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もはや“薄型AVアンプ”の音ではない。マランツ「CINEMA 70s SERIES 2」の進化を、前モデルユーザーが聴く

新モデル「CINEMA 70s SERIES 2」

愛用している薄型AVアンプ「CINEMA 70s」に、新モデルが登場

筆者がマランツの薄型AVアンプ「CINEMA 70s」を導入してから約4年。そのCINEMA 70sも同じくマランツの薄型AVアンプ「NR1608」からの買い替えであり、当時はデザインの一新も含めたフルモデルチェンジということで、非常に満足のいく導入だったことは記憶に新しい。

そんなマランツのAVアンプ「CINEMA」シリーズは現在モデルチェンジを迎えており、CINEMA 70sにも新モデル「CINEMA 70s SERIES 2」(187,000円)が登場した。筆者はCINEMA 70sの時点で機能・音質の両面で薄型AVアンプとして真に完成したと思っているのだが、そこからモデルチェンジを経てCINEMA 70s SERIES 2は何を引き継ぎ、何が変わり、何が進化したのか、ユーザー目線で深掘りしていきたい。

CINEMA 70sとCINEMA 70s SERIES 2、どこが進化したのか

まずはCINEMA 70sとの比較を通して、CINEMA 70s SERIES 2の機能・仕様面について確認していこう。

基本として、両モデルとも7chパワーアンプを搭載し、最大7.2chまたは5.2.2chのスピーカー構成に対応。HDMI端子についても、入力6系統、出力1系統という構成を継承している。8K/60Hzや4K/120Hz、VRR、ALLMといった機能に引き続き対応しており、最新のテレビやゲーム機を組み合わせたホームシアター環境でも十分な拡張性を備える。

8K/60Hzや4K/120Hzを有効にするには、設定で「8K拡張」を選ぶ必要があるのも同様

ゲーム関連機能では、新たにAMD FreeSyncと1440p映像のパススルーに対応した。以前から4K/120HzやVRRに対応しているため一般的なゲーム用途で大きな不足はないが、対応するPCやゲーム機、ディスプレイを組み合わせる場合にはSERIES 2の方が幅広い環境に対応できる。

ネットワーク機能はHEOSを搭載し、音楽ストリーミングサービスへの対応やネットワーク再生、マルチルーム再生といった基本機能は同様。とはいえ、CINEMA 70sが継続的なアップデートで対応してきたQobuz ConnectやRoon Readyといった機能にCINEMA 70s SERIES 2は最初から対応しているため、これから導入するユーザーにとってはありがたい。

HEOSの再生画面はテレビにも映せる
Qobuz Connect対応
Roon Ready対応

BluetoothやAirPlay 2などのワイヤレス再生機能も引き続き利用でき、日常的な音楽再生における使い勝手はほぼ共通している。

また、7.2chプリアウトを備えている点、そしてマニアックな観点から筆者が極めて高く評価する、チャンネルごとにスピーカー使用の有無を選択できる機能も継承する。

背面端子部

こうして見ると、基本的な部分においてはCINEMA 70sとCINEMA 70s SERIES 2はほとんど同じということになるのだが、それは前モデルの時点であまりにも完成されていたからであって、何らかの不足を意味するものではない。

一方で強化された点もある。音場補正は従来のAudyssey MultEQから、より高度な補正が可能なAudyssey MultEQ XTへとアップグレードされた。別途ライセンスを購入することで、さらに高機能なDirac Liveも利用できる。どこまでやるかはユーザー次第だが、利用できる選択肢が増えたことは素直に歓迎すべきだろう。

マイクを使った自動音場補正も可能。従来のAudyssey MultEQから、より高度な補正が可能なAudyssey MultEQ XTへとアップグレードされた
Dirac Live設定画面

オーディオ的な改善点としては、SERIES 2では新世代の32bit・8ch DACや改良型パワーアンプ回路の採用、音声処理系も刷新が挙げられる。機能面での違いがあまりない以上、これが実際の再生音にどう効いているかが、CINEMA 70s SERIES 2の最大の差別化となるだろう。

DACチップは、シーラスロジックの8ch対応DACを搭載。最新世代の32bit DACだ。DACの電源回路、クロック回路では、主に電源のデカップリングコンデンサーを採用。後段のアナログオーディオ信号のI/V変換回路、合成回路には薄膜抵抗、カップリングコンデンサーなどを投入している
内部

最後に気になる人には気になる点として、CINEMA 70s SERIES 2はブラック仕上げのみとなった。シルバーゴールド仕上げにマランツらしいデザインを感じ、積極的に選んできた筆者としては少々寂しいところだ。

CINEMA 70s(左)とCINEMA 70s SERIES 2(右)

2chで音の進化を聴き比べる。バイアンプ駆動がオススメ

CINEMA 70s SERIES 2の試聴はB&Wのブックシェルフスピーカー「706 S3」と組み合わせ、筆者宅のリビングシステムにて前モデルCINEMA 70sとの比較から始めた。

リビングシステムのセットアップ。CINEMA 70sを導入して4年弱

まず2ch音楽再生で色々と聴いてみたが、Eva Cassidyのライブアルバム『Nightbird』からタイトル曲ではシンバルワークの繊細さや低域の沈み込み、意図せずドはまりしてしまったアニメ『ヤニねこ』のED『煙とブルー』では飽和しがちな現代のJ-Popの音のほぐれ方、40周年記念リミックス版『オペラ座の怪人』から『Masquerade』では声の定位の精密さとそれに伴うサウンドステージの表現力、様々な要素で明確な向上がある。

総じて顕著なのはトランジェントやSN比の良さで、これらはまさしくマランツのアンプに通じ、総じて純粋なオーディオアンプとして使った際の満足度からして相当なレベルにある。本機を隠した状態でその再生音を聴いて、AVアンプだと言い当てることはまず無理だと思うし、仮に純粋な音楽再生用アンプとして使ったところで不満が出るとも思えない。

706 S3はバイワイヤリングに対応しており、CINEMA 70s SERIES 2によるバイアンプ駆動が可能だ。バイアンプが極めて簡単に実践できることはAVアンプならではの強みであり、実際に試してみたところ、透明感と静寂の表現に顕著な効果が認められた。

副次的に低域の輪郭描写の明確化や、より深いディテール描写も得られる。音楽再生においては一聴して「静かになった」あるいは「おとなしくなった」と感じられる可能性もあるが、トータルでは間違いなく一段上の再生音が実現する。

なお、CINEMA 70s SERIES 2の搭載アンプ数は7chのため、バイアンプ駆動を行なう際は5.1ch構成が上限となる。しかし少々過激なことを言ってしまえば、無理にスピーカーの数を増やしたり、Dolby Atmosイネーブルドスピーカーにチャンネル数を使ったりするくらいなら、フロントスピーカーをバイアンプ駆動する方が、音楽再生と映像再生の両方で高い満足度を得られる。使っているスピーカーがバイワイヤリングに対応するなら絶対にバイアンプを試すべきだ。

スピーカーレイアウトの設定

4.0chでサラウンドの進化も聴く

というわけで、映像再生はフロントの706S3をバイアンプした状態の、サラウンドに筆者手持ちのスピーカーを加えた4.0chのシステムで行なった(比較対象のCINEMA 70sでもバイアンプ駆動の状態である)。

CINEMA 70sのレビューの際も使った『タイラー・レイク -命の奪還-』(以下『タイラー・レイク』)では、音楽再生で感じられたトランジェントの良さが細かい効果音や銃声の生々しさを際立つとともに、音量が大きくなるシーンにおける「余裕」が違う。

CINEMA 70sではダイナミックレンジの天井が意識されるのに対し、CINEMA 70s SERIES 2ではもう一段余裕があるというイメージだ。もしかしたら「薄型AVアンプ」という単語から想像されるかもしれない、薄く・力感に欠ける映像再生とは完全に隔絶した音が実現されている。

試用期間に発売され、CINEMA 70s SERIES 2のシステムでクリアまでプレイした『Ace Combat 8: Wings of Theve』(以下『AC8』)は非常に素晴らしい体験だった。

タイトルそのもののサウンドが前作から大幅に進化しているというのもあるが、戦闘機ならではの重く・鋭く・縦横無尽の音響がゲームならではのインタラクティブ性と合わさり、それをCINEMA 70s SERIES 2が十全に描き出す。「ゲームをサラウンドで遊ぶ」楽しさの本質が凝縮された幸せな時間を過ごすことができた。

ミッション20の熱すぎる無茶振りや、ミッション28の超大規模空中戦など、忘れがたい展開が多くあるが、AV的なハイライトを上げるならミッション29ということになるだろう。

ネタバレになるので詳細は避けるが、敵戦闘機とのドッグファイトが始まった瞬間に本作のテーマ曲が佳境に入り、戦闘が進展すると本作の裏テーマともいえるメロディが昇華された曲「Hortus Regis Alti」が流れる。その中をプレイヤーは飛び、敵味方ともにどう考えてもGで死んでいるだろという滅茶苦茶な機動を繰り広げながらミサイルを撃ちあう。最高だ。

今回はデスクトップシステムでのテストは行なわなかったが、CINEMA 70s SERIES 2は依然として高さ109mm・奥行き384mmというサイズを堅持しており、機能性に加えてサイズの点でデスクトップ環境に組み込み得る最良の選択肢であることに変わりはない。1440pへの対応も、PCとの組み合わせにおいて有利に働くだろう。

HDMI入力を搭載し、テレビと組み合わせてリビングでの活用に適した2chオーディオアンプはおおいに増えた。それどころか、単純にリビングルームと親和性の高いアンプという観点で考えれば、AVアンプではなくそちらが主流になった感もある。

では、そんな現在においてなおAVアンプが輝くとすれば何においてか。HDMI ARCによるテレビとの連携はとうに専売特許ではない。マイクを使った自動音場補正も、2chオーディオアンプやネットワークプレーヤーで対応する製品も増えつつある。むしろ、ほかならぬマランツ自身が「テレビと連携可能なHi-Fiオーディオアンプ」の市場を切り開いてきたという事実もある。

AVアンプにいまなお残る本質的な輝き、それはずばり「マルチチャンネル・サラウンド」にほかならない、と筆者は考える。どれだけ現実的に大変だ、普通の部屋では難しいと言われようが、物理的にスピーカーを配置することでしか得られない「本物の」サラウンドは確かに存在する。

どれだけ「疑似的な」サラウンドが効果を強調しようと、生々しい現実感を伴って「後方で」音が炸裂・展開する体験は味わえない。『タイラー・レイク』の激烈な銃撃戦で全方位へ銃弾が飛び交う様も、『AC8』の超音速ですれ違った敵機やミサイルが後方へ轟音ととともに遠ざかる様も、AVアンプでなければ実現不能な体験だ。

しかし、その体験を実現するためのハードルが高くていい理由はない。でかくて重くて使いづらいAVアンプしかありません、というのでは困ってしまう。必要十分な機能を保ったまま可能な限りコンパクトで、ユーザーフレンドリーで、純粋なアンプとしての性能にも妥協しない。そんなAVアンプがあればいいと誰もが思う。CINEMA 70s SERIES 2はそのためにある。

新製品には新しいだけの意味があり、進化があるからこその新製品である。既に完成されていた前モデルを経て登場したCINEMA70 SERIES2は、薄型AVアンプとして新たな地平に達した。これから本機を手に入れるユーザーを祝福するとともに、前モデルユーザーとしては羨望も禁じ得ない。

逆木 一

オーディオ&ビジュアルライター。ネットワークオーディオに大きな可能性を見出し、そのノウハウをブログで発信していたことがきっかけでライター活動を始める。物書きとしてのモットーは「楽しい」「面白い」という体験や感情を伝えること。雪国ならではの静謐かつ気兼ねなく音が出せる環境で、オーディオとホームシアターの両方に邁進中。個人サイト:「Audio Renaissance」