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“縦置きできる”FIIO「K19」で、狭い机で最強デスクトップオーディオしてみた
- 提供:
- エミライ
2024年7月12日 08:00
「狭い机だけど、しっかりとしたデスクトップオーディオを楽しみたい」と思っている人は多いのではないだろうか。
筆者も同じように考えているひとり。現在、主に使っているデスクの天板サイズは80×50cm(幅×奥行)で、ノートPCとモニター、キーボードなどを置くと、残されるスペースはわずか。そんな限られたスペースに置ける音の良い製品があれば……と思っていたところに、ぴったりな製品が登場した。それがFIIOのデスクトップオーディオシステム「K19」だ。
K19がなぜ“狭いデスクにぴったり”なのか、写真を見れば一目瞭然、“縦置き”できるのだ。しかも、その薄型ボディに最新のDACチップやHDMI入出力などパワフルなスペックが詰め込まれている。「これがあれば、小さな机でも十分な音楽体験ができるのでは」と実機を借りてみたところ、「これさえあれば最強だろ」という最強スペックの持ち主だった。
薄型ボディに高性能パーツをてんこ盛り
K19は、FIIOのデスクトップオーディオシステム「Kシリーズ」のフラッグシップモデルとなるUSB DAC内蔵ヘッドフォンアンプ。店頭予想価格は247,500円前後、カラーはBlackとSilverの2色展開となる。今回はSilverを借りている。
薄型なのに20万円以上するので驚く人も多いだろう。ただ、中身が凄い。DACチップには、ESS製「ES9039SPRO」を2基搭載。性能を最大限に活かすために、左右のチャンネルに1基ずつ使うことで高出力と超低歪みを両立している。さらに、最大8,000mW@32Ωの高出力を発揮するFIIOとTHXの共同開発アンプ回路技術「THX-AAA 788+」アーキテクチャも採用。片チャンネルに計4基のアンプ回路を搭載する音質を追求する贅沢仕様となっている。
ちなみに、これまでのKシリーズでは「K9 Pro ESS」の最大出力が2,100mW@32Ω、「K9 AKM」で2,000mW@32Ωなので、K19の超高出力ぶりが分かる。薄型筐体にも関わらず、これで鳴らせないヘッドフォンはないだろうといえる“超本気”なヘッドフォンアンプなのがわかる。
高出力なだけでなく、筐体内も凝っている。約36.7mmの薄型ボディだが、筐体内でデジタル回路とアナログ回路を完全に絶縁するべく、各回路を違う2つの基板に配置し、音質に悪影響を及ぼす相互干渉を排除。またDSPモジュール部とデジタルデータ処理部をアルミニウム合金で分離、DAC部、ヘッドフォンアンプ部といった主要な回路ブロックにもシールドを施すことで、クロストークや外部ノイズの干渉を極限まで抑えている。
電源は、低ノイズ、高効率、長寿命を誇る産業用レベルの新型40W電源を搭載。外部DC電源からの給電もできるので、より高性能なDCパワーサプライと組み合わせてアップグレードすることもできる。
入出力も充実しており、6.3mmアンバランス出力や4.4mmバランス出力、4ピンXLR出力を前面に、光デジタル、同軸デジタル入出力、RCAライン出力などを背面に搭載。ヘッドフォンアンプとしてはもちろん、スピーカー用のアンプは内蔵していないが、アクティブスピーカーと組み合わせることも可能だ。USBポートはType-C。Bluetooth受信機能を使ってBluetoothレシーバーとして使うことができる。
さらに、K19では新たにHDMI入力、ARC対応のHDMI出力を搭載。テレビなどとHDMIケーブルで接続すれば、テレビ番組や映像配信サービスのコンテンツ、ゲームなど、映像コンテンツを高音質で楽しむこともできる。
パワフルなスペック面も特徴的だが、筐体のデザイン・サイズも特筆すべきポイント。筐体はアルミダイキャスト鋳造のシャーシをアルミニウム合金製の外部フレームで挟む構造で、外部フレームには放熱用のハニカムメッシュデザインが施されており、見た目にも高級感がある。
さらに金属製スタンドが付属しており、縦置きも可能。同じKシリーズのヘッドフォンでも付属スタンドを使って縦置きできるものがあるが、K19にはスタンドが2個付属しているほか、スタンドを本体にネジ止めする仕様なので、より安定感のある縦置きができる。縦置き時にはヘッドフォンスタンドとして使えるアダプターも付属する。
高級感ある筐体はモニター裏に置けるコンパクトさ
実際に本体を手に持ってみると、コンパクトながら“身の詰まった”重さを感じられる。付属の金属製スタンドはしっかりとした剛性感があり、脚も広く、底面には滑り止めシートも貼り付けられているので、縦置きしてもフラつきやガタつきを感じることは一切なかった。
また細かいポイントだが、本体正面の電源マークやVOLUME、MENU/INPUTといったロゴ・文字も縦置き時に読みやすい向きに印字されているので、縦置きしてもデザインが崩れるといったこともない。
縦置きの最大の魅力は、横置きと比べて設置時のフットプリントが少なくて済み、省スペース設置ができるところ。実際に設置してみても、筆者がふだん使っている狭い机でも、モニター裏のデッドスペースを活用してK19を置くことができた。
本体に備えられているふたつのノブも適度な重さで、クリック感もあるのでとても操作しやすい。ディスプレイ表示も鮮やかで特に見にくいと感じることはなかった。ちなみにディスプレイ表示は、デフォルトの状態では縦置き時に見やすいよう表示されるが、90度、180度、270度と設置状況にあわせて回転させることも可能。
肝心の音質についても妥協はない。今回はMeze Audioの有線ヘッドフォン「99 CLASSICS」をバランス接続し、USBケーブルで接続したMacBook Air経由でApple Musicを使って試聴した。
「ダイアナ・クラール/月とてもなく」では、広いサウンドステージに伸び伸びと音が広がる音場の広さはありつつ、アコースティックベースやピアノ、ボーカルの迫力がしっかりと味わえる音像の臨場感が両立されており、コンサートホールの最前列で演奏を味わっているような感覚を味わえる。
また冒頭のアコースティックベースは、ブルブルと震える弦が、わずかにベースのボディをかすっているような細かい音、ボーカルのスッと息を吸うブレスの瞬間や口が動く瞬間など、細かい音もしっかりと聴き取れる。
「米津玄師/lemon」では、ボーカルの下ハモの描写力が印象的。男性アーティストならではのお腹に響くような低音がきっちりと描かれ、メインボーカル自体の厚みもまして感じられる。また低音に迫力がありつつも、ボーカル自体の解像感は高く、クリアな歌声が耳に飛び込んでくる。
女性ボーカルとして「YOASOBI/勇者」も聴いてみると、ikuraの伸びのあるボーカルや中高域はクリアで伸びがありつつ、こちらも低域の厚みが増しており、楽曲自体のスピード感や迫力がアップ。思わず「ふだんスマートフォンと完全ワイヤレスイヤフォンで聴いているのは違う曲なのでは?」と思ってしまうほどだった。
K9 AKMやK9 Pro ESSを超えるサウンドを薄型筐体で実現
ここで気になってくるのは、これまでFIIOの据え置きヘッドフォンアンプ/DACの最上位モデルに位置していた「K9 Pro ESS」(実売148,500円前後)との違い。K9 Pro ESSは、ESS製「ES9038PRO」のデュアルDAC構成で、K19と同じメーカーのDACを搭載している。
以前試聴したK9 Pro ESSは、切れ味鋭いシャープなサウンドと、タイトで量感ある低域が印象的だった。一方、今回のK19は、K9 Pro ESSと比べると、ややウォーム寄りのサウンドで、「宇多田ヒカル/BADモード」など女性ボーカルの艷やかさ、表現力はK19のほうが一枚上手に感じられる。どちらかと言えば、同じくウォーム寄りのサウンドだった「K9 AKM」(実売89,100円前後)に近い印象だ。
ただ、ブレスなどに艷やかさが交じるウォーム寄りのサウンドながら、口の動きも聴き取れそうな解像感の高さも兼ね備えている。低域の沈み込みやタイトさなどもK9 Pro ESSから、さらに進化している印象で、「宇多田ヒカル/BADモード」ではズンッ! とタイトなベースラインが楽曲全体を引き締めつつ、スピード感も演出してくれる。
「米津玄師/地球儀」では、温かみが感じれる米津のボーカルが、広い空間にフワッと広がりつつ、ピアノのハンマーが“コクッ”と動く音や、ギシギシという軋み音など、細かい音もしっかりと描写される。
K9 AKMのウォーム寄りなサウンドと、K9 Pro ESSのタイトな低域・解像感の高さを兼ね備えつつ、その表現力を数段高めたのがK19という印象で、「このサウンドを、この薄型筐体で実現しているなんて……」と正直驚いた。
ハイエンドヘッドフォンとも組み合わせてみた
最大8,000mW@32Ωの高出力を誇り、音質、筐体の外観・仕上げともにフラッグシップモデルに相応しいレベルになっているK19。私物の99 Classicsでも十分なサウンドを味わえたが、「ハイエンドヘッドフォンを組み合わせたら、どんな音が聴けるんだろう」という興味が湧いてきた。
また、ハイエンドのヘッドフォンアンプでは、同じくハイエンドのヘッドフォンを組み合わせる人も多いだろう。そこで、ゼンハイザーからハイエンドの密閉型ヘッドフォン「HD 820」(直販319,000円)を借りてK19と組み合わせてみた。
HD 820は、ゼンハイザーが“オーディオ愛好家向けの新たなベンチマークになる”と謳っているハイエンドモデルで、56mm径のリングラジエーターダイナミックトランスデューサー(ドライバー)を搭載している。
ヘッドフォンのハウジング部分から振動板が見えるので、開放型ヘッドフォンのように思えるが、このハウジング部分にはガラスカバーがはめ込まれている。振動板の背後から出る音を、このガラスカバーの凹凸が効果的に反射させることで、開放型ヘッドフォンで音が抜けていくように減衰させ、自然な音場の広がりを実現している。インピーダンスは300Ωで、パワーのあるアンプと組み合わせないと性能を引き出しにくいモデルと言える。
そんなHD 820を、K19とバランス接続。引き続きApple Musicで楽曲を聴いてみた。99 Classicsとの組み合わせでも十分な解像感を感じられた「宇多田ヒカル/BADモード」は、さらに音のクリアさが一段アップ。ベールがさらに1枚剥がれたようなボーカルのクリアさ、各楽器の粒立ちの良さを味わえた。特に99 Classicsでは意識しないと聴き取れなかった、シンバルの細やかなリズムが自然と耳に飛び込んできた。
この楽曲は間奏部分で、さまざまな音がうねるように飛び交うのが特徴だが、K19+HD 820で聴くと、すべての音が解像感高く描写されるので、音の奔流に飲まれているような感覚を味わえる。
「YOASOBI/勇者」では、特に低域の表現力が印象的。“ドドンッ!”という量感あるドラム/ベース音が広い音場にしっかり広がりつつ、タイトさも持ち合わせているので、ボワボワと滲むことなく、ボーカルを邪魔しない。K19の高い駆動力によって、インピーダンスの高いHD 820の振動板がしっかりと動いているなと感じる部分だった。
同じ楽曲たちを、手持ちの携帯音楽プレーヤーやUSBバスパワーで駆動するヘッドフォンアンプ+HD 820でも聴いてみたが、どちらもK19で味わったような解像感の高さ、低域の量感・タイトさには及ばず、HD 820を鳴らしきれていない印象だった。
ちなみにK19のゲイン設定はLow、Medium、High、Super High、Ultra Highの5段階で、HD 820は、Super Highでボリューム60、Ultra Highでボリューム55で十分な音圧に感じられた。
テレビとつないでゲーム・配信も高音質に
上述したとおり、K19にはHDMI入出力が搭載されており、テレビなどとつなげることも可能。今回は同じくFIIOから発売されているアクティブスピーカー「SP3 BT」と組み合わせて、ゲームなどを高音質で味わってみた。
SP3 BTは、ブランド初のアクティブスピーカー「SP3」のコンパクトな筐体サイズはそのままに、Bluetooth機能の内蔵、USB Type-Cや同軸・光デジタルなどの入力インターフェースを拡張するなど強化を図ったモデル。店頭予想価格は64,900円前後。
SP3 BTに付属している3.5mm to RCAケーブルと、K19に付属している3.5mm to 6.3mm変換アダプターを使って、K19本体前面にある6.3mm出力に接続した。ケーブルの取り回しに少し苦労するが、追加ケーブルなど不要で組み合わせられるのは嬉しいところ。もちろん別途RCA to RCAケーブルを用意すれば、よりスマートに配線することも可能だ。
今回はLG製テレビのeARC対応HDMIポートと、K19のARC対応HDMIポートをHDMIケーブルで接続。テレビにつないだPlayStation 5で「ELDEN RING」をプレイしてみた。
ELDEN RINGは、いわゆる“死にゲー”で、ダンジョンの死角で敵キャラが待ち伏せていることも多いゲームだが、K19+SP3 BTでは、テレビ内蔵スピーカーよりも音の解像感が高いため、隠れている敵の息づかいをしっかり聴き取ることができる。音の定位感も良いので、どこに敵が隠れているのかを音だけで判別することができるので、待ち伏せで“不意打ち死”することが極端に少なくなった。
音場の再現力も高く、広大なフィールドを走り回っているときは風でなびく木々や雨粒の音、洞窟のようなダンジョンでは自分のキャラクターの足音や装備している武器・防具がカチャカチャとぶつかる金属音も聞き取れ、ゲームの世界観に没入できる。
そのほかU-NEXTやNetflixなどで映画やドラマも視聴したが、いずれもセリフはくっきりと聴こえつつ、カーチェイスや銃撃戦などのアクションシーンでは臨場感あるサウンドを味わうことができた。
ちなみにSP3 BTはコンパクトなサイズながら、カーボンファイバーを使った3.5インチのウーファーに、25mmシングルドームツイーターを搭載した2ウェイ仕様の本格派。各ユニットを個別にTexas Instruments製のD級アンプモジュール「TPA3118」で駆動している。
Bluetoothチップには、Qualcomm製QCC5124を採用。デュアルDSPとデュアルコア設計により、ハイビットレートの音源でも確実で安定したパフォーマンスを実現している。
コーデックは、LDAC、aptX Adaptive、aptX HDのほか、SBC、AAC、aptX、aptX-LLをサポート。LDAC接続を利用すれば、最大990kbpsの伝送ビットレートを確保し、96kHz/24bit再生が可能になる。
インターフェースは、従来のアナログ音声入力に加えて、新たにUSB Type-C、同軸、光デジタル入力をサポート。デジタル入力の対応サンプリングレートは44.1kHz、48kHz、96kHz/24bitまで。
家中どこでも活躍するオールマイティな仕上がり
K19はサウンドはもちろん、HDMI入出力をはじめとする入力インターフェースの豊富さ、設置性の高さ、金属仕上げで高級感のある筐体など、どこをとってもフラッグシップモデルにふさわしい仕上がりに感じられた。
設置性では、ネジ止め式スタンドや筐体の印字、デフォルトのディスプレイ表示向き、ヘッドフォンスタンド化するアダプターが付属するところなど、FIIOが縦置き設置を念頭に設計したことがうかがえる。特に限られた卓上のスペースを有効活用する必要があるデスクトップオーディオでは、省スペースに置けるK19との相性は抜群だった。
またHDMI入出力が搭載されたことで、より手軽に映画やドラマ、ゲームなどの映像コンテンツを高音質で楽しめるようにもなった。ヘッドフォンを鳴らすだけのヘッドフォンアンプとして見るとK19は高価だが、8,000mWという超高出力、HDMIでつなげる利便性をも兼ね備えた“全部入りアンプ”として見れば、この価格でも納得感が出てくる。
据え置きのAVアンプなどと違い、家の中で持ち歩けるサイズ・重さなので、平日は机の上に置いてデスクトップオーディオを楽しみ、週末はテレビにつないでエンタメを高音質で楽しむといった使い方もできる。デスクトップオーディオシステムのフラッグシップと位置づけられているK19だが、家中どこでも活躍するオールマイティな1台に仕上がっていた。