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これが有機ELテレビの新基準。LG「G3」が2023年のナンバーワンである理由
- 提供:
- LGエレクトロニクス・ジャパン
2023年12月26日 08:00
今年からスタートした「AV Watchアワード」は、その年に登場した製品から、読者に本当にオススメしたい優れた製品を決めるアワードだ。“2023年のNo.1テレビ”を決めるべく、4K有機ELと4K液晶テレビから10機種を集め、筆者を含めた3名の選者による主観評価と、測定データを基に大賞モデルを選定。LGエレクトロニクスの「OLED65G3PJA(以下65G3)」が、有機ELテレビ大賞を受賞した。
本稿では、“なぜ65G3が有機ELテレビ大賞に相応しい製品だったのか”を、審査の内容や測定データも交えながら、より深掘りする。さらに、よりディープに楽しむための使いこなしと、手軽に好みの画質にセッティングする機能も紹介する。
無駄のないミニマルデザイン。スイーベル機能も◎
審査の前にまず目を奪われたのは、無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインだった。
上左右6.2mm、下11.1mm(65型の場合)という極細ベゼルの周りを、精悍なメタルフレームが取り囲み、その薄さは僅か24.3mm。これは壁掛け需要の高い海外市場を意識した仕様で、専用の薄型マウント金具を使えば、壁にピタリと密着させることができる。
これをLGでは「One Wall Design」と呼んでいるが、正面から見ると、まさに画面だけがそこにあるといった感じで、どこにスピーカーがあるのか分からないほどだ。
ちなみに、日本国内向けには、本体と意匠を合わせたソリッドなセンターテーブル型テレビスタンドが同梱される。昨今はテレビの大画面化に伴い、画面の両サイドに脚が付くケースが一般的になってきたが、それはつまり、テレビと同じくらいの幅のテレビボードが必要になるということだ。
その点、G3シリーズは77型でもセンターテーブル型を採用。スイーベル(首振り)機能まで付いていて、設置の自由度は両サイド型とは比べ物にならないほど高い。今回のAV Watchアワードでは審査項目に入ってはいないが、個人的にはこのテレビスタンドを含めたデザインも高く評価したい。
“有機ELは暗い”はもう古い。常識を覆したLGの最新技術
テレビの電源を入れると黒バックにLGのロゴが浮かび上がった。眩しい! この突き抜けるような明るさは従来の有機ELテレビとは明らかに次元の異なるものだ。
この明るさを実現したのが、通称「METAテクノロジー」と呼ばれるマイクロレンズアレイ(MLA)を用いた技術である。
有機ELパネルの前面に約5.9ミクロンという微細な凸レンズを、1ピクセルあたり3,600個以上、合計約300億個(65型の場合)敷き詰めることで、視野角の向上だけでなく、従来は内部反射によって失われていた光まで効率的に取り出すことに成功。
ここにOLED evoパネルと、独自のブライトネスブースターマックス制御を組み合わせることで、全白時は昨年のスタンダードモデル比で輝度70%アップ。ピーク輝度に至っては、ついに2000cd/m2(APL3%時)の大台を突破した(メーカー公称値)。
我々も株式会社エディピットの協力の元、キャリブレーションツール「CalMAN Ultimate」を用いて独自に測定してみたが、測定方法に若干の違いはあるものの、「シネマダーク」モードの全白時が197cd/m2、APL10%のピーク輝度が1331cd/m2と、概ねメーカー公称値を裏付ける結果となった。
これまで「明るい部屋なら液晶テレビ、暗い部屋なら有機ELテレビ」というようなことが平然と言われてきたが(筆者は必ずしもそうは思わないが)、G3シリーズは「明るい部屋でも有機ELテレビ、暗い部屋でも有機ELテレビ」という新時代の幕開けを高らかに宣言してみせたわけだ
工場出荷状態でも、ダントツの色精度。測定値はマスモニ並み
しかも、65G3はただ明るいだけの有機ELテレビではない。以下の測定データをご覧いただきたい。
専門的な話になるので詳細は割愛するが、「ガンマ」の測定ではHDR10の基準カーブであるSMPTE 2084のEOTFをほぼ正確にトレース。これは0%の黒から100%の白まで、明暗差を正確に描き分ける能力があることを示している。
さらに、「RGBバランス」の測定でもホワイトバランス(D65)の乱れはほとんど無し。その結果、導き出されたグレースケールの精度(デルタエラー)は平均0.5という驚愕の数値となっている。
この「デルタエラー平均0.5」という値がどれほど凄いのかというと、一般的に人間の視覚では3.0を超えると色の違いが認識できるとされていて、それを知覚的に判別できない1.0以下に補正するのがキャリブレーションという作業になる。
今年のAV Watchアワードで測定した10機種のなかで、工場出荷状態で1.0以下だったのは、本機65G3と、リファレンスとして用意したマスターモニターのソニー「BVM-HX310」(396万円)のみ。とりわけ平均0.5という精度は、民生機ではそう簡単には到達できない領域であり、今回測定した65G3(もちろん市販品)が出荷時に完璧なキャリブレーションが施されていることを意味している。
主観評価がメインの日本とは違い、こうした測定結果が重要視される欧米が主戦場のLGにとって、この測定結果は偶然ではなく必然なのだ。
業界トップの低遅延性能。HDMI全入力で4K120p対応はLGだけ
衝撃の測定結果はこれだけではない。昨今ではゲームプレイに大画面テレビを使う人が増えているが、LGのテレビは以前より、NVIDIA G-SYNC、AMD FreeSync、VRR、ALLMといったゲーミングモニターではお馴染みの機能にいち早く対応してきた。
それが今回、ゲームプレイにおいて何よりも重要視される応答速度においても、4K/60fps時で1.5ms、2K/120fps時で0.9msというブッチギリの最速記録を叩き出した。
映像モード | 入力遅延 4K60p | 入力遅延 2K120p |
---|---|---|
ゲームオプティマイザ 入力遅延の防止「標準」 | 9.1ms | 0.9ms |
ゲームオプティマイザ 入力遅延の防止「ブースト」 | 1.5ms | 0.9ms |
さらに、4系統全てのHDMI 2.1端子が4K/120fps、4K/50fpsの入力に対応するだけでなく、ゲーミング用Dolby Visionの120Hz、1440pの120Hz/HDR、VRRの48~120Hz/HDR対応といった専用モニターさながらのスペックを備え、ゲーミング用大画面テレビとしてもLGが独走状態の様相を呈している。
パネルの性能を最大限に引き出す、独自のAIプロセッサ
これらの正確なモニター性能と、多機能なゲーミング性能を実現しているのが、リアルタイムAIプロセッサー「α9 AI Processor Gen6(以下α9 Processor)」だ。
いくら良いパネルを採用しても、それを駆動するエンジンがポンコツでは、宝の持ち腐れ。LGはこの独自開発のパワフルなプロセッサーを日々進化させることで、パネルとエンジンの両輪で世界市場における熾烈な覇権争いを勝ち抜いてきた。
今回のアワードでも、有機EL部門の5機種中4機種がMLA-OLEDやQD-OLEDといった次世代パネルを採用していたなかで、65G3が大賞に選ばれたのは、モニターとしての性能(測定結果)と、テレビとしての画質(主観評価)を高度に両立させたα9 Processorの功績によるところが大きい。
特に「AI映像プロ」と呼ばれるプロセスでは、AIによるディープラーニングによって映像ジャンルと映像品質を瞬時に判別し、1フレーム毎にアップスケーリング、ノイズリダクション、超解像、トーンマッピング、エンハンスといった信号処理を実行。
なかでも「OLEDダイナミックトーンマッピングプロ」と呼ばれるトーンマッピング処理については、1フレームの画をさらに20,000以上のエリアに細分化し、高輝度なMLA-OLEDパネルに相応しい明るさとコントラストの調整を行なっているという。
地デジ画質が飛躍的に向上。メリハリの効いたチューニング
この恩恵を最も受けたのが、地デジの画質だろう。放送開始から20年経つ地デジは、MPEG-2という古い圧縮コーデックに低ビットレート、さらにはフルHDに満たない1440i(インターレース)という三重苦を抱えている。このノイジーで低解像度な映像を、いかにして4Kテレビに相応しい画質にアップコンバートするか。これについては長らく国内メーカーのお家芸であり、2010年に日本市場に本格参入したLGにとって、その背中は遠かった。
実際、「地デジ画質がちょっと……」という理由でLG製テレビが購入候補にならなかった読者もおられるかもしれないし、我々3人の審査員のあいだでも、年々改善されてはいるものの、まだまだ国内メーカーに一日の長があるだろうというのが共通認識だった。
ところがである。今回、5台の有機ELテレビで地デジ映像をシュートアウトしてみると、LGの地デジ画質が飛躍的に向上していることが分かったのだ。
もちろん、元々の映像品質が良いわけではないから、どの部分を重視するかによって評価は変わってくるが、持ち前の明るさとコントラストを活かしたメリハリのあるチューニングによって、様々なネガティブ要素を巧くカバーした65G3の地デジ画質は、個人的にはひときわ際立って見えた。
そして、後日開かれた審査員会議でも、測定結果の絶対的なアドバンテージに加えて、3人全員がLGの地デジ画質の頑張りを高く評価したことがダメ押しとなり、今年の有機EL大賞を65G3に贈ることが全会一致で決まった。
明るすぎる場合は「ピクセルの輝度」で調整がオススメ
もちろん、惜しかった点もある。それが「シネマダーク」モードや「Filmmakerモード」のプリセット画質だ。
デルタエラーの値が平均0.5なのに何故? と思われる方もおられるだろう。しかし、YouTubeにアップしたマスターモニターとの比較動画でも明らかなように、実際にUHD BDのコンテンツを再生すると、BVM-HX310よりも全てが明るく表示されてしまう。
これはディレクターズインテントの観点からすると“明るすぎる”状態だ。原因は定かではないが、映画再生においても明るい映像を好む傾向にある北米市場を意識した仕様なのかもしれない。
幸い気になるのは明るさだけであり、色相などはそれほどズレていないため、設定メニューから「OLEDピクセルの輝度」を100から40くらいに下げるだけで満足のいく画質になった。ただ、どうせならば測定結果をそのまま反映したモードも用意してほしいところだ。
誰でも簡単に、自分好みの画にできる「パーソナル・ピクチャー・ウィザード」
LGのテレビならではの画質調整方法として、「パーソナル・ピクチャー・ウィザード」という機能がある。これはAIが次々に提示する6枚の画像の中から、ユーザーの好みに近いものを選んでいくことで、“あなた好みの画質”が得られるという魔法のような機能だ。
そんなことで本当に画質調整ができるの? と思われるかも知れないが、計算上は8,500万通りの分析が可能なのだという。
筆者も実際に試してみたが、最も原画に忠実と思われる画像を選び続けた結果、プリセット値では少し青味がかって発色も濃い目だった「標準」モードの画調が、色温度と彩度が適度に下がって落ち着いたナチュラル志向な画質に早変わりした。
あくまでベースとなるのは「標準」モードなので、シネマ系モードの追い込みに使えるわけではないが、「画質調整なんてやったことがない」というライトユーザーには、放送やネットコンテンツを視聴する際に是非試してほしい機能だ。
音質についても触れておこう。前述したとおり、外観からはスピーカーがどこにあるのか判別できないくらいだが、資料によると4.2ch分のスピーカーがダウンファイアリング(下向き)方式で内蔵されているようで、これをα9 Processorの「AIサウンドプロ」処理によって、ステレオ音声であっても9.1.2chにバーチャルサラウンド化して再生している。
付属のマジックリモコンの内蔵マイクを使ったオートチューニングも可能で、実際の内蔵スピーカーの音質も決して悪いものではない。ただ、やはり物理的な限界が感じられるのも正直なところだ。
しかし、この点についてLGの考え方は明快で、「本当に音響にこだわるユーザーならどんなテレビを使っても内蔵スピーカーでは満足しないからサウンドバーを導入されますよね。それであればということで、デザインや軽量を徹底的に追求しました」というのが彼らの回答だ。そのために同社製サウンドバーやBluetoothスピーカーと、テレビ内蔵スピーカーを連動させる機能も備わっている。
そんなスタイリッシュな大画面テレビの追求が結実したのが、世界初の4K/120Hzワイヤレス有機ELテレビ「OLED M3」シリーズだ。
各種入力端子やチューナー部を別筐体の「ZeroConnect Box」に集約し、そこから60GHz帯を使ってテレビ本体へ膨大な映像・音声データをワイヤレス伝送する。スピーカーはおろか、ケーブルが露出することすら是としない彼らの美学を、高度なテクノロジーによって実際の製品として昇華させている。