シャープ、通期2,900億の赤字に。液晶など業績改善策

-下方修正の主因は液晶テレビ。'11年度第3四半期


片山幹雄社長

 シャープは、2011年度第3四半期業績発表で、通期業績予測を純損失2,900億円と下方修正。あわせて来期に向けた業績改善対策を発表した。

 シャープの片山幹雄社長は、「大幅な赤字を計上することになった。第1四半期における液晶パネル工場の操業損、事業構造改革の推進、繰延税金資産の取り崩しが影響している。だが、これを一気にやることで、今後の成長につなげたい」とした。

 業績改善策としては、「在庫の圧縮などの財務体質の改善」、「AV事業および国内営業体制の構造改革」、「太陽電池事業の構造改革」、「液晶事業構造改革の着実な推進」の4点に取り組む姿勢を示した。

 液晶事業構造改革については、亀山第2工場におけるIGZO液晶の事業拡大を図り、これまで対象としていたスマートフォン、タブレット端末向けだけに留まらず、高精細ノートPC向けや、PCモニター向けなどの高精細パネル市場へも対象を拡充する。亀山第2工場では、2012年度第3四半期を目標に、テレビ用パネルの生産を大幅に縮小させる考えも示した。

 また、堺工場においては、液晶テレビ向けには、堺工場の第10世代の強みを生かした超大型サイズの展開や、社内需要に特化した展開を推進するとしながら、テレビ用液晶パネルを生産能力の半分程度にまで稼働調整を実施。この成果を活用することで、堺工場への一部ラインにIGZO技術の導入を検討するという。

 「モバイル液晶については、IGZOの開発および売り上げのズレが影響。大型液晶については、売り上げ減少とこれに伴う稼働率の低下が影響した。モバイル用と大型テレビ用およびノンテレビ向けの60型以上の大型液晶事業を強化し、ここを重点ビジネス領域にする」と語る。

来季に向けた業績改善対策下方修正の主因は液晶亀山第2工場
堺工場液晶構造改革の推進

■ 液晶テレビは今年度通期赤字へ

片山幹雄社長

 また片山社長は、「在庫の増加により、痛んだ在庫体質を改善することが必要。在庫の圧縮、総経費の削減、設備投資の抑制、固定資産の圧縮に取り組む」としたほか、「AV市場、国内市場の大幅な変化に対応した体制にするとともに、大型テレビ、プラズマクラスターイオンをはじめとする健康・環境関連製品や、BtoBビジネス、新興国市場などの成長分野、新規分野に対して、人員をシフトしていく」という。

 また、液晶テレビ事業は、今年度上期まで黒字だったが、第3四半期(2011年10~12月)には赤字に転落。第4四半期も赤字になる見通しを示した。通期では若干の赤字になるとしている。

 「これまでは欧州では多少の赤字が残っていたが、日本、米国、中国では黒字化していた。しかし、国内市場において、市場が急激に悪化し、人件費をはじめとする固定費が大きいことが影響し、国内で赤字となった。国内市場の黒字化がポイントであり、体制を絞り込むことで黒字化を図る。これは早く取り組み、来年度には通期黒字化したい」とした。


■ 2011年度通期下方修正の主因は液晶テレビ

2011年度業績予想を下方修正

 また、2011年度の業績見通しを下方修正した。昨年10月の修正に続き、2回目となる。

 片山社長は、「欧州の金融不安を発端とした景気の低迷、円高の長期化など、期初に比べて状況が悪化していると判断し、残念ながら修正を行なう」としながらも、「今期の大幅な下方修正の主因は液晶テレビを含む液晶事業」とする。

 売上高は10月公表値に比べて、2,500億円減の2兆5,500億円、営業利益は850億円減のブレイクイーブン、経常損失は970億円減のマイナス300億円の赤字、当期純損失は2,960億円減のマイナス2,900億円の赤字とした。


純利益減少の主な要因

 最終損失の2,960億円の減少要因として、売上減、市場価格の下落などで824億円減、液晶および太陽電池の事業構造改革費用で391億円減、在庫評価減などの体質改善費用で440億円減、和解金などの特殊要因として1,305億円減としている。

 部門別の売上高はエレクトロニクス機器が900億円減の1兆6,500億円、営業利益が240億円減の630億円。そのうち、AV・通信機器の売上高は700億円減の1兆800億円、営業利益が250億円減の30億円。

 液晶テレビの販売台数は1,350万台から再度下方修正し1,280万台。売上高は400億円減の6,000億円とした。「液晶テレビについては、第3四半期の状況と、国内外での想定以上の価格下落などを織り込み、年間予想を修正した」という。また、携帯電話は、900万台の計画を800万台へ下方修正した。

 健康・環境機器の売上高が100億円減の2,900億円、営業利益が10億円増の300億円、情報機器の売上高が100億円減の2,800億円、営業利益が据え置き300億円。

 電子部品は、売上高が1,600億円減の1兆2,400億円、営業損失が610億円減のマイナス310億円の赤字。そのうち、液晶の売上高が1,000億円減の8,000億円、営業損失が520億円減のマイナス190億円の赤字。太陽電池の売上高は400億円減の2,000億円、営業損失が80億円減のマイナス240億円の赤字。太陽電池の販売量は10.3%減の831MWとなった。その他電子デバイスは、売上高が200億円減の2,400億円、営業利益が10億円減の120億円とした。

部門別売上高の年間予想部門別営業利益の年間予想

■ 2011年度第3四半期はIGZOの量産遅れも影響

第3四半期(9カ月累計)実績

 なお、2011年度第3四半期の連結業績は、同四半期累計(2011年4~12月)で、売上高は前年同期比18.3%減の1兆9,036億円、営業利益は86.3%減の91億円、経常損失は495億円悪化のマイナス29億円、当期純損失は2,353億円悪化のマイナス2,135億円の赤字となった。

 国内液晶テレビの想定以上の急激な市場悪化、グローバル需給の悪化による大型液晶の外販の減少、国内携帯電話の販売減、市場環境悪化による太陽電池の売り上げ低迷を理由としている。

 「国内の10~12月のテレビ市場は、前年同期比60~70%程度とみられていたが、実際には販売台数で30%台、販売金額では20%台になるなど、想定を大きく下回った。外販先が小型を中心にビジネスをしたことで、大型、中型を中心とする当社の外販が減った。太陽電池は海外での販売が低迷し、半分程度になった」(片山社長)という。

 4,257億円の売り上げ減少の内訳として、AV・通信事業において、国内液晶テレビおよび国内携帯電話の売り上げ減などで2,902億円減、液晶事業においてはテレビ用外販パネルの減少によって1,994億円減、太陽電池事業では市況悪化と単価ダウンで440億円減となった。また、市場価格下落影響額が3,043億円減、為替影響額が610億円減、タイ洪水影響額が148億円減としている。

売上高におけるポイント(9カ月累計)
利益における主なポイント(9カ月累計)

 また、営業利益の573億円の減少としては、AV・通信事業では国内液晶テレビ事業の収益悪化で254億円減、液晶事業では亀山第2工場の操業損、大型液晶の在庫評価減などで197億円減、太陽電池事業では191億円減の影響があったという。

 また特別損失として、震災影響に伴う第1四半期の工場の操業停止で258億円、亀山第2工場におけるIGZOの展開に伴う事業構造改革で299億円、訴訟関連の和解金で188億円など、合計で809億円を計上した。

 部門別の売上高はエレクトロニクス機器が17.5%減の1兆2,739億円、営業利益が14.9%減の558億円。そのうち、AV・通信機器の売上高は25.4%減の8,512億円、営業利益が69.1%減の113億円となった。

 液晶テレビの販売台数は11.6%減の1,009万台、売上高は28.3%減の4,669億円となった。「液晶テレビの国内需要が急減し、とくに32型、40型で想定以上に価格が下落した。また、中国市場の消費鈍化もあり、売上金額、販売台数ともに大幅にダウンしている。だが、米国では大型化戦略が功を奏しており、米国における60型以上の売り上げ構成比は約6割に達している」という。

 健康・環境機器の売上高が9.6%増の2,204億円、営業利益が62.8%増の236億円、情報機器の売上高が0.7%増の2,023億円、営業利益が45.7%増の208億円。

 一方、電子部品は、売上高が23.0%減の9,177億円、営業損失が405億円悪化のマイナス204億円の赤字。そのうち、液晶の売上高が25.5%減の5,830億円、営業損失が197億円悪化のマイナス137億円の赤字。

 「海外液晶テレビの需要減から堺工場における外販売り上げが減少。外販比率は3割程度となっていたが、これが1割程度にまで落ち込んでいる。国内液晶テレビの販売不振から、2011年12月から亀山第2工場における32型、46型のパネル生産の操業度を低下させた。また、モバイル液晶については、Android系スマートフォン向けモバイル液晶が、かなりの販売減となった。外販先のスマートフォンビジネスが停滞したのが理由。IGZO液晶のモバイル端末向け量産の出荷が約2カ月遅れたことが影響した」という。

 IGZO液晶の量産が遅れた理由は、「製品への組み込み部分などにおいて、外販先との調整が影響したものであり、すでに製品そのものはできあがっている」とした。

 太陽電池の売上高は21.6%減の1,594億円、営業損失が191億円悪化のマイナス147億円の赤字、その他電子デバイスは、売上高が14.8%減の1,752億円、営業利益が17.0%減の80億円となった。

 「太陽電池は海外事業が赤字であり、とくに欧州では平均単価が40%減となり、さらに為替の影響で15~20%影響している。つまり半値以下に下がっている。イタリアで薄膜太陽電池の工場を稼働させるなど地産地消の体制を進めていくほか、国内での固定電力買い取り制度の実施に伴い、メガソーラーなどの販売にも弾みをつけたい」と語った。

液晶携帯電話太陽電池

(2012年 2月 1日)

[ Reported by 大河原 克行]