東芝、待機電力0WのTV/BDレコーダを今年度商品化

-電力使用状況高まるとTVをOFFにするアプリも


デジタルプロダクツ&サービス社デジタルプロダクツ&サービス第一事業部長の長嶋忠浩氏

 東芝は15日、デジタル商品に関する節電への取り組みを紹介する説明会を実施。その中で、待機電力0Wを実現する「ecoチップ」を発表。これを搭載し、待機電力0Wの液晶テレビ「REGZA」や、レコーダのREGZAブルーレイを今年度中に商品化する計画だという。

 また東京電力の電力使用状況に合わせてテレビの節電モードを自動制御し、電源をOFFにする事も可能なAndroidアプリ「RZ節電リモ」も7月中旬に無償配布される。


 



■待機電力0Wを実現する「ecoチップ」

 家電製品は、電源がOFFになった状態でも電源コンセントに接続していると、僅かに電力を消費している。テレビの場合は、リモコンからの電源ONなどの指令を受け取るためにリモコン受信機や、テレビの状態を示すLEDインジケータの光、マイクロコンピューターやその周辺回路などが動作しており、その消費電力は約0.04W。これに電源回路の損失0.08Wを加えると、待機電力は約0.12Wとなる。

 「ecoチップ」はこれをゼロにするもの。電源ケーブルと本体内の電源回路の間にリレーを設け、ecoチップはこのリレーを制御し、切断する事ができる。つまり、テレビ内部でACプラグを抜いたような状態にする事ができる。これにより、待機電力は0Wになる。

 しかし、リレーを切断した状態では、リモコンからの電源ON指令も受けとれず、ecoチップ自体も動作できないためリレーを戻す事もできない。そこで、ecoチップと大容量のキャパシタをセットで内蔵。通常のテレビ視聴時に大容量キャパシタに充電しておき、電源がOFFになると、ecoチップはリレーを切断し、キャパシタの電力を使いながら、リモコン受信機として指令を待つ。リモコンから電源ONの指令を受け取ると、リレーを戻し、テレビの電源がONになるという仕組み。

ecoチップecoチップの仕組みを説明したパネル

 約12時間待機状態が続くとキャパシタが空になってしまうため、充電をするために電源のリレーが戻る。充電所要時間は約5分で、0.13Wの電力を消費するという。ecoチップ自体は低消費電力で、消費電力の目標は150μWとされている。

 なお、テレビやレコーダでは、予約録画や番組表データのダウンロードなどで、自動的に動作しなければならない場合もある。これに対応するため、ecoチップにはタイマー機能を搭載。動作する必要がある時刻になると、電源のリレーを戻す事ができるという。そのため、ユーザーがテレビ/レコーダを常用していてもecoチップが動作している事を意識させず、待機時消費電力を削減できるとしている。

 発表会場には、このecoチップを搭載したテレビとBDレコーダを参考展示。どちらも開発中で、デザインなども含めてイメージ展示となっており、実際にどの価格帯のテレビ/レコーダで投入されるかなどは未定。しかし、「ecoチップ」は機構的に様々な機器に活用できるため、搭載製品を積極的に拡充していく予定だという。

ecoチップを搭載したBDレコーダecoチップを搭載したテレビ

 



■レグザ節電支援アプリ「RZ節電リモ」

 7月中旬に無料配布予定の「レグザ節電支援アプリ」は、Android OSを採用したタブレットやスマートフォン向けのアプリ。iPhoneなどのiOS用は「検討している段階」だという。対応テレビはREGZAのZG2/Z2/ZP2シリーズ。

 無線LANを介して、タブレットやスマートフォンを制御する「REGZA AppsConnect」の1つとして提供されるもので、REGZAに標準で搭載されている節電モード(節電1・弱/節電2・強)を、アプリからリモコンのように制御できる。これにより、バックライトの輝度などを落とし、消費電力を削減できる。

 ユニークな点は、これに「電源OFF」を加えた3つの節電動作を、東京電力の電力使用状況データに合わせて、自動制御できる事。具体的には、Yahoo! JAPANが独自の集計方法で算出した「電気予報」と、東京電力の電力使用状況データをもとに、Yahoo! JAPANが作成した「電力使用状況メーター」(のAPI)を使用。グラフでその情報を表示すると共に、「使用状況が何%を超えたら節電モード2に移行する」といった設定をユーザーがあらかじめ指定できる。例えば「95%を超えたら、テレビの電源を自動でOFFにする」という設定も可能。

タブレットで「RZ節電リモ」を起動しているところ。左のボタンで手動で節電モードが切り換えられるほか、右隣のバーで、電力使用状況の数値がどこを超えたら、その節電モードを適用するかを設定できるスマートフォンで「RZ節電リモ」を使っているところ。デザイン以外の機能は同じ

 なお、現在のバージョンではバックグラウンドでアプリが動作しながら制御する事はできないため、「レグザ節電支援アプリ」を前画面に表示している時のみ自動制御ができる。

 



■「東芝は技術で節電」

 デジタルプロダクツ&サービス社デジタルプロダクツ&サービス第一事業部長の長嶋忠浩氏は、同社5年前のテレビや、6年前のレコーダ、5年前のPCなどと、現在の製品の消費電力を比較し、節電性能が大幅に向上した事をアピール。その上で、バッテリを内蔵し、コンセントに繋がずに3時間のテレビ視聴が可能な19型液晶テレビ「REGZA 19P2」や、「ecoチップ」、「レグザ節電支援アプリ」といった、節電に寄与する新製品・新技術を紹介した。

テレビやレコーダんお節電性能の向上を紹介したスライドPCの節電性能も大幅に向上しているPC用の「ecoユーティリティ」。ノートPCで最大約39%、液晶一体型PCで最大約40%を節電できるという

 さらに、7月からPCのdynabook「T551/T351」に、プログラムのダウンロードにより電力ピークシフト機能を提供する事も紹介。これは、テレビのピークシフト機能と同様に、電力ピーク時間帯は自動的にAC電源からの電力供給を止め、蓄えておいたバッテリで動作させるもの。

 また、個人向けの取り組みだけでなく、企業向け節電ソリューションの提供に発展させる事も発表。最適な省電力設定を行なう「ecoユーティリティ」や、前述の電力ピークシフトソフトを、サーバー側から一括して設定できるもので、各ユーザーが設定を忘れた場合などにも対応できるという。8月から、企業ユーザー向けに提供する予定。

 さらに、会社規模での電力消費状況を管理し、前述のユーティリティやソフトを制御するソリューションの実用化に向け、日本IBMと協業する事も発表。サーバーソフトで全社や部門ごとの消費電力を集計表示でき、ピークシフト設定・省電力設定を部門ごとに配信。東芝ecoユーテリティが、消費電力をリアルタイムで報告するというシステムになる。

 また、節電意識向上への取り組みも実施。経済産業省が7月から実施する「家庭の節電宣言」に協賛するという。これは、各家庭での節電を促すために、政府が「家庭の節電宣言」サイトを設置。節電の方法などを紹介するもので、節電に関するコンテストなども実施予定。節電や復興支援に繋がる様々な達成賞や、参加賞も用意する予定で、賞品は協賛企業から提供される。

 東芝は、この夏の消費電力15%削減の達成賞の1つとして、REGZA「19P2」と、dynabook(T751)を提供する予定。規模としては、「最終的に決まってはいないが、100を超える台数を考えている」(長嶋氏)という。

 ほかにも、家庭での節電を支援するために、節電のコツを紹介した「節電BOOK」を店頭で配布。電子版を東芝のホームページでも公開するという。

 長嶋氏は「東芝は技術で節電する。長年培った省エネ技術に加え、最新のデジタル技術、ネットワーク技術、ソフトウェア技術を駆使し、節電に寄与する製品を続々と投入していく」と語った。

日本IBMと協業し、企業ユーザー向けに節電ソリューションを提供家庭の節電宣言にも協力するという節電のコツを紹介した「節電BOOK」を店頭で配布


(2011年 6月 15日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]