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マランツ「MODEL M1」惚れて自宅導入。アクセサリで進化、オールドスピーカーも鳴らす!
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- マランツ
2024年11月22日 08:00
我が家に導入したマランツ「MODEL M1」。鮮烈な出会い
いきなりだが、この原稿を自宅で書いている僕の目の前には、マランツが発売したワイヤレス・ストリーミング・アンプ「MODEL M1」(154,000円)が置かれている。2024年の秋、僕は本機を導入した。出会いから現在に至るまでの経緯を書きたいと思う。
MODEL M1との出会いは2024年の春。僕は川崎のマランツに呼ばれた。オーディオ評論の仕事を始めると、毎日さまざまなオーディオ機器に出会う。今日のように、メーカーや輸入商社に呼ばれ、新発売の製品を試す機会も少なくない。時には開発中の製品の音質や機能、デザインなどについて、企画担当者や開発者とディスカッションすることもある。
試聴室の分厚い防音ドアを開けて中に入ると、いつも製品が置いてある場所に、見慣れない小型の“ブツ”が鎮座していた。頭の中に「???」が点灯する。同席してくれた企画担当のTさんは、ニコニコしながら「新世代のマランツを担うモデルです」と教えてくれた。
1953年創業のマランツは、今でもソース機器からアンプまで発売する総合オーディオメーカーとして知られている。しかし、源流をたどると、伝説的な真空管プリアンプ「#(モデル)7」や真空管パワーアンプ「#9」など、銘アンプとして知られる製品を生み出してきた、アンプに強いブランドである。さらに、近年のマランツは売り上げが好調で、記事執筆時点でのアンプラインナップは、2,420,000円もするフラッグシップのプリメインアンプ「MODEL 10」から、5万円台の「PM6007」まで、10機種を超えている。
MODEL M1と対面した僕は少々面を食らった。想像していたマランツとは全く異なる意図のオーディオ製品だったからだ。MODEL M1は、上述したマランツのアンプ群とは全くデザインが違っていた。そもそもコンセプトが異なる。幅217mm、奥行き239mm、高さ84mmとかなりコンパクト。一般的なオーディオ製品の横幅が440mmであることを考えると、ちょうど半分の横幅だといえばわかりやすい。
小さいけれど、漂うマニアライクな匂い
巷の音楽再生事情は変化している。僕がオーディオ少年だった昭和の時代は、父親の書斎などにオーディオ機器があり、アナログからCDへの移行期だった。そこから平成を経て、2020年代の今は、ピュアオーディオ再生に加えて、リビングにオーディオ機器を設置する家庭が増えている。そして、SpotifyやApple Musicなどの定額制サブスクサービスが巷ではメインソースとなり、家族全員がスマホを持つのが当たり前の時代になった。
僕が最初にピンと来たのは、小型シャーシとデザインだった。マランツは歴史的に「ミッドセンチュリーモダン」なデザイン要素を取り入れてきたが、MODEL M1の筐体デザインはその伝統を踏襲しつつも、オーディオファイルの心を刺激する。無論、インテリアにもマッチする。丸みを帯びたラインと艶消しで手触りの良い筐体は、室内空間を壊さない。
しかし、オーディオファイル視点で見ると、放熱のため全面にメッシュが施された天面やフロントフェイス中央にはアイコニックなマランツのロゴも配置されている。ある意味、無骨さも備えたマニアライクな匂いを感じた。
そして、コンパクトな筐体ながら比較的入出力端子が豊富なことも気に入った。ネットワークはRJ45有線LANとWi-Fiに対応している。アナログ入力はRCAが1系統、光デジタル入力に加え、HDMI(eARC/ARC対応)端子を搭載しているため、テレビとも簡単に接続できる。また、ネットワーク周りは有線LANとWi-Fiに対応し、ネットワーク再生機能の「HEOS」を搭載し、Amazon Music HDやSpotifyといった定額ストリーミングサービスやハイレゾファイル再生にも対応している。
もちろん製品としての機能性だけに感激したわけではない。僕を一気に沼に引き入れたのがMODEL M1の音質だった。
マランツの試聴室では、なんとB&W社のフラッグシップラインに属する大型フロア型スピーカー「801 D4」と組み合わせたのだが、その音質は予想を超えていた。
まず感心したのは、駆動力の高さだ。801 D4に装着された、2発の250mmウーファーをしっかりとドライブし、テイラー・スウィフトなどのポップスやカマシ・ワシントンのような現代ジャズを再生しても音の立ち上がりが良かった。
さらに印象的だったのは、たとえばクラシックのピアノソナタやヴァイオリンソナタなどのシンプルな構成で聞きどころとなる、アコースティック楽器の質感表現がシャープすぎず、しなやかな質感を持っていた点だ。
無論、さらに金額の高いアンプを買えば、ここから先の世界も見えてくると思う。しかし、一昔前にはありえなかった小型筐体が奏でる再生音は、僕の期待を大きく上回るものだった。アンプ部や音質対策については後述したいが、試聴を終えた僕は「これは自宅環境でのリファレンスとして使用したい」と思い、購入の意思を伝えた。
我が家に導入。まずはデスクトップオーディオで使ってみる
マランツの試聴室での音の良さに、ある意味衝動的に購入を決めてしまったのだが、実はここ数年、エントリーから、ミドルクラスのスピーカーのレビュー用に安価なアンプを探していた。
程なくして、MODEL M1が自宅に届いた。本体のほかに電源コード、テレビと接続する際に使用する光デジタルケーブル、そして「かんたんスタートアップガイド」という分かりやすい解説書が付属している点が良いなと思った。
ということで、まずは使用中のスピーカーと組み合わせて相性を確認してみることにした。最初は、小型筐体を活かしてデスクトップオーディオ環境を作ってみる。組み合わせたスピーカーは、日本のオーディオメーカー、イクリプスから登場した「TD508MK4」だ。本機の丸みを帯びたエッジや、ミニマルで滑らかなラインがスピーカーのデザインと相性が良い。
机の上に置いたのは2本のスピーカーとMODEL M1のみ。とにかくシンプルに音楽が聴ける。
先述のとおり、ネットワーク機能HEOSを搭載しているため、サブスク音楽サービスをアンプ単体で楽しむことができる。さらに、NASやリアパネルのUSBポートに接続したUSBメモリーやHDDからのデジタルファイル再生にも対応している。
操作アプリを立ち上げ、Amazon Music Unlimitedからアメリカのジャズ/ゴスペル歌手、リズ・ライトの「Shadow」を再生した。
目の前にはリヴァーブ感の少ないボーカルがピンポイントに定位し、8センチフルレンジユニットとエッグコンストラクションのキャビネットによる位相表現の優れたTD508MK4を、MODEL M1がしっかりと下支えしている。ボーカルの声質は低音域が太く、音色も暗めだが、その表現は合格点。ハープ、ベース、パーカッションの音色が曖昧になることなく、立体的なサウンドで聴かせてくれた。
この組み合わせはスペースを取らず、Bluetoothを使ってスマホの音を手軽に楽しめるのも嬉しい。そして何より、デスクトップでスピーカーによる本格的な音楽試聴環境を作りたい方におすすめできる。
安価なブックシェルフスピーカーとも相性ピッタリ
続いて、ブックシェルフ型スピーカー、カナダ・パラダイム社の「MONITOR SE ATOM」と組み合わせた。スピーカーの価格がペア55,000円と安価なため手軽に構築できる。
デスクトップオーディオ環境でも感じたが、部屋の風景が良い。ここでは洋楽のビルボード・チャートにランクインしているオリビア・ロドリゴの「ヴァンパイア」を再生。一聴して透明感のある音で、イントロのピアノのディテールが高く、ポップス系楽曲としてボーカルの表現も秀逸。複数の低音楽器が含まれ、ダイナミクスの描き分けが求められる部分や、エレクトリックシンセサイザーのローレンジの伸びも優れており、140mm径のウーファーも問題なくドライブできている。
オールドスピーカーとの組み合わせは!?
ここまで使用した小型スピーカーは全く問題なくドライブできた。
ここで少し変化を加える。僕の趣味であるオールドスピーカーを試してみたい。登場するのは、SANSUI「SP-LE8T」。1973年から1979年頃に発売されていたスピーカーで、JBLの20cmコーン型フルレンジユニット「LE8T」を使用した往年の名機だ。
再生するのは、フレディ・レッド名義で1960年に発売された「ザ・ミュージック・フロム・ザ・コネクション」のハイレゾ音源。このタイトルはアルトサックスのジャッキー・マクリーンが参加しており、「鳴きのジャッキー」と呼ばれるサックスの音色を雰囲気良く伝えてくれる。
ハードバップジャズ再生において重要な距離感の近い、はっきりとした音も表現してくれる。現代的な描写力を持つハイファイな音作りとは異なるヴィンテージスピーカーの魅力を堪能できた。オールドスピーカーを最新のエレクトロニクスで鳴らすスタイルは、最近注目されているが、この組み合わせは非常に良いと感じた。
ここまで試した3種類のスピーカーは、どれも印象が良かった。どのスピーカーと組み合わせても駆動力が高く、ハイスピードな音がする。近年のマランツのアンプはClass Dのスイッチングアンプを搭載しているが、MODEL M1ではカスタムメイドされたアクサイン製のD級アンプモジュールを採用している。
このモジュールは4ch分のアンプを搭載するが、内部でBTL接続(左右2台ずつのパワーアンプを互いに逆相で駆動して2チャンネルに合成し、スピーカーを接続する方式)することで、小型筐体ながら定格出力は100W + 100W(8Ω)、125W + 125W(4Ω)を確保している。
無論、アンプ構成だけで音質を推し量ることはできないが、MODEL M1は特注されたアンプモジュールの素性の良さや、瞬時電流供給を追求した回路設計の採用が音質に寄与しているようだ。また、内部に搭載されるコンデンサーは10種類以上の候補の中から、サウンドマスター尾形好宣氏が選定したBevenbi製メタライズド・ポリエステル・フィルムコンデンサーを使用するなど、全方位的に音質を追求している。
アクセサリーで進化するMODEL M1
ということで、クォリティチェックは大満足の結果となったが、余談として、MODEL M1の音質を高める2つの手法をお伝えしたい。
1つは電源ケーブルの交換および極性を合わせることだ。付属のメガネ型電源ケーブルをサードパーティー製のケーブルに変更し、テスターを使って+と-の極性を合わせる。
電源ケーブルを交換することで中低音域の力感が向上し、極性を合わせるとシャーシ電位が低くなり空間の静寂感が増してくる。
また、クリプトンのオーディオボード「AB-UT1」(税抜16,000円)を設置し、その上にMODEL M1を載せるのも効果的だった。本モデルは純正状態で振動対策が施されていると推測されるが、軽量な筐体のため、防振対策が施されたボードを使用することで、高音域から低音域までのディテールが向上する。
リモコンは付属しないが、実はリモコンで操作できる
ここからは、テレビ環境でも試してみた。MODEL M1はeARC/ARCのHDMI端子を搭載しているため、普段使わない時は寝室のテレビ環境に置いてみようと思い立った。(実はこの方法は最初考えていなかったのだが)LGのテレビと組み合わせて、Netflixで映画「フォードvsフェラーリ」を試聴した。
ルマン24時間レースの舞台であるサルテサーキットを疾走するフェラーリ312P。そのV12エンジンのエグゾーストノートは低音域の沈み込みが顕著、エンジンのメカニカルノイズやシフトチェンジの音がリアルに再現される。当たり前の話だが、テレビの心許ない純正スピーカーとは全く違うレベルの音になる。
また、思いがけず嬉しかったのは、MODEL M1とテレビ環境の相性の良さだ。その理由は2つある。
1点目は、本機がHDMIコントロール機能(CEC)に対応しているため、テレビと電源のオン/オフが連動し、テレビのリモコンでアンプの音量調整が可能なこと。
2点目は、CECに対応していないテレビでも、リモコン学習機能という赤外線コントロール機能を利用することで、ユーザビリティを向上できることだ。そう、MODEL M1にリモコンは付属していないが、実は赤外線のリモコン受光部は内蔵されているのだ。しかも記憶させるリモコンはテレビリモコンでなくても構わない。使わなくなったコンポやAVアンプのリモコンなどでも良いのだ。
使い方は、HEOSアプリの設定画面を開き、マイデバイスからMODEL M1を選択、リモートコントロール → 赤外線コントロールと進み、テレビのリモコンをMODEL M1に向けて音量や入力切り替えなどの動作を記憶させていく。
アンプを追加すると操作が煩雑になるのでは?と考える方にとっても、CEC機能やリモコン学習機能を備えた本機は非常に便利。結果的に、利便性を損なうことなく音質が大きく向上したため、家族にも好評で、僕が帰宅すると寝室で映画を見る機会が増えたようだ。
様々なシーンで活躍する、小さな相棒
まとめとして、導入は大成功だった。オーディオ評論の仕事を始めてから、年間多くのスピーカーが自宅にやってくるが、MODEL M1の駆動力の高さと単体での多機能性は、これらのスピーカーをレビューする際の心強い味方になるはずだ。
さらに、皆さんが実際に購入された場合、リビングに溶け込むデザインや本格的な音楽再生能力に加え、スマホやテレビ環境など、さまざまなシーンで活躍してくれるだろう。
それにしても、コンパクトな筐体でこれほどの音質を実現していることに驚かされる。音質を優先しつつも、現代的な感覚を取り入れた使い勝手の良いMODEL M1は、オーディオの新しい試聴スタイルを提案する、ベンチマークとなる製品だ。