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PS4普及期の戦略。1.5億台を狙うPS4、次の100万台へ拡大するPSVR

 東京ゲームショウ恒例となった、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)エクゼクティブの単独インタビューをお届けする。今年は、SIE代表取締役社長のアンドリュー・ハウス氏、SIEジャパンアジア(SIEJA)プレジデントの盛田厚氏、そして、SIE・ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏の3名に、それぞれ単独でお話を伺った。質問内容はあえて似たものをぶつけた部分もあり、それぞれの考えも見えてきた。

東京ゲームショウのSIEJAブース。今年はハードウエアプラットフォーマーとしては唯一の出展となった

 SIEのビジネスとしては、PlayStation 4(PS4)が世界的にはいまだヒットを続けている最中。日本でも、タイトルが増えて普及も進んできた。一方で、競合環境も激化しているし、携帯ゲーム機・PlayStation Vitaの行方も不透明だ。新プラットフォームといえる、PlayStation VR(PSVR)も立ち上げ中である。

 SIEはこれからどのようにプラットフォーム運営をしていくのか、3トップのコメントから読み解いてみよう。

1.5億台を狙うPS4、ストリーミングなどの新ビジネスにも期待

 まずはハウス社長の話から。ハウス社長には、ワールドワイドでのSIEのビジネス状況や、PlayStationプラットフォーム全体の戦略について聞いた。

SIEのアンドリュー・ハウス代表取締役社長

−−現在のPS4ビジネスの状況を総括していただけますか?

ハウス(以下敬称略):相変わらず好調です。どの地域が良い・悪いということはないです。ただ特に、弊社のヨーロッパ子会社が担当する、中近東・東ヨーロッパといった、これからの市場への期待が大きいですね。十分に弊社内での目標の数字は達成できる、と考えています。

−−一方で、携帯ゲーム機、PlayStation Vitaはどうですか? 先日のSIEJAのプレスカンファレンスでも、Vitaの話題はほとんど出てこなかった。携帯ゲーム機市場をどう考えていますか?

ハウス:携帯ゲーム機については、日本・アジアにはまだいい市場があります。しかし欧米を見ると、かなりチャレンジングな状況であります。できる限り元気な市場で進めたいですが、これからどうするか、明確にコメントできる状況にはありません。

−−では、携帯ゲーム機はシュリンクさせてしまうのですか?

ハウス:そのつもりはありません。しかし、これから規模的に考えると、PS4が4年目に入って元気がありますから、PS4が中心になるのは間違いありません。

−−PS4の競合状況についてお伺いします。ゲーミングPCも元気ですし、Nintendo Switchもヒットしつつあります。そこでのPS4の状況をどう考えていますか?

ハウス:それらの機器とは棲み分けができており、大幅に戦略を変える必要はない、と思っています。

 PSVRも差異化ポイントですし、PS4 ProはPCをある程度意識したものです。まだまだコンソールが最先端の画質を出せる、ということを示せていると思います。

 他社の戦略は分かりませんが、販売状況を見る限り、Switchの発売の影響はほとんど受けていません。むしろ、モメンタム(販売機会)としては非常に良い状態で推移しています。体験として両者はかなり違うものであり、ユーザーもプレイ状況もきちんと棲み分けられていて、それぞれにお客様がついていて、それぞれ選べている状況かと思います。

−−PS4の販売目標は達成できる、とのことでしたが、それはどのくらいの数字を見込んでいるのですか?

ハウス:社内的にひとつの目標は、「PS2を超えること」です。(筆者注:PS2は2011年2月に累計販売台数1億5,000万台を突破している)幸いここままでは、PS2を超えるペースで進んでいます。

 ただし、PS2とは条件が違います。

 PS2はライフサイクル後半で、非常に安い価格になりました。(筆者注:最終モデルにあたるSCPH-90000系は、日本では16,000円で販売された)我々の予測では、PS4はあそこまでは安い価格にはならないだろう……と思っています。

 とはいいつつ、現在、当時は存在しなかった「据え置き型ゲーム機のあるマーケット」のある地域も生まれています。さきほどお話した、中東や東ヨーロッパがいい例ですね。そのことを加味すると、目標は達成できるのではないか……と思うのです。

−−将来的な柱についてはいかがですか?

ハウス:3つある、と考えています。

 一つ目はPSVRです。まったく新しいマーケットが育ちつつあります。これからは販売台数がある数に達した段階で、もう少し大手のゲームパブリシャーに参入していただきたい、と考えています。

 PSVRの立ち上げは、新しいゲーム機の立ち上げに似ています。数が増えていない状況ではビジネスチャンスも限られてきますから、そこは(プラットフォーマーである)我々とパブリシャーがお互いに責任感をもってやっていければ、と思います。

 VRの場合、カプコンの「バイオハザード7」のようにフルのゲーム体験で面白いものを作ったところもありますし、それとは別に、ゲームの一部にVRを使ったり、スピンオフを作ったりもできます。それらのVRコンテンツも、かなり売上が出てきていて、これは良い傾向だと考えています。

−−2つめはなんですか?

ハウス:ストリーミングゲーム、PlayStation Nowです。いよいよPS4のゲームをストリーミングで供給できるようになりましたので、新しい、違う顧客層をつかめるものと期待しています。

−−それは、ゲーム機を買わない層、例えばPCやテレビで利用する人々への浸透を期待している、ということですか?

ハウス:いえ、そうではありません。

「このゲームをガッツリ買ってやるほどではないんだけれど、ちょっと興味があるのでやってみたい」という、別な意味での「カジュアルな層」に対して、別のゲームの買い方としてのオプションを提供できるのではないか、と考えているんです。

 もちろん、PS Nowはより安価にゲームを提供することになりますから、ゲームパブリシャー側から見れば、既存のゲームの売上を奪う、カニバリゼーションが起きるのではないか、という恐れは抱くでしょう。

 しかし、我々が売上から確認した限りでは、それは起きていない、悪影響はないようです。PS3をつかって、まずストリーミングゲームの体験を示したのですが、そこでカニバリゼーションが起きないことなども証明しながらやっていたんです。

 実はGaikai(PS Nowのベースとなった技術を持つ企業)を買収する前には、ストリーミングによる体験版の提供を中心に考えていたんですよね。いかにゲームを試しやすい環境を用意できるか、という意味で考えていたのですが。

 販売モデル・料金などの検討もさらに進めていきます。

−−最後の3つめはなんですか?

ハウス:アメリカで展開している「PlayStation Vue」です。映像ストリーミングは非常に競争が激しい分野なのですが、機能面で非常にしっかりしているので、かなり付加価値が出せると思っています。例えば今は、スポーツのストリーミングを3つ同時に表示できるようになっています。こちらはバスケ、こちらはフットボールみたいな見方もできます。

−−しかし、PS Vueはアメリカでのサービス。他国は放送環境が違うため、なかなか展開が難しい。拡大の目処は立ちましたか?

ハウス:なるべく早く、サービス展開地域を拡大したい、とは思っています。しかしおっしゃる通り、放送環境は国毎に大きく異なります。ですから、慎重に考えながら進めていきます。

−−これに限らず、現在、PSVRを使ったロケーションベース(アミューズメントスペースなどでのビジネス)ビジネスの開拓なども行っています。これらの新規ビジネスにはどのような期待を持っているのですか?

ハウス:戦略的には「今のビジネスモデルだけでは十分でない」と考えているんです。いつか伸びる可能性のあるものを実験的にすすめている、という位置付けです。

−−すなわち、余裕がある今のうちに、新しいビジネスの芽を開拓している、ということですか?

ハウス:そう考えていただくこともできますね。

3年でソフトは揃った、「親子でPS4」が年末の狙い

 次に、SIEJAの盛田プレデジントのインタビューだ。盛田氏には、日本市場の状況と市場分析について聞いた。

SIEJAの盛田厚プレジデント

−−SIEJAのプレジデントに就任されて3年が経過しました。現時点でのPS4ビジネスの状況を総括していただけますか?

盛田:ちょうど3年前にも、ここで議論させていただきましたね。あの頃はPS4もまだ出たばかりで、「欧米が好調だが、日本は大丈夫か?」と言われていました。

 そこで我々は「日本のゲームファンが望むタイトルをまず出していこう」ということを目標に据えました。昨年の「Final Fantasy XV」以降、「ドラゴンクエストXI」「New みんなのGOLF」「グランツーリスモSPORT」、そして「モンスターハンター:ワールド」ときて、「このタイトルがあれば」「このタイトルが出てきたら」というものはすべて揃った、「最低限やらなければいけない」と思っていたことはできた、と思っています。

 しかし、これは「最低限」です。支持層をこれからさらに、どう広げるかがポイント。タイトルは揃えられたので、今度は、もう一回ゲームの楽しさを幅広い方に伝えることは重要です。

 これは就任以来ずっとやってきたことではありますが、3年目、もっと幅広く、集大成的に実行したい。これが、今年の年末商戦にやらなければいけないことだ、と思っています。

−−「ゲーム機を買おう」と思っていただくための活動、ということですね。

盛田:はい。とはいえ、これは地道な活動です。「買ってください」といって急に売れるものではないです。

 我々は「PlayStationを出した頃、なにをやっていただろう?」ということを思い出そう、ということにしました。当時はまだPlayStationが知られていませんでしたから、テレビやメディアを使いつつ、地道なことを色々やっていたんですよ。それを思い返して、「皆さんゲームのことはもう知っている」という思い込みは一旦止めて、いままでやっていたことをもう一度きっちりやろう、ということにしています。例えば「有名な人がこうゲームを楽しんでいる」ということをアピールするのも、重要なことですよね。

 特別モデルを用意するのも、「あのタイトルが出るならハードも買ってみようか」という風に考えていただくためのものです。

 やっぱり、ゲームというもの自体が話題になることは、いいことだと思うんですよ。

 幸いこの1年くらい、日本では元気な据え置き型ゲーム機が我々のプラットフォームしかない、という市場に変化が出て、市場として盛り上がって来るのは本当にいいことです。消費者の皆さんがゲームに目を向けてくれる、店頭に足を運んでいただけるという状態ができることは、そこに向けて施策が打てます。

 また、PSVRであるとか、今回発表させていただいた、Animaxと連携したビデオサービスであるとか、そういうものにも目を向けていただける。「なにか楽しそうだ」「エンターテインメントとしてはPlayStationが最適である」というとっかかりを作りたい、と思うんです。

アニメ専門チャンネル「アニマックス on PlayStation」12月開局

 子供が「ゲーム機が欲しい」と言った時、親が「PSVRもあるんだ」「PCで見ていたビデオサービスがテレビで見られるんだ」ということになり、一台、リビングにおいていただきたい。そうすればエンターテインメントのハブになり、みんなが活用できるようになるし、置いていただければゲーム機としても使っていただける……そう思うんです。

 親子で遊んでいただけるようになれば素晴らしいので、そういう訴求もしていきたいです。

−−ここでPSVRの話が出たので、その点について。今年上半期は品不足が続き、ある意味で商機をロスしたのではないか、とも感じます。その点はいかがですか?

盛田:結果論でいえば、出すまではどれくらい数になるか、読み難かった。そのためにコンサバに読み過ぎていたのは事実です。

 一方で、話題になって買ってもらうことで、短期的にいえば売上があがりますが、そこを目指していたわけではないんです。在庫があってとにかくどんどん買っていただくのが良かったのか、というと、そうではない、と考えています。

 PSVRはプラットフォームであり、理解していただいた上で定着させたいと思っていました。今後、第二世代・第三世代へ進化させていく第一歩でもあります。別な言い方をすれば、「話題だから買った」「一度やって終わり」で埃をかぶってしまうのは良くない。だからこそ、体験ができるところに販売店を絞り、買った方はそれなりに理解し、満足していただいています。

 現状、我々が考えていたことはできました。そこで今後はどうするか? 改めて、コンテンツと一緒になって売っていきます。なので、今回改めて「PSVRカメラ同梱版」を用意したんです。これからPSVRを買う方は「新しく買う方だろう」と思うので。

−−初期にPS4のカメラ同梱版を買われたファンの方ではなく、新しい方々が購入されるだろう、ということですか?

盛田:はい。今後はあれをスタンダードな商品として訴求していきます。

 そこでユーザーの方々がどんなものをPSVRに望んでいるのか……ということを調べると、「やっぱりゲームをしたい」という方が多い、ということもわかってきました。ですから、「グランツーリスモSPORT」や「V!勇者のくせになまいきだR」のように、「ゲームを楽しめるタイトル」を揃え、アピールしていきます。もちろん、動画に近い「体験型」コンテンツも非常に重要なのですが、ゲームがあった上でノンゲームのものも含めた「セットになっている」ことが重要なのだと思うのです。

−−それはPS4における戦略と同じですね。

盛田:はい、そうですね。

−−今回、SIEJAのプレスカンファレンスでは、携帯型ゲーム機であるVitaの話がほとんど出ませんでした。低年齢層向けには携帯ゲーム機の市場が重要である、という側面もあるかと思います。携帯ゲーム機の市場、Vitaをどうするのか、方針を教えてください。

盛田:それはつながっている話なんです。

 低年齢層がゲームをするには、まず親がゲーム機を買ってくれないといけません。ですから、PS4を総合的にアピールしたわけです。PS4にも低年齢層のタイトルはあります。「グランツーリスモ」や「みんゴル」は全年齢層的なものですし。PS4のタイトルの話が大半になったのは、PS4に幅広いタイトルが揃っていることを訴求したかった、という狙いがあります。

 一方Vitaは、日本では元気です。いつまで続くのか、とも言われますが、「マインクラフト」の人気はまだ高く、新しいストーリーモードも追加になります。携帯ゲーム機であるVitaの体験は、PS4と両方あっていい。まだ日本としては大事な体験です。

−−とはいえ、「まず親に買ってもらう」ことが重要なので、PS4を中心に訴求した、ということですか?

盛田:今年は「親子で遊んでもらう」ことを訴求したいと思っています。テレビの前に親と子が一緒に座っていただければいいな、と。

 一方で、低年齢層に向けたキャラクターの活用は、ソニーグループ全体としてのチャレンジでもあります。ロングレンジと直近、両面の戦略でやっていきたい、とは思っています。

PSVRはアーリーアダプターフェーズ、世界で変化する「日本ゲーム」の位置付け

 最後は吉田氏へのインタビューだ。VRのエヴァンジェリストでもある吉田氏には、PSVRを軸にしたVRの状況と、WWSにおける「日本向けゲーム」の扱いについて聞いてる。

SIE ワールドワイドスタジオの吉田修平プレジデント

−−まずPSVRの話から行きましょう。現在の状況をどう分析していますか?

吉田:こちらでプランニングした通りの数は売ったつもりです。値段も調整をかけましたし、10月からは供給も安定しますので、プロモーションもしっかりかけていく予定です。

 とはいえ、累計100万台ちょいというのは、まだアーリーアダプターのフェーズです。今の100万人と、これからかっていただく100万人とでは、ユーザー属性にはそれほど大きな変化はないだろう、と思います。

−−PlayStationでいえば、初代の「いくぞ100万台」の頃と変わらない、と。

吉田:そうそう。興味があったけれど体験する機会がなかったとか、値段がこなれるのを待っていた方とか。要は買いたかったけど待っていた人がたくさんいらっしゃいます。

 昨年のローンチ以降、PSVRには非常にいいタイトルが集まっています。それを含めて、再導入するフェーズかな、と私は思っています。

 もちろん台数が増えていけば、ゲームパブリシャーの方々がそれに応じた、大きな予算のゲームも増えていくのではないか、と思います。ユーザー側からも「より大規模なゲームを」という要望が出てきていますので、その両者がバランスを採った形で進んでいくのではないかな、と。

−−確かに現状のVRは、AAAクラスの巨大なタイトルが多数出るタイミングではありません。では、吉田さんがプレジデントである「ワールドワイドスタジオ(WWS)」としてはどうですか?

吉田:徐々に体験の深みや規模を増やしていく計画をしています。

−−そういう意味では、「FarPoint」はもっと売れてもいいし、評価されてもいいゲームだと思います。あれはVR内でのゲーム体験として素晴らしいですね。

FarPoint

吉田:素晴らしいですよね!

 ただあれも、「エイムコントローラー不足」でもあったんですよ……。これも再生産し、供給体制を整えます。エイムコントローラーは、VRの中での接地性というか、いわゆる「センス・オブ・プレゼンス」を高める効果が非常に高い。サードパーティー製のゲームもいくつか採用していますが、弊社からも年内に「BRAVO TEAM」というタイトルが出ます。

PlayStation VR シューティングコントローラー

 PSVRは値段も高いものですし、体験しないと良さがわかりません。ソフトのクオリティも上がってきています。

 巷で出ている数字はアナリストが予想したもので、「上げて落とす」的なところがありますよね。ただ、そういう「下げ」のフェーズでもなくなりつつあります。VRは実際に、教育からトレーニングまで、いろんなところで実際に使われるようになり、じわっと生活の中に入ってきています。

 だから、産業として立ちあがる手応えは感じていますし、想像を超えるスピードで課題が解決されていっているようにも思えます。

 弊社は結果的に、家庭で楽しむゲームのプラットフォーマーとしては、リーディングポジションになってしまったので、この業界を盛り上げる責任があります。まだまだ世間一般での認知は弱いので、基本に立ち返って、改めて取り組もうと考えています。

−−ここでは話をVRから、WWSのビジネスに切り換えます。WWSとしては、各国にある開発スタジオにどのように予算やタイトルを割り振っているのですか? それが、SIEから出てくるタイトルの内容に関わっているわけですが。

吉田:全体の予算としては、かなり大きなものをいただいていおり、それを各地域に割り振っている形です。

 ゲームは、まずクリエイターがなにを発想するか、「こういう新しいことができる」というチャレンジが大事なことだと思っています。一方で、「グランツーリスモ」や「みんゴル」のようなシリーズものも増えていて、そこにみなさんが期待している部分もあります。両者は相反する部分があります。まったく同じ比率ではないですが、同じように力を入れて作っています。

 とはいえ中でも、新しいIP・ジャンルにチャレンジすることが大切なので、そこは意識して取り組んでいます。要はそれが、プラットフォーマとしてエクスクルーシブなものになり、「このタイトルのためにPlayStationを買いたい」と思ってもらえるものになりますからね。

 そして、Vita以降は設計段階から参加しているので、中身を理解した上で「PlayStationの良さを見せられるようなタイトルを作ろう」「特性をプレゼンテーションするのに良いものを作ろう」と考えています。

 実際のところ、導入期、普及期、ライフサイクル後半と、時期によって狙っていくユーザーは変わりますから、そこでかけるリソースも変わります。

 PSVRでいえば、今は先行投資の段階です。それでも利益は出ているのですが、さらにリスクをとるのがプラットフォーマーの役割です。

−−その中で「JAPAN STUDIO」がなにをするのか、日本に向けたタイトルを作るチームがどういうことをするか、が重要です。

吉田:確かに、私としてもずっと前から「できていない」と思っているのが日本市場への取り組みです。

 PlayStation 1の頃は自社タイトルもがんばっていたのですが、それ以降はサードパーティーのみなさんのタイトルに引っ張られて伸ばしてきたところがあります。そこで「ファーストパーティー、自社タイトルはどうなんだ?」と言われると、その通りだと思っています。

 そのひとつとして取り組んでいるのが、海外の大きなスタジオのものすごいクオリティの作品について、日本のユーザーのファンを増やそう……という試みです。結果として、徐々に海外タイトルへの食いつきも増えています。

 ではJAPAN STUDIOがなにを作るのか?

 もちろんそこの責任は大きいと思っていますが、ひとつのジレンマとして、PS4クラスになって開発費が大きくなっている、ということも挙げられます。ニワトリ・卵の関係ではあるのですが、利益とその回収を考え、グローバルな市場を目指して作ってきました。

 ただここへきて、去年あたりから、「日本のデベロッパが日本市場にむけて作ったもの」が、欧米でもヒットするようになってきています。これは、日本のゲームに敏感に反応する層が増えてきている結果だと思うのですが。日本でもPS4向けのゲームが多く出るようになり、それが欧米でもヒットしています。

 JAPAN STUDIOとしては、昨年からの一連のタイトルで、リソース的には出し尽くし、これから新たなプロジェクトを始める段階です。日本のゲームに対する環境が変わってきているので、より自由度は高まりつつありますし、日本市場への貢献度も高くなる環境にはある……と思っています。

−−この時期から企画するものも、基本的にはPS4向け、ということになりますか?

吉田:まだPS4向けですね。よりPS4に力をいれなきゃいけないくらい、の段階かと思います。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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