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株式会社東芝は、液晶テレビ「REGZA」の上位シリーズとDVDレコーダ「VARDIA」を一新。10月上旬より順次発売する。 REGZAはZH/Z7000シリーズと、FH7000シリーズの3シリーズ8製品で、超解像技術を使った高画質なアップコンバート「レゾリューソンプラス」を搭載。SD映像だけでなく、1,440×1,080ドットのデジタル放送なども高画質化できる。また、4シリーズでHDD録画機能を搭載している。 VADRIAは、1TB HDD搭載の最上位モデル「RD-X8」など3モデルを11月中旬より発売。高画質化技術「XDE」を搭載するほか、10月1日にスタートする「スカパー! HD」用チューナからのネットワークダビング機能も搭載。XDE機能を搭載したDVDプレーヤーや、320GB HDD搭載のHDDレコーダも発売する。
■ REGZA 3シリーズで超解像「レゾリューションプラス」を搭載
ZH/Z7000シリーズは、超解像技術「レゾリューションプラス」を搭載したフラッグシップモデル。ZHシリーズには300GB HDDを搭載し、デジタル放送録画が可能。ZH/Z7000ともに、USB HDDとLAN HDDへの録画に対応する。> レゾリューションプラスの搭載により、地上デジタル放送やDVDの画素を精細に復元して表示できる。超解像技術を導入したテレビは世界初となる。超解像処理用のLSIとともに、映像エンジン「メタブレイン・プレミアム」を搭載し、画質の向上を図っている。 DLNA機能を搭載するほか、DTCP-IPにも対応。新VARDIAへのネットワークダビングが可能となっている。アクトビラ・ビデオフルに対応。ドルビーボリュームも搭載する。 FH7000も、レゾリューションプラスと300GB HDDを搭載するなど基本仕様はZH7000に近いが、デザインにこだわった新ラインとして展開。カラーバリエーションも用意する。なお、DLNAやアクトビラ機能などは省かれている。 H7000シリーズは、42/37/32型の3モデルをラインナップ。いずれも300GB HDDを内蔵するほか、eSATA接続の外部HDDにも録画可能。42型は倍速/フルHDパネルを採用しているが、レゾリューションプラスには非対応。C7000シリーズは、スタンダードモデルとして展開。42/37/32型の3モデルをラインナップする。 VADRIAは、1TB HDD搭載の最上位モデル「RD-X8」など3モデルを11月中旬より発売。高画質化技術「XDE」を搭載するほか、10月1日にスタートする「スカパー! HD」用チューナからのネットワーク経由のダビングが行なえる。
また、HD Rec機能を搭載し、デジタル放送をMPEG-4 AVC/H.264に変換して最高7倍の録画ができる「フルハイビジョン7倍記録」に対応。高画質化機能「XDE」を搭載し、DVDの再生画質などを向上している。
■ 2010年テレビ世界シェア10%を宣言。HD DVDの「未練は断ち切る」
発表会の冒頭、消費者のデジタルメディア利用の実態を調査したというビデオを上映。日本と米国の消費者に街頭調査などで、「何に録画しているか」やAV機器の不満点などを聞いたもので、「録画はDVDを使う」、「長く保存したいのはDVD」、「HDDに何度でも録画できるのが便利」といった声を紹介。保存メディアの回答では、「ビデオテープ」や「Blu-rayが一番いい」という声もあった。 HDDやホームサーバー、TiVOの活用事例や、「ケーブルが邪魔なので無線化を」などの意見、Apple TVの活用などさまざまな消費者の声を紹介した。
ビデオ上映後に、東芝 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 藤井美英社長が登壇。「2月19日の撤退宣言以来、ポストHD DVDということで、必死になって商品開発、戦略立案にとりかかってきた。本日、新しい戦略/製品を発表できることとなった」と切り出した。 プレーヤー/レコーダに搭載したXDE技術やREGZAの超解像技術など、新技術により「ハイビジョン並みの映像を安価に届ける」ことを基本姿勢として強調。さらに、会場に出展したCellテレビや、IntelとYahoo!によるデジタルAV機器プラットフォーム「Widget Channel」などの新技術について言及。光ディスクにこだわらず、フラッシュメモリやHDDなどの自社の強みを生かした映像機器展開を図るという戦略を紹介。「メディア、ネットに依存しない、メディアインディペンデントな応用製品を追及する」と訴えた。
テレビについては、北京商戦で7月以降シェアを伸ばしており、国内では台数ベースでシェア20%を獲得。「2位の座を奪回した」という。gfkの調査では26インチ以上でシェア22.8%を獲得し、「私は『国内でも25%以上を目指せ』と言っているが、なんとかさまになってきたかなと思う」と、国内の販売の手ごたえを強調した。 世界市場については、さらなるシェア拡大を目指す方針。「現実を見ると国内の市場規模は全体の2割ぐらい。一番大きいのは欧州、次が米国。事業的見地から見るとグローバルで10%のシェアを取るのが生き残る最低条件。2004年にDM社の社長になり、同年の9月に戦略説明した際に、2010年にシェア12%といったかもしれませんが、SEDがこういう状況(特許訴訟による合弁会社の撤収など)になってきたので、若干トーンダウンして10%。私のコミットの数字として、10%を絶対に取る」と2010年世界シェア10%獲得を宣言した。 2004年のシェアが4%に満たなかったのに対し、「順調にシェアを伸ばしており、2008年度で約8%にまで近づいている。あと少し」と言及。一方で、新戦略の「メディアインディペンデント」についても説明。「従来はHD DVDをコアにしていて、負けたせいもありますが、要するに光ディスクやHDD、フラッシュメモリなど記録媒体に依存しない応用製品を追求していく」と訴えた。 また、冒頭のビデオなど市場調査の結果についても言及。大容量化やモバイル化、ネットワーク化、高画質化、簡単操作、相互互換性などの多様な方向性があるため、「デジタル化の時代の製品企画は難しいが、ユーザーニーズをきちんと捉えて、合理的な値段で製品化したい」と説明。 HD DVDが無くなったことによる影響については、「説明責任がありますので話しますが、実はあまり方向は変わっていない。HD DVDをコアに位置づけていたのは間違いない。HD DVD再生機やレコーダを中心に、メディアサーバーなどに進化させていこうとしていた。でも考えてみると、『なんで光ディスクを使わなければいけないんだろう』、という声もある。『何で光ディスクをネットにつなぐの? ネットを使うのならパソコンでいい、東芝さんもっとちゃんと考えてよと』と。あれだけの損失をだしたこともあり、市場調査を前にも増してやりましたが、結論を言うと求めているのは、“一箇所にためさせてよ”と“簡単に取り出させてよ”、“きれいな絵で見せてよ”と。大きいのはその3点。それでメディアインディペンデントという考え方になった。HD DVDがないということもあるが、きっぱりと未練を断ち切って、われわれの強みのHDDやNANDフラッシュメモリを生かした応用製品をマーケットに出していきたい」と語った。
製品戦略については、映像新戦略を支える3本の矢として、高画質、新機能、新ストレージの3方向の差別化ポイントをあげる。高画質化については、REGZAに搭載した超解像技術「レゾリューションプラス」、VARDIAの「XDE技術」に言及。10年以上という超解像技術の研究実績などを強調した。新機能についても、新プロセッサの搭載による高画質化や、Widget Channelによるネットコンテンツとテレビ画面の融合を紹介した。 ストレージについては、市場調査でテレビに望むものを聞いたところ、「“もっときれいなテレビを”をという意見が多いのではないかと思っていたが、一番多いのは大容量のHDDという意見。まさしく世の中テラバイト。これだけではなく、HDDとフラッシュメモリをあわせたところが東芝の戦略」とし、メモリーカードをブリッジメディアに使ってSDカードに書き出すという新ソリューションを紹介。米MOD社との提携により、2009年に米国でSDカードを使った映像配信などに取り組むという。
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東芝では、福山さんの起用理由について「歌手としての音楽活動をはじめ、俳優としても多くのドラマに出演するほか、ラジオパーソナリティー、写真家などの多岐にわたる活動が、年齢・性別を問わず幅広い層から支持を集めている。創造性豊かな活動内容と、知的探究心が旺盛でものごとに対する深い“こだわり”を持っている点が、当社が目指す機能性を追求した商品イメージと合致した」と説明している。 10月以降放映予定のREGZA、VARDIAのCMでは、福山さん書き下ろしによる新曲「想 ~new love new world~」をタイアップ曲として使用する。9月19日から展開する新TVコマーシャル「X CROSS DIGITAL(クロス・デジタル)」篇では、青い立方体の部屋に佇んでいる福山さんが、「デジタルは無限だ、と気がついた。あらゆるものとつながることができる。」という“デジタル観”を、シンプルなメッセージとして発信する。
藤井氏は、「なぜ福山氏かというと、(東芝と)意外に合うんですね。話もさせていただきましたが、マルチな才能や創造性、知的探究心、ものへの“こだわり”と。福山氏にもわれわれの戦略を勉強していただいて、“X CROSS DIGITAL”として展開します」と語り、テレビCMを紹介。「上期はお金をずいぶん節約したのですが、お金も使ってなんとか国内において25%のシェアを得たい」と訴えた。
■ 本物にこだわるREGZA。ネット対応がレコーダの未来
続いて、「本物にこだわる」というREGZAの商品作りの基本コンセプトを紹介。高画質や録画機能などが高い評価を得ていると訴えた。さらに、「おまかせドンピシャ高画質」によるエコ性能などに言及。「画質、録画、エコの三本柱を軸に進化を遂げていく」と“本物”にこだわるものづくりを継続することをアピール。新REGZAの超解像機能やHDD録画機能について説明した。 最後に「福山氏を使ってREGZAブランドを高め、下期のシェアを20%を目指す」と言及。「社長からは25%という数字がでてきてしまいましたが、何とか20%をボトムとしてやっていきたい」と語った。
デジタルAV事業部 下田 乾二事業部長は、新VARDIAのラインナップを説明した。RD-X8やRD-S503/S303に搭載した、AVC長時間録画やXDE、スカパー! HD録画や、レグザリンク・ダビングなどの新機能を紹介。 下田事業部長は、コンテンツの記録先が「テープからディスク。さらにインターネットに変わりつつある」とし、ネット対応の重要度を説明。DVD Burning機能「DVDBB」の改善とともに、Yahoo! Intelと協力したWidget Channnelなどの取り組みを説明した。 加えて単体HDDレコーダ「D-H320」の発売のような、「簡単操作」という方向性の製品企画にも言及。HDD交換型のレコーダの商品化予定なども説明した。なお、Widget ChannelやHDD交換レコーダの発売時期は未定としている。
■ DVDで残存者利益を。「東芝はすぐ態度が変わる」 なお、Blu-ray Discへの対応について藤井氏は、「社長の西田が言明しましたように、プレーヤー/レコーダでやるつもりはありません。負けは負けとして認めておりますので、BD陣営に恨みがあるとかそういうことは一切ありません。業界の一員としてBDに成功してほしいという思いはあります。RDファンが沢山いまして、ぜひ東芝にBDレコーダを出してほしいという方も沢山いる。ただ、事業責任者として、みんな本当にBDをやらないといけないのかな、と思っています。問題はBDをやらずにDVD事業が成り立つのかということ。BRICsを中心した途上国では、BDはあと数年はありえない。BDのようなネットの接続性などは必要がない。当面はBDの皆さんは忙しいので、そうした国を中心として残存者利益を狙う」とDVD事業の現状を分析する。 日本市場や今後の展開については、「日本はやはり特殊でレコーダの市場。テレビを録画したいのならばHDD。本来東芝がHDD搭載のDVDレコーダを出したときに、“HDDレコーダ”で行くべきだったが、DVDの盟主なので、“DVDレコーダ”といってしまったのも失敗。録画しているのはHDDで、HDDが向いている。光ディスクに頼らないソリューションを訴求していくとともに、プレーヤーとしてはBRICsなどではDVDを、欧米、日本ではXDEを使って、しばらくはやっていきたい。BDを出してはいけないというわけでは全然なくて、事業的な判断からしばらくは出しても儲かる自信がないということ。また、東芝はすぐ態度が変わりますからね。『応変する』、『経営は状況の関数だ』というのが社長の西田の口癖で、状況が変わればいつやってもおかしくないが、現時点では、事業的観点からやめている」と説明した。 また、BDレコーダの販売が伸びている中での、DVDレコーダ事業の位置づけについては、「これは社内でディスカッションしている。日本ではBDの構成比が増えていく可能性がある。これは否定していない。では、全部が89,800円のBDになるのか? それは絶対にない。49,800円でないと嫌だという人もいる。VTRの世帯普及率が90%を超えているのに、DVDレコーダの世帯普及率が45%。45%はBDに買い換える可能性が高いが、そのほかの層はそうではない。DVDレコーダがなくなることは考えていない。VTRの置き換えを望む人は全世帯の3~4割はいる。DVDレコーダや、操作が簡単なHDDだけのレコーダも含めるとシェア20%も可能と考えている」という。 さらに、「日本の市場だけでなく、日本以外でどれだけとるかも重要。DM社の戦略はグローバルでどうやって利益をだすか。日本だけをメインにして事業戦略をたてるとぜんぜん儲からない。半導体出身というのもあるが、ボリューム(数量)がでる製品をやっていきたい。個人的には日本では、量販店も含めて押しているからBDが当然ながら一定の伸びがあるだろうと思っている。だが、HD DVDプレーヤーは、199ドル、149ドルを想定した戦略だったが、BDのレコーダがそのプライスになるとは思わない。録画であればHDDというのが市場調査の結論。なので、BDでなく、違う方向で堂々と勝負していきたい」と語った。 □東芝のホームページ ( 2008年9月18日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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