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オーディオ入門に最適! 注目小型スピーカー5台を聴き比べる

家で過ごす時間が多くなった事で、「オーディオをはじめてみよう!」「小さくても音の良いスピーカーを買ってみよう」と考えている人も多いだろう。だが、多くのスピーカーを聴き比べに出かけるのも大変な昨今。そこで、“買いやすい値段”かつ注目のブックシェルフスピーカー5台を用意。オーディオ評論家の三浦孝仁氏と、編集部の山崎で、その実力をじっくり聴き比べてみた。

チョイスの条件はシンプル、「オーディオ入門に最適なペア15万円以下(税別)」で「場所をとらないブックシェルフスピーカー」である事。それでいて、比較的新しい製品であり、技術的にも特徴のあるモデルを揃えた。

結論から先に言うと「こんなにも違いがあるものか」と驚くほど、非常に面白い比較試聴となった。

参加スピーカーを価格順に並べると以下の通りだ。

まずは参加スピーカーの特徴を紹介しよう。前述の“価格順”に紹介してもいいのだが、今回の参加モデルは、お馴染みというか定番モデルから、新顔のメーカーまで混ざっているので、今回は“定番モデル”から先に紹介しよう。

KEF「LS50 Meta」ペア159,500円

KEF「LS50 Meta」

写真を見て「あ、見たことある」という人が多いだろう。イギリスのKEFが手掛ける「LS50 Meta」というモデルなのだが、実は「LS50 Meta」は2020年10月に登場したばかりの新製品だ。

新製品なのに見たことある理由は、この前モデル「LS50」が大ヒットしたためだ。LS50は、2012年にKEFの50周年記念モデルとして登場したスピーカー。独自の同軸2ウェイユニット「Uni-Q」を搭載し、省スペースながら、点音源を活かした広大な音場が楽しめるモデルとして人気を獲得し、ブックシェルフスピーカーの“定番モデル”の1つになった。

今回取り上げるLS50 Metaは、そのLS50を進化させた後継機。一番の進化ポイントは、KEFが“音のブラックホール”と表現する吸音技術「Metamaterial Absorption Technology(MAT)」を投入した事。迷路のような構造を持ったパーツを高域側の背面に組み込むことで、ユニットの後方に向かう音=ノイズ成分を吸収して歪を抑えるというのがウリだ。この工夫により、Uni-Qドライバーは12世代型に進化している。

同軸型2ウェイの「Uni-Q」ドライバーは最新世代の第12世代型

同軸型2ウェイの「Uni-Q」ドライバーは最新世代の第12世代型となり、そこに新たに開発された技術「MAT」を搭載したものだ。これに加えて、背面に備わっているバスレフポートも、新開発されたフレキシブル・ポートとなっている。

MATの追加だけでなく、背面のバスレフポートも「オフセット・フレキシブル・バスレフポート」になるなど、各部もブラッシュアップされている。言わば「生まれ変わった定番モデル」だ。

背面

外形寸法は200×280.5×302mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は7.8kg。再生周波数特性(-6dB)は47Hz~45kHzで、クロスオーバー周波数は2,100Hz、インピーダンスは8Ω。推奨アンプ出力は40~100W。

余談だが、KEFは7月7日~8月9日まで対象製品を購入すると、もれなく選べるグルメギフトをプレゼントするキャンペーンを実施しており、LS50 Metaも対象になっている。スピーカーケーブルなどがプレゼントされるキャンペーンはよく見るが、グルメギフトがもらえるというのはちょっとユニークだ。

DALI「OBERON1」ペア 62,700円

DALI「OBERON1」

2011年に発売され、それ以降「オーディオ入門スピーカーの定番」として君臨してきたのが、デンマークDALIの「ZENSOR(センソール)1」というモデル。コストパフォーマンスの高さ、コンパクトさが支持されたスピーカーだが、その後継機種として2018年に登場したのが「OBERON(オベロン)1」だ。今回は北欧風のライトオーク仕上げを借りている。

ちなみに、新型コロナウイルス感染症の影響による原材料費や物流費の高騰により、OBERONシリーズは7月1日から値上げされているが、一番低価格なこの「OBERON1」はペア62,700円の据え置きなのが嬉しい。

外形寸法162×234×274mm(幅×奥行き×高さ)、重量4.2kgと非常にコンパクトな2ウェイ2スピーカー。クロスオーバー周波数は2,800Hz。ユニットサイズはツイーターが29mm径、ウーファーが130mm径だ。

ツイーターはソフトドーム型

ツイーターは軽量なシルクファブリックを使ったソフトドーム型。ウーファーの磁気回路に大きな特徴があり、上位モデル「OPTICON」などにも使っている「SMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)」技術を投入している。

ウーファーの磁気回路にSMC技術を投入している

通常のフェライトマグネットの原材料は酸化鉄の砂鉄だが、その砂鉄の一粒一粒に化学的なコーティングを施したのがSMC。これにより、高い透磁率を持ちながら絶縁性のある素材に変化。これで磁気回路を構成する事で、内部で発生する磁気変調と渦電流を低減し、歪も大きく抑えられるという。

エンクロージャーはMDF製で、ZENSORに比べて内部補強構造を強化した。構造はリアバスレフ。吸音材は複数の種類を組み合わせて、配置箇所に応じて最適化している。スピーカーターミナルはシングルワイヤー。再生周波数特性は51Hz~26kHz。インピーダンスは6Ω、推奨アンプ出力は25~100W。

FOCAL「Chora806」ペア107,800円

FOCAL「Chora806」

ラックスマンが扱っている、フランスFOCALのスピーカー。巨大なフロア型がお馴染みのブランドだが、そのベーシックライン「CHORA」のブックシェルフが「Chora806」だ。

ツイーターはインバーテッドドーム型

ツイーターは2.5mm径で、ドーム型ではあるが凹凸を逆にして引っ込んでいるインバーテッドドーム型。軽量かつ高い剛性と減衰特性を持つアルミマグネシウム合金を使っている。

165mm径のウーファー

大きな特徴は、165mm径のウーファー素材にある。“Slatefibercone”という、炭素繊維に熱硬化性ポリマーを含浸して作った複合材で、「CHORA」に搭載するため、4年の歳月をかけ開発された、軽くて剛性が高い新しいコーンだという。ちなみにこの素材を音響機器に採用したのはFOCALが世界初だそうだ。

エンクロージャーはフロントバスレフ。周波数特性58Hz~28kHz、クロスオーバー周波数3,000Hz、インピーダンス8Ω、推奨パワーアンプ出力25-120W。

パラダイム「PREMIER 200B」ペア165,000円

パラダイム「PREMIER 200B」

PDNが扱うパラダイムは、カナダのスピーカーブランドだ。PREMIERシリーズは、フラッグシップ・PERSONAシリーズの設計思想や特許技術を投入しながら、価格をグッと抑えている。それでいて、ユニットも含めた全てのパーツをカナダ本社の設備で自社設計、製造しているのがパラダイムの特徴だ。

具体的には、特許技術であるART(Active Ridge Technology)エッジや、PPA(Perforated Phase-Aligning)音響レンズ、独自設計のX-PALピュアアルミ・ダイアフラムといった技術がPREMIERシリーズにも活用されている。

ツイーターは25mm径で、振動板に独自のアノダイズド・ピュア・アルミニウム素材を使った「X-PALメタルドーム」を搭載している。165mm径ウーファーのエッジは、特許技術を使って熱可塑性エラストマーから作った「ARTエッジ」。社内工場でコーンに直接オーバーモールドする事で、出力を3dBアップさせつつ、歪みを50%低減したという。

そしてPREMIER 200Bの大きな特徴が、ツイーターとウーファーの前面に、無数の穴が空いた音響レンズ「PPA」(パーフォレイテッド・フェーズ・アライニング)を配置している事。これはユニットを保護する役目も果たしているが、単なるネットではなく、指向性を改善させたり、位相を調整したり、高直線性歪を低減するといった効果があるそうだ。

ツイーターとウーファーの前面に、無数の穴が空いた音響レンズ「PPA」を配置している

外形寸法は33.5×32.1×19.8cm(幅×奥行き×高さ)で、重量は8.17kg。再生周波数帯域は55Hz~25kHzで、クロスオーバー周波数は2,000Hz。インピーダンスは8Ω。推奨アンプ出力は15~130W。

Polk AudioのReserve Series「R100」 ペア77,000円

Polk Audio Reserve「R100」

ディーアンドエムホールディングスが扱う、米Polk Audio(ポークオーディオ)の国内導入第一弾「Reserve」シリーズのブックシェルフが「R100」だ。このブランド名は創立メンバーの中心人物、マシュー・ポークさんの名前からとったもの。

日本ではあまり知られていないが、新興ブランドではなく、実は来年で誕生50周年を迎える“老舗”。コンポーネントスピーカー市場では、北米地域屈指の売上を誇り、世界各国で販売しているバリバリのグローバル・スピーカーブランドだ。

Reserveシリーズは、リーズナブルな価格ながら、日本未発売のフラッグシップ「Legend」シリーズの技術を多く投入。1インチのリングラジエーター型ツイーターには、高域エネルギーの拡散性を改善するためのウェーブガイドを装着してスイートスポットを広げ、ダンプするためのリアチャンバーも装着して不要な共振を解消した。

ウーファーは5.25インチで、振動板にインジェクション成形で不思議な凹凸を設けている。これは質量を増やさずに形状工夫で剛性と内部損失を高めるもので“タービンコーン”と呼ばれている。

エンクロージャーの形式はリアバスレフ。バスレフポートが、まるで飛行機のエンジンみたいだが、内部にクローズドパイプ・アブソーバーを配置して、不要なキャビネットとポートの共振を抑える工夫で「X-Portテクノロジー」と呼ばれている特許技術だ。

まるで飛行機のエンジンのようなバスレフポート

再生周波数帯域は44Hz~50kHz、クロスオーバー周波数は2,700Hz。インピーダンスは4Ωで、推奨アンプ出力は30~150W。外形寸法は166×260×324mm(幅×奥行き×高さ)。重量は5.5kgだ。

クロスレビュー

試聴に使ったオーディオシステムを紹介しておこう。パワーアンプには米国パスラボラトリーズ「X600.8」を使用。プリアンプも同社の「XP32」である。ここでの試聴音源はすべてDELAの「N10ミュージックライブラリー」(オーディオNAS)に格納しておき、英国dCSのヴィヴァルディシステムによるネットワーク再生とした。

Passラボラトリーズ「X600.8」

企画当初はスピーカーの価格に見合ったアンプとプレーヤーをと考えたのだが、スピーカーの能力を最大限に発揮させようということで、三浦氏が日常的に使っているオーディオ機器で鳴らすことに。試聴も三浦氏のリスニングスペースで行なっている。スピーカースタンドは堅牢なアコースティックリバイブ製。スタンドとスピーカーの間には必要に応じてフェルトを敷いている。

オーディオ評論家の三浦孝仁氏
編集部・山崎

KEF「LS50 Meta」ペア159,500円

オーディオ評論家 三浦孝仁氏

KEFのスピーカーを聴くのは何年ぶりだろう? ここで試聴した他のスピーカーと大きく異なるのは、同軸ユニットならではの点音源による発音ということだ。音像はピシッと定位してまとまっており、音場空間は左右に広がる傾向で高さ方向はそれほど感じさせない。

「手嶌葵/月のぬくもり」(44.1kHz/16bit)は、彼女のコンピレーションCD「コレクション・ブルー」から。本機の特徴である定位感の良さが反映されて彼女の声色の訴求力が無理なく感じられる積極的な美音である。2ウェイ構成の振動板がともに金属製ということもあり、音離れはきわめて良好で反応も早い。伴奏するピアノの音色は僅かに華やかさも伴うように感じられたが、適度に硬質で曖昧さを感じさせない音色が明るく響いてくる。

続いて男性ボーカルとして「ジェイムス・テイラー/ユーヴ・ガット・ア・フレンド」(44.1kHz/16bit)を聴いている。これは1992年の全米ツアーからセレクトした2枚組CD「James Taylor/Live!」からのライヴ音源。聴衆の拍手や声援などの音数は多く、ライヴ音源らしい空間の拡がりは左右方向に広く深みもあった。アコースティックギターの金属弦の音色感や、声質のクリアさも上々。ジミー・ジョンソンのスムーズなエレクトリックベースの低音も音階が明瞭に感じられる。ドラムの音も粒立ちが良く、名手ダグ・サックスのマスタリングらしい、少しゆったりとしたグルーヴ感も素直に伝わってくる。

クラシック音楽はドイツグラモフォンから「アンドリス・ネルソンス指揮/ショスタコーヴィチ交響曲第5番(第2楽章)」(96kHz/24bit)を聴いている。ハイレゾ音源らしい分解能の高さと余裕あるレンジ感をベースに、なかなか視覚的な高精細サウンドを聴かせてくれるスピーカーだ。金属素材の振動板らしい立ち上がりの速さとキレの良さが、ここでもうまく反映されたようである。エネルギーバランス的にもフラットさが保たれており、特定の帯域で膨れたりスッキリしすぎたりということもなく、少しばかり生真面目かなと思わせるほど端正な音で聴かせた。

最後はエネルギッシュなジャズトリオから「ヘルゲ・リエン・トリオ/テイク・ファイヴ」(44.1kHz/16bit)である。名盤の誉れ高いCDアルバム「スパイラル・サークル」からの1曲だ。冒頭のドラムの鋭い打音にも見事に対応する瞬発力の高さに裏打ちされた、ダイナミックな表現力に感心。音楽ファンだけでなく、宅録する若いミュージシャンや自宅で作業を行なうエンジニアにも向いたモニターライクなサウンド傾向も特徴といえよう。

LS50 Metaの兄弟機として、同じ12世代の最新同軸ユニットとDSP内蔵2ウェイ・アンプやHDMIを含んだ有線接続も装備する、多機能な「LS50 Wireless II」(297,000円)もある。

AV Watch編集部 山崎

「藤田恵美/Best of My Love」(96kHz/24bit)を再生。冒頭のアコースティックギターの響きや、ボーカルで音色をチェックしたが、色付けはほとんど無く、とてもナチュラルな音だ。今回の比較の中では、後述するDALI「OBERON1」と並ぶ自然さだと感じる。

音場が展開してすぐにわかるのが、同軸ユニットのブックシェルフらしい、ふわっと広がる音場の自然さ。奥行きも深く、本当にステージが目の前に展開しているようなリアルさがある。その音場に浮かびあがる音像は、後ろに引っ込まず、前に出てくる元気の良さもある。

音場の描写力がハイレベルなのは、アンプのボリュームを下げていってもわかる。小音量では音場がこじんまりしてしまうスピーカーが多いが、LS50 Metaは音を小さくしていっても空間表現の広さや深さが縮小しにくい。

音の色付けが少なく、余分な響きもまとわりつかないので、アコースティックな楽器や人の声をじっくり味わう時にも向いているスピーカーだ。自然さがありながら、トランジェントも悪くないため、打ち込み系の楽曲や、SEなども鮮烈。「マイケル・ジャクソン/スリラー」(DSD/2.8MHz)冒頭のカミナリや、ドアが「ギィイイ」と軋む音にも迫力がある。

中低域を前へと押し出すパワフルさも兼ね備えており、今回の比較の中では、後述するPolkのReserve「R100」に次ぐパワフルさを持ったスピーカーだ。「ブックシェルフは低音が出ないから迫力が無い」というイメージを持った人が聴くと、驚くだろう。

関心するのは、低域から高域までのまとまりが良く、どこかの帯域だけが主張したり、低音と高音の繋がりが悪いといったような、荒削りな部分がまったくない事。「さぁこのスピーカーをどう使いこなしてやろうか」と袖をまくるような製品ではなく、箱から出してスタンドに設置するだけで、広がりも、まとまりも良い音が出せる“優等生的”なスピーカーだ。

逆にいうと、強い個性や“どこかを工夫すると音が激変する予感”みたいなものはあまり感じない。それゆえ、どんな人にもオススメしやすいスピーカーと言える。また、空間表現が得意で中低域もパワフルなため、テレビと組み合わせて、2chで映画などを再生して、音に包み込まれる感覚や迫力を味わうといった使い方もアリだろう。

DALI「OBERON1」ペア 62,700円

オーディオ評論家 三浦孝仁氏

ここで聴いたスピーカーシステムの中で最もコンパクトな製品。そのため流れで順々に聴いていくと低域方向の量感がもう少しほしいと感じてしまうが、実際にはエネルギーバランスが整っており音のまとまりも抜群。「手嶌葵/月のぬくもり」(44.1kHz/16bit)は、彼女の声色の微妙な変化もうまく伝わってくる、総じて音に華やかさも添えたチャーミングなボーカル曲という印象を受ける。

DALIのスピーカーはどれも聴かせ上手な音を得意としており、たとえばB&Wのようなニュートラル調の音を求めるのではなく、聴き手を楽しませる音調を持ち味にしている。低域方向もしっかりしているのでグランドピアノの音色も落ち着いている。

「ジェイムス・テイラー/ユーヴ・ガット・ア・フレンド」(44.1kHz/16bit)は、ライヴ演奏らしい空間情報を豊かに感じさせる、広々としたステージが心地いい。僅かに口径の大きいソフトドームのツイーターがほのかに煌びやかな高音域を演出しており、私はクロスオーバー素子によるチューニングの成果ではと感じた次第。テイラーのボーカルも瑞々しく声に艶があり、全体的に音像定位がしっかりしているのも特徴で、一流のミュージシャンが揃ったリラックスした演奏が楽しめる。

この音質傾向は「アンドリス・ネルソンス指揮/ショスタコーヴィチ交響曲第5番(第2楽章)」(96kHz/24bit)でも同じように感じられ、弱音部分で弾くヴァイオリンの音色が繊細で響きの美しさでも魅了する。しかも分解能の高さやレンジ感など、ハイレゾ音源らしさもじゅうぶんに感じさせるのだ。ジャズの「ヘルゲ・リエン・トリオ/テイク・ファイヴ」(44.1kHz/16bit)も、大音量再生でも無難にこなす対応力を見せつけたかっこうだ。

ウーファー口径が13cmと小さいがウッドファイバーコーンの剛性が高いのか、ドラムの強烈な打音やウッドベースのゴリッとした鳴りもこなす力量がある。ピアノの鋭い打鍵も前述した華やかさが伴うため、倍音成分が豊かに聴こえてくる。音楽を聴く楽しさを演出してくれる、音造りの巧いスピーカーシステムだ。

AV Watch編集部 山崎

今回登場するスピーカーの中で最も小さい事もあるが、音場の広がりは抜群だ。「Best of My Love」のベースやボーカルの余韻が、左右や奥の空間に広がり、スーッと消えていく様子も良く見える。

音の色付けの少なさも見事で、人の声も非常にリアル。アコースティックギターの弦が振動するちょっと金属質な音と、ギターの筐体が響いて発生するあたたかな木の響きが、キッチリ描き分けられている。一番低価格なスピーカーだが、“音色の自然さ”という面では、今回の5スピーカーの中で1、2を争うクオリティだと思う。

それに加えて驚くのは低音だ。筐体サイズやウーファーサイズから考えると「中高域はキレイに鳴るけど、小さいスピーカーなので低音はそんなに出ません。でも小さいから許して」というパターンなのかと想像していたが、実際に鳴らしてみると、思っていたよりもしっかりした低音が出ていて、全体のバランスが非常に良い。決してハイ上がりな、スカスカした音ではない。

もちろん、ズシンと地を這うような低音は出せない。しかし、お腹に響く程度の一般家庭では必要十分な低音は出ているため、決して、迫力が無いとか、音像が痩せて薄いというような不満は感じない。ペア62,700円で「いや、これで十分じゃん」と思わせる音を出してくれるのは、「さすがロングセラー“ZENSOR1”の進化モデル」と納得の完成度だ。

小型である事を活かした音場の広さに加え、定位も明確だ。「マイケル・ジャクソン/スリラー」を聴くと、冒頭の「コツコツ」という足音の音像がシャープかつ、位置がビシッと決まるため、“足が見えるようだ”を通り越して“ここに地面があるんだな”と感じるリアルさがある。これは、他の参加スピーカーや、より大型なスピーカーに対して、OBERON1ならではの強みと言えるだろう。

「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」も、ベースの芳醇さ、ドン・ヘンリーの声質などがリアルに聴き取れる。高さ方向にも音場が広がるため、エレキギターの鮮烈なサウンドが上から降り注ぐような感覚も味わえる。

ただ、サビの盛り上がりや、「スリラー」のビートなどを聴いていると、もう少しグワーッと押し寄せて来るような迫力が欲しいとも感じる。バランスは悪くないのだが、中低域の音圧という面で、他のスピーカーと比べると、弱い部分があるのは確かだ。

また、ボリュームを上げながら比較試聴していると、他のスピーカーと比べて「頑張って音を出している感」があり、上級機のような“余裕”みたいなものは乏しい。ただ、上級機ではなく参加者で一番安いスピーカーなのでこれは当たり前。一般家庭で出せる音量であれば問題はない。この価格で、より高価なスピーカーに迫れる音を出せる事を称賛したい。

FOCAL「Chora806」ペア107,800円

FOCAL「Chora806」
オーディオ評論家 三浦孝仁氏

ここで試聴したスピーカーシステムの中で最も大きく、本機だけは前面にバスレフポートを装備している(他のスピーカーは背面)。スケール感の豊かな音というのが第一印象で、「手嶌葵/月のぬくもり」(44.1kHz/16bit)はピアノの筐体が響く低音域や和音の厚みが堂々としていて、彼女の声色は自然な音質でスッと耳に届いてくる。子音はやや強めだがスムーズに伸びた高音域を感じさせ、音の余韻もじゅうぶん伸びている。

「ジェイムス・テイラー/ユーヴ・ガット・ア・フレンド」(44.1kHz/16bit)は音場空間の広さ、特に奥行きも豊かに感じさせる空間描写の巧みさが特筆でき、アコースティックギターの鮮やかな音色やテイラーの表情豊かな歌声に好感を抱く。口径の大きいウーファーであるが締りがあり制動の効いた低音を特徴にしているようで、エレクトリックベースの伸びやかさは僅かに抑え気味。しかしながら、ドラムと刻むリズムは明快である。

「アンドリス・ネルソンス指揮/ショスタコーヴィチ交響曲第5番(第2楽章)」(96kHz/24bit)も冒頭のコントラバス群はタイトな音色に感じさせるが、ここでは厚みに不足はなく全体的な臨場感も豊かに再現できている。ベリリウム振動板を搭載する上位機種の冴えた高音域よりも、こちらのアルミマグネシウム合金による高音域はニュートラルで優しい質感を持ち合わせているようで、弱音部分でのヴァイオリンの音色の繊細さやハープの響きの美しさが印象的。

「ヘルゲ・リエン・トリオ/テイク・ファイヴ」(44.1kHz/16bit) は、押しの強力なドラムの打音やピアノの鋭い打鍵にも怯むことなくストレートに発音してくる。ウッドベースの指弾きの低音はタイト&ストレート。構造体としての剛性の高さも音に効いているようで、オーディオ的な音の爽快感が得られたことも挙げておこう。強弱のコントラストが鮮やかなスピーカーシステムだ。

AV Watch編集部 山崎

「藤田恵美/Best of My Love」を再生。冒頭のアコースティックギターが高解像度で非常にシャープな描写だ。音色には少し金属的な響きが乗っているが、色付けというよりも、中高域のシャープさ、ソリッドさに磨きをかけているような感覚。爽やかな音だ。

1分過ぎに入ってくるベースの低域はしっかり出ているが、こちらの音の輪郭もシャープかつタイト。ボワボワ膨らむ低音とは真逆の、切り込むような低音だ。トランジェントも良く、パーカッションの歯切れも抜群でハッとするほど鮮明。それが右上の空中に定位する様子も、映像で見えるかのようにクッキリと聴き取れる。

低域から高域まで分解能が高く、音像も不必要に膨らまず、また低音もタイトであるため、「この音とこの音で音楽が構成されている」というのが良くわかる。モニタースピーカーとしても使えそうなサウンドだ。

「マイケル・ジャクソン/スリラー」も、冒頭の「コツコツ」という足音の移動感が明瞭。ビートも鋭く、クリアで、聴いていて非常に気持ちが良い。マイケル自身の定位も明瞭で、口の動きも良く見える。

「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」では、冒頭のうねるようなベースの低音の中でも、ギターの旋律の明瞭さをキッチリ描写してみせる。ドン・ヘンリーの乾いた声と、スピーカーのクールな描写がマッチする。サビに差し掛かると、グワッと押し寄せる低音のパワーがもう少し欲しいと感じるが、一方で、全ての細かい音が見通せるような、高精細な描写の気持ちよさにハマってしまう。ベースのラインも極めて聴き取りやすい。

「手嶌葵/月のぬくもり」のようなシンプルな曲を聴いていると、静かな音場で、歌い出す前の「スッ」と息を吸い込む音までクリアに聴き取れ、描写力の高さがよくわかる。これは非常に魅力的だ。ただ、声のあたたかみはあまり無く、やや寒色寄りになる。

聴いていると自然に「自分ならこの音を、どう料理して理想に近づけようか」と考えはじめる。情報量が多く、むき出しのように迫ってくる中高域のソリッドさを維持したまま、例えば少しアンプのBASSをいじって低域の力強さをプラスしてみようか、少しゆったりした音になるスピーカーケーブルを組み合わせて、ソリッドさを残しながら、ホッとさせるような音の響きをプラスしてみようか……などなど。

ただ、これは決して「素の音に不満があるから」ではない。「このスピーカーを使いこなしてもっと理想の音を追求してみたい」と思わせる、ポテンシャルの高い音という意味だ。

また、今回の比較の中では筐体が大きめなためか、音場の広がりはそこまで広大には感じない。左右のスピーカーの奥に音場を出現させる……というよりも、ダイレクトな音をバシバシ耳に届けるというタイプだ。

パラダイム「PREMIER 200B」ペア165,000円

パラダイム「PREMIER 200B」
オーディオ評論家 三浦孝仁氏

外観上の大きな特徴にもなっている特許技術のパーフォレイテッド・フェーズ・アライニング(PPA)の主目的は、高度な計算で配置された開口によって音の指向性をコントロールして位相特性も改善するというもの。このPPAの存在は音質傾向に大きく反映されていて、「手嶌葵/月のぬくもり」(44.1kHz/16bit)ではスピーカーの前面から周囲に均等に音が拡がっているという感覚を得た。そのぶん真正面の音圧は抑えられて、彼女のボーカルは優しさと物腰の柔らかさが感じられる上品な質感になる。

全体的なエネルギーバランスは整っていて、シルキータッチといいたくなる音の質感表現を得意としている。「ジェイムス・テイラー/ユーヴ・ガット・ア・フレンド」(44.1kHz/16bit)では、直接音と間接音のバランスを意識しながら聴いていくと後者のほうが僅かに多めに感じられるようで、ライヴ空間の拡がりがより深々と味わえる。総じて丁寧できめ細かい音の描写というのが、このスピーカーの持ち味だと思う。

「アンドリス・ネルソンス指揮/ショスタコーヴィチ交響曲第5番(第2楽章)」(96kHz/24bit)は、楽器の繊細な響きを重視しながら臨場感を高めるという、分別のある大人の音という印象だ。ことさらレンジ感を広げたような音ではないが、透明感のある高音域が得られていて聴き疲れのしない音はクラシック音楽が好きなリスナーに向いているかも。たとえばウーファーのARTサラウンドを筆頭に、音の歪感を徹底的に減らした技術によりスムーズな音を獲得しているのだろう。

「ヘルゲ・リエン・トリオ/テイク・ファイヴ」(44.1kHz/16bit)は、いわゆる突き刺さるような激しい音ではなく耳あたりの良いダイナミックな演奏。ウッドベースのゴリッとした指弾きの低音がしっかりしているのは、カーボンを含んだポリプロピレン振動板の剛性によると思われる。本機の底面にはちょうどスピーカースタンドに合う脚部が備わっていたため、試聴の時はフェルトを挟まずに聴くことにした。

AV Watch編集部 山崎

「藤田恵美/Best of My Love」を再生した瞬間に、「おおっ」と思わせる特徴がある。それは音場の広がり方だ。シャープにクッキリと空間を描写するというわけではなく、フワッと柔らかく音が広がっていく。“コンサート会場に瞬間移動した”というよりも“広がる音に包み込まれる”ような感覚だ。

かと言って、“音の輪郭を故意に甘く、ボワボワさせた音”ではない。音像のシャープさは維持されており、そこに“広がるゆったり感”を付加したような感覚だ。その証拠に、「スリラー」冒頭の足音の移動感も明瞭だ。

音の色付けも少なく、人の声も自然だ。聴いていて面白いのは、全体の音にふしぎな“まとまりの良さ”がある事。ギターや人の声、パーカッションの鋭い音などが、むき出しでこちらに飛びかかってくるようなサウンドではなく、ある程度整理され、まとまって耳に届く。“美音”と言ってもいい。

音楽を分解しながら聴くようなモニタースピーカーとは方向性が異なる、様々な音を、美しく、ゆったりと、落ち着く音で聴かせてくれる。スピーカーの正面に座り、さぁ聴くぞと対決するように聴くのではなく、コーヒーでも飲みながら「んーいい音だなぁ」とうっとりするようなサウンドだ。「さぁ俺を使いこなしてみろ」というスピーカーではなく、“ユーザーの生活に寄り添ってくれるような音”だと感じる。

音のバランスとしては、低音の迫力はそこまで強くはない。また、傾向として音量を小さくすると、まとまりの良さゆえに、やや“こじんまり”とした音場になる。少し音量を上げ目で使うと、情報量と音の広がりという、2つの良さをキチンと発揮できるだろう。

Polk AudioのReserve Series「R100」 ペア77,000円

オーディオ評論家 三浦孝仁氏

この価格帯ではあまり見かけないリングラジエーターのツイーターや剛性を高めた形状のウーファー振動板など、かなり攻めた音を目指していると思わせる意欲的なスピーカーだ。

エンクロージャーのプロポーションも奥行きが深くバッフル幅を最小限にするなど、ここに登場する他のスピーカーシステムとは異なるオーディオライクなデザインセンスが伺われる。「手嶌葵/月のぬくもり」(44.1kHz/16bit)はレンジ感が広く、私はニュートラルな声色の素直さに魅了された。ピアノの響きも堂々としていて、応答性も優れており音離れも良好。スピーカーの存在を忘れさせるような視覚的な音の描写が本機の特徴といえよう。

「ジェイムス・テイラー/ユーヴ・ガット・ア・フレンド」(44.1kHz/16bit)は、空間情報をうまく再現できている。観客のざわつきや声援の音数も多く、アコースティックギターの先鋭的な響きやテイラーのボーカルもクリアで申し分ない。エレクトリックベースの低音やハイハットの金属的な響きなど音の描きわけもキッチリとしている。含みを持たせたような音とは対照的な、わかりやすく明瞭な音を奏でるスピーカーだと思う。

「アンドリス・ネルソンス指揮/ショスタコーヴィチ交響曲第5番(第2楽章)」(96kHz/24bit)は、楽器群の細やかな演奏を際立たせていき、強弱のコントラストもじゅうぶんに高い。これで音色の陰影感がもう少し豊かになり複雑な表現力を伴えばと欲張ってしまった次第である。

「ヘルゲ・リエン・トリオ/テイク・ファイヴ」(44.1kHz/16bit)は演奏の激しさを包み隠さず音にして伝えるダイレクトさが持ち味だ。ウッドベースの力強く弾んだリズミカルな低音は得意なようで、オーディオ的な音の快感をもたらしてくれる。本機も底面に小さな脚部があったので、スピーカースタンドとの間にはフェルトを挟まずに聴いている。

AV Watch編集部 山崎

登場スピーカーの中で、最もパワフルかつ元気の良い音だ。目の覚めるようなシャープさではなく、箱鳴りがやや付帯している。それが響きの多さ、パワフルさ、グワッと押し寄せる個性になっている。

音場感は広く、DALIに次ぐ。低域のパワフルさはDALIを上回り、ゆったりとした余裕のある肉厚な中低域を出してくれる。「小さなスピーカーでパワーのある低音は難しい」という先入観をいい意味で裏切ってくれる、小型スピーカーの弱点を良くカバーしたサウンドだ。

ホテル・カリフォルニアも、ベースの中低域を、肉厚で、グイグイと前に押し出してくれるので、低音のパンチを浴びるような気持ちよさがある。そんな中で、高音は埋もれずに耳に届く。

ただ、低音はソリッドシャープ系ではなく、弾力のある音圧重視タイプ。気持ちがよく、満足感の高い音だが、悪く言うとややドンシャリ系とも言える。ハイレゾを微細に、神経質に描写するというより、「ソースはなんでもOK、いろんな音源を気持ちよく聴かせるぜ」というタイプだ。

このサイズで、下腹にドドンと響くパワー感は聴いていて気持ちが良い。音楽も良いが、テレビやプロジェクターと組み合わせて映画やゲームをプレイするにも良いスピーカーだと感じる。

とにかく聴いていて楽しく、いい意味で“わかりやすい”スピーカーなので、多くの人が聴いて「これいいね」と思う音だ。そういう意味で良く出来たスピーカーなのだが、「ケーブルやインシュレーターを工夫して音を変化させてみよう」とか「セッティングを煮詰めてどう変化するか試そう」という、いわゆる“オーディオっぽい欲求”があまり湧いてこない。逆に言えば「とりあえず繋いだだけで、満足感のある音が出せる」のは凄いことだ。

まとめ

オーディオ評論家 三浦孝仁氏

価格がこなれたベストバイ的な5機種のエントリークラスを試聴して感じたのは、基本性能の高さと音のまとまりの良さである。「十年ひと昔」という言葉があるけれども、たとえば同じような価格帯で10年前のスピーカーシステムとこれらを比べたら、音質と製品としての完成度の違いに驚いてしまうことだろう。

左からパラダイム「PREMIER 200B」、FOCAL「Chora806」

いずれも上級機の開発で得られている設計ノウハウがじゅうぶんに活かされているのはもちろんのこと、大量生産することで成立する物量投入が音にしっかりと反映されているのがわかった。音質的に無個性な製品などひとつもなく、上級機で確立されている高音質技術が投入されているため、リスナーにより音の好みもはっきりとわかれるだろう。

個々の製品で感じた音質傾向はそれぞれ述べているから省略するけれども、聴き疲れなく音楽をいつも部屋で鳴らしておきたいという人にはパラダイムが向いていると思う。いっぽう、点音源の発音が特徴のKEFは音楽制作を手掛けるなどモニターライクで明瞭な音を求める人に薦められよう。

オーディオファイル的な観点から私が音質に興味を抱いたのは、フォーカルとこれから国内展開されるはずのポークである。ダリは音楽を磨きあげたような美しさで聴かせるのが魅力。いずれの機種も輸入品になるわけだが、音質と価格を鑑みたコストパフォーマンスの高さが印象的だった。

左からDALI「OBERON1」、Polk AudioのReserve Series「R100」
AV Watch編集部 山崎

ブックシェルフらしい音場の広さを最も感じるのは、DALI「OBERON1」だ。この小さなスピーカーで、部屋の中に広大な音の空間が出現する楽しさを味わうと、オーディオの楽しさに気づくだろう。サウンドも、情報量重視。このサイズなので低域の迫力はそこまで出ないが、決してハイ上がりのスカスカした音になっておらず、バランスの良さを感じるのはさすが、定番モデルの進化系と驚かされる。

DALI「OBERON1」

音の色付けの少なさも、参加者の中で1、2を争う。分解能も高く、ハイレゾ楽曲の情報量も聴き取りやすい。まさにオーディオスピーカーのベーシックという感じで、工夫やアクセサリーとの組み合わせによる音の変化もわかりやすそう。オーディオの醍醐味みたいなものを楽しみやすいスピーカーと感じる。

左がPolk AudioのReserve「R100」 、右がKEF「LS50 Meta」
FOCAL「Chora806」

その方向性をさらに進めたようなサウンドがFOCAL「Chora806」だ。よりソリッドに、よりシャープに、むき出しの情報がこちらに飛んでくる。それを使いこなしたときに、理想とするサウンド世界へと連れて行ってくれそうな可能性も感じ、聴いていてゾクゾクする。

ただ、あらゆる面でDALI OBERON1を上回っているかというと、音場の広さはOBERON1の方が良い。このあたりはスピーカーサイズも関係しているだろう。個人的に、“金額を見ずに一番好きなスピーカーを選べ”と言われればFOCAL「Chora806」を選びたい。

一方で、あまりいじらなくても、最初から優れた音を再生してくれそうなのがKEF「LS50 Meta」とパラダイム「PREMIER 200B」だ。KEFは押し出しも強いので、モニタースピーカーっぽく使うのもアリだ。PREMIER 200Bは、オーディオをじっくり楽しむだけでなく、休日のBGMとして、一日中部屋に音楽を流しておくような使い方をする時にもマッチしそう。美しい音に癒やされたい“大人向けのスピーカー”という印象だ。

PolkのReserve「R100」は、とにかく元気の良いスピーカーなので、音楽だけでなく、ホームシアターで使ったり、ゲーム機と組み合わせて楽しむような使い方にもピッタリだろう。価格もDALIに次ぐ安さなので、「やっぱりガツンとした低音の迫力も欲しい」という人にはオススメのモデルだ。

いずれにせよ、今回試聴した5機種には明確な違いと、それぞれに特徴がしっかりとあり、聴いていて非常に面白かった。この違いは、難しい顔をしてじっくり聴き比べて「かすかに違う」というレベルではなく、誰もが、音が出た瞬間にわかるくらいの大きな違いがある。また、単に「高いスピーカーが良い」「安いスピーカーがショボい」という結果にならなかったのもポイントだ。多くのスピーカーを聴き比べるのが難しい昨今ではあるが、読者の“聴いてみたいスピーカーチョイス”の一助となれば幸いだ。