターミナル

Monitor Audio「Bronze 50-6G」

Monitor Audio「Bronze 50-6G」

Monitor Audioは英国のブランドで、創業は1972年。先進の技術を積極的に取り入れ、キャビネットだけでなく、ユニットからネットワーク回路まで、全てを自社で一貫生産できるのも特徴だ。

ユニットの特徴としては、1991年に世界初のセラミック・アルミニウム・ウーファーを発表。以降は「メタルユニットのパイオニア」としても知られる。

ラインナップはGold、Silver、Bronzeなどと名付けられており、グレードの違いが名前からわかりやすい。今回取り上げる「Bronze 50-6G」は、エントリーのBronzeシリーズで最もコンパクトなスピーカーだ。型番末尾の“6G”は、第6世代モデルにあたる。

25mmのゴールドドーム“C-CAM(Ceramic-Coated Aluminum/Magnesium)”ツイーターは、フロントバッフルよりも少し奥まった場所に搭載されており、その前には不思議な模様のようなパーツがはめ込まれている。これは、ツイーターの放射特性をコントロールするUD(Uniform Dispersion)ウェーブガイド。このガイドにより、ツイーターのボイスコイルを深い位置に設置でき、ウーファーとのタイムアライメントを揃えている。

25mmのゴールドドーム“C-CAM”ツイーター

低域は、140mm径のC-CAM Bass/Midドライバー。低価格でも「メタルユニットのパイオニア」としての特徴を備えた。

140mm径のC-CAM Bass/Midドライバー

筐体の素材には15mm厚のMDF材を採用。フロントバッフルはより厚い21mmで、そこにユニットを直接取り付けている。背面にバスレフポートを備え、ポートノイズを抑える溝を刻んだ「HiVe IIポート」となっている。

ポートノイズを抑える溝を刻んだ「HiVe IIポート」

再生周波数特性は40Hz~30kHz、クロスオーバー周波数は2,500Hz。能率は85dB(2.83V@1M)、インピーダンスは8Ωだ。外形寸法は166×268×281mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は5kg。

今回揃えた4台の中で、唯一、スピーカーターミナルがバイワイヤリング接続に対応している。なお、4台の中で、最も高価なモデルだ。

スピーカーターミナルがバイワイヤリング接続対応

クロスレビュー

試聴に使ったオーディオシステムを紹介しておこう。プリアンプとしてMYTEKの「Manhattan DAC II」、パワーアンプにはAyreの「MX-R Twenty」を使用。スピーカーの能力を最大限に発揮させるため、あえてハイエンドな機材を使用している。スピーカースタンドは堅牢なアコースティックリバイブ製。スタンドとスピーカーの間には必要に応じてフェルトを敷いている。

スピーカーケーブルは、サエクコマースのPC-Triple C導体を採用した最上位「SPC-850」を使った。ここでは、1メートルで税込4290円の切り売りタイプを採用。左右合計で約3メートル(各1.5m)に、手持ちの一般的な端子を圧着+ハンダした端末処理を施している。

MYTEKの「Manhattan DAC II」
パワーアンプはAyreの「MX-R Twenty」
サエクコマースの最上位スピーカーケーブル「SPC-850」
制振材入りのポリエチレンを採用し、振動を抑え、SN比を向上させている

Polk Audio「R100」 ペア 77,000円

Polk Audio「R100」
オーディオ評論家 三浦孝仁氏

創業メンバーの中心人物は、Polk Audioブランドの名前の由来となったマシュー・ポーク氏だった。ずいぶん前になってしまうが、今では1月の風物詩的な一大イベントの米国CES(コンシュマー・エレクトロニクス・ショウ)が「夏はシカゴ/冬はラスヴェガス」という年間2回の開催だった頃に、私はCES会場でマシュー・ポーク氏と歓談した記憶がある。

ポークオーディオは創業当時から容易に手が届く価格帯の製品が多かったことから、かつては日本市場にも登場したことがある。しかし、当時の輸送コストは決して安くはなかったこともあり、日本での販売はあまり長続きしなかったように思う。世代交代も進んだ現在のPolk Audioは製品の内容が現代的に様変わりしていて、B&Wやマランツ、デノンなどと同じくサウンドユナイテッドの一員になっていることもあり、このようなお買い得な価格が実現できているのかもしれない。

今回の試聴ではPolk Audioがトップバッターなので、私が使った試聴音源についても紹介しておこう。イーグルスのライヴ音源「ヘル・フリーゼス・オーヴァー」からの「ホテル・カリフォルニア」(44.1kHz/16bit/FLAC)では右チャンネルからのアコースティックギターの倍音成分が鮮やかに聴こえてきて、よく伸びた高音域に支えられており複雑な音色が織りなすところをうまく再現できている。続いて2つのパーカッション(太鼓)が織りなす低音も描きわけが上手く、これは剛性を高めたウーファーの振動板の成果なのかも知れない。オーディエンス(聴衆)の拍手や口笛といったライヴ感を演出してくれる音も細やかで、音場空間の広さを実感させるスピーカーでもある。メンバーと並んで椅子に座って唄っているドン・ヘンリーのボーカルも発声の明瞭さと音離れの良さが感じられる。

女性ボーカルは、ソフィー・ミルマンのデビューCD「テイク・ラヴ・イージー」からの「ビューティフル・ラヴ」と「ホエア・ドゥ・ユー・スタート」を聴いている(44.1kHz/16bit/FLAC)。彼女の感情が込められた魅力的な歌声は口の動きもイメージできる生々しさで、伴奏のピアノの音色のクリアーさとウッドベースが弾むリズミカルな曲調も申し分なかった。少し温度感の低い空気を感じさせる音も本機の特徴のようであり、彼女の声にかかるリバーブも深みがあってワイヤーブラシで奏でられるスネアドラムの音のタッチにも心地よさが宿っている。

ジャズは最近の私的お気に入りナンバーワンのサキソフォン奏者、イタリア人ヴィットリオ・ククーロのアルバム「ビトウィーン」から「ユード・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」を聴いている(96kHz/24bit/FLAC)。あまりスピーカー自体の個性を主張しないワイドレンジなモニター調の音という印象で、サキソフォンの金管楽器らしい響きが抑揚も豊かに表現できている。彼が吹くサックスと共に聴きどころにしているピアノの左手が刻むリズムも明確で、ウッドベースの胴鳴りの雰囲気もなかなかいい。ちょっと冷静な表現といえるかも知れないが、これはこれで曲調に合っていると思う。

最後はクラシックで、ここでは仏ハルモニア・ムンディからフランソワ=クザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル管弦楽団による、ベートーヴェン作曲:交響曲 第5番「運命」第3楽章(44.1kHz/24bit/FLAC)を聴いている。当時の楽器(ピリオド楽器)を使った味わいのあるパフォーマンスであるが、ここでもレゾリューションが確保された鮮明さが特徴で、重厚感も備えている堂々とした演奏。立体感もじゅうぶんに得られて弦楽器群の木質的な響きも巧く、続くコントラバス群が弓弾きする低音も克明さが得られていた。低音域が充実しているため演奏に安定感が得られているのも良いところだ。

Polk AudioのReserve R100は技術的に攻めた設計を特徴としている、きわめて正統派的なオーディオファイル向けスピーカーシステムだと思う。剛性を高めているウーファーの振動板形状やリングラジエーター型のトゥイーターも構造的に理にかなっており、聴感上のレンジも広くソリッドな音を聴かせてくれるのだ。エンクロージュア剛性も確保されているようで共振や付帯音を特に感じさせないこともメリット。底面に脚部を備えているのも何かと便利だ。Reserveシリーズの末弟であるR100は相当な実力を秘めているスピーカーシステムだった。

Polk Audio「R100」
AV Watch編集部 山崎健太郎

Polk Audioは、コストパフォーマンスの高さと“満足感のある音”を武器にシェアを拡大しているが、R100は、そんな“Polk Audioの強み”を存分に発揮してくれる。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」(192kHz/24bit/FLAC)の冒頭に出てくる、ピアノとアコースティックベース。ピアノは、左手の低い音が“しっかり低く”描写される。ベースも、楽器の筐体で増幅された豊かな響きが、熱い音のカタマリになって体にぶち当たってくるかのようで気持ちが良い。はずむような、うねるような低域のパワフルさ、音圧の豊かさは、この価格で、このサイズのスピーカーで再生しているとは思えない。

ダイアナ・クラールのボーカルも、口の開閉がリアルに感じられる解像感で描写されるが、それよりも、低域が豊かなので「彼女のお腹から出た声が、口から出ているんだな」と、口よりも、ボーカルのお腹や、音像の“分厚さ”が印象に残る。

「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」(192kHz/24bit/FLAC)では、冒頭のベースが「ズゴーン!」とパワフルに再生され、お腹に響く。低域の熱気が吹き寄せ、さらに低い音が振動となって足の裏に伝わるような感覚。目を閉じると、もう1まわり、いや2まわり大きなスピーカーを聴いているのではと思えてくる。

「米津玄師/KICK BACK」(48kHz/24bit/FLAC)のような楽曲との相性はバツグンだ。トランジェントも良いため、低くて鋭い低音のパンチを、ずっと浴び続けるような強烈な音で、聴くというよりも“体験する”感覚。1曲聴き終わると椅子にのけぞってしまうような、オーディオの快感が味わえる。

この気持ちよさは、多くの人が気に入るだろう。ただ、音像の広さや、描写のシャープさ、情報量の多さといった面では、DALIのOBERON1や、Monitor AudioのBronze 50-6Gに一歩届かない。ただ、だからといってR100の魅力が落ちるわけではない。難しい事を考えず、ただ気持ちの良い音が聴けるという面では、今回の4機種でナンバーワンだ。

ジャズやクラシックよりも、ポップス、ロック、アニメソングなどをガンガン楽しみたい、テレビの横に置いて映画やゲームなんかにも活用したいという人には、R100が間違いなくオススメだ。

Klipsch「R-50M」 ペア 55,000円

Klipsch「R-50M」
オーディオ評論家 三浦孝仁氏

ポール・ウィルバー・クリプシュ(1904-2002)が設立したKlipschは、個性的なホーン型スピーカーとして世界的に人気が高かった。私のような還暦過ぎのオーディオファイルにとって、たとえば代表的なThe La Scalaは造形の美しさとカラリと晴れわたったようなホーン型らしい音離れの良い音質傾向で強く印象に残っている。

ここで聴いた4機種の中で、「R-50M」は強烈な個性を発揮してくれたスピーカーシステムだ。クリプシュらしいホーン型の中高域はエネルギッシュで感度の高い音である。もちろんウーファーとの能率や音調バランスを整えてはいるのだが、力量的にホーン型の中高域がウーファーよりも優っているという印象なのである。イーグルスのライヴ音源「ホテル・カリフォルニア」は、アコースティックギターの響きが鮮鋭的でオーディエンスとの距離の近さも感じさせる迫力なのだ。積極的に音を鳴らしてくる音は爽快感も与えてくれるが、パーカッションの低音やエレクトリックベースが少し負けそうな雰囲気もあり、トーンコントロールを備えているプリメインアンプと組み合わせるなら、私はバス(低音)を1~2ノッチほど上げて程よいエネルギーバランスを求めるだろう。ドン・ヘンリーのボーカルは少しハスキーさが強調されるきらいがあったけれども、発音は明瞭でわかりやすい。

ソフィー・ミルマンのボーカルは「イーグルス」のときと同じようにハスキーさが優って子音も強めになるのだが、独特の存在感を醸し出すメリハリの効いた音はライヴな雰囲気でなかなか心地よい。ピアノもカチッとした明瞭な音色を奏でてくれるので、埋もれることもなく演奏を引き立ててくれるのだ。ウッドベースはもう少し力感が欲しかったが、音が眼前まで勢いよく飛んでくるような加速感は、まるで生演奏を聴いているかのようなイメージだった。

このスピーカーと抜群の相性の良さを感じさせたのが、ヴィットリオ・ククーロのジャズ・クァルテットだった。サキソフォンンの金属質の響きも鮮やかな演奏には迫力があり、一貫してノリの良いリズミカルな演奏を披露してくれる。彼が吹くアルトサックスの表情の変化は大きく、ドラムソロでの前に飛び出してくる音も爽快そのもの。ピアノの左手で刻むリズムもクリアーで、この種のジャズにはうってつけのスピーカーという印象だ。もし音量を上げてもOKな環境だったら、音の洪水に対峙して聴くというシチュエーションを試してみてほしい。

しなしながら、オーケストラ演奏のようなアコーステッィクな録音の音源ではスピーカーの個性が際立ちすぎてしまう。音を前に押し出してくる力があるので臨場感は豊かなのだが、ホーンの指向性が強いために後方まで広がりのあるような音場空間の再現は得意ではない。この種の音楽にはニュートラル傾向の音質を備えたスピーカーのほうが相応しく、どうにもミスマッチな音だった。いっぽうで、山崎さんの試聴楽曲「米津玄師/KICK BACK」に代表される、スタジオで音を意識的に造りこんで仕上げたポップスやロックとは抜群の相性を感じさせたのも事実。

Klipsch R-50Mは25mm口径のアルミニウム振動板が与えられたTractrixホーンの存在感が凄い。中低域のドライバーは上級機から継承されたポリマー振動板を備えてソリッドな質感描写を得意としている。音楽ジャンルの得手不得手はあるとしても、音質的な個性を強く打ち出したスピーカーの音にハマる音楽ファンは少なくないだろう。先ほども述べているが、やや音量を上げ気味にして聴くべきスピーカーなのかも知れない。

Klipsch「R-50M」
AV Watch編集部 山崎健太郎

今回の4機種で、一番度肝を抜かれたのがKlipsch「R-50M」だ。そのサウンドの特徴はやはり、ビジュアル的にも目を奪われる“Tractrixホーン”による中高音だ。

他の3機種と決定的に異なるのが音の“出方”。他のスピーカーは、程度の違いはあれ、眼の前に音場が展開し、そこに楽器やボーカルの音像が定位し、その音像から音が聴こえてくるように感じられる。簡単に言えば、“透明なバンドメンバーが部屋に出現して演奏してくれる”ような感覚だ。

だが、R-50Mの音は違う。ホーンから躍り出てくる音の1つ1つが、圧倒的にパワフルで、その音が、自分の体の表面に吹き付けてくる。音場の広がりが……みたいな話はさておき、このホーンスピーカーらしい音の“出方”、その強烈な音を浴びる快感こそが、R-50Mの魅力だ。

こう書くと、「大味で荒っぽい音なのでは?」と思われるかもしれないが、そうではない。「ダイアナ・クラール/月とてもなく」(192kHz/24bit/FLAC)冒頭のピアノやベースは、繊細に描写されており、音の輪郭もシャープ。ピアノの左手も、余分な低音の膨らみは抑えられ、アコースティックベースもタイトで切れ味バツグンだ。

ただ、そうした細かな1つ1つの音が、力強く前へ出て、押し寄せてくる。この“出方”に特徴があるわけだ。

そのため、「米津玄師/KICK BACK」(48kHz/24bit/FLAC)のような疾走感のある曲を聴くと、たまらなく楽しい。鮮烈なビート、折り重なるコーラス、力強いボーカルのシャウト、全ての音が、聴いている自分に飛びかかってくるよな強烈な体験。難しい顔で試聴しなければいけないのに、強制的に体が音楽にノッて動いてしまう。4機種の中で一番鮮烈で、帰宅した後も「あの音はすごかったなぁ」と印象に深く残る。これぞホーンスピーカーの魔力と言っていいだろう。

最高に気持ちがいい一方で、ちょっと気になる点もある。「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」(192kHz/24bit/FLAC)の冒頭、ベースがモリモリなシーンを聴くと、中高域のパワフルさに、低域の迫力が少し負けてしまっているように感じる。近隣からの苦情が気になる部屋であれば、このくらいが良いのかもしれないが、なまじ中高域が素晴らしいので「低音も、もっとガツンと来て!」と言いたくなってしまう。

4機種比較から脱線してしまうが、個人的には、より低域がパワフルになるフロア型「R-600F」(1台70,400円)や、「R-800F」(1台91,300円)も聴いてみたくなった。

DALI「OBERON1」 ペア 74,800円

DALI「OBERON1」
オーディオ評論家 三浦孝仁氏

DALIは独自技術を集結した1千万オーバーのフラグシップ機「KORE」をリリースして勢いに乗っているが、企業としてのDALIを大きく支えているのは「OBERON」や「SPECTOR」そして「OPTIKON mk2」などのベーシックなスピーカーシステムが聴かせる音の実力であろう。世界的に評価の高かった「ZENSOR1」の後継機であるOBERON1は、ここで聴いた製品の中で最もコンパクトなサイズだった。

最初に聴いたイーグルスのライヴ音源「ホテル・カリフォルニア」から、質感の高い音を聴かせてくれる。ソフトドームらしい高音域のしなやかな音の感触はDALIの製品に一貫して通じている良さでもあり、アコースティックギターの倍音成分も豊かな音色はPolk Audioのリングラジエーター型のほうがハイエンドまで伸びている印象なのだが、こちらもレンジ感に不足のない鮮やかさが得られている。ドン・ヘンリーのボーカルはDALI独自のSMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)の効果からか、歪み感も少ない丁寧な音像描写が得られている。低音域はもうわずかに量感が得られればと思ったが、打楽器やエレクトリックベースの描きわけも巧みで、総じてまとまりに優れた音という印象を与える。音造りのうまさが光る音とでもいおうか。

ソフィー・ミルマンの女性ボーカルは繊細でしっとりとした声色の雰囲気が好ましく、スッと耳に届くようなスムーズさがある。ピアノの音色も粒立ちがよく、アコースティックベースとともに奥行き感もじゅうぶんに得られた音場空間が提示されるのだ。音源に含まれていたら別だが、気になるような刺激的な音はなるべく出さないぞという、音のまとめかたが上手いDALIらしいサウンドであり、チャーミングで音映えのするパフォーマンスを聴かせてくれた。

ジャズのヴィットリオ・ククーロは、やや無難な音といえるかも。エネルギーバランスもニュートラルでサキソフォンの音色やピアノの左手によるリズムの刻みも明瞭なのだが、ちょっと優等生的な音の表現というか、もう少し迫力を効かせて鳴ってくれても良かったかなという印象。総じて上品に音を奏でていくスピーカーシステムのようである。

ロト指揮のベートーヴェンでは、その上品さがうまく作用するように、きわめて自然な音場空間の広がりとオーケストラを構成する楽器ひとつひとつの音色にリアルさが感じられる結果に。さすがにコントラバス群の低音域の威力はほんのわずかに控えめになってしまうが、金管楽器の音抜けの良さも味わえるし、じゅうぶんに大編成のクラシック音楽を楽しめるクオリティの高い音が得られていたのが嬉しい。

DALIにはベストセラーのMENUETシリーズがあるけれども、ここで聴いたOBERON1も音質的なエッセンスをうまく引き継いでいるスピーカーだ。磁気的なディストーションを減少させるSMCをこの価格帯にまで導入したことに、彼らの本気がヒシヒシと感じられる。

DALI「OBERON1」
AV Watch編集部 山崎健太郎

ピュアオーディオの入門スピーカーとして定番のDALI「OBERON1」だが、まず印象深いのは“小ささ”だ。今回の4機種では最も小さく、奥行きも234mmなので、ある程度大きな机であればデスクトップオーディオとしても使えるコンパクトさ。この、何処にでも置けそうな気軽さが、入門スピーカーとして愛されている理由でもあるだろう。

逆に言うと“このサイズで大丈夫かな”と心配になるのだが、音を出すとそんな心配を一気に吹き飛ばす、非常に上質でピュアなサウンドが流れ出す。「ダイアナ・クラール/ターン・アップ・ザ・クワイエット」から「月とてもなく」(192kHz/24bit/FLAC)の冒頭は、ピアノとアコースティックベースでシンプルにスタートするが、静かな空間に、ピアノの音像と、ベースの音像がしっかりと定位し、音楽を奏でている様子がシャープに描写される。

その後に入ってくるボーカルは中央に定位するのだが、「ここにダイアナ・クラールの頭がある」と思えるほど音像がリアルで、口が開閉する様子が目に浮かぶようだ。この音像の広さ、定位の良さは、描写のシャープさは、コンパクトなブックシェルフスピーカーならでは。音像の広さは今回の4機種の中でナンバーワン、微細な音もクリアに描く描写力ではMonitor Audio「Bronze 50-6G」に次いで、ナンバー2だ。

「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」(192kHz/24bit/FLAC)を聴くと、冒頭の重厚なベースも、極めてシャープに再生する。ベースの弦がブルブルと震える様子が見やすい。一方で、「ズゴーン」と地鳴りのように響く低い音は出ない。これがOBERON1の大きな特徴だ。

小さなスピーカーなので当たり前と言えば当たり前だが、“肺を圧迫されるような音圧”とか“足裏にビリビリ響くような低音”は望めない。そういった低音の迫力が欲しい場合は、他のスピーカーを選んだほうが良い。

ただOBERON1が良く出来ていると感じるのは、響きや音圧はタイトで少ないものの、ベースラインなど、低域の“芯”の情報はしっかりとシャープに描写している点。そのため、OBERON1だけを聴いていると、そこまで低域が少ない感じはしない。無理に低域の迫力を追わず、音場の広さ、解像度の高さ、音色のナチュラルさといった長所をのばしたスピーカーだ。

それゆえ、話題のアニメ「チェンソーマン」の主題歌「米津玄師/KICK BACK」(48kHz/24bit/FLAC)を聴くと、米津玄師のボーカルと、その背後に重ねられたコーラス、そして様々な効果音が散りばめられ、そうした音が何層にも重なって音楽が作られている事が良く分かる。余分な響きを抑え、細かな音に気付かせてくれるサウンドなので、モニタースピーカーとして使っても活躍してくれるだろう。

サランネットを装着したところ

Monitor Audio「Bronze 50-6G」 ペア 80,300円

Monitor Audio「Bronze 50-6G」

前述の通り、今回の4機種ではBronze 50-6Gのみ、バイワイヤリング接続に対応している。標準では、ツイーター用ターミナルとウーファー用ターミナルがジャンパープレートで接続されているが、今回の試聴では、その標準状態で聴くだけでなく、試聴に使っているサエクコマースのスピーカーケーブル「SPC-850」を短く切って、それをジャンパープレートの代わりに使って試聴もしてみた。

スピーカーケーブル「SPC-850」を短く切って、ジャンパーケーブルとして使ってみた
オーディオ評論家 三浦孝仁氏

Monitor Audioはモウ・イクバル氏によって1972年に創設された英国のスピーカーメーカーだ。早くからメタル振動板を採用したトゥイーターを特徴としていた同社は自社生産も積極的に行っており、英国B&Wと同じようにBBC(英国放送協会)主導のいわゆるBBCモニターとは無関係のインデペンデントな存在であり続けている。

ここではBronze 50-6Gの特色であるバイワイアリング対応のスピーカー端子に、標準で付属している金色の板材(おそらく真鍮=銅と錫の合金)ではなく、サエクコマースのスピーカーケーブル「SPC-850」を端末加工するときに失敗して発生した短い芯線をジャンパー線として使っている。余談であるが「SPC-850」の茶色の被覆が意外にも薄く、カッターナイフで処理しようと作業したら不用意に芯線(PCトリプルC銅線)をカバーしている赤と白の被覆まで傷つけてしまった。そのためにバイワイアリング端子に使う線材が確保できたという、不幸中の幸い的なことがあったのだ……。

ハードドーム(アルミニウム&マグネシウム合金にアノダイズ処理でセラミック層を構築したC-CAM振動板)らしい切れ味鋭い高音域はイーグルスのライヴ音源「ホテル・カリフォルニア」でも遺憾なく発揮されて、アコースティックギターの倍音成分が鮮やかで密度感も高く再現される・また、オーディエンスの拍手や口笛も音数が多く定位感も明瞭。しかも音場空間がずいぶんんと広く奥行きもじゅうぶん感じさせる。そしてパーカッションの打音も深く沈み込むし分解能にも優れているのが容易に聴きとれる。ドン・ヘンリーのボーカルも声色の表情がリアル。演奏自体も強弱のコントラストが高くダイナミックなのだ。

ソフィー・ミルマンの女性ボーカルも細やかに描かれていて、表情の豊かな声色はやはり生々しい雰囲気。ピアノは一音一音の音色が複雑で定位も明確。ウッドベースの低音もよく弾んで演奏が実にリズミカルに進行していく。温度感が少し低いところはPolk Audioとも似ていて、なんともオーディオ的な快感を誘ってくれる音だった。

ヴィットリオ・ククーロのクァルテットも音の精密さを感じさせながらノリの良いグルーヴィーな演奏を展開する。サキソフォンの金属的な響きもうまく表現されているワイドレンジな音の表情もなかなかのもの。ドラムスのキックドラムやタムタムなどの打音も明確なのは、トゥイーターと同じような合金素材のC-CAM振動板によるソリッドな表現力のたまものか。ピアノの左手もリズムを刻んでいる、躍動的な演奏が展開される。昔のモダンジャズとは異なり、楽器の質感や描かれかたがデフォルメされていない自然体の音であることも印象づけた。

ベートーヴェンの交響曲は音場空間が広く奥行きも深めで、解像感に優れた写実的な描写である。弦楽器群による旋律の素朴な響きに加えて金管楽器の輝きのある音色もあいまいにならず、色彩的な表現を伴った現代的な音の良さを実感させた。エネルギーバランスもフラット傾向であり、スピーカーのサイズを超えた臨場感を醸し出している。

上記はバイワイアリング対応の入力端子にサエクコマースのスピーカーケーブルを短くした導体を使ったときの音の評価だ。これが標準の状態では高音域の音の見通しが少し曇ったような感じに聴こえて、ダイナミックな表現も僅かに後退してしまう。この「Bronze 50-6G」からベストな音を引き出したいなら、同じ長さの「SPC-850」をもう1組用意したバイワイアー接続が最善策と断言できるけれども、そのぶんのコストもかかってしまう。でも、私はそれをオススメしておきたい……。「Bronze 50-6G」の良さは、オーディオ的な優秀さを感じさせる音と音楽ジャンルを問わないオールマイティーな対応力の良さだろう。

AV Watch編集部 山崎健太郎

4機種の中で、Bronze 50-6Gは、OBERON1に次ぐコンパクトなスピーカーだ。4機種の中で最も高価なだけあり、デザインはシンプルだが、エレガントな雰囲気をまとっている。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」(192kHz/24bit/FLAC)を再生すると、OBERON1に肉薄するほど、広大な音場が展開。コンパクトなブックシェルフらしさが味わえる。そこに、ピアノとアコースティックベースが入って来るが、コンパクトな筐体と思えないほどシッカリと深い低音が出る。Polk AudioのR100ほどパワフルではないが、しっかりと重さが感じられる、芯のある低音だ。DALIのOBERON1よりも、明らかに低音は深い。

ダイアナ・クラールのボーカルは、口の開閉だけでなく、口の中の湿り気まで感じられそうなほど鮮明で高解像度。それでいて、エッジを強調したような不自然さは無く、描写はナチュラル。高域にはやや艶やかさ、綺羅びやかさを感じる。このあたりは「メタルユニットのパイオニア」ならではの味わいかもしれない。“美音”を聴かせるスピーカーだ。

音のパンチを浴びるようなKlipsch R-50Mや、パワフルで鳴りっぷりの良いPolk AudioのR100と比べると、Bronze 50-6Gは“優等生サウンド”という印象。低域は過度に膨らまず、主張し過ぎず、必要十分に音楽を下支えし、中高域はクリアで美しい。全体のバランス、まとまりも良い。良く出来たスピーカーだ。

「米津玄師/KICK BACK」(48kHz/24bit/FLAC)のような、音数が多く、複雑に入り乱れるような曲を再生しても、とっ散らからず、ガチャガチャせず、スッと情報が耳から入ってくる。これはおそらく、ボーカルとコーラス、背後の伴奏といった、異なる音の質感や音色の違いがキチッと分けて描写できているためだろう。音像のコントラストも深く、音楽に奥行きがあるため、4機種の中で、音場と、そこに立つ音像の立体感を、最も感じられたスピーカーだ。

また、ジャンパープレートを、ジャンパーケーブルに交換すると、もともと豊富だった音の情報量がさらにアップ。文字通り“ベールをはいだ”ような音になり、ベースの弦の震える様子や、ボーカルの口の開閉も、より細かく聴き取れ、ドキッとするほど生々しい描写になる。

サランネットを装着したところ

まとめ

オーディオ評論家 三浦孝仁氏

正直なところ、私はペアで8万円以下という価格帯のスピーカーシステムでここまで本格的な音を聴かせてくれることに感激してしまった。私がまだ学生時分で若かった頃は、リーズナブルな価格帯のスピーカーはこんなに良い音がしなかったと思う。試聴に使った再生系エレクトロニクスは高価なハイエンド機器なのだけれども、それぞれのスピーカーの潜在能力の高さを知るにつけて驚いた次第だ。

自分が目指している音と方向性が近いかなと感じさせたのは、Monitor Audio「Bronze 50-6G」とPolk Audio「R100」の2機種。両方ともオーディオ的な音というか、レンジ感も広く低音域から高音域まで明瞭な音を聴かせるスピーカーシステムである。Monitor Audioは金属(合金+アノダイズ)振動板らしい切れの鋭さに華やかさという音質傾向を内包していて、Polk Audioはそのような音質的なキャラクターを持たずにワイドレンジでじゅうぶんな解像感を伴った音を聴かせてくれた。

Monitor Audio「Bronze 50-6G」

いっぽう、幅広く音楽ファンやオーディオファイルに好まれる音だと感じたのはDALI「OBERON1」である。総じて聴き疲れのしない綺麗な音質を特徴にしていて、どんな音楽も魅力的で上手い演奏に思わせるのが「OBERON1」の巧さだ。もちろんオーディオ的にも不満のないリアルさを抱かせる音が得られており、上級機EPIKONの開発で得られたSMCを投入したことによる微小領域の音の滑らかさも特徴である。

Klipsch「R-50M」

Klipsch「R-50M」はホーン型の高音域という音質的な個性を積極的に発揮することで、エレクトリック楽器を駆使したポップスやロック、そしてジャズといった音楽ジャンルを相乗的かつ体感的に楽しませてくれる音だと感じた。センタースピーカーやサブウーファーなども展開しているので、2チャンネルのオーディオに限らずホームシアターまで視野に入れた音を構築したいと考えるなら、「R-50M」もあるREFERENCEシリーズで固めるのもアリだろう。

AV Watch編集部 山崎健太郎

部屋の中に音場というステージを展開させ、そこにアーティストを召喚して音楽を楽しむような再生をしたい……という人には、DALIのOBERON1か、Monitor AudioのBronze 50-6Gがオススメだ。どちらも精緻な描写で、音像をシャープに描き、ゾクゾクするほどリアルなサウンドを聴かせてくれる。ハイレゾ楽曲の情報量をたっぷり味わうにも、この2機種は向いている。

DALIの「OBERON1」

2機種を比べると、低域の量感や、質感描写ではBronze 50-6Gが上手だ。ただ、サイズではBronze 50-6GがOBERON1より一回り大きく、価格も少しBronze 50-6Gの方が高価なので、ある意味、音に差があるのは当然。逆に言うと、このサイズと安さでBronze 50-6Gに迫る音を出しているOBERON1の実力を改めて実感する。さすがオーディオ入門の定番スピーカーと言ったところだろう。

Bronze 50-6Gは、特に不満点が見当たらない完成度の高さ。バイワイヤリング接続も可能なので、バイワイヤリング対応のアンプや、バイアンプ駆動をすると、さらに高みを目指せるだろう。これからピュアオーディオ趣味をとことん楽しみたいという人には、一番オススメできるスピーカーだ。

Monitor Audio「Bronze 50-6G」

買って、鳴らして、すぐに高い満足度が得られるという意味ではPolk AudioのR100が最適解。難しいことを考えず、気持ちの良い音が楽しめるので、どんな人にもオススメしやすい。

それでいて、“ドンシャリで眠い音”なわけではない。情報量の多さ、中高域のクリアさはしっかり維持されており、Hi-Fiスピーカーとして十分な再生能力がある。迫力ある曲も楽しみたい音楽ファンは、R100を選ぶと幸せになれるだろう。

Polk Audio「R100」

KlipschのR-50Mも、R100と同様に満足度の高いスピーカーだ。いや、ホーンの音が気持ち良すぎて、一度聴くと「このスピーカーじゃなきゃ満足できない!」という体になる可能性もある。細かな音まで聴き取るだけでなく、細かな音の粒を浴びるように、ライブ会場で体を動かしながら楽しむような、心拍数の上がるサウンドが最大の魅力だ。

パワフルでソリッドな楽曲とのマッチングも最高なので、ロックやアニソン、ジャズのハードなトランペットなどを聴くと、まさに“オーディオの悦楽”に浸れるはず。逆に、クラシックや静かなインストなどは、あまりハマらないかもしれない。

いずれにせよ、R-50Mでしか味わえない世界がある事は、オーディオとして非常に魅力的だ。“自分が好きな音をとことん追求する”のがオーディオだが、そういった意味で最も趣味的なスピーカーと言えるのがR-50Mかもしれない。4機種の中でペア55,000円と、最も低価格で、コストパフォーマンスが高い事も評価したい。

Klipsch「R-50M」