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この物量なのに手が届く、ネットワークオーディオの本格ノイズ対策!SilentPower「OMNI LAN」を試す
- 提供:
- エミライ
2026年9月4日 08:00
SilentPowerとは?
現代のオーディオを楽しむならばぜひとも注目してほしいブランド、iFi audio特集の第3回。今回は、iFi audioの兄弟プランドとも言えるSilentPowerを中心に取り上げる。
SilentPowerは、最近新たに設立されたブランドと思われがちだが、母体となるオーディオブランドAMR(Abbingidon Music Reasearch)において、グリッドノイズやDCオフセットを隔離するOptiMainsテクノロジーなどの技術を開発した部門がその始まりだという。今から20年前の話だ。
そして、iFi audio製品で、バッテリーに匹敵する低ノイズ電源を開発したのを経て、これらの技術がオーディオ分野で需要が高まっていること、それ以外の分野での関心の高まりなどもあり、SilentPowerブランドが設立されることになったという。
SilentPowerの製品では、USB端子に接続することで、PCの電源由来のノイズ低減を行なう「iSilencer+」、同様にLAN回線に使ってルーター由来のノイズをカットする「LAN iSilencer+」、光ガルバニック絶縁によってLAN回線に混入するノイズを効果的に低減する「LAN iPurifier Pro」などをラインナップしている。
このあたりは筆者の経験だが、オーディオのネットワーク再生向けに、ノイズ対策アクセサリー製品が次々と登場したが、オーディオ用スイッチングハブなど、ネットワーク系アクセサリーは、高い効果があるものの、高価なものが多く、なかなか手を出せずにいた。
そんな時にLAN iSilencerに注目し、「我ながら付け焼き刃的な対策だ」とは思いながら試したところ、思った以上の音質の改善効果が得られ、比較的安価であるのをいいことに(数年前の購入当時は税抜きで1万円と少し。現行のiSilencer+は16,500円)、少なくとも5個以上を購入し、スイッチングハブやNASなどに使っていった。
わずかな価格とはいえ、数が増えればそれなりに費用はかさむ。購入数に比例して音質が向上するかというと、決してそんなことはない。必要最小限の数にしぼって要所で使うことがポイントだ。ともかく、多数のLAN iSilencerでノイズ対策に目覚めた結果、より抜本的な改善をしようという結論に至った。
抜本的な改善というと、極端に言えば家の建て直しなども思いつくが、現実的ではない。自宅の試聴室内に届くネットワーク回線のノイズの低減に集中するならば……
- (1)「LAN iPurifier Pro」などによる光ガルバニック絶縁による大元(ONUからやってきたネットワーク回線が試聴室に届いた直後)での使用
- (2)2重ルーター化により試聴室内だけを隔離されたネットワーク環境とし、ネットワークに接続される機器の数を減らす
- (3)スイッチングハブの更新
あたりが考えられる。中でも実践しやすく、効果が大きいのは(3)だ。
実際にこうした施策を実践し、我が家のネットワーク環境はかなり改善された。宅内(改善後は試聴室内のみ)のLANに保存した音楽データの再生はもちろん、外部からやってくる音楽配信サービスなどの再生、また意外とおろそかにされがちだが、動画配信サービスの映像・音声の再生などまでかなり向上した。
多くの人に、オーディオ用のスイッチングハブを使ってみて欲しいのだが、高価な製品が多いので、興味を持っていても、断念している人もいるだろう。だが、ちょっと待ってほしい。今回紹介するSilentPowerの「OMNI LAN」を知ってからでも遅くはない。
安価でも、機能性はプロ仕様のスイッチングハブ
OMNI LANは、簡単に言えばオーディオ向けのネットワークスイッチングハブだ。
スイッチングハブとは、ネットワーク回線の交通整理をする機械と考えていい。ネットワーク回線は多対多の常時接続で、しかも双方向通信。一方通行の専用線で信号をやりとりするオーディオ信号がなんとシンプルなことか。それはともかく、スイッチングハブは混雑し渋滞した道路で、交通整理をしているわけだ。
重要になることは、「(1)事故(信号の途絶)が起こらないこと」、「(2)送り先を間違えないこと」などがあるが、オーディオ信号をやりとりする場合はもうちょっと条件が厳しくなる。「(3)荷物を届けた時に、余計なノイズも一緒に届けないこと」「(4)送る荷物が正確なタイミングで届くこと」だ。
オーディオ機器にデータを届ける時には、その伝送に伴って機器へ電気的なノイズが流入したり、データ送出の微小な時間的揺らぎ(ジッター=タイミング精度)があると、音に影響が出てしまう。これらのノイズ対策や、動作のタイミング精度がより厳重になるため、ハブの価格も高価になりやすいのだが、OMNI LANは、実売価格132,000円と比較的手が届きやすい。これは、独自のノイズ対策や、数々の技術の蓄積があるためだ。
OMNI LANの概要を紹介しよう。
通常のLAN(RJ45)ポートはSTANDARDが8口。このほかSFPポートも1口ある。そして、ULTRA PUREという音質にこだわったポート(RJ45)が2口。SC光ポートが1口。M12が1口ある。さらに、クロック入出力用のBNC端子も備えている。RJ45ポートだけでも8+2口あるので、数としては十分だろう。
電源はACアダプターを使用するが、同社の「iPower2」が付属する。独自のノイズ対策技術「Active Noise Cancellation II」を備えた高音質ACアダプターだ(バンドル版は1.5V/1.2A)。市販もされており、市販品はその他の電源仕様を選ぶこともできる(実売12,870円)
前段のノイズ流入や、ジッターへの対策としては、光絶縁とトランス絶縁を含む3段階のガルバニック絶縁技術を備える。これによって、ネットワーク信号(電気信号)の電気的な経路は遮断され、ノイズの干渉や影響を大幅に低減できる。
そして、信号をやりとりするタイミングの精度はフェムト秒精度のGMTクロックを搭載。外部のより高性能なクロック(10MHz)の使用にも対応する。その結果、0.05msの超低ジッター、パケットロス0.1%以下での動作を実現している。
それに加え、前面にはTFTディスプレイを備え、RJ45ポートほか全13ポートの帯域幅使用状況をリアルタイムでモニタリング可能。専用アプリ「iFi Nexis」による外部からのモニタリングが可能で、果ては接地モードを(DC-RF、RF、ISO)の3つから選べるといったプロ仕様の機能まで備える。ちなみにラックマウントにも対応する(ラックマウントキットは別売)。
このように機能としては十分以上で、光絶縁や高精度クロック、付属の高音質ACアダプターなどオーディオ機器としてもしっかりと対策されたモデルとなっている。
iDSD Phantomと接続して実力を確かめる
さっそく試聴してみよう。
接続は、自宅のONUからのネットワーク回線をOMNI LANのSTANDARDポートに接続。まずはSUTANDARDポートからiDSD Phantomに接続した。iDSD Phantomへは付属のOptiboxを経由してSC(光)で接続している。
実はこのOptiboxは、光ガルバニックアイソレーションでネットワーク回線に混入するノイズを絶縁する「LAN iPurifier Pro」(実売約53,900円)とほぼ同じものだ。効果は初回の「NEO Stream 3」「NEO iDSD 3」記事で詳しく書いたが、音がまろやかに、オーケストラの弦楽器の音色もなめらかでより自然になる。オーケストラのステージ感や、舞台の奥行き、空間の広さも改善される。
iDSD Phantom以降は、XLR出力をマランツのAVプリアンプ「AV 10」のXLR入力へ接続、以下パワーアンプ「AMP 10」を経由してスピーカーBWV「H-2」と合計4台のサブウーファーへ接続している。再生モードはステレオ+サブウーファーの2.1ch再生だ。ヘッドフォンの場合はSINDY AUDIOの「Eagret」を、iDSD Phantomの4.4mmバランス出力を接続している。
まず、OMNI LANを使わない状態(付属のOptiboxのみ使用)でiDSD Phantomの音を聴いたが、滑らかで自然な音で、クラシックのピアノの打鍵のニュアンスがよく伝わる。ポップスなどを聴いても、厚みのある声でくっきりと再現される。低音もしっかりと鳴る。
これがOMNI LAN経由となるとどうなるか。
パッと聴くと音量が下がったかと思う。そのくらい“静かな音”になる。言うまでもなく、各種のノイズの影響が減っているものだと思われる。少し音量を上げて聴感的な音量を揃えて聴いてみると、よりダイナミックな音になる。音色もよりナチュラルなものになるし、躍動感が出てくる。このあたりまでは予想の範囲内の向上だ。
予想を超えて凄いと思ったのは、音の広がりとか、音場の見通しが良くなること。ステレオ的な音の広がりは左右だけでなく、奥行きも深くなり、立体的なステージ再現になる。
ユジャ・ワンの「ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番」は手前のピアノとその後ろのオーケストラの前後感が明瞭になり、一体感のある演奏でありながらも、ピアノの音が一歩前に出て、オーケストラがピアノに追従している様子がよくわかる。個々の楽器の音の粒立ちも良くなっている。
この効果は、SN比の向上に加えて、クロック精度が向上したことで、演奏のテンポ感が良くなり、出音のタイミングがきちんと揃った感じになる。そして、それぞれの音の波形が崩れずに伝送されることで、個々の音の再現性が増し、粒立ちも良くなったと感じたのだと思われる。
米津玄師と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」でも、声の実体感がより増したものとなり、質感やニュアンスが向上する。伴奏も特にリズムがくっきりとし、しっとりと歌うふたりを邪魔することなく、ロマンチックで哀しいムードを盛り上げている。
曲調としてより勇壮でありドラマチックなウラジーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響の「チャイコフスキー交響曲第6番『悲愴』」の第3楽章では、ステージ上に並んだオーケストラの楽器の様子がさらに見通しよくなり、ホールの広さ感などの空間感が豊かになっているとわかる。
もっと元気がいいEDMに近いポップスでも、包囲感のある音の広がりと個々の楽器のクリアな再現、細かくデザインされた精密な音の定位が鮮やかに再現されるようになったことがわかる。
スイッチングハブは、ネットワーク音楽再生のためのシステムとしては、伝送路としてのノイズ対策やクロック精度、電源の質が重要なことも理解されてきているが、なにより音質への影響という点でもかなり影響度が高い機器であることを実感する。
高価なネットワークストリーマーに目が行ってしまいがちだが、それらの機器の実力を引き出すという意味でも、ネットワーク環境の要所をきちんと改善することがなにより重要だとわかる。
SINDY AUDIOのEagretを使って、ヘッドフォン再生に切り替えて聴いてみると、広がり感の良さが、より自然で広々としたものになっているのがわかる。
ユジャ・ワンのピアノのタッチはよりデリケートなニュアンスが伝わるし、コンサートホールの実際の広さや奥行きが伝わってくるような感触になる。「JANE DOE」の歌声はより目の前で歌っているような生々しさがあり、歌声を直接聴いているような感触になる。SN比の良さという点でも、録音された情報のすべてが耳に入ってくる実感があるし、わずかな雑味も感じない。
まだ先がある。OMNI LANのULTRA PUREポートを試す
概要の紹介でも触れているが、OMNI LANはSTANDRDポート8口のほかに、ULTRA PUREポートという特に音質にこだわったポートが別に2口(RJ45ポート)が備わっている。ネットワークストリーマーなど、再生デバイスをこちらのポートを使って接続することで、より最適なパフォーマンスが実現できるという。今度はそちらを試してみよう。
iDSD PhantomのOptiboxに接続していたLANケーブルを、OMNI LANのSTANDARDポートからULTRA PUREポートへつなぎ替える。作業としてはこれだけだ。では聴いてみよう。
空間が広くなったと感じていた音場感だが、ULTRA PUREポートではさらに広くなる。音の抜けが良くなったというか、ホールの響きが耳に聞こえなくなるその瞬間まできれいに再現されている感じだ。
個々の音のフォーカスも良くなる。ボーカルは目の前でシャープに定位し、ニュアンス豊かな声が浮かぶ。歌っているときの表情が目に浮かぶようだし、ふたりがデュエットで歌うところも、距離の近さと近いほどに心はすれ違っている感じ、曲の持つ情感まで想起するような感触だ。
ユジャ・ワンのピアノも、打鍵の強弱による響きの変化、ためのきいたデリケートなタッチが目で見ているような生々しさがある。チャイコフスキーの「悲愴」でも、ホール感の出る少し距離のある録音なのに、個々の音はむしろより解像度が高まったような感触になる。弦楽器の艶など、音色はますます生の音に近づいた感じになる。
Eagretによるヘッドフォン再生では、ニュアンスや解像感が高まったことをしっかりと耳で確認できる。各楽器に注目しても、ディテール感が向上しているし、全体を聴けばきれいに音の揃った感じの気持ちよさがよくわかる。ボーカルのディテールは音に生命が宿ったような感覚になる。
あれこれと聴いた曲の感想をありのままに記してみたが、共通して言えることは、「音の純度が高まった」ということだ。ここまでになると、SN比とか時間軸精度というようなオーディオ用語で表現するのは野暮だ。ネットワーク音楽再生でも、存分に音楽を楽しんでいる実感がある。
コンピュータ用のインフラをオーディオに近づけるSilentPower
OMNI LANのようなネットワークのノイズ対策製品は、立派に“オーディオ機器”と呼んで差し支えないものだ。だから、スイッチングハブも高価な機器が数多くあるわけだが、高いから敬遠するのはもったいない。OMNI LANのような、手に届きやすい価格で、十分な対策が施された製品があるのだから。
まずはOMNI LANで、根本的なネットワーク環境の改善を体験してみてほしい。機能的にも、EJ45ポートは8+2ポートと豊富で、伝送速度などの点でも問題ない。しかも、サーバーやストリーミングプレーヤーのPure Audioポート×2はオーディオファンとしてはありがたい。そして、SFPポートやSC(光)、M12ポートなども備えるし、外部クロック入力(10Hz)のマスタークロック入出力まで備える。電源の接地モード(DC-RF、RF、ISO)も選べるなど、機能面でも十分。しかもDC電源には同社のiPower2が同梱される。10万円前半の価格を考えれば、破格と言っていいお買い得なモデルだ。
ネットワーク環境の改善に興味がある人が試してみるにもちょうどいい価格だ。自分がその耳で選び、気に入った音質のオーディオ機器やヘッドフォンで音楽を楽しんでいる人ならば、どれほど効果があるかはすぐにわかるはず。そういう意味でも、SilentPowerやiFi audioの製品には、ぜひとも注目してほしい。

















