ニュース
IFAをCEの新たな発見の場に。IFA 2015は9月4日に開幕
(2015/4/27 08:55)
コンシューマ・エレクトロニクスショー「IFA 2015」の開催に先駆け、報道関係者向けのプレイベント「IFA 2015 Global Press Conference」(IFA GPC)が、マルタ共和国で現地時間の4月24~25日に開催された。
IFA 2015は、ドイツ・ベルリン国際見本市会場で9月4日~9日(現地時間)に開催。1924年の初開催から今年で55回目となる。AV/IT機器や、白物家電などの最新製品が展示され、日本からもソニーやパナソニックなどの大手メーカーをはじめ多数の企業が出展予定で、欧州向けテレビ事業から撤退した東芝も、BtoB向けのITソリューションなどを中心に出展するほか、京都大学も参加するなど新規の出展者も増えているという。
IFA GPCは、IFAの本イベント出展社らが新製品の予告や今後の戦略などについてプレゼンテーションを行なうもの。今回は55カ国以上、300人を超すジャーナリストらが参加している。記者会見では、今回のIFAの概要が紹介されたほか、家電業界を取り巻く市場環境などについて、調査会社のGfKらがプレゼンテーションを行なった。
国際化し異なる業界を繋ぐIFAに
IFAを運営するメッセベルリン(Messe Berlin)のChristian Goke CEOは、テレビの販売価格が1990年から2015年で6割以上下落している一方で、自動車は大幅な販売価格の向上、つまり顧客にとっての価値向上を実現したという事例を紹介。家電業界のトレードショーとして、IFAができることを整理/分析し、現在のIFA 2015につなげていると語った。
従来は「家電業界のトレードショー」であったIFAだが、その要素を持ちながらも、この10年強で海外からの来場者拡大や地域の参加者増、白物家電/アプライアンスやモバイル/通信などの関連業界の拡大を実現し、家電(コンシューマエレクトロニクス)を中核としながらも、関連業界や顧客を巻き込みながら成長してきたことを説明。
IFA 2014の実績については、海外からのトレードビジターが47,800人と前年比で900人増加し、展示エリアも拡大したことなどを紹介。多くの来場者を集めながらもトレードショーとしての機能を担っていることを強調した。来場する海外メディアも2,600人と前年比で300人増えているという。
一方で会場の拡張は追いついておらず、すでにIFA 2015のブースはほぼ埋まっているとのこと。そんななかでもスタートアップや小規模メーカーを対象にしたTecWatchをHall 11に設けるなどで、イノベーションの支援を継続していくとした。
IFAでは、ホームエンターテイメント、テクノロジー&コンポーネント、マイメディア、コミュニケーション、ホームアプライアンス(白物家電)の5つにブースを分類。特に白物家電の領域が大きくなっているという。なお、IFA 2015の基調講演登壇者は未定とのこと。
テレビ回復へ。接続性が重要に
GfK Retail and Technology コンシューマエレクトロニクス部門のグローバルディレクターJurgen Boyny氏は、2015年度の家電製品の見通しとともに、最重要な課題としてネットワーク接続/他機器連携について「Connectivity」(接続性)というキーワードを解説した。
デジタル製品の成長は2015年も続き、世界で約1.5%の伸長となる見込み。その伸長を担うのが、新興市場のスマートフォンとなる。地域別では欧州やアジアの先進諸国が停滞するものの、北米やアジアの新興市場、中東/アフリカ地域の拡大が見込まれている。
成長を牽引するのは、成長鈍化したとはいえスマートフォンとタブレットで、スマホは約6%、タブレットは1%の成長を見込む。一方で、モバイルPCが6%減、デスクトップPCが5%減、デジタルカメラは15%減と縮小が見込まれる。
テレビは2.3%の拡大を予想しており、「引き続き消費者の高い関心を得ている」とした。大型化、4K、有機EL、Curved(曲面)、スマート化などのイノベーションが牽引している。
ただし、スマート化がDVD市場の縮小にもつながっている。テレビがスマート化することで、コンテンツにテレビからから直接アクセスできるようになり、DVDは不要になる。“接続性”により新たな可能性が広がると同時に、他のカテゴリの縮小要因ともなっている。
スマートフォンは2014年の12億3,000万台市場から、2015年は14億台に成長。スマートフォンは単に出荷数が多いというだけでなく、その周辺市場への影響も大きく、例えばスマートウォッチやヘルス/フィットネストラッカーといった製品が、2015~2016年にかけて大きく伸びると見込まれる。Boyny氏は、スマートウォッチについては、「将来的には、ロレックスやタグホイヤーなど、好きなラグジュアリーブランドから選ぶ形になるだろう」と予測した。
アクションカムやサウンドバーなど新たな製品が登場している一方で、縮小する“新興カテゴリー“もある。一例がポータブルナビ(PND)やe-Reader(電子書籍端末)で、PNDはスマートフォンに、e-Readerはタブレット/スマートフォンに市場を奪われており、これも“接続性”による変化の一例として語った。
「発見」のあるIFAに
メッセ・ベルリン IFAグローバル統轄本部長のイエンツ・ハイテッカー氏は、IFA 2015の目指す姿について、「コンシューマエレクトロニクス(CE)は通信との出会いにより、多くのイノベーションが生まれている。それがConnected home/Livingと呼ぶコンセプト。異なる産業、異なる製品が出会い、相互につながりあう環境がIFA 2015で提示されるはずだ。“IoT”(Internet of Things)といった新しい名前/トレンドも生まれているが、それもCEで言うConnected Homeの一例という意味ではさほど目新しいものではない。ネットワークにより新たな付加価値が生まれるConnected Homeの流れの一環」と説明。「IFA 2015では、テレコミュニケーション(通信)関連のスペースも大きくなっている」とした。
Connected Homeの一例としては、スマートテレビが新しい機能として消費者に受け入れられているなどの事例を紹介。また、オーディオについても、「伝統的なアナログのハイエンドオーディオではなく、高い品質を手に入れやすくなっている。これはデジタルによるイノベーション」と述べ、引き続きAV関連製品にも力を入れる姿勢を示した。
気になるのは日本のメーカーについて。海外事業を縮小するメーカーも増えているが、「大きな変化はありません。ソニーやパナソニック、東芝などの大手は参加します。東芝は欧米向けのテレビから撤退しましたが、よりITにフォーカスした展示が見られるはずです。ただし、シャープは不参加となります。一方で、京都大学がIFA Summitに参加するなど新たな参加企業もあります」とした。日本メーカーの基調講演はあるのか? との質問には、「まだ何も発表していません」とのこと。
ただ今回の発表では、従来のIFAとの違いはあまり見えてこない。IFA 2015が強調するスローガンを聞かれたハイテッカー氏は「特にありません」とそっけない。「なにが新しくて、なにに注目すべきか? 答えは『IFAに来ればそれがわかる。発見できる』。その実現のために私は働いています(笑)」。