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ユニバーサルプレーヤーを死守せよ! ディスクを今後も楽しむための1台、音に磨きをかけたMAGNETAR「UDP800 MKII」

MAGNETAR「UDP800 MKII」

ディスク再生を楽しんできた人にとって、寒い時代がやってくる。オーディオ、そしてAVの再生メディアの主流であったディスクソフトは、今やインターネットの配信サービスに主流の座を明け渡している。

再生するプレーヤーも、SACD/CDプレーヤーはまだ健在と言いたいところだが、発売されるモデル数は減少傾向、価格帯も高級機にシフトしている。UHD BD再生が可能なプレーヤーはさらに顕著で、エントリー価格帯のモデルはごくわずか。各社がBDレコーダーから撤退するニュースも話題になったばかりだ。

そんな中で、健闘している数少ないメーカーがMAGNETAR(マグネター)だ。中国・深圳で設立されたメーカーで、もともとはオーディオ・ビジュアル製品やカーオーディオ製品のOEM生産を行なっていたが、2021年に自社ブランドを立ち上げ、UHD BDプレーヤーとして「UDP900」、「UDP800」の2モデルを発売し、AVファンからの熱い注目を集め、高い評価も得た。

そして、昨年後半に「UDP900 MKII」(オープン/実売約595,000円)、「UDP800 MKII」(同約319,000円)と、“MKII”にモデルチェンジしている。

前述の通り、“優れたプレーヤーが絶滅の危機にある”というのはオーディオファン、AVファンにとって深刻な問題だ。仮に市販ソフトの発売が終了しても、手持ちのソフトは残る。それらの再生のためにプレーヤーを大事に使いたいところだが、突然の故障は避けられない。特にメーカー保証期間が終わってしまった古い機体を使っている人は心配だろう。

かくいう筆者も、OPPOが2015年に発売した「BDP-105D JAPAN LIMITED」のユーザーだ。幸い、今も現役で稼働中で、SACDマルチやDVDオーディオマルチといったマルチチャンネルソフトの再生ができるユニバーサルプレーヤーなのだが、SACDマルチの再生ができるプレーヤーはまさに絶滅危惧種だ。

もしも本機が故障し、修理もできないとなると(当然メーカー保証や修理などのサービスはすでに終了済み)、代わりになる機体は同じくユニバーサルプレーヤーのMAGNETARしかない。

筆者宅のOPPO「BDP-105D JAPAN LIMITED」

というわけで、BDP-105D JAPAN LIMITEDの代替機種として、UDP800 MKIIは果たしてふさわしいかを試してみることにした。いや、ここはUDP900 MKIIでしょ? と言いたいのはわかる。しかし、UDP900 MKIIは実売で60万円近い高級機なので、すぐに買い換えというわけにはいかない。UDP800 MKIIは実売32万円ほどで、安くはないが、コストパフォーマンス的にも注目のモデルなのだ。

「UDP900 MKII」
「UDP800 MKII」

UDP800 MKIIになって進化したポイント

UDP800 MKIIの概要から紹介しよう。CD/SACD/DVDビデオ/DVDオーディオ/BD/UHD BDなど、既存の12cm光ディスクソフトの多くを再生できるユニバーサルプレーヤー。日本ローカルでしか流通しなかった市販ソフトや特にDVDレコーダーなどで録画したDVD-R、BD-Rといった特殊な部類にあるディスクなど、一部再生できないものもあるが、国内代理店の努力により、可能な限り対応する姿勢をとっている。

MAGNETAR「UDP800 MKII」
デザインに大きな変更はなく、右下にMKIIの名称がついていることが大きな違い。リモコンなども基本的には共通だ

UHD BDの再生では、HDR規格として、4K解像度に対応するのは当然として、HDR10/HLGのほか、Dolby VisionやHDR10+にも対応。視認性にも優れた日本語対応OSDは従来モデルから踏襲。さまざまな規格なソフトの再生やネットワーク機能の制御は、MediaTek製クアッドコア・プロセッサー「MT8581」で行なっている。

各セクションごとに独立した基板設計や60Wのローノイズトランスを搭載した電源部、映像・音声の分離出力が可能な2系統のHDMI出力端子の装備なども従来モデルと同様だ。

UDP900 MKIIとの差で言うと、アナログ7.1ch出力を持たないことが大きな違い。このほかにPCなどとの接続用のUSB入力も省略されている。それ以外のスペックはほぼ同等。ドライブメカはUDP900 MKIIと同等で、メカニズムのケーシングに制振塗装を施し、微細振動への対策が施されたものを搭載。ドライブを覆う金属製カバーの内側にも吸音材を装着した。

UDP800 MKIIの内部

2.0チャンネルのオーディオ回路は完全に再設計され、7つの「OPA1602」オペアンプを採用し低ノイズ化と歪みの低減を実現している。また、HDMI音声出力ポートにTMDSリタイミング回路を追加し、ランダムジッターを低減し、HDMI音声出力におけるクオリティ向上を果たしている。

さらに、内部配線を高純度銅線にアップグレードしたほか、各ブロックごとに分割された基板のPCBコネクターを日本圧着端子製造(JST)およびAmphenol製に変更するなど、品質の安定と信頼性の向上をしているという。

ネットワーク機能のための基板も新設計されており、同一ネットワーク内にあるサーバー機器の動画や静止画、録画番組の再生機能に加えて、Crestron、Control4、Wake-on-LANといったホームネットワーク連携機能に対応している。

UDP800 MKIIの背面。右側のRCA/XLRのアナログ音声出力がある。HDMI出力×2、同軸/光デジタル出力なども備える

厚みのある再現で音場も広い。オーディオ再生としても十分な実力。

では試聴だ。まずはSACD再生で、OPPO BDP-105D JAPAN LIMITED(以下、BDP-105D)と比較しながら聴いてみよう。どちらもアナログXLR出力で、ベンチマークのプリアンプ「HPA4」にバランス接続している。

UDP800 MKIIのディスクトレー

まずは「交響詩 さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅」。CD/SACDのハイブリッド版でSACD(2ch)を聴いている。オリジナルのアナログ盤は1981年の発売となるが、当時のアナログ録音の良さがよくわかる音の厚みがしっかりと味わえる鮮度の高い音だ。

BDP-105Dが中域の厚みやエネルギー感などアナログ的な良さを感じる一方で、やや細部の質感が不足した印象になるのに対し、UDP800 MKIIは低域に厚みのある安定したバランスで解像感も高い。アナログ録音の音の密度感や生き生きとした音の感触など、現代のオーディオプレーヤーとして十分に優れた実力を備えていることがわかる。

筆者が一番好きな「終曲~戦いの歌~」は、男性の深く響くバリトンが厚みもあるし、ボディ感も感じる。筆者はこの曲に松本零士のロマンが満ち満ちていると思っていて、この曲で締めるからというわけではないが、映画「さよなら~」も大好きだ。そんな、当時の美化された記憶が蘇る音だし、純粋に音の鮮度という意味でも、当時のままの音が鮮やかに蘇ったと実感する。

再びBDP-105Dに戻ると、アナログらしい雰囲気や音色の忠実感はあるが、「音が古い」と感じてしまった。

原盤が古いのだから忠実な再現と言えないこともないが、SACD盤は新たに制作された最新のものだ。音質などに不満はないのだが、D/A変換はもちろん、アナログ出力の設計など、オーディオ機器として古さを感じた。現代的な解像感とか音の鮮度、音場の広がりなどが「古さ」を感じてしまう。

その点、UDP800MK IIだと、元の原盤の良い意味でのアナログ録音の良さをきちんと再現しつつ、現代的な音場の広さや微少音のニュアンス、生き生きとした音の瞬発力などがきちんと再現されているのがわかる。これは少々ショックだった。単独で聴いている限りでは、十分に現役で使える実力と思っていたが、最新モデルと比べてしまうと、現代的な音という意味では残酷なくらい差を感じた。

今度は「スティーリー・ダン/ガウチョ」。名盤のSACDだが、BDP-105Dではボーカルの声の質感や歌唱のグルーヴ感もよくわかる。強いて言うならば音がやや太書きで少しデジタル的な荒っぽさも感じる。

UDP800 MKIIでは、スカッと抜けのいい音で、テクニシャンが揃ったバンドメンバーの演奏もそのテクニックがよくわかる。ボーカルもより質感が良いのがわかる。BDP-105Dで聴き慣れたディスクということもあって「さよなら~」ほど音が古いという感じはないが、それでもより現代的に洗練された音という感じはある。

ガウチョはSACDマルチ収録のソフトなので、HDMI出力のマルチチャンネル音声も試してみた。マランツ「AV 10」のHDMI入力に接続し、DSDストリーム出力で聴いている。このためもあり、BDP-105Dのアナログ出力で聴いた荒っぽさは感じない。ただし、細かな質感など情報量には差を感じた。

同様にUDP800 MKIIでもHDMI出力のマルチチャンネル出力で聴いてみると、アナログ出力ほどの差は感じないが、質感や特に音場感には差を感じた。バンドの演奏がサラウンドチャンネルに配置され、ステージ上でバンドメンバーに囲まれている感じがよりよく伝わる。

D/Aコンバーターやアナログオーディオ回路の設計による影響も少なくないとは思うが、BDP-105Dがあくまで“映像ソフトがメインのプレーヤーで音質もそれなりに実力が高い”と言えるのに対し、UDP800 MKIIは“ピュアオーディオ用のSACDプレーヤーの実力に近い音質を追求した”印象がある。このあたりは、当たり前だがOPPOとMAGNETARは異なるメーカーだし、音作りの方向性も違っていることがよくわかる。

ユニバーサルプレーヤーというと、どうしても映像系ソフト寄りのイメージはあるし、UDP800 MKIIも低音の厚みなどに映画的サウンドを楽しく再生する感じはある。それでもBDP-105Dに比べれば、UDP800 MKIIはピュアオーディオ再生も十分に意識していると感じる。このあたりのピュアオーディオ的な味付けは極小でより純度の高い再生を求めるならば、UDP-900 MKIIが候補になるだろう。

UDP800 MKII

また、UDP800 MKIIのHDMI出力の音声が思ったよりも優秀であることにも感心した。BDP-105Dはアナログ出力でのやや古くさい感じがなくなるぶん、情報量が減った感じになるなど、HDMI出力はやや不足を感じたが、UDP-800 MKIIではあまり落差を感じない。

音楽ソフトの再生ならばUDP800 MKIIのアナログ出力の方が音質的にも好ましいのは確かだが、HDMI出力でも十分に楽しめる。このあたりはジッター低減を含めたHDMIの信号処理が優れている証だし、音質的にもかなりしっかりと作りこまれているとわかる。

このほか、ネットワーク再生で、自宅のサーバーに保存したハイレゾ音源なども聴いてみた。基本的には低音の力強さを感じるバランスで、これは映画を迫力たっぷりに楽しむバランスだと思われる。しかし、ドンシャリというほど派手な味付けではないので、音楽再生でも気持ちよく熱気やパワーを感じられるバランスだ。

アナログXLR出力はクラシックのオーケストラを聴いていても楽器の音の質感が豊かでしかも厚みのある音だ。そして、出音の勢いというかスピードや反応の良さも十分。そして、音場感も豊かだ。

先代のUDP800も音質の点ではしっかりと出来てはいたが、UDP800 MKIIはかなり良くなったと感じる。UDP900 MKIIを脅かすほどではないとはいえ、こちらも音楽ソフトの再生を十分以上に楽しめる実力はある。このあたりは、ユーザーからの感想などを受けて、しっかりと再設計したものだとわかる。

音の実力は十分優秀。4K映画再生の実力はどうか?

今度は4K映画だ。視聴したソフトは「トロン/アレス」(UHD BD版)。

UHD BDソフトを見ても映像の情報量は十分。暗いシーンなどではやや黒が沈みがちと感じるが、潰れてしまうほどではなく階調感も十分。だからグリッドと呼ばれる電脳空間でも黒い背景や陰影に重みがあり、なかなか迫力がある。終盤で登場する「門」という字がそのまま形になったような移動砲台もなかなかの迫力だ。

一方で、ケヴィンが遺したアラスカの基地での場面のような、本物の雪山を舞台にしたシーンでは、眩しく光る雪山のHDR的な輝きや雪の質感もしっかりとしており、雪道を歩くシーンでの新雪のしっとりとした質感も出る。

映像系については、前モデルのUDP800から大きな改良などは入っていないようだが、基本的な実力は優秀だし、自然で立体感のある描写になる。もちろん。主人公であるイブの東洋人らしい肌のきめや肌色のトーンも自然。デジタル人間(?)であるアレスも描写自体は白人なので、フェイストーンも自然。だから、デジタル人間的な違和感が際立つ。このように映像的な実力も十分だ。

そして、音は実際に街を走行するライトサイクルや戦車のような乗り物の走行音もなかなかの迫力。アクション映画に向いた感触だが、大味にはならず、足音や普通の車を走らせるときの走行音もリアルな感触だ。そして、サラウンドの音場感が良好。移動感もスムーズで、バイクでの追跡シーンなども見応えがある。

続いてはアニメ「人狼 JIN-ROH」。

2000年制作のアニメーション作品で、監督は沖浦啓之、脚本は押井守。押井守がコミックや実写映画で展開したケルベロス・サーガに連なる作品。架空の戦後日本の復興期を舞台にしたハードなドラマだ。

本作はデジタル技術を採り入れた作品が増え出すなか、ほぼデジタルなしのアナログ制作で完成した「最後のアナログアニメ」と言ってもいい作品。その手描きならではの絶妙なタッチや動きの良さはもちろん、鮮明に楽しめる。

また、背景画の鮮やかな色を使いながらも、どこかモノクロ調のような独特の世界観を感じさせる背景画など、その繊細なタッチや色遣いも緻密に再現。旧作品の4K化はアニメに限った話ではないが、今やフィルムからのデジタル化は6Kスキャンなども行なわれており、アナログフィルム由来のノイズなども丁寧に除去するなど、精度がかなり高くなっている。そのためもあって、数多くの名作を中心に4Kソフトが発売されている。

そうした過去の作品を新鮮な映像として再見できるのも現代のパッケージソフトの大きな魅力だが、UDP800 MKIIはそうした質の高い映像ソフトの良さを存分に楽しめる実力はある。

紙媒体が主流だった時代に雑誌の編集者だった筆者は、インクの色(CMYK)とデジタルの彩色(RGB)の質感の違いにうるさいが、絵の具で塗ったセル画の色の正確さは色域BT.2020の4K版でこそ再現されると強調したい。そういう微妙だが明らかに異なるCMYKの色の感触をきちんと再現する実力がある。

そして、音。首都警の実行部隊である主人公は、プロテクトギアと呼ばれる装甲服を装備し、大型のMG42機関銃を装備するが、その銃撃音の迫力もしっかり味わえる。

拳銃などの他の銃器がやや甲高い音であるのに対し、MG42のそれはかなり低めの身体に染みる音だ。そうした深く響く低音がしっかりと再現できる。Dolby Atmos化で環境音などの広がりも豊かになり、特に地下の下水道での戦闘などは反響の多い場所ということもあって、なかなかの閉塞感とそこでの銃撃戦の迫力が見事だ。

パッケージソフトは不滅。その良さを存分に味わえるUHD BDプレーヤーを死守せよ!

冒頭でも触れたが、今や世の中は動画配信サービスが主流で、映画館やコンサート会場を別にすれば映像作品や音楽はほとんど動画配信サービスで楽しむ時代だろう。これは時代の流れなので仕方のない部分もある。

だが、UHD BD規格は映像・音声の転送レートは最大100Mbpsほどで、動画配信サービスはより効率の良いコーデックを使用しているとはいえ、平均的には10数Mbpsほどしかない。

つまり、伝送できる情報量にあきらかな差があるので、UHD BDなどのパッケージメディアがなくなれば、一時的にだとしても大きな質的低下が起こりうる。これは避けたい。

動画配信サービスは手軽で膨大な作品を視聴できるので筆者も便利に愛用しているが、マイナーな作品が人知れず配信終了となって見られなくなることは実は多い。何度でもずっと見たい作品はパッケージソフトを購入することが重要だ。その傾向は今後ますます強くなるだろう。

だからこそ、それらを再生するユニバーサルプレーヤーも重要だ。生産完了となってから慌てても遅い。ユーザーが買い支えるというのも無理があるとは思うが、せめて自分が使用するプレーヤーは確保しておきたい。しかも、画質・音質的に満足できるプレーヤーは本当に減っている。

その点も含め、UDP800 MKIIは今後も愛用できるプレーヤーの有力な候補だ。4Kソフトはもちろん、CDやSACDなどの音楽ソフトも再生できる。筆者と同じOPPOユーザーはそろそろ真剣にMAGNETARへの移行を検討すべき時期だ。筆者は今回それを決意した。読者の皆様もぜひぜひ真剣に考えてみてほしい。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやHiFiオーディオ、ヘッドフォンなどのポータブル機まで、AV系のジャンル全般をカバーする。AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、さまざまな媒体、メディアで製品紹介記事や取材記事を執筆。かつてはB&W MATRIX801 S3を中心とした大型スピーカーでサラウンド再生システムを構築していたが、現在は、BWV H-1という小型スピーカーによるシステムへ移行中。映画はもちろん、アニメやゲームも愛好する。