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あの“リア分離”JBLサウンドバーが10万円以下、「BAR 800」の最強っぷりを聴く

「JBL BAR 800」

ぼくのかんがえたさいきょうサウンドバー、ふたたび

“横長スピーカーを1台置くだけ”で、ホームシアターが完成する手軽さがサウンドバーの利点だ。だが、よりリアルなサラウンドが欲しくなると、背面や天井にスピーカーを設置し、それらを駆動するための巨大なAVアンプを買って……と、いきなりハードルが上がり、サウンドバーの手軽さが消滅するというのがジレンマだった。

そんな常識を、革新的なアイデアで覆したのが昨年JBLから発売された「BAR 1000」(実売143,000円)だ。一見すると、ただの“横長スピーカー”だが、なんと両端を引っ張ると「スコッ」と抜けて、それらをソファの背もたれや本棚などに設置すれば、“ワイヤレスのリアスピーカーになる”という「そんなのアリなの!?」と驚くサウンドバーだった。

「JBL BAR 1000」

なにしろこのリアスピーカーはワイヤレス接続でバッテリーも内蔵しているため、背後に設置しても、スピーカーケーブルや電源ケーブルが床を這う事がない。映画を見る時だけ分離して、リアルなサラウンドを楽しみ、鑑賞が終わったらバースピーカーに再びドッキング。すると、次回使用時に備えて内蔵バッテリーを充電してくれる……という、「世の中には頭の良い人がいるもんだ」と感心してしまうサウンドバーだった。

そんなBAR 1000は、斬新さが大きな話題となり、クラウドファンディングから大人気。その後のの一般販売も非常に好調だそうだ。ただ、こんなギミック満載なので、価格は実売143,000円と、それなりに高価。「分離するサウンドバー、気になるけど、ちょっと高くて手が出なかった」という人も多いだろう。

そんなところに、再び衝撃のサウンドバーが登場する。BAR 1000とまったく同じ、分離するリアスピーカー機構を備え、BAR 1000と同じサブウーファーもセットになっていながら、なんと10万円を切る実売99,990円で発売されるのが「BAR 800」だ。

“コスパの良さ”まで身につけた、新たな「さいきょうサウンドバー」。「BAR 800」の実力をチェックしよう。

BAR 800とBAR 1000は何が違うのか

良く似ているBAR 800とBAR 1000だが、どこに違いがあるのだろうか。

まず、横長のバースピーカーと、別筐体のサブウーファーがセットになっている構成は同じだ。

「JBL BAR 800」

バースピーカーはサイズが少しだけ異なり、BAR 800はワイヤレスリア装着時で1,174×120×56mm(幅×奥行き×高さ)、サウンドバー本体のみでは884×120×56mm(同)。対して、BAR 1000はワイヤレスリア装着時で1,194×125×56mm(同)、サウンドバー本体のみでは884×125×56mm(同)と、ほとんど同じではあるが、BAR 1000の方がわずかに大きい。

「JBL BAR 800」バースピーカー

分離したワイヤレスリアも、BAR 800が外形寸法145×120×56mm(同)、BAR 1000が155×125×56mm(同)と、BAR 1000のものが少し大きい。

分離したワイヤレスリアスピーカー

一方で、サブウーファーは305×305×440mm(同)で、BAR 800、BAR 1000どちらも同じものを採用している。

「JBL BAR 800」のサブウーファー

では大きく違うのは何か? それはチャンネル数だ。

BAR 800は5.1.2chシステムで、BAR 1000は7.1.4chとなる。詳しく内訳を見ていこう。

「JBL BAR 800」内部のユニット一覧

このスライドは、BAR 800のバースピーカー内部にあるユニットを見えるようにしたものだ。両端が分離できるワイヤレスリアだ。

バースピーカーのフロントに取り付けている青いスピーカーは、左右のフロントと、センター用のユニット。いずれも2ウェイ構成であるため、ユニットは6基搭載する。注目は、一番外側の青いマークのユニット。他のユニットが正面に向けて取り付けられているのに対し、左右の端のユニットは外側に向けるように角度をつけて取り付けられている。

これは、両端のユニットが、壁への反射を使って広がりのあるサウンド再生を実現するビームフォーミングスピーカーになっているため。JBL独自技術「MultiBeamTM」テクノロジーを使ったものだ。

さらに本体の天面には、天井に向けて、緑のマークのユニットが斜め上の向きで取り付けられている。これは、天井に音を反射させる事で、上からの音を再現するためのもの。ワイヤレスリアには、リア用にフルレンジのユニットが搭載されている。バー本体に搭載するユニット数は合計8基だ。

JBL BAR 800の天面にあるユニットは、天井反射用だ

一方、BAR 1000もフロント左右、センター用に2ウェイユニット、合計6基のユニットを備えているのだが、それとは別に、両端にビームフォーミングスピーカーを各1基備えている。上部にハイトスピーカーを搭載しているのはBAR 800と同じだ。バー本体に搭載するユニット数は合計10基だ。

「BAR 1000」内部のユニット

ワイヤレスリアにも違いがある。BAR 800は、リア用のフルレンジユニットだけを搭載していたが、BAR 1000のワイヤレスリアにはハイトスピーカーと、リア用のビームフォーミングスピーカーを搭載している。つまり、BAR 1000のワイヤレスリアは、リアスピーカーとして音を出すだけでなく、天井に反射させる事で“リアハイトスピーカー”の役割を果たしていた。

BAR 800はこれが無くなり、ハイトはバースピーカーに内蔵しているフロントハイトだけになっている。ここが大きな違いだ。

前述の通り、別体のサブウーファーはBAR 800とBAR 1000で共通。サイズは305×305×440mm(幅×奥行き×高さ)と、サウンドバーにセットでついてくるサブウーファーとしてはかなり“ガチ”なサイズ感。内部もパワフルで、300Wのハイパワーアンプを搭載する。

なお、サブウーファーもワイヤレス接続なのでスピーカーケーブルは不要。しかし、バッテリー内蔵ではないので電源ケーブルの接続は必要だ。なお、上記のユニット数の違いをまとめると以下のようになる。

  • BAR 800:バー本体(8基)+リアスピーカー(2基)+サブウーファー(1基)=計11基
  • BAR 1000:バー本体(10基)+リアスピーカー(4基)+サブウーファー(1基)=計15基

細かな違いとしてBAR 1000はDolby Atmos、DTS:Xのどちらにも対応しているが、BAR 800はDTS:Xには対応していない。また、HDMI入力の数が異なっており、BAR 1000はHDMI eARC×1、HDMI入力×3を備えているが、BAR 800はHDMI eARC×1、HDMI入力×1と、HDMI入力の数が少なくなっている。

BAR 800付属のリモコン

セットアップはアプリで手軽に

BAR 800は機能も豊富だ。

デュアルバンドWi-Fiを内蔵し、 AppleのAirPlay 2や、GoogleのChromecast built-in、AmazonのAlexa Multi-Room Musicにも対応。スマホから、音楽配信サービスの楽曲を指定し、BAR 800から再生させる事も可能。Bluetooth受信もできるので、スマホやタブレットとも手軽に連携可能だ。音声アシスタントはAlexa、Googleアシスタントをサポートする。

機能が豊富だと使い方も難しそうだが、実際に使ってみるとそんなに難しくない。セットアップは「JBL ONE」というアプリを使うのだが、BAR 800の電源をONにすると、しばらくしてJBL ONE側がBAR 800を認識。設定をするか? と質問される。

簡単なセットアップが終わると、サウンドキャリブレーション機能がスタート。アプリの指示に従いながら、ワイヤレスリアの置く場所を変えつつ測定ボタンを押すと「キュインキュイン」という測定音が流れ、2、3分でキャリブレーション完了。設置した環境にマッチするように、音を最適化してくれる。

セットアップ中のアプリ画面

接続端子は、HDMI eARC、HDMI入力、光デジタルを各1系統備。HDMI eARC/ARC対応するテレビがあれば、HDMI eARC端子とHDMIケーブル1本で接続するだけ。テレビのサウンドをBAR 800から再生できる。

残りのHDMI入力には、ゲーム機を接続したり、AmazonのFire TVやBDプレーヤーなどを接続するのに便利だろう。

背面端子部

あとは映画やゲームを楽しむだけ。音楽再生にも使え、スマホの「JBL ONE」からAmazon Music HDにアクセスして、ハイレゾ楽曲や、Dolby Atmosの音楽を再生する事も可能だ。サウンドバーというと、「映画を見る時に活躍する」イメージだが、通常のテレビ番組も、ゲームも、音楽配信も楽しめる、“リビングに置いてあるコンポ”みたいな感覚で使える製品だ。

ワイヤレスリアだらかこそ味わえる、部屋がワープしたような臨場感

なにはともあれ、映画を再生してみよう。

まずはUHD BDプレーヤーや、Fire TV Cube(第3世代)を接続して、「トップガン マーヴェリック」や「ラ・ラ・ランド」、「すずめの戸締まり」などを再生した。

BAR 800。ワイヤレスリアをドッキングしたまま試聴開始

ワイヤレスリアの分離が一番気になるところだが、実はBAR 800は分離しなくても使える。もちろんリアルなリアサラウンドは味わえないが、独自のMultiBeamTMテクノロジーを搭載しているので、反射も利用した広がりのある再生はワイヤレスリアを分離しなくてもある程度楽しめる。

65型のテレビと組み合わせて鑑賞していたが、大型テレビの画面を越える範囲までしっかりと音場が広がる。“画面から音が出ている”という感じではなく“前方の空間全体が映画の世界になったような”感覚。これぞまさに臨場感だ。

サウンドの特徴は「クリアかつストレート」だ。サウンドバーという製品は、小さな筐体に沢山のユニットを登載するので、どうしても音の抜けが悪かったり、強烈なユニットの振動が筐体に伝わる事でボディが“鳴いて”しまい、モワモワした不明瞭な音になる製品が多い。

しかし、BAR 800のサウンドはそれに一切当てはまらない。小音量からボリュームを上げていっても、音のクリアさ、明瞭さがまったく低下しない。セリフやSE、BGMなど、それぞれの音がしっかりと描きわけられているので、聴いていて気持ちが良く、映画の世界に入り込みやすい。

また、筐体の近くに音が留まっている感じも無く、1つ1つの音がパワフルに突き抜け、空間に気持ちよく張り出していく。そのため、しばらく鑑賞していると、テレビの下のサウンドバーから音が出ている事を忘れてしまう。

ワイヤレスリアを分離。バッテリー内蔵なので様々な場所に置きやすい

バー状態でしばらくサウンドを楽しんだ後で、いよいよ、ワイヤレスリアを分離する。

バッテリー内蔵なので設置場所の自由度は高く、キッチンのカウンターや、ソファの背もたれなど、ちょっとしたスペースに設置できるのが超便利。ちなみに、分離した状態では充電端子などが見えてしまっているが、それを隠すカバーまで付属している。至れり尽くせりだ。

バッテリー内蔵なので様々な場所に置きやすい
端子を隠すカバーも付属しているので、分離後のデザイン性も損なわれない

ワイヤレスリアの効果は絶大だ。背後から、しっかりと音像を持った音が聴こえてくるため、今まで「前方から包まれる」感じだったサラウンド空間が、「部屋まるごと映画の世界にワープ」したような感覚にグレードアップする。背後からの音だけでなく、天井からの反射音もしっかりと認識できるので、「空間全体が映画の世界」という印象がより深くなる。

例えば「トップガン マーヴェリック」の冒頭、バイクでやってきたマーヴェリックが、マッハ10に挑戦する計画の中止を知らされるシーン。飛行機のハンガー内で喋っているのだが、声の反響が、背後や上からも聞こえてくるので「ああ、スゲェ広い空間で喋っているんだな」というのがサラウンドでしっかり描写される。

続いて、ダークスターの離陸シーン。エンジンの轟音が頭上を通過し、少将が砂まみれになるが、ダークスターの音像が頭上を超えていく移動感が明瞭。さらに、巻き上がられた砂が、「サァー」っと背後に降り積もる細かな音までしっかり聞き取れる。シアターシステムとしてかなりのクオリティだ。

「ラ・ラ・ランド」、夕暮れの丘でのダンスシーン。躍動感溢れる歌声、BGMをしっかり再生できているのはもちろんだが、歌が一瞬終わった時に、眼下に広がる街に流れる風の「コォオ……」というかすかな音や、周囲に広がる虫の声といった、自然の細かな音がしっかりと描写できている。これが「屋外で歌っている」という映像に、しっかりとしたリアリティをプラスしてくれる。

「すずめの戸締まり」でも、微細な音にドキッとさせられる。冒頭の「ミミズ」が吹き出すシーンは、サブウーファーの中低域が、重く、パワフルに描写してくれて迫力満点。一方で、朝食のシーンで食器が触れる音、弁当箱を閉める時のプラスチックの音、すずめが自転車の鍵を外す時の「ガキン」という金属質な音など、微細な音が、埋もれず、非常にリアルに聞き取れる。日常生活でよく耳にする音だからこそ、その音がリアルかどうかが瞬時に判断できる。もし、スピーカー側で音に色付けがあったら「ママチャリの音ってこんな音じゃないよね」と、瞬時に我に返ってしまうが、BAR 800はそこがリアルなので、自分もママチャリに乗った気分で鑑賞できる。細かいけれど、大切な部分だ。

全体のバランスが良いので音楽を聴くスピーカーにもなる

もう1つ感心するのが、サウンドバーとサブウーファーの繋がりの良さだ。

これが悪いと、「横に置いたサブウーファーがボンボンと響き」「サウンドバーからはスカスカした高域だけ」というような、明らかに「音が出ている場所の違い」がわかってしまうのだが、BAR 800は繋がり、融合感がある。

例えば「グレイテスト・ショーマン」の「Never Enough」では、オーケストラの雄大な低音と、ジェニー・リンドが歌い上げる中高域がキレイに繋がり、もっと巨大なスピーカーで聴いているような感覚を覚える。

この繋がりの良さであれば、映画だけでなく、2chの音楽も楽しめそうだと、Fire TV CubeからAmazon Music HDアプリを呼び出し、「ジャック・ジョンソン/Better Together」や「米津玄師/KICK BACK」などを再生してみたがドンピシャ。アコースティックなサウンドにふわっと包み込まれる気持ち良さや、打ち込みの鋭い電子音が飛び交うような楽曲の気持ち良さ、どちらも的確に表現できている。これは、音楽を聴くスピーカーとしても満足度が高い。

ゲームも楽しそうだと、Nintendo Switchで「スプラトゥーン3」をプレイしてみたが、これも凄い。

これはインクを塗り合って戦うゲームなのだが、塗ったインクの中に隠れられるのが特徴。インクの中で息を潜めて、敵の背後をとって攻撃! なんて事もできるため、「どこに敵が潜んでいるのか?」を注意しながらプレイしなければならない。

ただ、微細な音をクリアに描写するBAR 800でプレイすると、敵が近くで潜んでいる時に聞こえる「ポコポコ」という泡の音が、しっかり聞き取れるため、「そこにいるな!」と、先手を取って攻撃できる。テレビ内蔵スピーカーだと、なかなかこうはいかない。

映画やゲームも楽しいが、普通のテレビ番組もグッと魅力が高まる。

街をブラブラしながら、人気料理屋に入ってごはんを食べる……よくある、グルメレポ的な番組も、BAR 800で再生すると、男性ナレーターの低音がドッシリと深く沈み、安定感があり、「あぁ~さすがプロ、良い声だなぁ」とうっとりしてしまう。道路を通過する車の音や、信号機の音などもリアルに聞き取れ、音場も広大なので、本当に自分も外にいるような感覚だ。グルメ番組で“臨場感”なんて考えた事もなかったが、そのおかげで番組自体から目が離せなくなる。

もっと言えば、番組の合間に流れるCMすら高音質。保険のCMで、クイズ形式だったのだが、「ババンッ!」という出題のSEや、回答時「ピンポーン」がメチャクチャクリアに、トランジェント鋭く描写されるので、つい音に引っ張られて画面を見てしまう。「良い音には力がある」というのを、改めて実感できるサウンドバーだ。

ワイヤレスリアで10万円以下、コストパフォーマンス最強BAR 800

映画の鑑賞前にワイヤレスリアを分離し、部屋内に設置。映画を見終わって、リアをサウンドバーにドッキング……という、一連の作業をしてみたが、結論から言うと「メチャクチャ楽」だ。

これがもし「鑑賞前に充電を」とか「分離したスピーカーに電源ケーブルを刺して……」など、手間がかかるサウンドバーであれば、きっと面倒くさくなって、いずれサウンドバーにドッキングしたままになってしまうだろう。

しかし、BAR 800の場合は、本当に鑑賞前に分離し、鑑賞後にカチッとドッキングすれば終わり。労力と呼ぶほどの面倒ではなく、むしろ「これから映画を楽しむぞ」という儀式として気分が盛り上がる。

ちなみに、ワイヤレスリアをサウンドバーに戻し忘れた場合、「映画を鑑賞したいのにバッテリーが充電されていない!」となる可能性もあるが、実はワイヤレスリアには給電・充電用のUSB-C端子まで登載されている。ワイヤレスリア自体、最近登場した技術だが、最初からここまで高い完成度で実現できているのは見事と言うほかない。

給電・充電用のUSB-C端子まで登載されている

上位モデルの「BAR 1000」(実売143,000円)と比べると、全体的なスケール感や、天井からの音のリッチさなどは確かにBAR 1000の方が上だ。ただ、BAR 800でも、リアルな背後からのサラウンドや、上から包み込まれる臨場感はしっかり味わえるので、ぶっちゃけ「これでいいんじゃね?」感がある。

それでいて、価格は10万円を切る実売99,990円と、コストパフォーマンスの高さは凄い。他社の高級サウンドバーは、10万円以上しても、リアルなリアサラウンド再生ができなかったり、対応していてもリアが別売で、合計すると20万円、30万円という製品も珍しくない。

全部がセットで99,990円。それでいて、他社にはない収納・分離・充電のスマートさも兼ね備えている。JBL BAR 800は、クオリティと価格、使い勝手の両面で、新時代サウンドバーの“定番”になると言っても、過言ではないだろう。