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パナソニック、'12年度は7,542億円の純損失

営業利益は1,609億円。テレビは885億円の赤字

パナソニックの河井英明常務取締役

 パナソニックは、2012年度(2012年4月~2013年3月)の連結業績を発表した。売上高は前年比6.9%減の7兆3,030億円、営業利益は268.1%増の1,609億円、税引前純損失は前年の8,128億円の赤字から4,145億円改善したものの、3,983億円の赤字。当期純損失は前年の7,721億円の赤字から、179億円改善に留まり、7,542億円の赤字となった。

 2012年10月公表の2012年度の連結業績見通しは、売上高は7兆3,000億円、営業利益は1,400億円、税引前純損失はマイナス3,650億円の赤字、当期純損失はマイナス7,650億円の赤字としており、ほぼそれに沿ったものとなったが、2012年度を最終年度とする中期経営計画「Green Transformation 2012(GT12)」の計画に対しては、大幅な未達に終わることになった。

2012年度決算概要
2012年度営業利益分析

 河井英明常務取締役は、「売上高が大きく減少するなか、固定費の大幅な削減により、営業利益は前年から改善した。一方で、のれん代や無形資産の減損、繰延税金資産の取り崩しなどにより、多額の純損失を計上。だが、資産の売却、流動化などによる徹底した資金創出に取り組み、ネット資金が大幅に改善している」と、2012年度の決算を総括した。

 ソーラー、民生用リチウムイオン電池、携帯電話などに関する減損損失を含む事業構造費用として5,088億円を計上。今回、営業外費用として、連結子会社であるパナソニック プラズマディスプレイが所有する尼崎PDP国内第5工場の建物などに関連し、新たに431億円を計上したことを発表した。「当初の計画にはなかったが、できるだけ前倒しで構造改革を進めていくという姿勢によるもの」と説明した。また、繰延税金資産の取り崩しや法人税などで4,125億円を計上。一方で、前年度の構造改革効果と固定費圧縮で2,365億円の改善、材料合理化や材料価格の低下で847億円を改善したという。

2012年度営業外損益
主な資産の推移

AVCは売上2割減も黒字化。テレビは885億円の赤字

地域別販売概況

 地域別売上高は、国内が9%減の3兆7,904億円、米州が6%増の1兆223億円、欧州が10%減の6,658億円、中国が10%減の9,408億円、アジアが5%減の8,837億円となった。

 セグメント別では、AVCネットワークスの売上高が前年比20%減の1兆3,739億円、営業利益は877億円改善の199億円となった。

 テレビなどのAVネットワーク事業やパネルなどのディスプレイデバイス事業の売上高が減少したのが響いたが、航空機内AVシステムなどのビジネスソリューションが堅調だったという。

 テレビ事業とパネル事業の合計では、マイナス885億円の赤字となった。

セグメント別実績

 2012年度におけるテレビセット販売およびテレビ用パネルの外販をあわせた出荷台数は、前年比22%減の1,365万台。そのうち、液晶テレビは前年比8%減の出荷台数1,173万台、プラズマディスプレイパネルの出荷台数は前年比60%減の192万台となった。テレビのセット販売は前年比33%減の908万台。そのうちプラズマが前年比58%減の191万台、液晶テレビが20%減の717万台。パネル外販は457万台となった。

 また、液晶テレビの売上高は前年比3%減の3,814億円、プラズマテレビの売上高は49%減の1,440億円となった。デジタルカメラは30%減の1,022億円。BDレコーダおよびプレーヤーが55%減の511億円となっている。

 アプライアンスの売上高は1%増の1兆5,544億円、営業利益は18%減の665億円。エアコンの売上高は7%減の2,722億円、洗濯機・乾燥機が5%増の1,506億円、冷蔵庫が14%増の1,464億円となった。

 主力のエアコンが中国市場における不買運動などの影響で苦戦したものの、冷蔵庫や炊飯器の売上げが伸張したという。

 システムコミュニケーションズは、監視、防犯カメラなどのセキュリティ事業が好調だったが、携帯電話やオフィス機器の売上げ減少が響き、売上高が12%減の7,409億円、営業損失は29%減の124億円となった。携帯電話は前年比31%減の282万台となった。

 エコソリューションズは、節電需要を背景に、LED照明やエネルギーマネジメントシステム商品が伸張し、売上高が1%増の1兆5,479億円、営業利益が前年並の591億円。オートモーティブシステムズは、中国では苦戦したが、北米や南アジアを中心に市況が回復、国内でのエコカー補助金による車両販売台数が増加。売上高は20%増の7,829億円、営業利益は236%増の166億円となった。デバイスは、ノートパソコンやデジタル家電向けが低迷し、売上高は3%減の1兆3,614億円となったものの、営業利益は固定費削減効果により、358億円改善し、192億円の黒字。エナジーは、ノートパソコンの需要低迷により、リチウムイオン電池の売上げが減少し、売上高は4%減の5,923億円、営業利益は292億円改善の83億円の黒字。その他事業では、三洋電機関連の事業譲渡の影響により、売上高が23%減の1兆4,428億円、営業利益が6%増の250億円となった。

'13年度は500億円の純利益を見込む

'13年度年間業績見通し

 2013年度の連結業績見通しは、売上高が前年比1.4%減の7兆2,000億円、営業利益は55.3%増の2,500億円、税引前純利益は1,400億円へと黒字転換、当期純利益は500億円の最終黒字を見込む。

 河井常務取締役は、「赤字事業の改善施策の実行とともに全社をあげた固定費削減により、営業利益で2,500億円以上、当期純利益で500億円以上、フリーキャッシュフローで2,000億円以上の達成を目標にする」と意欲をみせた。1,030億円の減収分については、「ほとんどが三洋電機のデジタルカメラ事業の譲渡によるものであり、実質的には減少はないと考えている」と語った。なお、テレビや半導体など赤字事業においては、前年の1,300億円から400億円へ圧縮し、900億円の改善を見込むという。「2015年度にはすべての事業で黒字化を果たす」とした。

 セグメント別では従来の8セグメントから5セグメントへと再編。AVCネットワークスの売上高が前年比4%増の1兆6,900億円、営業利益は261%増の300億円。アプライアンスの売上高は3%増の1兆1,200億円、営業利益は18%増の430億円。エコソリューションズは、売上高が2%増の1兆7,100億円、営業利益が8%減の580億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が1%増の2兆5,400億円、営業利益は158%増の760億円。その他事業では、売上高が11%減の9,000億円、営業利益が135%増の80億円となる。

'13年度はセグメント変更
'13年度セグメント別見通し
AVCネットワークス

 なお、AVCネットワークスおよびアプライアンスにおいて、消去または全社に含まれているコンシューマ製品の販売部門の売上高および営業利益を含んだ製販連結では、AVCネットワークスの売上高が前年並の1兆8,300億円、営業利益は240億円。アプライアンスの売上高は3%増の1兆5,100億円、営業利益は8%増の630億円となる。

 テレビのセット事業を担当するテレビ事業部の売上高は前年比4%減の3,300億円、営業利益は前年から27億円改善の13億円と、黒字転換を目指すが、テレビおよびパネル事業全体では、前年の885億円の赤字から、545億円の改善を見込むものの、マイナス340億円の赤字となる見通しだ。

 2013年度のテレビの出荷台数は16%減の1,150万台を計画。そのうち、セット販売が前年比1%減の900万台、パネル外販が45%減の250万台。なお、液晶テレビとプラズマディスプレイテレビの内訳は明らかにしていない。携帯電話は、前年比8%減の260万台を見込んでいる。

 「AVCネットワークスは、テレビなどのBtoC事業が需要低迷の継続と、不採算機種の絞り込みによって減収となるが、BtoB事業は着実に増収を見込む。また、営業利益では、BtoB事業の増販、テレビ事業および携帯電話事業といった課題事業の改善により増益を見込んでいる。テレビ・パネル事業は、セット事業の改善、パネルのビジネス用途の拡大、ものづくり改革の促進、販売促進費の抑制などに取り組む」とした。

 携帯電話事業を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズの売上高は前年比1%増の935億円、営業損失は70億円の改善を見込むものの、マイナス11億円の赤字予想としている。

アプライアンス
エコソリューションズ
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
主要課題事業の見直し
2013年度業績見通し

 なお、河井常務取締役は、今後の決算発表におけるセグメント変更のポイントについても説明。「事業部基軸の経営へと移行したのに伴い、事業部の集合体であるカンパニーをベースとしたセグメントに変更した。セグメントを構成する50%以上を占める主要な事業部の売上実績を第1四半期決算から開示。中期計画の重要課題である『赤字事業の止血』の進捗を示すため、主要な課題事業の売上高、営業利益を追加開示する」とした。

 一方、尼崎PDP国内第5工場の今後については、「現在、尼崎では第4工場に集中して、効率化しており、第5工場は使用していない。これまでにも減損処理はしてきたが、建物についても今回減損処理を行なった。これまでは工場として、グループ内での活用を検討してきたが、もっと広い活用の仕方を検討していく。工場としての活用以外が決まれば、評価減処理も可能になる。新たな活用を含めて、検討していく」と語った。

(大河原 克行)