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DALI、KORE技術多数投入“EPIKORE”3モデル。1台110万円「EPIKORE 3」など
2025年2月25日 16:00
ディーアンドエムホールディングスは、DALIの「EPIKORE(エピコア)」シリーズの新モデルとして、ブックシェルフの「EPIKORE 3」(1台1,100,000円/ペア販売)、フロア型「EPIKORE 7」(同1,760,000円/ペア販売)、「EPIKORE 9」(同2,750,000円/ペア販売)を3月下旬に発売する。EPIKORE 3向けに開発されたスタンド「EPIKORE STAND」(1台264,000円/ペア販売)も用意している。
スピーカーの仕上げは、いずれのモデルもハイグロス・ブラック、ハイグロス・マルーン、ハイグロス・ウォルナットの3種を用意する。
フラッグシップスピーカー「KORE」と、「EPICON」シリーズの間に位置するのがEPIKOREシリーズ。KOREで培った新たな技術を多くを取り入れる事で、EPICONシリーズから飛躍的な進化を遂げている。EPIKOREシリーズの上位機「EPIKORE 11」は2023年10月に発売されており、そのラインナップが拡充したカタチとなる。
ブックシェルフのEPIKORE 3は、Low Loss SMC Gen-2 180mmバス/ミッドレンジ・ドライバーと、EVO-Kハイブリッド・ツイーター・モジュールを採用。リアバスレフで、再生周波数範囲は42Hz~34kHz(±3dB)、感度は85dB(2.83V/1m)。公称インピーダンスは6Ωで、クロスオーバー周波数は2,800/12,500Hz。外形寸法は250×420×470mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は22kg。
フロア型のEPIKORE 7は、2基のLow Loss SMC Gen-2 180mmバス/ミッドレンジと、EVO-Kハイブリッド・ツイーターを組み合わせた。再生周波数範囲は35Hz~34kHz(±3dB)で、感度は88dB(2.83V/1m)、公称インピーダンスは6Ω、クロスオーバー周波数は800/2,500/12,500Hz。外形寸法は380×420×1.120mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は40.5kg。
EPIKORE 9は、2基のLow Loss SMC Gen-2 200mmウーファー、1基のLow Loss SMC Gen-2 165mmクラリティ・コーン・テクノロジーミッドレンジ・ドライバーに、EVO-Kを組み合わせた。再生周波数範囲は29Hz~34kHz(±3dB)、感度は88dB(2.83V/1m)、公称インピーダンスは4Ω。クロスオーバー周波数は400/3,100/12,500Hz。外形寸法は422×554×1,310mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は64kg。
3機種に共通する特徴
3機種に共通する特徴として、ハイブリッド・ツイーター・モジュール「EVO-K」を採用している。これは、KOREで採用されたものと全く同じもので、35mmのソフトドームツイーターと、55×10mmのリボンツイーターを組み合わせ、アルミダイキャストのバッフルに取り付けているもの。いずれもデンマーク自社製のユニットとなる。
なお、DALIではリボンツイーターの事を、今後「プレーナー・ツイーター」と呼称していくとのこと。
ドームツイーターは35mmと大型なのが特徴。25mmドームの2倍の放射面積を持つため、一般的なツイーターは低域限界が1kHzなどだが、このドームツイーターは350Hzあたりから再生可能。これにより、ミッドレンジとの自然でスムーズな繋がりを実現。磁気回路には強力なネオジウムマグネットを採用。磁性流体を使わないことで、低機械的損失構造になっている。
D&Mのシニアサウンドマスター・澤田龍一氏によれば、「大口径なので低域再生には余裕がある。逆に、最高域の限界は18kHzくらいで、そこからロールオフしている。今までのモデルは、ドームツイーターの高域はカットせず、出しっぱなしにして、そこにリボンツイーターを組み合わせていた。今回はクロスオーバーを設け、18kHzくらいでロールオフしている」とのこと。
プレーナー・ツイーターは、より強力なネオジム・鉄・ボロン磁石モーターシステムを採用しているほか、新しいシェイプのウェーブガイドも搭載。能率96dBと、非常にパワフルなツイーターとなっている。
EPIKORE 3と7に採用している、18cm径のEPIKOREバス/ミッドレンジ・ドライバーは、新しいもの。EPICONよりも少し口径がアップしているが、背後にある磁気回路は、EPICONのユニットとは比べ物にならないほど大きく、強力なものに進化。マグネットの直径は134mmにもなる。
また、ボイスコイルも38mmと大口径で、長さも18mmある。「ドームツイーターの帯域まで、ウーファーがカバーするために、高域の再生能力を伸ばしている。具体的には、DALIとしてはおそらく初めて、コイルをあまりまかない1層のエッジワイズ巻きとし、ボビンも一般的なアルミでなくチタンを使っている」とのこと。さらに、ロングボイスコイルが振幅する際の歪を抑制するために、銅のショートニングやアルミのショートニングを各所に配置する手の込んだ構造になっている。
磁気回路には、独自の第2世代SMCを採用。SMCはSoft Magnetic Compoundの略。磁気回路に砂鉄を使っているが、鉄には磁気を通すだけでなく、電気も通す性質がある。この砂鉄を、電気抵抗の高いものにするため、砂鉄の一粒一粒に化学的なコーティングを施し、絶縁性を持たせてから、磁気回路を作る事で、高い透磁率と、低い導電率を実現している。
このSMCが、第2世代に進化する事で絶縁性が従来の2.5倍まで向上。渦電流が減り、歪をさらに抑えられるようになったという。
振動板はウッドファイバーコーンだが、馬蹄形の凹みを設けている「クラリティコーン」を採用している。EPIKORE 3と7では、このドライバーが2kHzまでカバーしているため、この凹みを設ける事で、コーンの変形を防ぎ、レスポンスがスムーズになるよう工夫している。
EPIKORE 9と11に搭載している20cmのウーファーにも、第2世代SMCを活用している。
エンクロージャーには18mm厚の曲面MDFを採用。フロントバッフルには、40mm厚のMDFを使っている。筐体は3つに分けてラウンドさせたMDFを組み合わせて作っているが、エンクロージャーを組み上げてから、表面に手張りで突板を貼っている。これにより、木目に継ぎ目が無く、美しい仕上げを実現している。
バスレフポートは各モデル背面に備えているが、ポートの向きが水平ではなく、斜めになっているのが特徴。後ろの壁が近いセッティングでも、壁からの反射の影響が抑えられるようになっている。
また、ウーファーユニット背面に近い場所に内部のポートを配置する事で、ウーファーの後ろから出た音を、ストレートに吸い上げ、ダクトから放出している。パイプの形状は、連続的に断面積を変化させており、エアーノイズを低減させている。
ネットワークにおいては、ムンドルフの高級コンデンサーであるMCapを活用。フロア型のEPIKORE 7/9には、チョークコイルにSMCを使い、歪を抑えている。
音を聴いてみる
マランツのハイエンドアンプ「MODEL 10」×2台と、SACDプレーヤー「SACD 10」を組み合わせたシステムで、各モデルを試聴した。楽曲は「シーネ・エイ/Taking It Slow」や「アラン・パーソンズ/Eye In The Sky」、「松本俊明/月の庭」などを使っている。
まず、ブックシェルフのEPIKORE 3から。広大に広がる音場の中央にボーカルが定位。その隣に定位する楽器などの音像も、サイズ感が適度で、輪郭も極めてシャープだ。音像の明瞭さ、定位の良さに、ブックシェルフの利点が感じられる。
最大の特徴は、中高域のナチュラルさだろう。EPIKORE 11や、もっと言えば超ハイエンドの「KORE」を聴いた時にも感じたことだが、人の声や、楽器の微細な描写などが、極めてシャープに描かれているにも関わらず、輪郭を強調したような不自然さや、例えば金属質な響きが乗るような事もない。
そのため、モニタースピーカーを聴いている時のような緊張感が無く、聴いていると非常にリラックスした気分になる。細部を細かく聴こうと意識すると、多くの情報量が得られるが、細かいことを考えずに音楽に身を任せて、良い意味で“聴き流す”ような聴き方もできてしまう。このあたりに、DALIが追求する世界が感じられる。
ブックシェルフだが、低域の沈み込みは深く、ベースラインもシャープだ。磁気回路も含め、ユニットの実力の高さが伺える。EPIKORE 3向けに作られたというスタンドも、重量のある本格的なもので、EPIKORE 3の低域再生能力をしっかり支えている印象だ。
EPIKORE 7に切り替えると、フロア型だけあり、スケールがさらに豊かになり、部屋全体を覆う音に、全身を包みこまれるような感覚になる。低域の量感もより豊かになるため、前述の“リラックスした気分でのリスニング”に、さらにマッチしたサウンドになるとも言える。
EPIKORE 9になると、スケール感がさらにアップ。音の響きが広がっていく奥行きがさらに深くなり、低域の沈み込みもより深くなる。「松本俊明/月の庭」のピアノでは、ペダルを踏み込んだ時の「クンッ」という鋭い音が、より鋭く深く聴き取れる。
EPIKORE 11やハイエンドのKOREで感じられた、圧倒的なスケール感を、現実的なサイズのスピーカーで楽しめるモデルとしてEPIKORE 9は注目だろう。
3機種を並べると、どうしても上位モデルの存在感が大きく感じられるが、EPIKORE 3の完成度の高さも見逃せない。豊かなスケール感と同時に、音像がそこまで大きくなり過ぎない、定位のクリアな描写はEPIKORE 3ならではの魅力だ。