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「美音とモダンの融合」ブックシェルフの域を超えた満足度DALI「EPIKORE 3」を聴く
- 提供:
- ディーアンドエムホールディングス
2025年3月21日 08:00
DALIの “あの美音”が最新テクノロジーでさらに進化した。“一聴惚れ”を約束する、「EPIKORE(エピコア)」シリーズの新モデルが3機種登場した。ここでは、発表会で特に筆者が気になったブックシェルフ「EPIKORE 3」を自宅でたっぷり聴いて、その魅力をレポートしたい。
このEPIKOREは、2012年に発売したEPICONと、最新フラッグシップ「KORE」との橋渡しをするシリーズだ。昨年10月にシリーズ最上位機「EPIKORE 11」が国内デビュー。そして、欧州と北米で先行販売されていたその他のラインナップが、3月下旬に日本に上陸する。ちなみにアジア地域では日本が初めてだ。
追加されるラインナップは、フロア型が2機種、ブックシェルフが1機種の計3機種。フロア型の「EPIKORE 7」(1台1,760,000円/ペア販売)は、2基の180mmバス/ミッドレンジとEVO-Kハイブリッド・ツイーターを搭載。「EPIKORE 9」(同2,750,000円/ペア販売)は、2基の200mmウーファー、1基の165mmミッドレンジ・ドライバー、EVO-Kを搭載。
そして、ブックシェルフの「EPIKORE 3 」(同1,100,000円/ペア販売)は、180mmバス/ミッドレンジ・ドライバーとEVO-Kという構成だ。
EPIKOREシリーズの注目ポイント
1983年に創業したDALIは、一昨年の8月で40周年を迎えた。デンマークのスピーカーブランドであるDALIは、手頃なエントリーからハイエンドまでの幅広いラインナップを持っている。
また、高級家具のような優れたルックスとデザイン、聴く人を虜にする“美音”などがオーディオファンに受け入れられ、日本でも輸入スピーカーの代表格として認知されるまでになった。
筆者が初めてDALIを意識したのは2000年代前半。「HELICON」や「Menuet II」など、一聴して「美しい」と感じる独特な音色と豊かな質感が、強い存在感を放っていた。
そんな、数十年に渡るスピーカー製造の経験とノウハウを活かし、ハイエンド・ラウドスピーカーのベンチマークとして開発されたのがEPIKOREだ。フラグシップ「DALI KORE」から受け継いだ技術を注ぎ込み、「40年のスピーカーエンジニアリングの頂点を示す」モデルとアピールしている。
ピックアップしたEPIKORE 3は、シリーズ唯一のブックシェルフだ。フラグシップスピーカーのKOREはフロア型のみなので、実質的に“DALIブックシェルフの頂点”がEPIKORE 3となる。
ユニットには、Low Loss SMC Gen-2 180mmバス/ミッドレンジ・ドライバーと、EVO-Kハイブリッド・ツイーター・モジュールを採用。リアバスレフで、再生周波数範囲は42Hz~34kHz(±3dB)。クロスオーバー周波数は2,800/12,500Hz。公称インピーダンスは6Ω。外形寸法は250×420×470mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は22kgだ。
重量22kgという数字に驚く方もいるかもしれない。筆者も最初は目を疑った。何しろ前モデルのEPICON 2は10.3kgなのだ。DALIお馴染みのリボンツイーターが追加されたユニット構成とはいえ、ここまで重量級なのは何故なのか。
まず、磁気回路の大幅な強化は影響している。165mmから180mmに広がったウーファーの口径に対して、背面の磁気回路はEPICONのユニットからより大型で強力なものに進化。マグネットの直径は134mmにもなる。実際に振動板を外した背面の磁気回路を手に持ってみると、EPICON 2とは比べものにならないほどに重い。
また、35mmソフトドーム・ツイーターも周波数帯域の低い部分の性能を向上させるため、大幅に大型化したドーム・ドライバーとなった。
さらに、3ウェイユニットによるキャビネットの大型化と不要共振への徹底した対策も影響している模様だ。例えば、フロントバッフルは2層33mmのMDFだったのが、40mm厚のMDFに変更されている。
EVO-Kハイブリッド・ツイーターというのは、35mmソフトドーム・ツイーターと、10×55mmプレーナー型ツイーターを組み合わせたものだ。これまでDALIは「リボンツイーター」と言ってきたが、世界的な流れを意識してプレーナー型と呼称を変更したそうだ。
EVO-KはEvolution KOREの略。ソフトドームとプレーナー型、両方を使用することで、広い分散性と帯域幅を実現している。ドーム型は高周波になるほど分散性を失っていくが、プレーナー型はそうはならない。プレーナーは10kHz以上で緩やかにロールインし、可聴帯域を超える34kHzまでフルに鳴らす。この合わせ技によって、2.1kHzあたりから30kHz以上までの広い帯域で同じ分散性が得られるそうだ。DALIの広いスイートスポットや、内振りではなく正面向けのセッティングを推奨する根拠はここにある。
ソフトドーム・ツイーターは、磁性流体を使用していない。コイルと磁気回路ギャップの機械的接触を防ぎ、冷却目的にも使われる磁性流体を省くことで、機械的損失が大幅に低減した。代わりの冷却機構は、熱エネルギーを拡散し、熱圧縮を最小限に抑えるフィンを備えた弾丸型チャンバーが担うという。
プレーナー型ツイーターは、EPICONより強力なネオジム・鉄・ボロン磁石によるモーターシステムを採用し、感度を5dB向上。歪みとパワー・コンプレッションの両方を低減した。能率は96dB/W/mと、非常にパワフルなリボンツイーターだ。
180mm径のバス/ミッドレンジ・ドライバーは、第2世代のSMC素材をベースとした大型で強力なマグネット・システムを採用。DALI KOREでも使用している直径38mmのチタン製ボイスコイルフォーマーによって、EPICONシリーズのウーファーと比較すると、電流歪が約半分になったという。
このドライバーは、高周波の再生能力を高めることで、ワイド・ディスパージョン(広拡散性)の性能向上を図った。軸上で10kHz以上までという7インチウーファーとしては非常に高い再生能力を実現。軸外では30度において特性を最適化し、4kHzを超えるリニアリティとスムーズなロールオフを果たしたという。
磁気回路で見逃せないのは、SMC GEN-2テクノロジーだ。OBERONのようなエントリーモデルでも採用され、すっかりお馴染みの技術となったSMC(第1世代)を進化させている。SMCはSoft Magnetic Compositeの略。砂鉄の一粒一粒に化学的なコーティングを施し、絶縁性を持たせてから、磁気回路を作成するもの。
その第2世代SMCを、磁気回路(ポールピースとトッププレート内側)に採用した。ポールピースは、磁気は通してほしいけど、電気は流してほしくない部品だ。電気が流れてしまうと、磁気ヒステリシスや渦電流が発生し、熱損失や歪みの原因になってしまう。
SMC GEN-2であれば、鉄の電気伝導率の1/10,000だった第1世代から、1/25,000へとさらに電気を流れにくくした。絶縁性で示すと、2.5倍も向上したという。鉄ベースのポールピースに比べて、最大10倍(20dB)低い電流歪みを達成している。再設計されたアルミニウム製ショートリングなども相まって、EPICON 8ウーファーと比較して、電流歪が約2倍(6dB)低減されたという。
ペーパー&ウッドファイバー・コーンは、DALIのあらゆるスピーカーの顔とも言える存在だ。RUBIKOREでも採用されている凹凸のあるクラリティ・コーンは、振動板の不要共振を減衰。ミッド/バスドライバーが担う、比較的高い周波数帯において、歪みと信号のディップを低減させた。グラフでは、3kHz以上で顕著に効果が現れている。これによって、ソフトドームへのシームレスな受け渡しが可能となり、音楽体験を向上させたとのこと。
クロスオーバーモジュールは、プレミアム・グレードのクロスオーバー部品を使用。その中には、高級オーディオ用コンデンサとしても有名なドイツ・ムンドルフ製のコンデンサも含まれる。なお、フロア型で採用されているSMC-KOREインダクターは、EPIKORE 7やEPIKORE 9のように、低いクロスオーバー周波数を持たないEPIKORE 3では使われていない(空芯)。
キャビネットや外観にもこだわりがある。リア側は、18mm厚の曲面MDFを採用。ラウンドさせたMDFを3つ組み合わせて作られているのだが、組み上げた後に表面に手張りで突板を貼ることによって、木目の継ぎ目がない美しい仕上がりになっている。
フロントパネルは、なだらかにラウンドした40mmのMDFでもっと分厚い。EVO-Kハイブリッド・ツイーターを収納するバッフルは、アルミダイキャスト製。エンクロージャー内には複雑なブレース(すじかい)が配置され、不要振動を抑制。残留する振動への対策には、制振パッドで拡散を図っている。
バスレフポートはリアに備えているが、一般的な筐体内に向かってまっすぐではなく、斜め方向に管が配置されている。これは背面の壁が近いセッティングでも、壁からの距離を稼ぐことが出来る(反射を抑えられる)メリットがある。リアバスレフは設置が難しいと考える方にとって、嬉しい工夫だろう。
ちなみに、小物などを誤って穴の中に落としても取り出せるよう、底に網が張ってあるそうだ。ポート内部は、中央が狭く両端が大きく膨らんだ構造になっており、これが渦の発生を抑え、気流ノイズを低減させる効果を持つ。このコンティニュアス・フレアポート・テクノロジーは下位モデルのRUBIKOREでも採用されている。
スピーカーターミナルは、EPIKOREのために新開発された。無垢の真鍮から削り出した高級感溢れるルックスで、見ても触ってもグッとくる。真鍮製のため、締め付けネジのグリップが非常に堅く、動作がスムーズだ。配置は縦一列のため、横配置よりもやや結線し難かったのは惜しいが、背面までラウンドしたキャビネットは音質に配慮してのこと。結線は普段は繋ぎっぱなしだし、トレードオフと受けとめた。
専用スタンド「EPIKORE 3 STAND」(1台264,000円/ペア販売)を同時にお借りした。成型アルミニウム製ベースに、スタンドポストは押出アルミニウムを採用。調整可能なスパイク脚付きアウトリガーを装備。専用のスパイク受けも付属している。内部にケーブルを配線できる通線口があるが、今回は見送って外側から結線した。
スタンドの高さはソファでの着席を想定しているとみられ、筆者の防音室のゲーミングチェアでは耳の高さがプレーナー型ツイーターより少し高くなった。そこで、リクライニングを使用し、耳の高さをなるべく下げて試聴している。チェアに座って聴く方は、適切な高さのスタンドを使うことを推奨したい。おそらくドームツイーターだと思うのだが、左右の指向性は広いものの、上下の指向性はやや鋭く、背筋を伸ばすとどうしても音場を上から見下ろす感覚があったからだ。
美しさとモダンなサウンドが融合
何曲か音楽を流してみると、最近のDALIではあまりお目に掛からなかった個性的なサウンドに驚いた。同時に、最新のテクノロジーを投入した事による、モダンな特徴も併せ持っている。これは、音楽をメインに、ときには映像も楽しみたい人に幸福をもたらしそう。まずはBlu-rayからチェックしてみることにした。
筆者が特別好きな戦争映画である「レイルウェイ 運命の旅路」。AVアンプの設定はピュアダイレクトとし、フロント、サラウンド、サブウーファーの5台が鳴る状態で視聴した。フロントチャンネルは、AVアンプからのプリアウトをL-505uXIIにRCAで接続して鳴らしている。
まず、かつてないほどの、精緻なファントムセンターが実現したことに、喜びが湧き上がる。劇伴やSEとは見事に分離され、台詞だけがシャープに浮かび上がる。ストリングスの高域は伸びよく、まろやかで、耳触りも心地いい。往年のDALIを思わせる、芳醇でオーガニックな中音域は、“DALIの美しい音”を体現する大切な要素だ。さらに歪みや損失を最小化する技術の投入によって、かすかな物音や、沢のせせらぎ、虫や鳥の鳴き声など、SEが明瞭でスーッと耳に入ってくる。
温かみがあって、分析的すぎない感触は、映画を見ていても穏やかな気持ちにさせてくれる。今度は人間ドラマが主体の日本映画でも観ようと思い立ち「沈まぬ太陽」を視聴。恩地が会長室に呼び出され、会長から特命を受けるシーンから、あれよあれよと最後まで観てしまった。これはいかん、相性抜群だ。
中低域の絶対的な質量や鳴らしきる余裕が、この部屋で鳴らしたスピーカーの中ではダントツのトップだ。ローエンドが深いこともそうだが、エネルギーの総量が違うと感じる。音が面で迫ってくる。同じ音量感でも、俄然リッチだ。フロントもサブウーファーに頼ることなく、中低域が出せるスピーカーにすることで、狭い部屋でも映画館のようなスケール感を味わえる。
ナイロビの夕日を前に、劇伴が一気に盛り上がるラストシーンは、音のダイナミクスの天井が一般的なブックシェルフとは別の次元に達している。フロントを鳴らしているL-505uXIIはここまでの音を出せるのかと、つい失礼なことを考えてしまった。冗談抜きで、「ホームシアターらしくない、本格派のサラウンド」を楽しめた。
また、空間表現力もこの部屋で聴いたことのないレベルである。足音から伝わる、空間の広さや床の材質など、本物のように違いが分かりやすい。全てが終わり、遺族係に戻ることが決まった恩地に、逆襲とばかりにアフリカ行きを命じる行天が「お前の負けだ!」と吠えるシーン。石造りの建物の階段で響く大声が、本当にそこで聴いているような臨場感だった。
たくさんの情報が伝わってくる反面、音が鋭すぎない事も評価したい。ふくよかで温度感のある中域は、聴き疲れがなく、終始リラックスしてドラマに浸ることができる。さらに言えば、昔のDALIで個人的に不満だった、ボヤけた感じや音が遅いといった面影はない。解像度が高く適度なトランジェントを達成しつつも、昔懐かしのDALIの美音が味わえるのだ。
セル時代のアニメーション映画から「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」Blu-ray版を視聴。ガルパンでも有名な浜口史郎氏が劇伴を手掛けているのだが、そのオーケストラは豪華かつリッチで、映画館さながらの前方を埋め尽くす面のエネルギーで楽しませる。シンセの音や打ち込みのリズムトラックがとても明瞭だ。
時代を進ませて、2017年のテレビアニメ「月がきれい」の第一話。台詞は、刺激成分が一切無く、おだやかな音色でぬくもりがある。決してアタックがボケるとかユルい感じはなくて、輪郭も明瞭に描いているのも特筆したい。音像の立体感もよく出ているし、サウンドステージの奥行き感も十分以上だ。
本丸の音楽をチェックしていこう。音源は、Soundgenicに保存したCD音源やハイレゾから。ネットワークトランスポートはDST-Lacerta。USB-DACはNEO iDSD。アンプは同じくL-505uXII。
音楽はよりシビアに聴くことが出来るため、ちょっと苦手かな?と思われる音源から聴いてみる。UVERworldのベストアルバムより「在るべき形」。バンドにシンセとサックスも入った疾走感のある楽曲。高級スピーカーや音色に個性のあるスピーカーは、時として速いテンポの楽曲を聴くと、遅い音にガッカリしてしまう経験があった。
EPIKORE 3はというと、まったく問題なしだ。特段素早い音を奏でているとは思わないが、少なくとも遅くはない。瞬発力は十分にあり、きれいに収束していく。バスドラのローエンドの深さと音の質量感は、ブックシェルフとは思えない充実度。音像のフォーカス感に優れるブックシェルフの恩恵を持ちながら、6畳間ではもうこれ以上は望まないと断言してもいいほどの重低音を楽しめる。
さらにバスレフのエアー感も抑えられており、輪郭が引き締まったクリアなベースとバスドラがクールでカッコいい。音数が多いロックでも、ドラムのタムは音の輪郭をパシッと掴めそうな程に明瞭で、間奏のサックスも立体的で他のトラックとの分離感が素晴らしい。
もう一曲、相性が気になる楽曲をチョイス。先月1stアルバムを発売したキミのねのシングル「レイドバックジャーニー」。本楽曲は、ピコピコポップなデジタルチューンではないものの、リズムトラックは打ち込みで、シンセも適度に入っている。多少はピコピコ系の要素も含むと考え、あえてチョイスした。率直に言って音が優しい。ボーカルはクリアで、バイオリンも他のシンセトラックとの分離がすこぶる良好。ベースはスピーカーでは聴いたことないほど最低域まで出ていて、まるでマスタリングスタジオで聴いているようだ。
ただ、豊かな中域によって、ピコピコ&ガチャガチャしてほしいトラックの快活さがマスクされているのは否定出来ない。予想以上に楽しませてくれたが、もっと極端な電波系の音楽とかになると、音が暖かく優しいことが逆に物足りなさに繋がるかもしれない。
反面、映像パートでも述べたとおり、音が遅い訳ではない点は強調したい。Beagle Kick唯一のファンクロック「VOTEVOLUTION」を試聴。サックス2本とトランペット1本による、超ゴキゲンなナンバーだ。スネアやブラスの音は、テンポの速さにノレるだけのキレの良さと俊敏さを備えている。バリトンとアルトのサックスは、中低域が余裕たっぷりに鳴っていて、実在感がスタジオでチェックしたときと同等のレベルだ。当然、我が家では過去一である。センターのベースも定位が緻密で、有機的な質感は心地よい。このベースの質感表現は、昔のDALIの美音を思い出す。しかも、音像のディテール表現や立体感は、当時より格段にレベルアップしているのだ。
ハイレゾじゃなくて昔のCDも良い!
EPIKORE 3を聴いていると、無性に昔の音源を聴いてみたくなる。芳醇なミッドレンジと、往年のDALIの美音を思い出させる質感表現が、「ハイレゾじゃなくて昔のCDも聴くがいい……」と脳内に声を響かせるのだ。いや、別に私は危ない人じゃない。EPIKOREには無性にそんな気にさせる何かがある。
ということで、ゼノサーガ エピソードI[力への意志]のオリジナルサウンドトラックより「Gnosis」。ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏だ。2002年、しかもPS2というハードでありながら、イベントBGMのために海外でオケレコーディングを敢行するという、野心的な試みだった。
当時、高校生だった自分はいわゆる“バブルラジカセ”で数え切れないほどこのサントラを再生している。Gnosisは、作品序盤で突如、異形の存在グノーシスに襲われる場面で流れる。ボレロ調に仕上げたというオーケストラは、おどろおどろしく、とても激しい。まず、録音スタジオの部屋の高さや奥行きといった情報が、CDフォーマットにこんなにも入っていることに驚いた。
本楽曲は、楽器ごとのオンマイクよりもステージマイクをメインにミックスされている音場型の作品だと思っているのだが、まさにスコアリングスタジオの空間が、そして大勢の楽団が、筆者の眼前に現れたのだ。ミッド~ローにかけて、しっかり腰の入った出音は、濁らないし、揺るがない。迫力抜群の演奏にもかかわらず、出てくる音はとても安定している。大音量でも決して芯がブレていない。
EDの脱出シーンで流れるボーカル曲「Pain」なども聴いたが、中低域のたっぷりとしたエネルギーが楽器の実在感を高めている。中域を核とした味のある音色や質感は脚色といえばそうなのだが、DALIの美音はそこが魅力だったし、伝統のDNAはEPIKOREで現代風に蘇ったといえると思う。
本田雅人のアルバムIllusionから「JIAO !!!」。同氏のアルバムはフュージョンがメインだが、本作はジャズガルテット。ハイレゾ版は、ダイナミックレンジが広く、アコースティック編成を活かすミックスとなっている。第7回日本プロ音楽録音賞優秀賞を受賞している。
ドラムのシンバルやハイハットのシャカシャカ音がとてもクリーンで上まで伸びよく鳴っている。生演奏の会場で感じる、あの何ともいえない「空気を満たすシャカシャカ感」に限りなく近いことにハッとした。決して帯域的なピークを付けて強調している訳ではなく、ただひたすらにクリーンでピュア。歪みの少ないEVO-Kハイブリッド・ツイーターならではだろう。
テクニカルかつ野性味の溢れるドラミングは、ローエンドの深さと、中低域全体の質量感が圧倒的で、「6畳じゃ足りない!」ともどかしくなるくらい。磁気回路を大幅に強化したEPIKOREは、ミッド/バスレンジの歪みや損失対策に本稿で紹介しきれなかった工夫がまだまだ凝らされており、ただ最低域が低いだけじゃない、音楽的に満足させるローが味わえることを強調しておきたい。
ということで、他にも様々な楽曲を聴いたり、普段のゲームプレイでもEPIKORE 3を堪能させてもらった。正直に言うと、帯域バランス的な個性はある。フラットでナチュラルな音のスピーカーが増えている中、「昔は良かった」ではないけれど、懐かしさを感じるバランスだ。しかし、単に中音域がリッチなだけじゃないことは、ここまでお読みいただいた方には少なからず伝わっていると信じたい。
楽器の音像は立体的で、各パートの分離は極めて良好、空間表現力も秀逸であり、リバーブの余韻もピュア。音が適度に早く、どのようなテンポの楽曲も楽しめる汎用性も今の時代に合ったポテンシャルを備えている証だ。DALIの“美音”が好きだった人、そして個性的なスピーカーを探している人なら、ブックシェルフの期待値を超えた満足感をEPIKORE 3がもたらしてくれるだろう。